11年のEP『わたし開花したわ』でデビューすると、きゃりーぱみゅぱみゅやtofubeatsらを擁する〈ワーナー・ミュージック・ジャパン〉の注目レーベル〈unBORDE〉と契約し、13年のデビュー・アルバム『演出家出演』でオリコン・チャートの11位を記録するなど今まさに乗りに乗っている5人組、パスピエ。大学でクラシックを学びながらもロック・フェスをきっかけにバンドに傾倒して「印象派×ポップ/ロック」というコンセプトを思いついた成田ハネダ(Key)を中心に、歌詞やイラストを手掛ける大胡田なつき(Vo)などを加えて始まったこの5人は、通常のバンド形式をするするっと踏み外していく楽曲、言葉遊び満載の歌詞などで音楽的に冒険をしながら、同時にイラストを使ったアートワークや顔出しを控えたヴィジュアル要素で、リスナーの想像力を刺激するユニークな活動を繰り広げている。

そんな5人が今回、早くも2作目『幕の内ISM』を完成! 全編を通してライヴを意識した曲で統一されていた前作に対して、ここではスケール感や展開の妙を増した楽曲がそれぞれに全く異なる表情を見せ、パスピエの多様性をぎゅっと1枚に凝縮。聴き込むうちに様々なアイディアが溢れ出す、彼らの進化を感じさせる作風を手に入れている。また、タイトルが回文ではなくなったり、MVで顔出しを始めたりと、ここにきてバンドは変化の季節を迎えている模様。果たしてその真意は、いかに? Qetic初登場となる今回は、新作の内容やバンドに訪れた変化について、リーダー兼キーボード&ヴォーカルの2人に語ってもらいました。

Interview:パスピエ[成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)]

––––今振り返ってみると、13年のデビュー作『演出家出演』はみなさんにとってどんな作品になったと思っていますか?

成田ハネダ(以下、成田) 『演出家出演』はライヴを意識したアルバムで、僕らの中でもアッパーな曲を揃えて、一瞬のロック感やインパクトを大事にした作品でした。それを引っさげて初のワンマン・ツアーを回ったり、初のフェスに出たりしたので、あの作品を通してパスピエのことを知ってくれた人が多いのかな、というのは凄く感じたことですね。

––––1曲目の“YES/NO”もそうだと思いますが、今回の新作では曲ごとにバラエティ豊かな楽曲が並んでいて、また方向性が変わってきたように感じられますね。

成田 そうですね。前作で意識したライヴっぽさって、僕らが必ずしもメインでやってきたことではなくて、むしろアザー・サイドという感じだったんですよ。僕はもともと「ポップスってこういう形式だよね」ということをあまり考えずに作曲したいと思っているんですけど、前作はやっぱり、ライヴでわかりやすくノッてくれるものを作ろうという気持ちが強かったので。僕らとしては、それをたまたま「パスピエ」として認知してもらったという感覚だったんです。だから今回のアルバムでは音楽的に初心に戻るというか、「作品」として出来ることを追究してみようと思ったんです。たとえば“YES/NO”にしても、「最初のコーラスがあって、2つ目のコーラスがあって、サビがあってラストのサビ」という基本的な構成の中で、サビをあまり盛り上げずに、ラストで盛り上げたりとか。そうやって曲ごとに色々と詰め込んだ部分はありましたね。

次ページ:色んなものが混ざり合っていて、オリエンタル感と言うんですかね