The Strokes、Arctic Monkeys,ゼロ年代に一大ムーブメントを起こしたガレージロックの空気を存分に吸い込み、気だるそうな雰囲気で音楽を奏でるNo Buses。5月にシングル「With or Without it」をリリースし、早耳なリスナー達の間で話題だ。しかし本人達はどこ吹く風。周囲の反響に踊らされることなく、マイペースを保ち活動を続けている。現在アルバム制作をしながら、ライブにも定期的に楽曲を披露し続ける彼らに、変化の兆しについて話を聞いた。シャイで寡黙な彼らが虎視眈々と目指しているのは、あまりにも本質的なことだった。

Interview:No Buses

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ーー皆さんは現役大学生なんですよね。改めてバンド結成の経緯についてお伺いさせてください。

近藤大彗(Vo/Gt) 僕が大学に入る前からバンドを組みたいと思っていて。ずっと前に作ったデモを後藤と2人でご飯食べに行った時に聞かせて、そこから『いいね、やろう』という話になって。2年半の間にメンバーのベースとドラムスが変わり、このメンバーでやっているという感じなんですけど。

ーーちなみに最初は後藤さんにどの曲のデモを聞かせたのでしょうか?

近藤 現在制作中のアルバムに入る予定の「RAT」という曲なんですけど。高校3年生の時にデモを作って、ずっと暖めといたんです。ちゃんとバンドを組んだときに、絶対やりたいって。

ーー最初デモを聴いてどんな気持ちになりました?

後藤晋也(Gt) いやあ、『こんなことしてたのかよ!』となりました(笑)。

ーー仲良くなってからすぐには伝えなかったんですよね?

近藤 はい。誰にも言いたくなかったんですよ(笑)。人によっては茶化されそうだと思って。本気でやりたそうな奴に目星をつけて、話をした感じです。彼なら音楽の趣味も合いそうだし、オリジナルバンドをやることに、乗ってくれそうだなと思って。この楽曲がアルバムに収録されれば、作ってから4年越しになるので、不思議な気持ちですね。

ーー数年前にリリースした「Tic」が予想以上に反響があって。バンドとして焦ったり、戸惑いを感じたことはありますか?

杉山沙織(Ba) 私が入った時より、益々注目されるようになっていって。1年程経って、急にMVの再生回数が伸びた時に、それに追いつこうと焦っていた時期もありました。当時は、『このままではいけないんだ』みたいな気持ちだったんですけど。でもだんだん落ち着いてきて、当に自分の中で、いまやるべきことが明確に理解できるようになっていったんだと思います。

ーーどういう背景から変わっていったんですか?

近藤 物理的に自分たちの演奏のスキルが以前よりもよくなっていったこと。自分たちが納得のいく演奏が増えてったので。自分たちの音楽に対する気持ちの強度が高まったような感じですね。

杉山 確かに。よかったな、って思えるライブがすごい増えてきて。

ーーなるほど。ただ、自分達の人柄としては自分たちは変わってないと。

近藤 そうですね。あまり変わらずにできてると。…、でも最近すごいライブのテンション感は、歌詞とか曲が持ってるテンションにそぐわず、結構ハイな感じになったり、結構動き回ったりもしてたりするんですけど。

ーーハイになってる近藤くんを見て、他のメンバーはどう観ているですか?

杉山  そんなに自分たちのテンションと外れたところに、一人でいってしまった感はないです。それが普通になってきてるというか…。なんか今日元気だな、とか(笑)。腰痛そうだなとか(笑)。そんなにやってんな、みたいな感じではない。

後藤 なんか上がる時って、皆がどうかわかんないけど、俺も結構動いたりしてる。

近藤 そう、動いたりしてるよね?

杉山 私も結構曲によって気持ち入るときもあって。そういうの、あんまうまく出せないんで……。(出せたときは)すごい楽しいです。

ーー考えてみるとお調子者がいないバンドですよね?

近藤 そうですね……。できるだけ調子に乗らないように。多分、あんまり調子に乗る人を好きじゃないからんでしょうね(笑)。

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ーー現在シングルリリースされた「With or Without It」という曲はユニゾンのギターリフが印象的な曲ですよね。

近藤 作ったのは確か、1年以上前だよね?

一同 (頷く)

ーーギターソロのときに前に出て、後ろでリズムを取ってメンバーが踊ってるMVが印象的ですが。

後藤 すごい恥ずかしかったです。

近藤 割と親しい人たちに撮ってもらえてるので。物作りに関しても、大学の映像やってる後輩に構内で撮ってもらって。自分たちが憧れてきた人たちに関わってもらうことも素敵だなって思ったりするんですけど、でも気心知れた人間と、その中で最大のいいものが世の中に放たれて、それがいいと思ってもらえることに、僕はすごいロマンを感じるというか、素晴らしいことだなって。

No Buses – With or Without It (Official Video)

ーーメロ以外にもリフなど全体の構成は近藤くんがつくるんですか? 最近つくってる楽曲に関しても。

近藤 基本的には、そうですね。ギターソロのメロやベースの展開も考えます。これからもデモ音源を作って、共有して…という形は変わらないんですけど。もっと各々の色の出た曲を後藤が作ってみたり。一人ずつ作って、というのがあってもいいのかなって。

ーー今出てる楽曲の中でも既に、自分たちがアレンジした楽曲ってありますか?

近藤 最近MVを出してる2曲は元々の感じというか。もう一個前の「Pretty Old Man」は、途中で元々のデモはもっとゆったりとした楽曲だったんですけど、もう少し動きのついたものに仕上がりました。

ーードラムの市川さんは、ガレージ・ロックではなく、どちらかと言えばパンクを通ってきたとお伺いしたんですけど、楽曲作りにはどのようなモチベーションで参加されているんでしょうか?

市川壱盛(Dr) 曲を聴いて、頭の中に残るフレーズをレコーディングの度に変えて。自分なりにハマるか、ハマらないかを試してみたり。

近藤 音楽自体にめちゃくちゃ好きなジャンルではない分、ふと出てくるアイデアに自己主張がなくて。結構その曲に寄り添ってて、おもしろんですよね。

ーーメンバーからアイデアが出てきた時に、近藤くんの中で受け入れやすくなってる部分もありそうですね。

近藤 そうですね。すごくバンドとして出したい色に寄ったフレーズを叩いてくれる。いい意味で本人の色が出過ぎてないフレーズが出てくるんで。それはすごくいいことだと思います。

ーー国内と同様かそれ以上に海外からの反響が大きいですが、一方でMVで出てくる場所など日本的な場所を使っていたり。その辺りは自覚的なのでしょうか?

近藤 僕は日本でやってようが、他の国でやっていようが、自分達の音楽を広げていけるバンドは、たくさんいると思うので。僕たちがやってる曲とかも完全にUKロックかというと、そうではないと思うんですよ。自分の中でも、日本人じゃないと出てこないフレーズも孕んでる気がしてて。そういう意味ではなんかまあ……。

ーー自然と日本の土着性が出ちゃう?

近藤 そうですね。それが自分たちにとってフィットしてるものなんで、無理してその色を消す必要もないので、そのまま、世に出して。反応があればよかったし、なければまあ自分たちがよければいいんじゃないかなと思うんですけど。

ーー自分達がいいと思えることが大前提ですもんね。

近藤 はい。自分の満足度が達成されてないのに、出して独り歩きしてっちゃったな、みたいなのは嫌で。それが僕らでいう『Tic』なんですけど…。外から見れば反響があることは、バンドの状態がよく見られるのかもしれないですけど、僕たちの中ではあまりいいものではなかったので。そうですね、そこに関しては、本当に自分たちがいいと思うものを満足するまで作ることが本質というか。だから世の中の反響を受けることに関しては、結構どうでもいいっちゃどうでも良いのかもしれません。

ーー今、メンバー間のグルーヴも含めていい状態なんですね。

近藤 今本当にまさしくやりたいことがやれてて、楽しい。楽しいことができてるってことが、嬉しいですね。……本当にそういう感じのキャラでもないんですけど、毎日ハッピーなんなんですよ、本当に(笑)。

ーー後藤君は?

後藤 ハッピーです!

一同 (笑)。

ーーNo Busesはこれから何処を目指していくのでしょうか?

近藤 堅苦しい『野望』と呼べるものはなくて……。自分たちのやることが自分たちにとって一番グッとくる、最高な状態をずっと続けていきたい。その曲を作る過程においてっていうか。毎回それが更新されたり、その時に自分たちが一番高まるようなものができたらいいな、と。それくらいなんです。

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Text by Hiroyoshi Tomite
Photo by Kodai Kobayashi