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彼女は日本のエリカ・バドゥ――Nao Kawamuraをそう呼んでいるのは、他ならぬSuchmosのKCEEだ。1992年生まれのシンガー・ソングライターである彼女は、SuchmosやWONK、SANABAGUN.などの作品/ライブでコーラスを務めているほか、SOIL&”PIMP”SESSIONSのニュー・アルバム『DAPPER』にも参加。ここ数年、日本のトップランナーというべきバンドがこぞって歌声を求めてきた事実が、そのまま彼女の実力を物語っている。

もちろん、ソロ・アーティストとしても活発に動いており、2016年には<フジロック>の「ROOKIE A GO-GO」、その翌年には<SUMMER SONIC>に出演。過去2作のEPを経て、今年3月に発表したファースト・アルバム『Kvarda』では、ネオ・ソウル/ジャズのエッセンスをふんだんに盛り込みつつ、これまで以上に先鋭的かつディープな世界観を提示。サウンド面のみならず、自身の内面をこれでもかと掘り下げていく作家性も含めて、ビョークやハイエイタス・カイヨーテと比べたくなる力作だ。

まずはとにかく、その歌声を聴いてみてほしい。ダイナミズムと繊細さを兼ね備えたヴォーカルは、艶やかで陰影に富んでいて、何かが乗り移ったような凄みと表現力に満ちている。2018年も終わりそうな今、もっとも発見されるべきシンガーの一人といっても過言ではない。11月29日(木)に大阪、12月14日(金)に東京を回る<Kvarda Tour 2018>は、彼女のポテンシャルを体感するにも格好の機会となりそうだ。

そこで今回は、Nao Kawamuraにインタビューを実施。生い立ちや音楽観、プライベートからライブの話まで、さまざまな角度から彼女について迫ってみた。

Interview:Nao Kawamura

インタビュー|SuchmosもWONKもソイルも絶賛!「日本のエリカ・バドゥ」と称される最注目シンガー、Nao Kawamuraとは? intervew_naokawamura_1-1200x1400

最初は、彼女の音楽観について質問。生い立ちやバックグラウンド、Suchmosなど多くのミュージシャンとの出会い、最新作『Kvarda』について答えてもらった。

——まず、どんな幼少期を過ごしてきたのか教えてください。

自然が大好きで、木登りをしたり、川で遊んだり、動物と触れ合ったり。とにかく常日頃から自然や命と触れ合うことが多かった気がします。特に爬虫類と両生類が大好きで、多い時は水槽が10個もありました。

——シンガーを志そうと思ったきっかけは?

私の場合、幼い頃からシンガーになりたかったわけではないので、自分でもよくわからないのですが……。小さい頃から新しい場所や人に会うのが大好きで、将来は一生かけて自分を突き詰めたり、向き合うことができる職業がいいなぁ。と、思っていたら皆様のおかげで今音楽ができています。本当に感謝ですね。

——Suchmosの作品に、コーラスとして携わるようになったきっかけを教えてください。

SuchmosのTAIHEIから、自分と関わりのある素晴らしいミュージシャンを集めて、大学(洗足学園音楽大学)の卒業制作の時レコーディングをしたい!というオファーが来て。その時初めて隼太さん(SuchmosのHSU・小杉隼太)と澤近(立景)さん、佐瀬(悠輔)くんと一緒に音を出しました。そこからの出会いがきっかけで、隼太さんに「Suchmosってバンドやってるんだけど、Naoコーラスしてくんない?」と言われて「是非!」とすぐOKしました。その場で出会った澤近さんと佐瀬くんは今の私のバンド・メンバーなので、今思えばすごいレコーディングでしたね。みんな第一印象が濃かったので、今もあの時のことはよく覚えてます(笑)。

——他にもWONKやSANABAGUN.とも共演していますよね。日本における新しいムーヴメントのなかで、ソウルクエリアンズでいうところのエリカ・バドゥみたいな役割を果たしてきたのがNaoさんなのかなと。

元をたどれば、みんな名前が世に出る前から繋がっていた人たちだったので……。今思えばすごいことですけど、あんまり何にも考えていなかったと言えばそれまでだし、みんなてんでに自分がやりたいことをしていたら、自然に出会ったという感じです。私の場合、幸いなことにあまり上下関係もなく、いろんなしがらみも壁もなく音を出してこれたこと、人に恵まれていたことが凄く幸運だったと思います。周りのミュージシャンには日頃から感謝してもしきれません。

——音楽的なルーツについて。過去のインタビューで、荒井由実のファースト『ひこうき雲』をフェイヴァリットに挙げていましたが、どんなところに惹かれるのでしょう?

香り立つ音楽、時がどれほど経っても色褪せない音楽、そしてニューミュージックというムーブメントを起こした時代感……。言うならば全てに、今も、きっとこれから先も惹かれていくんだろうなと思います。

——同じくフェイヴァリットに挙げていた宇多田ヒカルの“Travring”、“Addicted to you”を、AmPmにフィーチャリングされる形でカバーしていますよね。実際にカバーしてみての感想や、AmPmとの出会いについて教えてください。

本当はカバーするのもおこがましいくらい、「私なんかがカバーしていいのか?」と思っていました。オリジナルを作る以上に、他人様のカバーというのは個性がと解釈が露わになるからです。ただそこも含めて、AmPmには、「リスペクトしている方だからこそ納得のいく形でレコーディングをしたい」と、何度もミーティングを重ねた上でのプロジェクトとなりました。よくこんな若造のわがままを通してくれたなと思います。そういう意味でもAmPmはとても柔軟で、情が深く、まだ名の無いアーティストともフラットに接し、音楽を繋いでくれる素晴らしい人たちですね。

——最新作『Kvarda』では、これまでの作品から音楽性のレンジが一気に広がった印象です。現時点での手応えを聞かせてください。

ちゃんと自分の今を提示して、これまでの集大成を一度出したかったので悔いはありませんし、それ以上に周りの力が加わって素晴らしいものが生まれたな、と思っています。でも欲を言えば、もっともっといろんな人の耳に届いてほしいなと。

——“Awake”での声の重ね方、開放感のあるサビが素晴らしいですね。この曲はどういったイメージで作られたのでしょう?

人間が持つ本能や意志を、生物や自然の原理に例えて制作しました。イメージはずっと頭の中にあって、そこから取り出す作業が本当に辛かったけど、できた時はとっても嬉しかったです。

Awake / Nao Kawamura

——“Ego”はダークなサウンドとともに、どこか不穏な歌詞も印象的です。

この曲は題名通り、己が感じる真実を恐れ、地下を這うように心の奥深くに潜む欲望たちを表現しました。ただ、否定やアンチじゃなくて、みんなの中にあるものとして書き留めておきたかった。

自分の中で曲を書く時に、「そのとき浮かんだ景色や感じた香り、なんでもいいんですが、言いたいことを最後までブレさせない」というルールがあります。あくまでも自分の中だけなんですが、一つ筋を通すことを一番意識しなきゃいけないし、やり続けないといけないことなんだと思います。本当に難しいことだし、私自身もそこと戦い続けられるかが永遠の課題ですね。

——『Kvarda』を制作するうえで、どんなものに影響を受けましたか?

生と死、循環すること、必然性。言うなれば、今まで出会ってきた全てがろ過されてできたものです。これからもたくさん吸収して、残せていけたら幸せです。

続けて、Nao Kawamuraのパーソナルな側面を知るべく、プライベートについても尋ねてみた。変化球ぎみの質問も用意してみたところ、彼女の人柄が滲み出たアンサーが返ってきた。

——音楽以外のアートで好きな作家/タイトルを教えてください。

制作前や大事な出来事の前後には、オノ・ヨーコさんの『グレープフルーツ・ジュース』をよく読み返します。シンプルなもので、何度も読む度、見る度、聴く度発見のあるものが好きです。

——Instagramからもファッションへのこだわりが伝わってきます。何か心がけていることはありますか?

ファッションを楽しんでいる立場としては、ブランドや値段は関係なく、着こなせるその感性自体が個性だと思っています。日々色々なものに挑戦、発見、時には意外性があるものを掛け合わせてみること、妥協なし、直感を大切にしています。

——オフの時間はどんなふうに過ごしているのでしょう?

オフの時は映画を見たり、美術館に行ったり、自然の中を歩いたり。煮詰まったときは、列車に乗って滝を見に行ったりしてます。

——きっと密度が濃い人生を歩まれてきたのではないかと、勝手に想像しています。これまでで一番の失敗談と成功談を教えてください。

私は本当に幸いなことに、忘れっぽい性格で、成功も失敗もあまり覚えていないです。というか思いせない、もしくは思い出さないことが多いです。常に今どうしたいか、どうするべきか考えられていることが、成功であると思います。

——いきなりですが、日本の将来については楽観的でしょうか、悲観的でしょうか?

フリーランスで活動していることもあり、自分自身の目の前のことにはかなり悲観的ですね。たまに発狂したくなることもあります。ただ、いつも死ななきゃ大丈夫と思っているので、結果的には楽観的……? 

日本の将来については、一人一人が今をしっかり生きていくことしかないのかなぁと思います。どんなことをしても結局はそこかなと。

最後に、冒頭でも紹介したライブについて。Nao Kawamuraはステージングにも定評があり、歌の強さはもちろん、エモーショナルなアクションにも注目したい。「(ライブで心がけているのは)イメージすること。どれだけ入り込んで幽体離脱できるかが勝負です(笑)」と本人も語っているが、試しにYouTubeのライブ動画を見てもらえば、あまりの迫力に惹き込まれてしまうはずだ。

では、今回の<Kvarda Tour 2018>はどのようなものになるのか。「私の中では”音を浴びまくる2018ラストのお祭り”って感じです。当日は恐らく、これでもか! ってぐらいすんごい音が飛んでくると思います」と、彼女も今からワクワクを隠しきれないようだ。

編成は、プロデューサーの澤近立景(ギター)を中心とした、コーラス隊も含むフルバンドセット。ライブ/レコーディングをずっと支えてきた盟友たちが、Naoの歌を支える。「素晴らしくて、みんな大好きなミュージシャン。ぜひ彼らの音を体感してほしい」と彼女も語るように、バンドの演奏も見どころだろう。

さらに、大阪公演ではD.A.N.やyahyelにも通じるエッジーな音楽性を持つWOMAN、東京公演では小林うてなとJulia Shortreed、ermhoiの3人によるBlack Boboiがサポート・アクトを担当するほか、ゲストDJを社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS)が務めるという。「エモーショナルでオンリーワンの世界を持っている同世代の方々にオファーさせていただきました。本当に私自身が楽しみすぎるラインナップを組んだので、贅沢な一夜になるという以外に言葉はありません」とNaoも自負する通り、見逃し厳禁の二夜となるのは間違いなさそうだ。

このツアーが、彼女にとって年内最後の活動になるという。最後に、2018年を振り返つつ、来年の抱負も語ってもらった。

「2018年は音楽を通して、より多くの人と出会うことができたと思います。私にとっては一つ一つが密度の濃い時間で、音楽ができることがありがたい日々。来年は今年以上に繋がり、より絆を深める、というところになるのかなぁ。そしてリリースもしていけるよう、頑張ります。2019年もよろしくね。そしてツアーに遊びに来てね!」

Kvarda Tour 2018 trailer

EVENT INFORMATION

Nao Kawamura Kvarda Tour 2018

インタビュー|SuchmosもWONKもソイルも絶賛!「日本のエリカ・バドゥ」と称される最注目シンガー、Nao Kawamuraとは? intervew_naokawamura_2-1200x1704

2018年11月29日(木)
大阪CONPASS
OPEN 18:00/START 19:00
ADV./DOOR ¥3,500 / TBA (税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
Guest Act: WOMAN

2018年12月14日(金)
東京WWW
OPEN 18:00/START 19:00
ADV./DOOR ¥3,500 / TBA (税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
Guest Act: Black Boboi
Guest DJ: 社長 from SOIL&”PIMP”SESSIONS

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オフィシャルサイト

小熊俊哉

小熊俊哉

ライター

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