8月11日(日)に渋谷clubasiaで開催された自主企画<The era of turmoil>。そこで観たravenknee(レイベンニー)のパフォーマンスに感じたテンションの高揚は、今でもはっきりと覚えている。幸福につながる道のような歌、ロックバンドの生々しい躍動感、EDMのポップなトランス感、土着的かつ夢見心地な多国籍性、どこか陰のあるアンビエンスに感じる深み。さまざまな要素を圧倒的なダイナミクスで表現するスタイルは次世代のビッグシングと呼ぶにふさわしい。今回は、そんなravenkneeの豊かな音楽性の成り立ちや、彼らを取り巻くシーンの現在~ポップミュージックの未来などについて、メンバー全員に集まってもらって話を聞いた。
そして、ravenkneeは、11月28日(木)に大阪・Pangeaで関西では初となる自主企画を、12月5日(木)には東京・WWWで初のワンマンライブを開催する。このインタビューを読んでから出かければ、さらに楽しい時間が過ごせるであろう、ライブならではの興味深いサウンドの仕掛けにも言及した内容にもなっているので、その点にも注目していただきたい。
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Interview:ravenknee
──まずは10月23日にリリースされた1stフルアルバム『the ERA』について、お伺いします。オルタナティブなロックやフォーク、ハウス~EDM、アンビエントなエレクトロニカなどを融合するスタイルは、どのように形成されていったのでしょうか。
松本 祥(以下、祥) 自分たちの好きな音楽の狭間を探しつつ、多くの人に届くような曲を作りたいっていうスタンスは、ravenkneeが動き出した頃からありました。そのうえで、アルバムを作るにあたって、リファレンスとして出したバンドがいくつかあって、例えばアイスランドのオブ・モンスターズ・アンド・メン(Of Monsters And Men)。そこに日本語詞も英語詞もありますけど、僕らなりの言葉と打ち込みのダンスミュージックの要素をうまく混ぜられないかなとか、考えてました。
松本 一輝(以下、一輝) オブ・モンスターズ・アンド・メンみたいな、北欧の寒い国だからこそ生まれる冷たい質感がすごく好きなんです。歌メロもすごくいい曲が多いし、その風情にEDMの強烈なドロップを突っ込んだら面白いかもって話してましたね。
――その感覚はアヴィーチー(Avicii)に近いと思うんですけど、そこまでエレクトロニックな派手さはなくて、もう少しインディーやオルタナティブロック寄り。リード曲“Pick you up”のビルドアップは、少し奥で鳴ってるドラムフィルがすごくバンドらしくてカッコいいですし、“Earth”の生音と打ち込みのバランスも、絶妙にレンジの広いポップ感が出ています。
安田 照嘉(以下、安田) アヴィーチーも好きですし、デモの段階ではもろに“EDM”みたいな曲もいくつかありましたよ。“Earth”は特にそうでした。
祥 僕らはまずバンドサウンドを入れていく前に、打ち込みでデモを作るんですけど、その段階だと、アヴィーチーとかケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)とかプロディジー(Prodigy)みたいな、けっこうゴリゴリしたエレクトロサウンドが多いんです。
一輝 でもギターとドラムとベースのバンドサウンドって、シンセサイザーの打ち込みより音が弱いというか、マットな質感だから、デモの段階で余白がないと、両者を合わせたときに埋もれちゃうんです。ガチガチのエレクトロから音をある程度抜いて、生音を足していくときに、おっしゃってくれたような、僕ららしさが生まれるんだと思います。
ravenknee – Pick you up(Official Music Video)
──北欧を思わせる質感もそうですが、オリエンタルなスケールも随所に入ってきます。そういった多国籍性のルーツはどこにあるのでしょう。
安田 ジョー(祥)くんが民謡にめちゃくちゃはまってて、ものすごい数の音源を持ってるんです。
祥 一時期、漁りまくってました。TSUTAYAの民謡コーナーで何十枚もCDを借りたり、インターネットで1日中民謡のサンプルを探して集めたりしてました。
──そして『the ERA』をリリースされてから約1カ月が経ちましたが、周囲の反応を受けて、思うことはありますか?
祥 まずTwitterの呟きとか、ライブ会場で直接もらえる声とか、思った以上に反響があったことは本当にありがたいです。そんななかで、やっぱりリード曲にしている“Pick you up”に話題が偏るのかと思っていたら、そんなことは全然なかったことも、めちゃくちゃ嬉しいですね。“いちばん好き”とか“感動した”って言ってくれる曲が、人によって全然違う。それって、たくさんの人たちがアルバム全体を聴いて楽しんでくれてるってことだから。
東 克幸(以下、東) 僕の個人的な趣味としても、同じような曲が並んでるアルバムも統一性があっていいとは思うんですけど、いろんなパターンの曲があるアルバムのほうが好きで、『the ERA』もそういう作品にしたいと思ってたんで、意図したことが伝わってよかったです。
ravenknee – ubugoe(Official Music Video)
──そしてravenkneeと言えばライブ。私は直近で、8月11日に渋谷clubasiaでLucky Kilimanjaroとthe engyを迎えて開催された自主企画を観ました。clubasiaってキャパが300人くらいの会場のなかでは、天井も高くてフロアからも視界を遮るものがないから、すごく広く感じるじゃないですか。そこで感じたのは、演奏する会場が大きければ大きいほど映えるバンドだなって。
祥 めちゃくちゃ大きな場所でライブをしたい想いはずっとあります。実際に“Pick you up”や“Earth”は、何万人もいるライブ会場を想像しながら作ったので、みんなで歌えるメロディやコーラスが入ってますし。じゃあ、そのうえで今やってるライブはどうなのかとなると、まだまだ試行錯誤を繰り返している段階なんですけど、最近はすごくよくなってきたように思います。
一輝 VJがいたことがあったり、CD通りに演奏しようとしたこともあったり、本当にいろいろ試行錯誤しましたし、それはずっと続くんでしょうけど、最近になってひとつ仕上がってきた感触はあります。例えば、専門的な話ですけど、正確なリズムの拍に対して、今までは少し後ろでギターを弾いてたところを、クリックとギリギリの競争をして勝つようなイメージで前に持ってきたことで、明らかに評価が上がったんです。
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──BPMに対して気持ち溜めるよりも突っ込むほうがエモーショナルな感じはします。
一輝 そうですね。あとは僕自身、DJを始めたことも大きくて。
──曲間を開けずに繋ぐとか?
一輝 それもそうですし、あとは同期ってあらかじめ用意している音源を流す決まったものじゃないですか。そこにDJ的な感覚で、現場の雰囲気に合わせてエフェクトをかけるとか、同期を生き物のように扱うことで、各々の演奏も自由度が高まったんです。そういうことがすごく楽しくて。お客さんからしたら、何がどうなってるのかなんて、明確にわかることではないですけど、その臨場感は確実に伝わっていると思います。
安田 一輝さんと東さんは、そういうときの発想や、普段からやってることや動きが、本当に面白いんです。そこはravenkneeの強みだと思います。
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──東さんはどんなところが面白いのですか?
安田 一輝さんのギターの話にも繋がるんですけど、エレクトロのクリックに対しての位置が独特なんです。リズムに回転が見えるんですよ。
東 感覚的なことなんですけど、それはすごく意識してます。直線的なエレクトロのビートにたわみをつけるようなイメージです。
安田 僕はそんな東さんならではのビートの回転に、いかにうまく乗っかっていけるかにチャレンジしてるんですけど、すごく難しいです。
東 僕のことを理解しようとすごく努力してくれるテル(安田)と、ちゃんとロジカルなことを考えて練習する一輝と感覚でやっちゃう僕と、バランスが取れているってことで。
安田 感覚的にすごいことをやってのける東さんと、わからないことはちゃんと説明してくれる一輝さんがいて、そこでベースを弾けていることは、すごく楽しいし、エレクトロと生音を融合させるカッコいいバンドってたくさんいるけど、そのなかでravenkneeだからこそのグルーヴがしっかり立っているんだと思います。
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──リズムやサウンドのデザインが生むそこにしかない時間軸や景色はrevenkneeの特化したポイントだと思います。そしてそういった特徴をまとめあげるフロントマンの祥さんは、ravenkneeの見られ方をどう意識していますか?
祥 “こんなの初めて”って思ってもらえるだけの、曲のパワーとライブ感は味わってもらえると自負しています。日本語のJ-POPとEDMがどっちも半端な形ではなく、ちゃんと炸裂してますね。だからとにかくライブに来てほしいです。
一輝 僕らが提案していることが“最新型”だと思ってもらえるような曲作りやライブをしているつもりだし、余裕でそうなってると思います。音もそうだし、祥くんはフロントマンとしてめちゃくちゃいい。だから、今現在ライブに来てくれている人たちにはすごく感謝しつつ、まだ来たことがない人たちも、さすがにそろそろ来てほしいんですよ。
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──ravenkneeと世代の近いバンドやトラックメイカー、DJたちが仕掛けるシーンも、今すごく面白いと思うんですけど、どうでしょう。
祥 そうですね。gatoとかphaiとか、やろうとしていることが新しくて、カッコいいバンドやユニットが、同じスタート地点にいたことは大きかったです。11月28日(木)に大阪のPangeaでやる自主企画に出てくれるthe McFaddinも、その熱量を共有できていると思いますし、Omoinotakeも前から仲良しだし。
──何かがうごめいている感じが刺激的で、実際に私自身も遊びに出る回数は増えました。
祥 拡散力も爆発力もある、大きなエネルギーを秘めたシーンが生まれようとしている感じはありますよね。そういう自分たちの居場所があるのはすごくいいこと。でも、そこにいるみんなそうだと思うんですけど、僕たちも活動の幅を決めているわけではなくて、大きなフェスにも、ライブハウスにもクラブにも出たいし、変なこだわりは持ちすぎないようにするべきだとは思ってます。いろんなところに出て、いろんな人たちに届けたい。そうやって、それぞれのやり方でみんなが有名になって、「あの辺ってすごいよね」みたいな感じで言われたらいいですね。
──そこにある気概はオルタナティブなものですか?もっとニュートラルにポップスターを目指してるんですか?
祥 シンプルにポップスでありたいです。インダストリアルも好きだし、静かなアンビエントや、ピアノだけの曲とかも聴きますし、ポップでなくてもクリエイティブでオリジナルな音楽には憧れます。でも、やっぱりなりたいと思うのはポップスター。
──チャレンジングに新しい価値観やスタンダードを提示していく姿勢に、すごく惹かれるんです。
祥 ポップスとして、今までに誰も行ったことのないことのない場所を作りたいんですよね。
一輝 ポップスの概念そのものを拡張したいです。
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──その上で、2020年のポップスのフィールドはどうなっていくと思いますか?
一輝 音楽をやること自体がますます簡単になってくると思うんです。いろんな人がいろんな音楽を作れるようになる。生楽器も電子音楽も、トラックメイカーもバンドも、ジャンルも、縦割り構造なんてなくなって、垣根なく縦横無尽に行ったり来たりする流れはさらに進んでいくと思います。
──ジャンルの流行は10年単位で繰り返すと言いますし、大雑把に振り返っても、確かにそうだと思うんですけど、よく言われているように、もうそのサイクルは切れたと思うんです。アルバム単位で言えば、近年は特に、マルチスタイルの作品がおもしろくなってきていますし。
安田 バンドで言えばThe 1975とかもそうですよね。今年出した新曲だって、めちゃくちゃハードでパンクな曲がきたかと思えば、次は思いっきりUKガラージみたいな。僕がベースを始めた頃は、こんな時代になるとは思ってもいなかったけど、誰もがいろんな曲を聴けて作れる流れはどんどん進んでいくと思いますし、この先、どんな音楽が出てくるんでしょうね。
一輝 作る側の間口が広がって聴く側も含めて多様化することは、ポップスの拡張を考える上でプラスになると僕は思ってます。
祥 バンドサウンドとエレクトロの融合って、言葉では言ってますけど、その概念自体は新しいものでもなんでもなくて。そんな時代だからこそ、個性の強い4人だからこそできる混ぜ方とか、あえてバンドサウンドに振りきるとか、おもいっきりエレクトロな曲を作るとか、歌詞も同じ人が書いているようには思えないバリエーションとか、いろんなことにどんどん挑戦していきたいです。そして2020年はもっともっと大きな会場でライブができるようになりたいと思ってます。
──そのための橋渡しとなるのが、11月の大阪・pangeaでの自主企画と東京・WWWでの初ワンマン。
祥 まさにそうで、絶対にいいライブにします。
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Text by TAISHI IWAMI
Photo by fukumaru
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EVENT INFORMATION
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ravenknee presents<The era of turmoil at OSAKA Shinsaibashi Pangea>
2019.11.28日(木)
大阪・心斎橋Pangea
OPEN 18:30/START 19:00
ADV/DAY ¥3,300(+1D)
w/the McFaddin、Omoinotake
ravenknee ONE MAN LIVE<The era of turmoil at TOKYO shibuya WWW>
2019.12.05(木)
東京・渋谷WWW
OPEN 18:45/START 19:30
ADV/DAY ¥3,300(+1D)
RELEASE INFORMATION
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the ERA
2019.10.23(水)
ravenknee
LACD-0301/¥2,273(+tax)
【track list】
1.The era of turmoil
2.ubugoe
3.Pick you up
4.Earth
5.I wanna stay
6.青の魔法
7.AJISAI
8.Turn Around
9.透明な街
10.秒針の鼓動
11.daydreaming -rearranged-