オトナの社交場として六本木が語られるようになってから、もう長い年月が経つ。近年は「アートの街に生まれ変わった」なんて健全な言われ方をして、バブリーな雰囲気は薄れつつあるのかもしれない。ただしあくまで、六本木は六本木。時代が変わろうとも、人が変わろうとも、この街の本質は──夜にある。

そんな六本木の色を継承しつつ、新しい夜のエンタテインメントを発信する場所こそ、今回紹介する『Red Dragon』。エロ&ポップと東京サブカルチャーをミックスしたコンセプトのもと、個性豊かなセクシー女優が多数在籍するプレミアム・キャバクラを率いるのは、CEO & EXCLUSIVE PRODUCERを務めるK.Motoyoshiだ。

『Red Dragon』の経営のみならず、アートディレクターのハイロックと手を組んで「NEO TOKYO SOUVENIR(ネオ東京土産)」をグッズ展開するとともに、さまざまなカルチャーとの繋がりを生かしたDJナイト『Riggin’ Dragon®︎(リギンドラゴン)』という不定期イベントを開催するなど、K.Motoyoshiの活動は多岐にわたる。

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ただし、インターネット上にK.Motoyoshiに関する情報はほぼ存在しない。SNSに投稿されている内容を除けば、『Red Dragon』のホームページにある「18歳、実家を勘当され浮浪者生活を経てピンサロティッシュ配りからキャリアをスタート」から始まる数行の文言のみ。文字通り、謎に包まれた存在だ。

今回は、そのK.Motoyoshiに、自らの言える範囲での生い立ちから現在に至るまでの半生、『Red Dragon』に込められたコンセプトや夜のエンタテインメントビジネスの可能性などをたっぷり語ってもらった。

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Interview:K.Motoyoshi
(『Red Dragon』CEO)

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謎多きK.Motoyoshiの半生
新たな『Red Dragon』

──インタビューさせていただくにあたって、事前にMotoyoshiさんの人となりを知ろうと思っていろいろと調べたところ、あまり情報がなくて。もしかして今回が初インタビューですか?

初ですね。これまでは自分のことをあまり表に出そうとも思わなかったし、むしろ出ないほうがいいというか。僕はナイトビジネス、クラブカルチャーとかのスタートからして、情報として出せないことの方が多い。この前あったアートブックフェア(2023年11月23日から11月26日の4日間にわたって、『東京都現代美術館』にて開催された『TOKYO ART BOOK FAIR 2023』)でZINEを出すにあたって作ったプロフィールには「18歳、実家を勘当され」と書きましたが、そこに至るまでの経緯も詳しくは言えないんですよね。

(しばらく生い立ちのエピソードが続く)

──思った以上に壮絶というか、なかなか聞いたことのない生い立ちで、それは書きたくても書けないですね。では18歳で実家を勘当されてからのエピソードを教えてください。

バスで東京まで来て、最初は住み込みのような感じで、歌舞伎町の携帯屋で働きました。そこは時給が良かったし、ほかに雇ってくれるところもなかったので。そこから家も借りられるようになったぐらいのときに、アルタ前でピンサロのティッシュを配っているめちゃくちゃかわいい子がいて、その子と仲良くなりたくてそのピンサロでティッシュ配りのバイトを始めました。それが夜の仕事との最初の接点でしたね。

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そこから……あれだ、109のお店。ティッシュを配っていた子が109にあった某有名アパレルブランドで働いている子で、当時はめちゃくちゃ人気があって倍率も高かったけどなぜか受かってそこで働き始めたんですけど、その隣の隣にミュージシャンやDJばっかりがいるお店があったんですよ。そこはOBでCHABE(松田“CHABE”岳二)くんとか、MAJOR FORCEでレゲエをやっていたCHAPPIEさんとか、人生(=ZIN-SÄY!。電気グループの前身)っていうバンドにいた(若王子)耳夫くんとかがいて。当時、僕は音楽好きの格好をしていたので、耳夫くんに「音楽好きだよね?」って言われてライブとかに誘われるようになり、「うちにおいでよ」って言われてそっちの店に引っ張られて入ったんですよ。そこからナイトビジネスと音楽っていう、2つの軸での生活がスタートしました。

──それが20代のときのエピソードですか?

はい、20代です。音楽で言うと自分はMAJOR FORCEが中学の終わりぐらいからずっと好きで、20代から自分でDJもしていて、何かのきっかけで高木完さんと知り合いました。その後、完さんのDJのブッキングマネージャーをやることになり、ブラジル人のハーフの女の子のDJユニットを作って、プロデュースとマネジメントも同時期にやりました。

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そういうのでいろいろな繋がりができて、ハイロック(アートディレクター。『Red Dragon』が提案する「NEO TOKYO SOUVENIR(ネオ東京土産)」のグッズを制作)と知り合ったのもその頃です。まだハイロックは(A BATHING)APEにいたのかな? 同じ歳っていうのもあって仲良くなって。このお店を始めるときに少し疎遠になった人もいたけど、基本的にそのときの繋がりは今でも続いています。

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──そういった出会いと経験を経て、『Red Dragon』のリニューアルに繋がっていくと。

コロナの時に店がすごいヒマで、考える時間がけっこうあったんです、そこでいろいろ新しい案が出てきたのと、一般的なキャバクラとこの店の違いが明確に見えた。『Red Dragon』のお客さんは、海外の方とか、地方の中小企業の社長さんとかがメイン。普通のキャバクラって例えば都内に住んでいて、特定の女の子が目当てで、あわよくば付き合いたいみたいなところでお店に通うじゃないですか。でもうちは「東京にはなんか面白いお店があるらしい」みたいな目的で来る人が多い。そういうお店だし、コロナ明けに内装を新しくしようと思っていたので、“大人の遊園地”みたいなイメージでいろいろな仕掛けを入れた内装でリニューアルしました。

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──店のテーマや内装に関して、特にどのような点にこだわりましたか?

インテリアデザイナーでBerlina代表の樋口泰輔さんに、内装をやってもらいました。エロ&ポップを感じられる空間づくりをコンセプトにして、ウィンドウにはオランダにある世界一の飾り窓地帯・レッドライトディストリクトの要素があったり、漆塗りで黒光りした列柱が“男性器”を意味していたりとか。こういうのってバランスがすごく難しくて、グッズを作るにしても、エロの要素が強すぎると全然違うものになっちゃう。これは感覚でしか言えないですけど、そのバランスは意識しています。

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──『Red Dragon』の店のテーマやグッズ作りに生かされているMotoyoshiさんのバランス感覚には、これまでの遊びの中で培ってきた“夜の審美眼”が存分に生かされているような印象を受けました。

そうですね。自分はいろいろなところで遊んできたし、いろいろなカルチャーを見てきました。音楽だと若いころからMAJOR FORCEはもちろん好きだったんですけど、20代のころはフレンチ(ポップ)のイベントとかもやっていて。セルジュ・ゲンスブールとか、フレンチってわりと下ネタがあるじゃないですか。そういうところからの影響もありますし、あとセックス・ピストルズとかもエロ要素が入っていて、そういうのも好きでした。そういうところからの影響もあったのでこういうナイトビジネスも抵抗なく、最初からカルチャーとして自分はエロを解釈していました。

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例えばアイテムの“18禁マーク”からインスパイアされたロゴは、日本の一風変わったお店から、海外のお客さんを通して世界中に発信できればなってところから作成したんです。あのマークって国が作ったもので、ひとつの日本の文化だし、海外にはああいうのはないので。

──『Red Dragon』はエロ&アートと東京サブカルチャーが交錯する場所というテーマですが、エロってものすごく取扱注意のものというか、ひとつ間違えれば……という危険なジャンルだと思うんです。

バランスが難しいところですね。でも今一緒にやっている人たちは、完さんをはじめとしてそのあたりの感覚を汲み取ってくれる人ばかり。やりたいことをすんなり咀嚼してくれて、形にしてくれる人たちです。

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オトナのリアルな社会見学
自分にしかできない“エロ”の形

──『SIX SHOP』についても聞かせてください。「エロ&アートと東京サブカルチャーが交錯する『Red Dragon』が「NEO TOKYO SOUVENIR(ネオ東京土産)」を販売するお土産処」ということですが、ハイロックさんと手掛けたグッズ数がかなり多いですね。それは最初からイメージしていましたか?

お店をキャバクラではなくテーマパークとして考えると、テーマパークには普通はお土産屋さんがある。キャバクラだと必要ないけど、テーマパークならあのぐらいのアイテム数は作りますよね。実際にお店に来てくれたお客さんはけっこう買ってくれますし、オンラインストアよりも店の方が断然売れるんですよ。売り切れとかもけっこうあります。あと今日着ているTシャツとかも、オンライン、店頭ともに即完売しました。

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──2023年12月にMotoyoshiさんが主催する不定期開催イベント『Riggin’ Dragon®︎』があって、そこで『SIX SHOP』のPOP UPもやっていましたが、終えてみていかがですか?

いいイベントだったと思いますよ。DJ EMMAさんは一緒にやるのが初めてだったんですけど、あとは完さんをはじめ、RIP SLYMEのFUMIYAくんとかSUさんとかいつもの顔ぶれで。あのときはNISHIMOTO(IS THE MOUTH)くんがスケジュールの関係で途中からしか入れなくて、30分空くので急に自分もDJをやることになって。今はアナログをほとんど持ってないのでPCDJをやることになり、完さんから教えてもらいました。完さんとK.U.D.Oさんが両隣にいる中でDJやって、めちゃくちゃ緊張しましたね。

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──インスタグラムを拝見したところ、2024年1月からは毎月、渋谷PARCO・10階のComMunEで、『ちんかめ』の内藤啓介さんと『PLACTIS(プラクティス)』という名のDJイベントを開催すると。

『Riggin’ Dragon®』のときにPCDJがイマイチわからなかったので、現場で練習しようと思って、練習するためにPARCOをイベントとして取ったんですよ。そしたらちんさんが「一緒にやるよ」って言ってくれて、イベント名を考えるっていう話を完さんとしていたら、『PLACTIS』という名前を完さんが命名してくれた。そこから立花ハジメさんに、このPLASTICSをオマージュしたイベント名とフライヤーデザインの許可をもらってスタートしました。1月26日に開催したときは、勘違いしてPLASTICSファンの方も来てましたね。

──ナイトエンタメビジネスを軸に、オリジナルブランドの開発やイベント企画など活動は多岐にわたりますが、Motoyoshiさんはいろいろ動く上で自分の中で大切にしていることはありますか?

僕は来年で50歳になるんですけど、ここまでいろいろな遊びの中で学んできたものを形にしてみようっていう気持ちから、今の動きを始めて。そうやって形にする中で、改めて大きいと思ったのは、やっぱり人との繋がり。僕はデザインができるわけではないし、クリエイティブなことは特にできないので、自分の繋がる人たちの協力を得て何らかの形にしてみようと。ずっと遊んできた中で出会った人たちが自分にとっての1番の財産で、その出会った人たちとの間で生まれた物が、今の形なのかなと。

──ずっとオトナのリアルな社会見学をしてきたわけですもんね。

自分の生い立ちとかを人に話すと、けっこう面白がられます。今やっていることもみんな面白がってくれる方は多いです。自分としてはこれをやって利益を出したいとかはなくて。みんなが面白がってくれて、笑って楽しんでくれるのが一番だと思っていて。長年いろいろな社会見学をしてきて、何の仕事をやってもそうだと思うんですけど利益だけを求めてやっていても、いい物もいいチームもムーブメントも生まれないと思います。まず自分と周りにいる人たちが楽しんでやれないと、絶対いいものなんてできないじゃないですか。大事なのはみんなが笑って楽しむことのできる、そういう空気感だと思います。

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──ありがとうございます。最後に、ここまでいろいろな仕事をやってきて、いろいろな人と出会ってきたMotoyoshiさんにとって、 やっぱり“エロ”というものは欠かせないものですか?

そうですね。この先はチャリティー的な企画を考えていたり、今年の夏には大きめのイベントやブランドとのコラボの話とかもあるんですけど、これまでの自分の人生の中で培ってきた(エロを含む)知識や経験、そして人との繋がりをこのような形にできるのはおそらく僕しかいないので。自分のこれまでを形にするのなら、“エロ”のエッセンスは入れるべきですね。エロは誰しもが持っているもので、誰にとっても欠かせないものだと思います。そのエッセンスをうまく僕なりに表現することができれば、そう思います。

それと、これからは若い人材の育成をしないとなって思っています。現時点で「期待できるかな?」って子もいますけど、やっぱり人との繋がりや接し方を教えていくのは難しいですからね。ここで話したのはわりとカルチャー寄りの話ですけど、ナイトビジネス業界での経営の話になるとまた違うタイプの人たちとの繋がりがそこにはあって、今回の話とは異なるストーリーがあります。僕はいろいろな業界や価値観の全く違う世界を行ったり来たりしているのですが、どんな人に対してもどんな場面でも同じような感覚で人に接しています。そういうふうに人に接することができないと、こういう業界ではやれないと思います。

Interview&Text by ラスカルNaNo.works
Photo by Qetic