もそも音楽、それもポップミュージックは楽しくなくちゃね! という、シンプルな初心を思い出させてくれるのが、スウェーデン・ルレオ地方出身のスウィング・ヒップホップ・バンド、MOVITS!(モービッツ!)。先日、2度目のコンサート来日を果たし、海外アーティストとしては異例の全国6ヶ所でのツアーも成功させた、知る人ぞ知る人気バンドだ。

ジャズとヒップホップ双方の踊れる要素を軸にした音楽性をキープしながら、9月にリリースした3作目のフルアルバム『Head amongst the clouds(ヘッド・アマングスト・ザ・クラウズ)』では、マカロニウェスタンの乾いたテイストもあるかと思えば、振り切ったEDMもある。しかもビートにはどこかダンスホール・レゲエの匂いも。それってつまり、限りなく世界中の音楽好き、お祭り好きの血をたぎらせるエレメントなのでは? と思った人、正解です。スウェーデンという背景なのか人柄なのか、キャッチーでスリリングな感覚の中に、少しほっこりするファニーさも見えるあたりが、ジャンルを忘れてピュアに音楽として楽しめる理由なのかもしれない。タランティーノ作品を愛し(ある角度からはむしろ『サボテン・ブラザーズ』(86年)のようなユーモアも感じるが)、親日家でもあり(東京のユースカルチャーやグルメにも詳しいことはライブのMCでも証明済み!)、ステージを下りるとその温かみとチャームがさらに増す感じのヨハン(ラップ)、研究者っぽいアンダッシュ(DJ)、クレバーなビジネスマンのようなヨアキム(Sax)に、MOVITS!のそもそもの成り立ちやニューアルバムの着想などを聞いてみた。

Interview:MOVITS!

【インタビュー】スウェーデン語でラップ!? お祭り野郎=MOVITS!の闇鍋的サウンドの核心に迫る! interview131014_movits-72

——MOVITS!結成当初のビジョンはどんなものだったのですか?

ヨアキム 元々のモットーはスウィングジャズとヒップホップを融合させようということだったんだ。それ以前にヨハンとアンダッシュはアコースティックっぽいスタイルのヒップホップ・ユニットをやってたんだけど、それよりもっとハッピーでエネルギーにあふれてて、リスナーを巻き込むような音楽を作りたいと思ったのが今のMOVITS!のスタイルになっていったきっかけなんだ。

ヨハン 「パーティをストップさせるより、俺たちでパーティを始めよう」っていうのがモットーかな(笑)。

——いいですね(笑)。直接的に皆さんの音楽に影響をしているアーティストというと?

ヨアキム 特にヒップホップで言うとアウトキャストには、サウンド的にもラップ的にもいちばん影響を受けたと思う。あとはTimbuktu(ティンブクトゥ)というスウェーデンのベテランのラッパーかな。

ヨハン スウェーデンの伝統的な歌の歌詞なんかにも影響を受けてるよ。で、メンバー3人それぞれが違う音楽を聴いてるから、そのインスピレーションをピックアップして曲を作ってるんだ。

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