誰にでも等しく訪れる、限りなくパーソナルな時間として、慌ただしく動いた日の夜は安息を用意してくれる。そんな一日の終わりに寄り添う、100年以上の伝統を誇るNY発のファッションブランド・Schott(ショット)とQeticによるスペシャルコンテンツ『Nightcap』。閉店後のSchott Grand Store TOKYOで人知れず行われるミッドナイト・セッション、その一部始終と特別なインタビューをお届けする。ここだけは心の装いを外して、刻々と色濃くなる夜の温度を感じて浸ってほしい。
今回登場するのは、今年で結成10周年を迎えた4人組ロックバンドのTENDOUJI。90’sのガレージやオルタナから影響を受けながら、人懐っこいポップなメロディと縦横無尽なステージングでライブハウスに通う老若男女の心を掴み続けている。<FUJI ROCK FESTIVAL>をはじめとした多数の音楽フェスに出演するほか、周囲のバンドを集めたフェス<OTENTO>を昨年より主宰するなど、その存在感は増す一方だ。
『Nightcap』で演奏したのは“Killing Heads”と“TOKYO ASH”の2曲。夏シーズンに1着は持っておきたい、爽やかな柄シャツを纏ったTENDOUJIが貴重なアコースティック・セットを披露してくれた。4人の風通しの良さに癒されながら、ここだけは涼やかな夏の夜を楽しんでほしい。
INTERVIEW
TENDOUJI
まずは、Schottのブランドの印象を教えてください。
モリタナオヒコ(以下、モリタ):自分が会社員として働いていた時、明治通り沿いにあったSchottの店舗の前を毎日通ってたんです。「大人の革ジャンのお店」って印象で、当時の僕には入れない店だと思っていました。それが、バンドを始めてからこうやって演奏させてもらえることになるなんて、有難いし、不思議ですよね。
ヨシダタカマサ(以下、ヨシダ):学生の頃には手が届かない、憧れのレザーブランドって感じだったよね。
レザーのアイテムは持っていますか?
ヨシダ:そういえば、前に“Fireball”っていう曲のMVで革ジャンを衣装にして撮影したんです。その時はカッコよくなった気がしたというか、あれ良かったよね?
モリタ:うん、僕らのMVの中でもあのスタイリングが一番好きだったな。
アサノケンジ(以下、アサノ):ただ、カッコつけきれてはない(笑)。元々そういう狙いだったんだけどね。
TENDOUJI – FIREBALL (MV)
ヨシダ:それと、僕自身は昔から革ジャンに憧れてたんですよ。学生の時にドアーズのジム・モリソンにハマっていた時があって、一時期は革ジャンと革パンで登校してましたね。しかも坊主で、全然ジムじゃないっていう(笑)。
アサノ:だから当時、友達0人だったんでしょ(笑)。
ヨシダ:そう(笑)。まぁあとはTHE BLUE HEARTSとか、自分の中のレザーの原体験はヒロト&マーシーかもしれないですね。
今回演奏を収録した「Schott Grand Store TOKYO」の印象はいかがでしたか?
モリタ:すごくやりやすかったです。普段はインストアとかでアコースティック・ライブをするんですけど、ここは静かですしね。貴重な機会でした。
オオイナオユキ(以下、オオイ):空間がオシャレで、自分までオシャレになれた気がします(笑)。普段はサッカーシャツとか着てるんで、新鮮ですね。
アサノ:なんか『僕らの音楽』みたいな……。こんなにラグジュアリー感のあるところで演奏するのは珍しいので楽しめました。
ヨシダ:レザーにも囲まれてるし、革の匂いが凄くするのも味があっていいですよね。今日の雰囲気も夏の終わりというか、宴のあとのチルタイムみたいな感じで(笑)。お店の閉店した後の収録で、時間帯も深いですしね。
アサノ:確かに、『僕らの音楽』と同じ時間帯じゃない?
本日は柄シャツを着用しての演奏となりました。改めて、アイテムの印象はいかがですか?
アサノ:普段はTシャツばっかり着てるので新鮮でしたね。こういう柄も好きだし、「一枚くらいこういうのが欲しいな」っていつも思ってるものが具現化された感じです。
モリタ:Schottは革ジャンのイメージが強かったから、柄シャツとかもあるんだなって改めて思いましたね。
ヨシダ:僕は刺繍されているシャツを着させてもらったんですけども、ちょっと小慣れた感じの着心地で。こういうのはバイクに乗る時に着たいですね、風通しが良くて涼しそうだし。革ジャンとかはイカついバイクに跨って革パンで合わせるイメージなんですけど、このシャツは僕が普段から乗っている小さいバイクで、ちょっと出かける時に合いそうです。
オオイ:いつもは古着ばっかり着ているので、こういう綺麗なアイテムをたまに着ると良いですね。なんかデートとかにも使えそう。夏の夜のデートで着たい……(笑)。
もし家のクローゼットに今着ているシャツがあったとしたら、どういうシーンで使いたいですか?
アサノ:やっぱ銀座に行く時じゃないですか(笑)。もう俺らもいい歳なんでね。それこそライブをやりに行く渋谷とか下北沢とかではTシャツを着てても馴染みますけど、たまに銀座とかに行くってなると、着ていく服がなくて。そこでこの一枚があったら助かりますね。
確かに、都会的なシーンにもいいですよね。
モリタ:あとは海でも着たいですね。着てて改めて思ったんですけど、やっぱり涼しいんですよ。僕はあんまり海には行かないですけど、海岸沿いでこういうの着てたらカッコいいですよね。
他のバンドと比べても、TENDOUJIはカラフルな服装でステージに上がる印象です。そういう見られ方について意識したことはありますか?
アサノ:僕らメンバーは若い時から一緒だし、大体同じような美的感覚で育って来たんですよ。そういう意味ではお互いの感性もわかってるし、他のバンドとの差別化が出来ているのかもしれないです。
今年TENDOUJIは結成10周年を迎えました。27歳からバンドをはじめて10年、振り返ってみるといかがですか?
アサノ:もう戻れない10年を過ごしてしまったというか。例えば17歳から10年やったとしても27歳だから別の仕事ができたかもしれないけど……もう良くも悪くも戻れないよね(笑)。
ヨシダ:もう無理です(笑)。進み続けるしかない。
モリタ:でも長くは感じなかったですね。意外とあっという間で、やっと地に足がついてきたというか。とりあえずは全部やり切った実感があって、ここからは未知の領域に進むような気がしています。
オオイさんはドラム初心者の状態からのスタートだったとお聞きしました。この10年はプレイヤーとしての上達の歴史でもありますよね。
オオイ:ようやく、メンバーがどう演奏しているのかをドラムを叩きながら見れるようになったんです。それに自分でもできることが増えてきて、嬉しいというか。ドラムのパフォーマンスは今が一番楽しいかもしれないです。
アサノ:それは伝わりますね。普通、ずっと一緒にいたら成長とかもわかんなくなると思うんですよ。なのに上達が伝わるってことは、すごく伸びてると思うんです。
モリタ:おかげでアレンジの幅も広くなったし、曲を完成させるまでのスピードも早くなりましたね。あと、この10年でメンバー全員が作曲をするようになりました。奇跡じゃないですか、バンド初心者からスタートしてみんなが作曲できるようになるのって(笑)。前は「10曲作ろう」ってなったら10曲しか作らないっていうバンドだったんですけど、この前出したアルバムとかも結果的に曲数が多くなったりして。そういう変化は感じますね。
昨年からは周囲のバンドを集めて音楽フェス<OTENTO>を主催していますよね。
アサノ:日本の音楽シーンって結構分断されてる印象なんですけど、僕らはどこでも対バンしてきたんですよ。<OTENTO>では好きなバンドを一つにまとめたいというか、お客さんが知らない音楽と出会って「バンド最高じゃん」って思えるような一日を作れたらいいなと思っています。
モリタ:フェスの規模も大きくなってほしいし、それこそ4人の地元の千葉県松戸市でも開催したいです。ただ現時点では松戸にカルチャーはないんで……僕らが作れたらいいなって思います。
今回演奏していただいたうちの一曲“TOKYO ASH”の歌詞も、東京への愛憎が入り混じった感情というか、どこか街に慣れないモヤモヤを感じます。
モリタ:松戸って東京にも近いから、上京する時のワクワク感があるわけでもなく、なんとなく憧れだけが残って変なコンプレックスを抱いちゃうんですよ。
オオイ:僕は茨城寄りの高校に通っていたので、むしろそっちでは東京っぽい人として憧れてもらえる側だったんです。それで東京で働き始めたら「大したことねぇな」っていうか(笑)。意外と田舎者の集まりじゃん、っていうのに気づきましたよね。
モリタ:背伸びしたくても出来ないんで……。つくづく「TENDOUJIは松戸だな」って思います(笑)。
ヨシダ:田舎者でも都会っ子でもない感じが出ているとは思います。それが良さにも繋がってるんですかね。
一方、1曲目に演奏していただいた“Killing Heads”はライブでの定番曲ですよね。
モリタ:そうですね、ライブでは必ずやります。認知度も高いですし。
ここまでの10年で“Killing Heads”はTENDOUJIを色んなところに連れていった曲という印象です。これからの10年のビジョンはありますか?
モリタ:10年後は47歳ですからね、下手したら孫とかいますよ。
アサノ:流石に10年後は想像できないですね。でも10年前も今の37歳の頃なんてわからなかったはずなんです。
モリタ:そもそも目標なんてなかったと思うんです。特に目標を定めずにボヤッと理想を描いとけば自然とそこに向かえるんじゃないかな。
ありがとうございます。改めまして、最後に本日演奏いただいた「Schott Grand Store TOKYO」に訪れるSchottファン、TENDOUJIファンの方々へ一言お願いします!
アサノ:みなさん、革ジャンを買っていただき、それを僕らにプレゼントしてください!
一同:(笑)
モリタ:いや、本当に革ジャンを買いたくなってきました。めっちゃ欲しくなりました。
ヨシダ:初めてここに来て思ったのですが、アイテムの種類があまりにも多くて驚きました。革ジャンはもちろん、何でも揃いますよ。マジでみんな買いにきてほしいな。
本企画のタイトル『Nightcap』は、英語圏で「夜寝る前に飲む酒」という意味を持つ。就寝を緩やかに誘うリラックスタイムの相棒として、TENDOUJIの4人が爽やかに紡ぐサウンドに浸ってほしい。
【Schott Live】Nightcap Vol.2 TENDOUJI
Photo:Ryoma Kawakami
Text:Ikkei Kazama
Edit:Ranji Tanaka
ARTIST INFORMATION
TENDOUJI
2024年にバンド結成10周年を迎え、『TENDOUJI 10』を掲げて邁進中。千葉県・松戸の中学で同級生だったモリタナオヒコ(Vo,Gt)、アサノケンジ(Vo,Gt)、ヨシダタカマサ(Ba)、オオイナオユキ(Dr)が2014年に27歳で初めてのバンドを結成。TENDOUJI(天童児)、名は体を表すが如く、天衣無縫で純粋な音楽を奏で続けている。90’sガレージ、パンク、オルタナに影響を受けつつ、常に最新のTENDOUJIサウンドを更新。メンバー4名全員作詞作曲をこなすこともあり、秀逸なメロディーセンスにHAPPY爆弾を詰め込んだ多様な楽曲の宝庫でもある。バンドの真骨頂はもちろんそのライブ、2018年 アメリカ最大級のフェス「SXSW」に出演、2019年 「TEENAGE FANCLUB」来日公演のサポートアクトを務める。その後FUJIROCK FESTIVAL等各地の大型フェスに多数出演。2023年には自主企画『OTENTO WEST&EAST』をスタートし、2024年第2回目にして大阪、東京公演共SOLD OUT。“EASY PUNK”をステートメントに掲げ カンタンで楽しい音楽を体現している。
お問い合わせ: thetendouji@gmail.com
Schott(ショット)
ライダースジャケットの代名詞ともいえるSchottの歴史は、1913年、ニューヨークでアーヴィン・ショットジャックショットの兄弟によって始まった。当初はレインコートを作る工場だったが、1928年に世界で初めてフロントジッパーを採用したライダースジャケット「Perfecto」シリーズを発売。ボタン仕様しかなかった当時、画期的なジャケットとして話題となり、その後のライダース史に大きな影響を与えた。そして、Schottの名を世界に知らしめたのが50年代に発表された星型のスタッズをエポレットに配した伝説のモデル”ワンスター“だ。その後もラモーンズやセックスピストルズをはじめ、多くのロックミュージシャンに支持され、時代を超えた永遠の番として今なお多くの人々を魅了する。最近では定番モデルだけでなく、カジュアルラインも充実させるなど、常に時代に合わせて進化を遂げる革新性も忘れない。ライダースの歴史は永遠にSchottとともにある。