——リリックで社会問題なども多く扱っていると思ったのですが、日本から見るとスカンジナビア諸国は社会保障も充実していて暮らしやすそうに見えるんです。でも外からはわからない、ラップしたくなるような事柄が多く存在するんですか?
ヨハン 確かにスウェーデンはヘルスケアに関しては言うことなしなんだけど、それだけじゃなくてまだまだなされるべきことがたくさんある。たとえば住宅不足や、男性と女性のあいだにはまだ差別的な問題もあるし。特に問題になっているのは所得格差の問題で、富裕層と貧困層の格差がどんどん開いていってるんだ。
——それは日本も同じです。
ヨアキム 今、僕たちは1年のほとんどを国外のツアーでまわっていることが多いから、多分その賃金格差とかはスウェーデンだけの問題というより、グローバルな問題として実感してて、そういうことをラップしてるつもりだよ。
——もちろん、そういうリリックばかりじゃないと思うんですが・・・。
ヨハン コンビネーションだね。愉快でファニーなことも歌ってるよ。今回だと“Limousin ft.MASKINEN”のリリックは自分たちがどこに移動するにもリムジンで、って贅沢ライフを歌ってる(笑)。
——でもどこかにシニカルな視点が?
ヨアキム パーティチューンではあるんだけど、フィーチャリングのMASKINEN(マシーネン)のフレイのラップ・パートはちょっと政治的なメッセージも含んでて、まぁ人種問題かな。でも全てのラップソングにはそういうパンチラインがあるもので、この曲に入ってるのも当然だと思う。あと、“Limousin ft.MASKINEN”の中で歌ってるのが「ヤンテ法」っていう、ヤンテっていう人が定めた法律があって。法律と言っても実際に罪が課される法ではないんだけど、それはスウェーデンの人たちのマインドを支配するような法律なんだ。自分が何か得意なことがあったとしても、それを人々に見せびらかしたり、主張するんじゃなくて、隠しておかなければいけないっていう決まりがあるんだけど、この曲では「そんなもん気にせずにリムジンに乗って、なりたい自分になろうぜ」ってメッセージも込められてるんだよ。
——日本の「能ある鷹は爪を隠す」ということわざに似てますね。
ヨハン そうするのは、みんなが平等に暮らすためにいい場合もあるけど……。
ヨアキム クリエイティブな仕事をしてる人にとっては足かせにしかならないわけで。
——確かに。では、社会的な側面を持ったリリックを書くときに気をつけていることはありますか?
ヨハン ひとりよがりのリリックにならないように、自分だけの問題や自分だけの観点で書くのではなくて、もっと外に向けて書くようにはしているね。