創作活動に於いて、すべからく景色と体感は、かなり重要なファクターだ。その視界の広がりは=作品の幅や奥行きへと繋がり、作風に深い影響を及ぼす場合も多々ある。

車での移動は行きたいところへ行ける、その足のみならず、日常の中にいながらも非日常を体験させてくれたり、加速度や遠心力を感じたり、時にはひとりぼっちを憶えさせてくれる。中でも独りでのドライブは、例え渋滞の中でも、独りぼっちを感じさせてくれる貴重な場であったりする。

この場合の独りぼっちはプラスの意。独りになることで見えるもの、分かるもの、発見するもの、理解できることも多い。発見に関しては、筆舌に尽くし難いものがある。ただし、それをその場で分かち合える者がいないことを除けば……。

この7月25日(水)に、聴き手を新しい音楽的な価値観へと啓蒙、もしくは誘ってくれる、自身に例えバランスが悪くてもやりたいことを詰め込んだと言わしめたニューEP『TWISTER -EP-』をリリースするNICO Touches the Walls

NICO Touches the Walls 「TWISTER -EP-」Acoustic Teaser

そのボーカル&ギターでありソングライターである、光村龍哉が最近、車の運転免許を取得し、様々なところに一人でドライブに出かけている情報を得た。

視界、体感性、音楽の聴き方、景色の見方や映り方、匂いや香り等々、これからは車を通し、彼らの音楽性や歌の世界が変わるかもしれない。いや、今作からも既に多少の影響を及ぼしている感も……。では、彼が今、どんな音楽を車の中で好んで聴いているのか? も含めて光村本人に話を訊いてみた。

Interview:光村龍哉(NICO Touches the Walls)

【インタビュー】NICO Touches the Wallsの光村龍哉が明かすドライブと音楽の関係性 music181004nicotouchesthewalls_02-1200x800

——最近、運転免許証を取得されたとお聞きしました。ぶっちゃけ、今になって何故に? との疑問がありますが……。

ですよね(笑)。元々実家でも車は乗ってなかったから、あまり車文化が身近になかったんです。一時は、車なんていらねぇ……なんて思っていたぐらいで。でも、ここ数年は、その考えも変わり始めたんです。とは言え、なかなか重い腰が上がらなくて。

——それがどうして取得の決意を?

やはり周りのみんなは車で色々と好きなところに行ってるわけなんですよ。ツアーとかでもフリーな時間があれば、現地でレンタカー等を借りて、行きたい場所に行ったりして。ほら、公共の交通機関だと行けない、車でしか行けない場所も多々あるじゃないですか。あと、圧倒的に車の方が時間も短縮できたり。それで段々と羨ましくなって。それで、去年のツアーが終わった辺りで一念発起で教習所に通い始めたんです。

——免許はすんなりと?

ところがそうでもなくて。間にレコーディングや楽曲の製作期間、歌詞等を作り始めちゃったんです。もうその期間に入っちゃうと、どうしてもそちらに集中しなくちゃならない性分なもので。結果、4ヵ月間ぐらい通えない期間があったんです。それで、教習所から間もなく期限が切れちゃいますよとの連絡を受けて、あわてて再び通い出し、ようやく取れたと。

——実際、免許を取られていかがでした?

もう、時間があれば色々な場所に行ってます。実際、6月からツアーが始まったんですが、その際にも行った先々でレンタカーを借りて、各地でかなり積極的にドライブをしてますね。

——やはり運転してもらい連れて行ってもらうのと、実際に自分で運転して行くのとでは、同じ希望地に行くのも、気分や意味合いも違うのでは?

違いましたね。運転していると想像以上に景色って見られないものなんだなって(笑)。実際は、こんなにも自分の世界に入っちゃうもんなんだ……と気づきました。

——じゃないと事故を起こしちゃいますからね(笑)。何かおすすめの景色とかありましたか?

楽しかったのは、これはある意味憧れだったんですが、四国の高松で市外に車で出て、うどん屋さんを巡ったことで。あれはそれこそ車がないとできませんからね。ある種の夢でもあったんです。店から次の店まで、どこも40分ぐらいはかかるんで、その間、けっこうアルバムも聴けました。

——どうですか? スピード感以外で、今後の自身の楽曲にそれらが反映されたりとかは? 個人的には、今後の歌詞の景色観や情景感につながっていきそうな気もしています。

それは今後、あるかもしれません。今も運転している時にも、これまで感じなかったことを改めて感じたりしてますから。

——それは例えば?

レインボーブリッジ辺りを走ったりしていると、ああ、俺、やっぱり東京に住んでいるんだな……とか思ったり。普段、歩いていたり、公共の乗り物を利用していたら出くわさない景色に出会えますからね、車だと。僕の中ではバーズ・アイビュー(鳥瞰)じゃないですが、ちょっと鳥になった気分があったり。

——特に夜の首都高は近未来感がありますもんね。

そう、そうなんです。凄くキラキラとしていて。比較的夜のドライブも好きなんですよ。豊洲辺りとか、あのちょっとした非日常的な未来感。大好きですね。

——言われてみると、今回の作品(『TWISTER -EP-』)はそういった要素もありますよね? 夜のアーバンな感じというか、都会独特の体にまとわりつくちょっと粘着のある空気感とでもいうか。

あるかもしれません。だけど僕の中では今回のシチュエーションは、どちらかというと車の中というよりかは、自分の部屋の中だったりするんです。そこで自分の感情を描いているというか。共通点から言うと、車も凄く一人の空間じゃないですか。その一人で悶々と想いをめぐらす時間、そこは共通点としてある気はします。あとは、都会の夜のアーバン感。それは僕、基本、昼は歌詞が描けないタイプなので、夜、しかもどちらかというと朝日を拝むことは近いかなあと。でも、確実に違うのは、圧倒的にポジティブな気持ちになれるところなんです

——それは?

自分の部屋の方が、もっとネガティブなものとポジティブなものが行き来している気がして。そんな中、車の中で、特に音楽を聴くとポジティブな反射神経が働くんですよね。家で聴く場合、自分でチョイスするので、自発的な分、どうしても仕事耳になっちゃう。対して、車の中だと、僕、ラジオを聴くのが好きなんですが、突如予想もしなかった曲が飛び込んできたりするじゃないですか。新しい出会いがあるというか。なので、けっこう車の中で音楽を聴くと、普段家では聴き逃していたり、感じなかった、その曲の良い部分を感じられたりする時があるんです。濾過されてカッコイイものしか耳に入ってこなくなるというか。

——その辺りをもう少し詳しく。

細かい音よりも、ここが売りですよ!! みたいなものしか入ってこないというか。なので、凄く洗練された状態で耳に入ってくるんですよね、音そのものが。それで、つなげるわけじゃないですが、今回のこの新譜(『TWISTER -EP-』)も音数的には物凄く少ないんです。というのも、これでもう伝わるなって状態で、あえて音を重ねるのやめたところがあって。逆に強いものを更に強くしていく。その辺りは、出来たものを車で聴いて、間引くものを間引いて、残った結果というのはあります。

——それも手伝ってでしょうが、むっちゃ今作は体感的ですよね?

車もそうじゃないですか。結局は運転に集中するから、入ってくるものしか耳に入ってこないというか。本当にセクシーだなと思えるものじゃないとセクシーに響かない。その代名詞的なものだけ浮かび上がってくるんですよね、車の中だと。それがドライブしながらと、家で聴いたりするのとの決定的な違いかなって。

——では、逆に今後はNICOの作品も車で聴くことを意識したり?

もう次作からは絶対にそうやって作ろうと思ってます。やっと、そのような権利や環境を得れたこともあるので(笑)。今後はより洗練されていくんじゃないかな。いわゆる余計なサービスをしなくなるというか。

——余計なサービスとは?

もうちょっとこうしてあげた方が聴きやすいのでは? とか、もう少しこうやった方が聴き手もニヤッとしてくれるんじゃないか? とか。それらを考えるのが好きなタイプでしたが、結局は徒労に終わることも多かったですから(笑)。そういった意味では一つそれを変える状況にはなってます。

——ちなみに車ではアルバムを丸々1枚流しっぱなしにするタイプですか?

圧倒的にそっちです。ジャンルは問わず、ほんと新しいものを色々と聴いてますね。そこから刺激を受けたり。一般的なリスナーの3歩先を行きたいとは常々思ってます。
 
——そんな感じだと、比較的シングルを聴いた方が効率が良さそうな印象ですが……。

ところが僕の場合、そうでもなくて。アルバムの中でのいい曲が気になるタイプなんです。けっこう入ってるんですよね、実はアルバムの方に。聴いて、やられた!! って感じることも多い。シングルで分かりやすいことをやりつつ、やはりアルバムではそうじゃないことをやる。いわゆる実験的なところ。その辺りに関しても、やはり3歩先を歩きたいですからね、僕らも。

光村龍哉が最近車の中でよく聴く音楽とは?

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