大阪のヒップホップシーンで言わずと知れたラッパー・NAGAN SERVER。ウッドベースをスキルフルに演奏しながら、叙情的なラップを繰り出すその姿を見たことがあるだろうか? ファッショナブルに着飾ったその特徴ある相貌に加え、情熱的なパフォーマンスを一度見れば、脳裏に強烈な印象が焼きつくはずだ。

昨年発売のニューアルバム『NR』で、ジャズ〜電子音楽までを独自に解釈し、その根底にラップミュージックへの敬意も感じられるその特異な音楽性を見せつけると、<FUJI ROCK FESTIVAL ‘19>(以下フジロック)や今最も勢いのあるバンド・GEZANが主催する<全感覚祭19>にも出演。その注目度が全国区で高まり始めている中、11月27日(水)にはニューシングル『see the star』をリリース。本作にも多くの人を惹きつけるような澄み渡る声を持つシンガー・Nao Kawamuraをはじめ、Kan Sano率いるLast Electroがリミックスで参加するなど、さまざまなアーティストと共演を果たしている。さらに12月6日(金)には東京初の主催公演<antenna vol.1>を開催。先述のLast Electro、そしてSIRUPも所属するSoulflexのメンバーZINを迎えての本公演は、東京で新たな歩を進める彼のこれからを占うライブとなるだろう。

そんな期待のかかる公演を前に、インタビューを敢行。音楽に限らず、アーティストとの共演やファッションを通しても滲み出るNAGAN SERVERの色について語ってもらった。

INTERVIEW:NAGAN SERVER

多彩なシーンに染み渡るNAGAN SERVERの色とは|自身初のWWW主催公演へ向けて interview191129_naganserver_10

-改めてお伺いしたいのですが、ご自身がラップを始めることになったきっかけというのは?

遡ると小学校の頃にBSでブレイキングの映像が流れてて、まずダンスがかっこいい! ってところからダンスミュージックへの興味が湧きました。見様見真似で録画した映像をスローモーションにして、ステップを独学で練習してたんですが、あまりにも成長しないため、れいこう堂というレコードショップに併設するスタジオで、一時間500円のダンススクールに通い、教えてもらうようになりました。この場所の情報を知るのにも本当に時間が掛かったんです(笑)。

その流れから高校時代にクラブを知り、ラッパーに衝撃を受けて、自分もあのステージに立ちたいと気持ちが芽生えました。レイクウォン(Raekwon)の“Ice Cream”のインストを使ってラップを書いたのが始まりです。

-ご自身のキャリアの中でも、<全感覚祭>を主催しているGEZANだったり、NYでジャズトランペッターとして活躍されている黒田(卓也)さんだったり、本当に幅広い方々とライブで共演されていますが、その方々と出会うきっかけっていうのはやっぱり音楽であり、ヒップホップなんでしょうか?

同じイベントに出演したところから、広がってます。音楽はもちろんですが、人として魅力のある方と共演できるのは、成長に繋がりますね。両者全く違うスタイルですが、根っこに音楽愛があふれてます。

-その違いのあるスタイルに合わせていく中でご自身が心がけていることは何かありますか?

自分のカラーやスタイルは大事にしてますよ。どんな人と制作しても「NAGAN SERVERだな」って思ってもらえる、表現を続けたいと心掛けてます。自分で考えて作られていく道は、自然とその人にしかない道筋になるんじゃないでしょうかね。

-そのご自身のカラーというのはそれぞれの制作の段階で決めていくものなんですか?

まず、迷いのあるものには手を掛けないですね。気持ちが躍ってる時に自分の色が全開に出ると信じてます。あとは、余白を大事にしています。トラックを空間にたとえ、言葉を足して、引いての作業で楽曲を作ることもあります。

-以前インタビューした時も、制作の段階でそういった感覚に任せる形のセッション要素がかなりあるというお話もされていましたね。

自分が欲しいタイミングでレスポンスをくれる人は貴重だし、相性も分かりますよね。熱が冷める前にテンポよく進行出来る人、気持ちを汲みとれる人。もちろん、相手にとっても自身がそういう存在じゃないと意味ないですが。ライフスタイルでのノリを一番大切にしてます。

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-そんな中でも、このアーティストとは気が合うかもなと思えたのは?

最近では、1Co.INR、dhrma、fkdですね。1Co.INRは広島在住のビートメイカーです。 先日、広島ツアーに行った際に出会い、話が弾み意気投合しました。

彼、Rhodesを弾きながらビートを作ってるんですよ。だから、俺がウッドベース弾いてトラックを作ったら楽しそうだなと思い2人で企んでました。次の日に彼から「ビート投げます」って言われドツボなビートが送られて来た途端に、すぐにベースラインが思いつき、瞬時にボイスメモでベースを録音して「このベースラインどう?」って返信、それをさらに彼が編集、2日以内でトラックも完成しました。あとは俺がラップを乗せる作業だけ。

同じく、dhrma、fkdもテンポ感が合うし、気持ちがフラットでいれる仲間ってとこが共通してますね。

-この前Instagramのストーリーズに載せてらっしゃいましたよね。ビート作る机しかないっていうdhrmaさんのあのストイックな部屋で(笑)。

そう。あの日だけで3曲できたんですよ(笑)。次回作が見えた瞬間でしたね。dhrmaがサンプリングしたら面白そうだなと思う、サンプリングソースを用意して、黙々と二人で制作していました。

-それもセッション的な要素ですよね。

ですね。自分は作品ごとにメインプロデューサーも変わっていくんですよね。作り始めた時に “今はこの人だな”っていうのがなんとなく分かります。あと、制作に関して共演者に依存しないようにしています。すべてはタイミングが来たら。それだけ。過去に作品を共にしたアーティストも、またその時が来たら一緒に作ってるし、お互い一周して再会したほうが、いい曲が生まれますからね。

COCOLOROOM WEDNESDAY#1/NAGAN SERVER + Ken T trio

⁃ 今後一緒にやってみたいと思うアーティストの方はいらっしゃるんですか?

今後一緒にやってみたいアーティストは沢山いますよ。WONKの(江﨑)文武くんやAOKI takamasaさん、鎮くん(鎮座DOPENESS)、SATTU CREW、それにダンサーのUNOちゃん、スタイリストの出口大輔、いっぱい出てきますね(笑)。

文武くんに関しては一度一緒にスタジオに入り、新しいモノが生まれそうだなと思いました。ジャズ喫茶みたいな場所でデュオで演奏したら面白いんじゃないって話にも。何か形にできたらいいですね。まったくの未定ですが(笑)。AOKIさんも以前雑誌で対談した事があり、いつか共演できたらいいなと思ってますね。

-それはぜひ実現してほしい! 『NR』がリリースされてからちょうど1年ほどで、ツアーで積極的に全国を周ってらっしゃったと思うんですが、この1年間の反響はいかがでしたか?

ウッドベースを持ち始めて、初のツアーだったので、新人の意気込みで周ってました。反響は意識した事がないですが、今までより、リスナー層は拡がったかなと思います。

アルバムのリリースは6年ぶりでしたが、2010年から全国を周り続けて、止まらず動いてるので今の形があるのかな。少しずつですけど規模の大きい場所にも出演する機会が増えていると実感してます。今年でいうと<フジロック>もそうですし、<全感覚祭>もそうですね。

自分的に理想形はまだまだですが、活動している中で、今が一番いい状態と断言出来ます。

NAGAN SERVER「Meditation」

-そういう大きな舞台に出演された時は、オーディエンスからどのような反応がありましたか?

単純に今まで自分のことを知らなかった人たちが、いい反応してくれてたら嬉しいですよね。そうやって音楽は広がっていきますからね。ライヴは常にスペシャルなものにしたいです。

-なるほど。それとは別に共演するアーティスト側からの反応もあると思うんですが、以前の反応から変わってきてるなという感覚はあるんでしょうか?

あんまり考えた事がなかったです(笑)。あ! 長年認めてくれなかった人が、ようやく認めてくれたなって瞬間は何度かありましたね(笑)。まあ、それも嬉しい事です。そういう人がいた方がやる気が出るんで。

-これまでのキャリアの中で、偶発的に出会う人との共演なりコラボがあるイメージです。

コラボに関しては、意思疎通がバッチリ出来た人でしょうね。出会いたいと思っていた人に、何故かすぐ出会ってしまうんですよね(笑)。そういうガイダンス的な出会いは、自然とコラボに繋がるケースが多いです。

-その人が何の分野で活躍してるかというのは関係なく?

特に分野は気にしないです。面白い人はどの分野でも沢山アイデアを持っているので。音楽だけに特化しすぎたら面白くないですね。出尽くしてる世の中で新しいものをリリースするには、多方面との化学反応が必要です。

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-それはご自身のファッションへのこだわりとも関係あるように思います。先日上野伸平さん手がけるTIGHTBOOTH*1と藤原ヒロシさん手がけるFragment Design*2とのコラボコレクションのモデルを務められたり、またご自身も以前セレクトショップを運営されていたこともあったり。

ファッションは好きですよ。中学生の頃から、服が自分のシルエットに合わなかったら、わざわざ直し屋に持って行ってリメイクしてもらったり、そういうこだわりはずっとあります。今でも結構な割合で直しに出してます。自分のサイズ感があるんですよ(笑)。

TIGHTBOOTHは、中身がしっかりしてるプロダクション/ブランドなので好きです。作り手の考え方が面白いから、デザインもかっこよく見えてくる部分もあります。TIGHTBOOTHに限らず、デザインしてる人が誰なのか気になって、会いに行ったりもしますし、話をして共感すれば、その服を着る意味が出てきます。そして、また似合う物となってくるんですよ。どういう考え方でクリエイトしてるかってのを知るのが好きですね。

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-なるほど。音楽やファッションだけじゃなくても、さまざまなアーティストだったり、デザイナーだったり、出会いはたくさんあるようですが、今後そういった方々とご自身が実現したいと思うコラボレーションは何かあったりしますか?

先日、西野壮平さんという写真家とコラボしました。西野さんの最新作 Mountain line “Everest”を起用したコラボTです。西野さんは一つの作品を制作するのに海外に300本ぐらいフィルムを持って行っていくそうで、空港のX線で1本1本通してるみたいですよ。かなりハードですよね(笑)。そして、昔から考えや作品がブレてないとこも好きです。

数年前から何回かコラボのオファーしてたんですけど、二回断られてようやくOKが出ました(笑)。想い続けるって大事ですよね。本当に。そして、お互い、高いところを目指している最中で、長年追い続けた気持ちが繋がった瞬間でもあったので、エベレストの作品が一番しっくり来ました。ストーリー性のある作品は大切ですし、人に伝わるものになります。

-そうした出会いは全国を転々とされてる中で培ったものだと思うのですが、この人との出会いは面白いな、と思えたのは?

大阪の大正エリアにある井尻珈琲焙煎所*3の井尻さんが好きで、毎日通ってます(笑)。珈琲に対してもそうだし、店主、店内に無駄一つないです。(笑)すごくミニマルな創りで、あの場所は余白があるんで考える時間を与えてくれます。店主の井尻さんは尖りもあり、ポップさもあり、素直なんです。 彼のことは、アーティストとして見てます。「俺が淹れてるのはカタカナの”コーヒー”じゃなくて漢字の”珈琲”」という名言も最高です(笑)。一番”珈琲”がしっくりくる方だと思ってますよ。

店内のBGMは井尻さんの私物レコードで、お客さんに対してこの人はこういうの好きそうだな、とか、今の時間帯にはこの音楽だなっていうのをちゃんと考えて流してます。もはや、セレクターですよね(笑)。自分が店に行った時は、トラック作りでサンプリングソースになりそうなものをよく流してくれます。「めっちゃいいっすね」って反応したら、「多分好きやろなと思った」って満面の笑みで返してくるんですよ(笑)。それが本当にサンプリングネタとなり何曲も生まれていますからね。大正は本当に面白い。あそこから日々の感性は生まれてますね。

-僕も存じ上げてますが、大正は変わった方が多いですよね(笑)。そんな大阪を離れて、今後東京で本格的な活動をスタートされることになるわけですが、その第一歩として12月6日(金)にWWWで自身主催のパーティーを開催されます。ゲストにLast Electroと大阪で交流もあったZINさんが参加されますが、それぞれを選んだきっかけは?

(Kan)Sanoさんとは、韻シストのShyoudog氏が主催してるパーティー<DOG HOUSE>でセッションをしたりもして、当時からファンでした。その流れもあり、先日Last Electroのライブを観た時にかっこよ過ぎて、これは何か一緒にしたいなと思いオファーしました。11月27日に発売されるシングル「see the star」(取材時は発売前)もその流れで制作しました。Last Electroリミックスが入っているんですが、他のアーティストをリミックスするのは初めてらしくて、それも嬉しいですね。

ZINに関しては大阪時代からずっと観てきてたし、最近のソロライブを見た時に純粋にヤバいなと思いました。楽曲もライブも垢抜けてました。このタイミングで、一緒に出来たら良いなと思って呼ばせてもらいました。自分が本当に良いなと思った人を沢山の方に観てもらいたいし、知ってもらいたい一心ですね。自分たちの音楽を日々の活力に繋げていってもらいたいです。それが、イベントをオーガナイズする者として最大の役割かなと思います。

一発目なんで、これを機に色々やっていきたいです。皆さんよろしくお願いします。

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*1:上野伸平氏がディレクターを務める世界中のスケートシーンで広く受け入れられているアパレルブランド。SKATEBOARD/ART/MUSIC/CULTURE をテーマにした雑誌『ER MAGAZINE』も手がけている。

*2:ファッション・デザイナー藤原ヒロシ氏が手がけるファッションブランド。ルイ・ヴィトン、ナイキ、スターバックスコーヒーなどとのコラボでも知られる。

*3:豆の焙煎から販売までを手がけ、またオーナーである井尻氏自身が淹れたコーヒーだけを提供するというこだわりのある珈琲専門店。伝説的なハウスDJ・Kenny Dopeを迎えたイベントや<THE NORTH FACE KOBE 10th Anniversary Event>などにも出店している。

EVENT INFORMATION

antenna vol.1

2019.12.06(金)
OPEN 19:00 START 19:30
Shibuya WWW
ADV ¥3,500 ドリンク代別
前売り(お一人様4枚まで)
LINE UP:
NAGAN SERVER(Band Set)
Last Electro
ZIN

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