誰にでも等しく訪れる、限りなくパーソナルな時間として、慌ただしく動いた日の夜は安息を用意してくれる。そんな一日の終わりに寄り添う、100年以上の伝統を誇るNY発のファッションブランド・Schott(ショット)とQeticによるスペシャルコンテンツ『Nightcap』。閉店後のSchott Grand Store TOKYOで人知れず行われるミッドナイト・セッション、その一部始終と特別なインタビューをお届けする。ここだけは心の装いを外して、刻々と色濃くなる夜の温度を感じて浸ってほしい。
今回登場するのは、「オルタナティブフォークバンド」を掲げる5人組・SIS。TxBONE(Vo./A.Gt.)と沢庵(Vo./A.Gt.)というフロントマンふたりのプロジェクトにTAKAYA(Drs.)が合流し、今年のはじめにはUJI(E.Gt.)と匠(Perc./Sampler/Cho.)が加入。シングルを連続でリリースし、その活動を活発化させている。また、昨年7月に大阪・心斎橋サンホールで開催されたSchottの110周年イベント<Schott 110th ANNIVERSARY LIVE〜NISHI〜>にも出演するなど、ブランドとの縁も深い。
『Nightcap』で演奏したのは“ケレモ”と“腐る”の2曲。バンド結成時から支えるキラーチューンと新体制後初のリリースとなったナンバーという、SISの新旧を象徴する楽曲を披露してくれた。重厚なメッセージとレザーに囲まれた一夜、冷たくなる温度に染み入りながらぜひ堪能してほしい。
INTERVIEW
SIS
SISの皆さんにとっては今更かもしれませんが、Schottの印象を改めて教えてください。
TxBONE:Schottは革ジャンの最たるブランドの一つというか、昔から憧れがあって。最初に買ったのは18歳、近所の古着屋で売ってた革ジャンだったかな。肩にスタッズを打って、今も大事にしています。そんな大好きなアイテムに囲まれて演奏する機会をいただけて光栄です。
UJI:僕もずっと大好きで、普段からバンバン着てます。
沢庵:憧れてたけど、辿り着けない時間が長くて。でもメルトンウールのアイテムとかピーコートを背伸びして買ったりしてたんです。どれも最高でしたね。着てると強くなった気になれるというか、マッドマックスみたいな気持ちになれます(笑)。
TAKAYA:僕はこれまで着たことはなかったんですけど、新しい季節に合うというか。やっぱり、すごくかっこいいですよね。
匠:僕もレザージャケットは持ってないんですけど、機会があればライブとかでも着てみたいですね。それと、すごく暖かいです。
今回演奏を収録した「Schott Grand Store TOKYO」の印象はいかがでしたか?
TxBONE:めちゃくちゃ楽しかったです。こんな革ジャンに囲まれてバンド演奏できるなんて幸せです(笑)。とにかくこの空間がカッコいい。
バンドの中でも、特にTxBONEさんはブランドとも長い付き合いがあるとお聞きしました。
TxBONE:長いですね。あるブランドで働いていたときに、明治通り沿いにあるSchottの店舗が近くて。休憩時間になるたびに、そこで働いてた友達のとこに行ってアイテムに袖を通してみたり。彼は辞めちゃったんですけど、その他にも色々な友達ができて、今でも縁があります。
昨年は大阪で開催されたブランドの110周年イベントにも出演されてましたよね?
TxBONE:それも一緒にイベントを開催してた大阪のセレクトショップ「AMERICAN WANNABE」との繋がりのおかげで。関西の大親友が働いていて、そこからSchottさんとの関わりもより深まりましたね。東京とか福岡とか、色んなとこから友達が遊びに来てくれて。同窓会みたいな(笑)。
沢庵:すごく温かいイベントでしたね。
Schott 110th ANNIVERSARY LIVE〜NISHI〜EVENT REPORT
レザーアイテムの中でも、Schottならではの魅力は何ですか?
UJI:やっぱりワンスターじゃないですかね。
TxBONE:往年のロックスターが着ててね。ラモーンズとかセックス・ピストルズとか、あとBLANKEY JET CITYが裸で着てたりとか。
UJI:ロカビリー/サイコビリーのミュージシャンも着てたりしますよね。エルヴィスも羽織ってたイメージです。
沢庵:あと、Schottってランドセル作ってますよね?
TxBONE:マジ!? 欲しい!
沢庵:めちゃくちゃカッコイイんですよ。しかも黒1色の展開で、モデルとしては男の子が使われているけど、女の子も全然使えるというか。女性もレザージャケットとか全然着るじゃないですか、それに近い雰囲気というか。すごいアツい展開だなって思いました、甥っ子に買ってあげたい(笑)。
普段からチェックしてるんですね。Schottのアイテムはどんなシーンで着ることが多いですか?
TxBONE:俺はライブの時に着てます。あと、今は壊れちゃったけど、バイク乗ってる時にも着てましたね。
UJI:僕は今もバイクに乗ってるので、その時に着てます。それ以外にも普段着で使ってて、どんどん自分らしくなっていくのを楽しんだりしてます。やっぱり着込むと革の味が出るというか。あと、スウェードのアイテムも持ってて。それも育てるとカッコいいんですよ。
TxBONE:元々は生き物だからね。汚れると、また一段とカッコいいんだよね。
UJI:そうそう。汚れた方がむしろ良いっていうか。あえて汚れたい(笑)。
まだアイテムをお持ちでないTAKAYAさんと匠さんはどのようなシーンで着てみたいですか?
TAKAYA:今日みたいにスニーカーと合わせても馴染みますし、ちょっと柔らかくしたらライブでも着てみたいですね。
沢庵:セクシーだね、アイリッシュ・パブって感じ(笑)。
匠:僕もライブで着てみたいっていうか、とにかく暖かくてビックリしてます(笑)。
TxBONE:いいね、似合ってる。
ここからは最近のバンドの活動についても伺いたいです。SISは今年UJIさんと匠さんが正式にメンバーとして加入し、新体制としてライブとリリースを重ねています。まず、どのような経緯で加入したのでしょうか?
TxBONE:SISは俺と沢庵の2人から始まって、その後にTAKAYAが加入してくれたんです。その頃は1ボーカル1MCにカホン、みたいなアコースティックセットがベースで。それからTAKAYAが「ドラムを叩きたい」ってことでバンドセットになって、それがしっくりくるようになったんです。その流れで曲をレコーディングして世に出すって過程で、今日の演奏のサポートにも入ってくれてる大夢にも手伝ってもらったら、「小さな枠の中に囚われる必要はないんだな」って気づいて。それで近い関係の2人に正式に入ってもらったんです。
2人ともずっと近い関係なんです。匠は地元の後輩で、沢庵と3人でバンドをやっていたこともあったし、UJIとは同い年の友達で共通の知り合いも多くて。その縁で今年から正式に新体制として活動しています。
新体制になってからは立て続けにシングルをリリースしています。これまでの制作と新たなメンバーが加わってからの制作で違いを感じることはありますか?
沢庵:僕がアイデアをまとめて、メンバーに投げるのが基本的な流れです。自分の頭の中で鳴ってる音を出す時に、TxBONEに投げて歌詞とメロディを組んだり、TAKAYAがドラムで合わせてくれるのが楽曲の骨組みになっていて。
TxBONE:そこに新しい2人も絡んでくれて。UJIも曲の卵を持ってきてくれたり、匠は「Hagoromo Beats」という名義でビートメイカーとしても活動しているので、MPCを使って参加してくれたり。こんなフォークバンドって、いなくないですか?
本当に珍しいと思います。
TxBONE:色々な才能が集まったオルタナティブなフォークバンドになれば、フロンティアとして世の中に提示できると思うんで。次に出すシングルも、フォークでありながらダンスチューンっていう新しさがあるんで、ぜひ聴いてほしいですね。
今回演奏していただいた曲についても教えてください。まずは“ケレモ”、SISが3人体制の時から演奏している代表曲ですよね。
TxBONE:フックの「ケレモ」は「Kill ‘Em All」、つまり“皆殺し”って意味で。それで沢庵のヤバいラップに合わせてもらったら、リリックがめちゃくちゃ怒ってて。
沢庵:すごい怒ってますよね。
そこでフィーリングが合致したんですね。
沢庵:「Kill ‘Em All」ってメタリカのアルバムのタイトルなんですよ。凄い怒ってるし、その怒ってることにも限界がある感じがあって。その時のTxBONEは酔っ払った時に「ケレモ!」って叫んだりしてましたね(笑)。
TxBONE:もっと日本語らしく、呪文みたいな響きにしたくて「Kill ‘Em All」じゃなくて「ケレモ」にしたんです。発音も何となく可愛らしいし。
その後にリミックスでANARCHYさんの参加したバージョンもリリースされました。どのような経緯で制作されたんですか?
TxBONE:はじめてANARCHYさんとお会いしてから、結構な時間が経ってたんですよ。すぐに意気投合して、2人でたくさん遊んだりしながら「いつか曲作りましょうね」って話してて。そしたら、ある時急に「TxBONE、そろそろやろか」って言われて。それで“ケレモ”のリミックスをお願いしたんです。ヴァースを録ってる時にも立ち会わせていただいたんですけど、鳥肌全開でしたね。
今回もう一曲披露していただいた“腐る”は、新体制になってからのリリース第一弾ですよね。
沢庵:楽曲自体は新メンバーの加入前、コロナに突入した時期に書いたんです。僕らのホームで、TAKAYAが店長を務めていた、浅草のゴールデンタイガーっていうライブハウスがあったんです。パンデミックの時期に、その他多くのベニューや飲食店と同様にゴールデンタイガーも営業停止を迫られて、結局無くなってしまったんです。それでバンドの活動も止まってしまった時に……やっぱりイライラしてたんでしょうね、何とか曲にして昇華しないとやってられない状況になって作りました。
初の5人でのレコーディングはいかがでしたか?
UJI:実は“ケレモ”のMVに友情出演していて、ずっとバンドには関わっていたんです。それでついに一緒にレコーディングすることになったので、不思議な感覚で面白かったですね。
匠:僕もお客さんとして遊びに行ってた時期が結構長かったので、実際に曲を作って参加してるって実感が沸いた時は嬉しかったですね。
TxBONE:新しい風がバンドに吹いてきてくれてるというか、今日もサポートで参加してくれている大夢とRyochiくんの他にもベーシストのyoudogがいたり、最近は照明を担当してくれる仲間が新たに加わってくれたりして、どんどん輪が広まっています。なので今日みたいなセットをはじめ、色んなスタイルにどんどんトライしていきたいですね。
既にリリースの予定などは決まっているんですか?
TxBONE:いまは5作連続リリースの真っ只中で、その後には完全自主制作のフルアルバムが出る予定です。そこからリミックスをリリースする予定で、制作も進めています。3年間貯めてたので、ようやくみなさんに届けられるって感じですね。
TAKAYA:曲の卵もどんどん出来てるし、できれば来年の終わりくらいにはEPをまた出したいですね。
沢庵:本当にバラバラな人間が集まってるんです。だからこそ普遍的な、誰にでも届きそうな曲を作ろうっていうマインドセットになるというか。
TxBONE:俺らも好きだし、みんなも歌えるような曲を育てていければね。
UJI:革ジャンと一緒ですね!(笑)
ありがとうございます(笑)。では最後に、本日演奏いただいた「Schott Grand Store TOKYO」に訪れるSchottファン、SISファンの方々へ一言お願いします!
TxBONE:本当にカッコいいレザーアイテムがたくさんあるので、期待を膨らませて、札束握り締めて(笑)来てください!
本企画のタイトル『Nightcap』は、英語圏で「夜寝る前に飲む酒」という意味を持つ。刻々とその闇を深めるナイトタイムの相棒として、SISが掻き鳴らす重厚なメッセージをゆっくりと味わってほしい。
【Schott Live】Nightcap Vol.3 SIS
Photo:Ryoma Kawakami
Text:Ikkei Kazama
Edit:Ranji Tanaka
ARTIST INFORMATION
SIS
フォークミュージックを軸にポストロックを横断し、ジャンルレスなサウンドを追求するネオフォークバンド。頭から足先まで全身タトゥーのTxBONE(Vo./A.Gt.)と、大学教員としての一面を持つ沢庵(Vo./A.Gt.)という対照的な2人のフロントマンとTAKAYA(Dr.)により結成され、2024年よりUJI(E.Gt.)と匠(Perc./Sampler/Cho.)が加わり5人体制となった。バンド名の由来となっている「死」と「生」をはじめ、人が生きていく中で向き合う表裏一体の価値観を、憤怒と慈愛入り混じる歌詞とサウンドで表現している。
Schott(ショット)
ライダースジャケットの代名詞ともいえるSchottの歴史は、1913年、ニューヨークでアーヴィン・ショットジャックショットの兄弟によって始まった。当初はレインコートを作る工場だったが、1928年に世界で初めてフロントジッパーを採用したライダースジャケット「Perfecto」シリーズを発売。ボタン仕様しかなかった当時、画期的なジャケットとして話題となり、その後のライダース史に大きな影響を与えた。そして、Schottの名を世界に知らしめたのが50年代に発表された星型のスタッズをエポレットに配した伝説のモデル”ワンスター“だ。その後もラモーンズやセックスピストルズをはじめ、多くのロックミュージシャンに支持され、時代を超えた永遠の番として今なお多くの人々を魅了する。最近では定番モデルだけでなく、カジュアルラインも充実させるなど、常に時代に合わせて進化を遂げる革新性も忘れない。ライダースの歴史は永遠にSchottとともにある。