――色々な一芸を持った人たちが出演していますが、あの人々は?

オスカー あれはみんなクラブやチームに所属してああいう競技や芸をやっている、普通の一般の人たちだよ。監督がああいう人たちを集めてきたんだ。

――中でも気になったのが「ベーピング(電子タバコを吸うこと)」のチームだったんですが、あれはビデオのために作ったものではなく、実際にひとつのジャンルとして存在しているものなんですか?

オスカー あれね(笑)、どうもそうらしいよ。あれは難しいパートだったんだ、10分ごとに換気扇をして煙を出さないと何も見えなくなるからさ。ベーピングっていうのはすごくカリフォルニアらしいね。

――その撮影を行ったアメリカには今年の後半にツアーも予定されていますね。元々自宅でレコーディングをしていたあなたにとって、ツアーは比較的新しいものだと思うんですが、もう慣れてきていますか?

オスカー 僕はEPが出てすぐくらいの頃からツアーを始めたから、去年の4月以来かな、ちょうどツアーするようになってから1年が経つね。ツアーは大好きだよ、やり始めるまで自分がどう感じるか分からなかったけど、実際にやってみると毎日旅をするのも、違う場所で夜を過ごすのも、新しい人々に会うのも好きだし、飛行機に乗っている最中にラップトップで曲を作ることだってできるし、たくさん時間はあるし、すごく楽しいんだ。もちろんかなりしんどい部分もあるけど、まだ今は若いから大丈夫かな。まだ僕の音楽を聞いたことのない人たちの前でも演奏したりするのは、とても楽しいことだよ。

――ちなみに、これまでで最高だったライブと、最低だったライブは覚えていますか?

オスカー 最高のライブか……あー、何だろうな……今のところは、LAの「エコー」でやったショウかな。理由は何だろう、LAはとてもスピリチュアルな場所だと思うんだ。暖かくて、オープンで、理解があって、LAにいるときは気分が良かった。そしてそのショウもまさにそんな感じで、たくさんの人が来てくれて、しかも僕の誕生日の翌日だったからまだお祝いムードのままで、最高のショウだったよ。それと会場の下には別の会場があって、ショウのあとにはそこで<ダブ・クラブ>っていうパーティーですごく良いダブやダンスホールがオールナイトでかかっていて、そこに行ってめちゃくちゃ酔っ払った。そして最低のショウは(笑)……よし分かった、<ドット・トゥ・ドット・フェスティバル>(複数の都市で、町中の複数会場をステージに開催されるイギリスのフェスティバル)で、ノッティンガムの「レスキュー・ルームズ」で演奏したんだけど、2つある部屋のうち1つは良い部屋で、もう1つは酷い部屋だったんだ。部屋自体の形も酷いし、出演者も僕ら以外はDJばかりで、ステージにはバンドが入るだけの空間もないし、おまけにフレッド・ペリーのカメラがそれを撮影していた。ステージの上ではベースドラムのフィードバックが酷くて「ブオオオオン」って音しか聞こえないし、僕の声も低音だからそれも「ブオオオオオ」としか聞こえなくて、パニックになったよ。低音の泡の中に閉じ込められて、それ以外何も聞こえないみたいな状況で、とにかく最悪だったね。しかも観客も数人しかいなくて、後ろの方で男が1人で何か叫んでいて、もうとにかく酷かったよ。あまりにも酷すぎて、そのあとには「もう2度と音楽を演奏したくないかも……」とまで思ったくらいさ(笑)。

――そこで辞めないでいてくれて良かったです(笑)。では、あなたの夢のライブはなんですか?

オスカー 夢のライブか……! うーん、最高の質問だね! うーん、マディソン・スクエア・ガーデンとか……それか東京のどこか、1000人くらいのキャパシティの会場でライブをやって、その後にオールナイトでカラオケをして、さらにその翌日もずっと寝ないでレコードやクレイジーな服とかガジェットを探しに行くのが夢のライブかな。でかいカラオケルームを借りて、ライブに来た人たち全員も招待してのカラオケパーティーがやりたいね。これここで言ったことって、レーベルにも伝わるのかな(笑)。

Oscar – Daffodil Days

――それはなかなかすごいアフターパーティーになりそうですね……! 是非いつか実現させてください。ライブやツアー以外での夢は何ですか?

オスカー 僕の夢は、クールなポップスターになることかな。クールなポップスターっていうのがもう長いこと現れていないと思うんだ。ポップスターという言葉自体、ありきたりな、ゴシップスターと同義語になってしまってすらいる。ジャスティン・ビーバーは多少はクールに見せるようにはなったけど、やっぱりクールって呼ぶほどクールじゃないし、M.I.A.なんかは近いと思うけど、ジャーヴィス・コッカー、デーモン・アルバーンとかみたいに、良いポップソングを書いて、かつクールな……そのクールっていうのも周りがどう思うかじゃなくて、彼ら自体が周りに関係なくクールなスター、っていうのは最近ほとんど出てきていないと思う。自分のスタイルを分かっていて、時代と共にいい意味で変化していきながら、リアルなポップスターっていうのはさ。今のポップスターの多くは曲も衣装もキャラクターも周りにお膳立てされた、リアルでも何でもない操り人形みたいなのばっかりで、そういうのとは違うポップスターになりたいね。

――ポップといえば、最近は他のアーティストのプロデュースもしていると聞きましたが、それも続けていくつもりでいますか?

オスカー うん、他の人のための作曲と、ある意味ではプロデュースも少ししていると言えるよ。ちょうど明日も学校を卒業したばかりの女の子で、ウルフ・アリスと同じマネジメントに所属しているアーティストと会って一緒に作業をする予定なんだ。他の人のための作曲も、他の人との共作も両方やっていきたいね。一旦人々に認知してもらえるようになると、そういう仕事もしやすくなると思う。例えばテーム・インパラのケヴィン・パーカーも、インディーバンドからポップスターたちと仕事をするようになっているわけだし。彼はそこに至るまでに3枚のレコードを出しているわけだから、長い目でみているけど。

――ちなみに先の質問で“Gone Forever”が次のアルバムの始まりでもある、という話をしましたが、その次のアルバムのための曲も既に書き始めていますか?

オスカー うん、始めているよ。結構気に入っている曲がいくつかあるけど、今の時点ではまだもっと書き続けてこれからどうなるか様子を見ているところかな。ツアー先での作曲も最近するようになったから、それも興味深いね。普段とは全く違った心境だし。今のところなかなか上手くいっているよ。

――それは楽しみです。では最後に、何か付け加えたいこと、日本のファンに伝えたいメッセージなどはありますか?

オスカー I love you Japan! 近いうちに会おう! アルバムは6月29日発売だから、是非聴いてね!日本のツアーの予定も今調整中だよ!

――ありがとうございました。

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text by 箱崎ひかり