〈LD&K〉が渋谷神南エリアにギャラリー「澁谷藝術」を4月末に移転オープンさせた。本施設は、3階建一棟で、カフェ/フォトスタジオ/ギャラリー/オフィスが一体になった空間だ。

当ギャラリーでの柿落とし展として、画家・オオシロムネユミの個展が8月10日〜8月31日の期間に開催。オオシロにとって初めての試みとなった日本での本格的な個展は、絵画の展示に加え、映像作家として手がけたMVの上映、ローンチとなったアパレルブランド「TSUTSUMOTASE」など、オオシロの様々な活動が体感できる空間となった。

今回Qeticでは、展示を終えたオオシロムネユミにメールインタビューを実施。展示での思いや作品の背景、また新しくスタートさせた「TSUTSUMOTASE」などについて語ってくれた。

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INTERVIEW:
オオシロムネユミ

──個展を終えて、率直な感想をお聞かせください。

初公開の作品展示と、絵画とファッションの融合、MVなど日本に帰ってきてからの制作を一興に見せることができた個展になり、オープン日ギリギリに浮かんだアイディアも流さないで「やろう!」と実行したので、初日までの3日前はほぼギャラリーに泊まり込みになったんですが、結果それでも時間は足りないくらい。
海外での個展では実現できなかった、生々しいライブ感が演出できたかと。

この個展がきっかけで、10代、20代前半という新しい年齢層や、ミュージシャンやクリエーターに多くきてもらって、自分の作品に興味をもってくれた層が広がったのは嬉しかったです。このファン層の広がりはブランドにも繋がる話で、新しい可能性を探る事ができたかと。

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──個展に至った背景をお聞かせください。

今回のギャラリーは所属している〈LD&K〉が新たにオープンした会場でした。

所属アーティストとして杮落しを任された使命感と、某百貨店のグループ展に依頼されたにも関わらず、展示が許可されず出禁になった作品を早く世に出したいという経緯があり、それはある意味、作品の一貫テーマである「怒り」とも通じたので結果良かったんだと思います。

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──日本での本格的な個展は初めてとのことですが、来場者のリアクションや、コミュケーションなどいかがでしたか?

本当にたくさんの方に来てもらい嬉しかったのはあるのですが、大衆を意識しての展示はしませんでした。

単純に自分のしたいことを表現して、それを楽しんでもらえるのが、目的でした。会期中は夕方くらいからほぼ毎日ギャラリーにいたので「オオシロムネユミ」を知らなかった人も、ひさびさに会いに来てくれた人も、ほぼ全員と話せたと思います。

今回の初試みで「服と絵を融合」という展示と販売もあったので、その反応も生で見れて新鮮でした。

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──今回の個展では具体的なテーマ性などはあったのでしょうか?

一貫したテーマはなく「オオシロムネユミ」として日本でどんな活動をしてきたかを見せることを意識しました。

ミュージシャンのジャケットだったり、画家以外にも映像作家としても活動をしているので担当したMVを流したり、バラエティにとんだラインナップになりました。

中でも1番注客したのが「絵を服にいかに落とし込めるか」。
実は、この個展をきっかけに「TSUTSUMOTASE(つつもたせ)」というアパレルブランドをスタートさせたんです。
刺繍職人の社員と、マネージャーが昔衣装制作をしていたので一緒に活動しています。

TSUTSUMOTASE LOOK

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ヒラタビン コメント(オオシロムネユミ マネージャー/TSUTSUMOTASE制作担当)

ワッペンに使う糸は赤です。糸は何かと何かを繋ぐもの。
TSUTSUMOTASEを通じて私たちとはもちろん、誰かと繋がる赤い糸になればいいと意味を込めています。

またパンクな意匠はもちろん、装飾の配置やデザインは和を意識しています。
それはオオシロ自身が日本と海外の両拠点にしていた経験からももちろん、70s後半から80sにさしかかるパンクをそのまま再現するのではなく、新たな渋谷発のパンクとしてクリエイティブしたいからです。Sex Pistolsをリアルに見ていた世代、世界的に見てもパンクの愛好者は年齢層が高いのが現状ですが、自由にファッションを楽しむ大人として若年層にもアピールしたいと思っています。
実際に10代からも支持があったので狙い通りです。

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ヒラタビン コメント(オオシロムネユミ マネージャー/TSUTSUMOTASE制作担当)

──作品の背景として“怒り”のエネルギーが原動力にあるオオシロさんですが、今回発表された作品も一貫した背景があったのでしょうか?

基本、怒りはどの作品にも込めていて、間違いなく原動力です。
ただ今回は怒り以外にも一点だけ愛をテーマにした作品がありました。
以前から私のことを知っている方たちでも、見たことない作風だと思います。その作品は特に女性に好評だったですが、それは予想外でした。

──過去作にも、キャラクターをサンプリングした作品がありましたが、今回もフライヤーに使用されている新作でもキャラクターをサンプリングしています。このユニークなアプローチはオオシロさんの作風でもありますが、過去作と同じテーマで今回の手法を用いられたのでしょうか? また、フライヤーとして採用された背景をお聞かせください。

あの作品は百貨店での企画展に誘われた時に、テーマに沿った犬の絵でした。事前に作品の画像を提出するのですが展示不可、いわゆる出禁になったものです。キャラは大手に対する怒りと、出禁になった不毛さ。
常にパンクでいる心情を表現したかったし、この作品を世に出したくてフライヤーとして使いました。
自分にとっては、出禁になれることはキャリアとしても作品のテーマとしても最高です。

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──今回の新作の中で、歴史上の人物もモチーフとしてサンプリングされておりますが、昨今の日本の政治の動きなどの影響はあったのでしょうか?

正直全くないです。あるけど、全くない。
政治が歴史になる瞬間が面白くて、ナポレオンへのリスペクトと同時にディスりもあります。
今の政治は作品に影響させないようにしています。
若い頃は影響された部分もありましたが、いまの政治色を反映させると芸術性が薄れてしまう。芸術性を優先しています。
ネタ作りとして政治は注目して感情も動かしていますが、それがメインではないです。

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──個展の空間は、インスタレーションとしての表現でもありますが、今回空間づくりにおいて意識されたことがありましたら、お聞かせください。

絵と服と映像の繋がり。
服もその場でカスタムできるというライブ感。
個展に来て絵を見るだけという受動だけではなく、お客さんの感性も溶け込むような感覚を作りたかったです。

自分で布切り出したり、直感を引き出してほしかった。
ワークショップとは違うのを意識しました。

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──今回の個展に際し、アパレルも本格的にスタートされましたが、こちらもオオシロさんが影響を受けていると語ったパンクなどの音楽的な影響があるのでしょうか? またイメージとなったアパレルブランド・デザイナーなどありますでしょうか?

もちろん音楽の影響はあります。
パンクからの影響しかない。
デザイナーは初期のVivienne Westwoodと Malcolm McLaren
服のデザインそのものというより、服を作る過程や魅せ方はかなり影響は受けています。

──今後の個展での発表や、その発展など、現段階で言える範囲で構いませんので、お聞かせください。

和と洋の融合
知識への見解
歴史をインプットしてのアウトプット
アカデミックがあってのパンク
ブランドイメージは自分、自分が着たい服です。
モデルは何かを持っている友達を採用するつもりです。
衣装制作の依頼が多くあり、音楽との繋がりが強くなっています。

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PROFILE

オオシロムネユミ

2007: Art Institute of Boston, Fine Art 学科 卒業
アメリカの美術館 “San Antonio Museum of Art” に作品が所蔵
23歳で初の個展をロンドンにて開催。
大都会にある退廃地区のカルチャーや現地の人の生活に触れた影響で、現在は無骨かつストリート感ある作風が特徴的。一見するとアウトサイダー・アートにも見えるが、伝統的な絵画の技術を用いて油絵の具で描いている。低階級労働者の目線から、不誠実な政治や情勢を反骨心を込めて構図やモチーフ・下地素材にメッセージを含ませている。

HPInstagramオオシロムネユミ マネージャー/TSUTSUMOTASE制作 ヒラタビン