Reiさんとハーレーダビッドソンとのコラボレーション・プロジェクト<SEEK for SOUL>から育まれたコラボソング“Territory Blues”のミュージック・ビデオが現在絶賛公開中。
Rei – “Territory Blues” (Official Music Video)
今回そのミュージックビデオのアートディレクションを担当したのは丸井”Motty”元子(以下、Motty)。独特のカラーテクスチャーやコラージュセンスを持ち、多くのCDジャケット、カタログ、テキスタイル、 広告、グッズデザインなどを手掛けているアートディレクター/グラフィックデザイナーだ。
男性アーティストとのコラボ曲が続いたこの企画の中、初の女性アーティストと女性クリエーターの融合により、歌に、映像に、独特の観点からハーレーの魅力が映し出されている感のあるこのミュージックビデオ。その経緯やディテールをお2人に対談スタイルで教えてもらった。
Photo by Madoka Shibazaki
Interview:
Rei × 丸井”Motty”元子
“ハーレーとReiちゃん……この組み合わせは凄いけど……
さて、どうしたら良いだろうか……?“
Motty
──今回の“Territory Blues”のMVのアートディレクターは、Reiさんからの希望でMottyさんに依頼があったとお聞きしました。
Rei そうなんです。私自身、元々Mottyさんの作風が好きで。その世界観に魅了されていたところもあったんです。今回はハーレーさんとの貴重なコラボということもあり、是非自分を色濃く表現していただける女性のクリエーターの方とご一緒したいな……との想いもあり、リクエストさせていただきました。
──ReiさんはMottyさんの作品のどの辺りに惹かれていたのですか?
Rei 私のこれまでのMVも、色味やヴィヴィッドなカラースキーム、その中にある女の子特有の毒みたいなものを大切にしながら映像を作ってきた経緯があったんです。それがMottyさんとだったら、今回のプロジェクトでも上手くいくんじゃないかなって。
──私からすると今作を観るまでは、ハーレーとMottyさんにいまいち結びつきが浮かびませんでした。意外な組み合わせのイメージが当初はあったんです。
Rei Mottyさんの世界観とハーレーとの親和性を考えるとそうかもしれません。でも、逆に一緒にやったらどんなものが生まれるんだろう? という期待値やワクワク感の方が強くあって。その掛け合わせの妙に賭けてみました。
──逆にMottyさんは今回のお話を受けていかがでしたか?
Motty 光栄でした。誰でも知っているハーレーというブランドと何か出来ること自体もですが、Reiちゃんから声をかけてもらったことも私的には意外だったし。ハーレーとReiちゃんという普段の私の中には無い2つの要素が組み合わさってポンと私の中にいきなり入ってきたので。「この組み合わせは凄いけど……さて、どうしようか……?」と。
あとはReiちゃん本人からの希望というのも嬉しかったです。自分の知らない場所でミュージシャンの方が私のことを気にかけて下さっている。それがなんだかとても嬉しくて。
Photo by Madoka Shibazaki
“バイクを愛している方はバイクを「恋人」と例えたり、
女性を擬人化している方も多いのでは“
Rei
──そんな中、Mottyさんの持つハーレー像とReiさんへのイメージ、それから求められているMottyさんの持つ世界観との融合の辺りはいかがでしたか?
Motty 最初はそんな考えこまずに挑みました。やりながら色々と出てくることに期待して(笑)。元々Reiちゃんには「世界感のある女の子」との印象があったので、それこそ一度、お話をしながら考えていけたらなって。
Rei 撮影当日、セットをパッと観たら、そこには既にハーレーのバイクが2台あったんです。もうそれだけで異彩と存在感が凄くて。なので、あえて「コラボするぞ!」との気概がなくても、その存在感の掛け合わせだけで既にコラボが成立しそうな予感がありました。
Motty ハーレーともなると、借りようと思ってもなかなか借りられないですからね。そこをハーレーさん側から、「使っても良い」との前提の下、MV作りが出来る。それだけでかなり面白いものに行き着きそうな気はしていました。あとはダンサーの方々が普段みないような異質感を放っておられて。そんな不思議さとハーレーさんとを掛け合わせた面白さ、その辺りが上手く出せたらいいなと挑みました。
Photo by Masato Yokoyama
Photo by Masato Yokoyama
──確かに異質で意外な上での面白さや印象深さはあります。
Motty いわゆるバイカー然とした人がハーレーに乗るんじゃなくて、セクシーでなまめかしい、しかも女性というそのシチュエーション。その前でReiちゃんがかっこよく歌いギターを弾く。その構図や絵面、バランスはユニークだし、過去誰もやったことがないだろうなって。
Rei これまでのハーレーとのコラボ曲はいずれも男性のアーティストばかりだったんです。「女性は今回が初」との話も聞いていたので、だったらなおさら今回はあえて女性と一緒に作りたかったし、女性ならではのセンスみたいなものも今回一緒にやってみて表現できたかな、と思います。
──おっしゃる通り、女性的なセクシーさや艶めかしさを引き立たせている面では、これまでのコラボ曲のMVとは違っています。
Rei これはあくまでも想像でしかないんですが、バイクを愛している方ってバイクを「恋人」と例えたり、女性を擬人化している方も多いんじゃないかなって思うんです。実は楽器に対しても、そのような例えをされる歴代のミュージシャンもいらっしゃいます。女性と称したり、女の人の名前を楽器につける方もいたりするほど。丁寧にバイクを磨いたり、愛でている感じは、バイクをバディや彼女に例えているからなんじゃないかな。
──バイクを彼女に見立てた『バイク擬人化菌書』なんて人気コミックもありますもんね。実際にお2人でご一緒にお仕事をされてみてはいかがでしたか?
Rei Mottyさんと一緒にお仕事をしていて凄くいいなと感じたのは、ザックリですが、カッコいいと思っているものとダサいと思っているものが結構一致しているなって思いました。「これとこれだったらこっちだよね」って選択の意見がかなり合致したんです。そこが凄く安心したし、なおさら信頼を置くことが出来ました。
Photo by Masato Yokoyama
Photo by Masato Yokoyama
“夕陽の中でReiちゃんが歌っている、
そんな裏テーマもあった“
Motty
──ちなみに今回の制作において、お二方的に何か心がけたことってありましたか?
Motty ポップさはある程度意識しました。大型バイクって女性からしたらかなり敷居の高いイメージがあったので、あとはもう少し間口を広げたかったんです。それからさきほど話していた3回目のコラボとして、ようやく女性に回ってきた。その役割はお互い共通してたんだろうなって思いました。
──色使いもポップですし、あえて衣装もファーですもんね。ギターもあえてビザールだったり。
Motty 後ろの美術セットで言うと、ハーレーってロマンがあるじゃないですか。バイクで独り旅をするとか。そんなこともあり、自分の中でシチュエーション的には夕陽がイメージとしてあったんです。「夕陽に向かって!」じゃないけど(笑)。
あとはハーレーさんのブランドカラーにオレンジが含まれていたので、美術の真ん中に夕陽をイメージしたオレンジの巨大な半円を用意しました。それを中心に色々な造詣物が広がっているんです。夕陽の中でReiちゃんが歌っている、そんな裏テーマもありました。
Rei 衣装もインパクトが凄かったです。MVを観て下さった方がよく「プードルみたい」と言っていますが、実はフラミンゴが2羽いる衣装なんです。
Photo by Masato Yokoyama
──フラミンゴだったんですか?
Motty そこは「なんでハーレーダビッドソンを象徴する鷲がモチーフじゃないんだ?」って(笑)? 装苑賞を受賞された一点ものを神戸から借りてきました。もう存在感バッチリでしたね。Reiちゃんがバックの人たちを従えてるみたいでした(笑)。
Rei 私、このMVに合わせる為に髪も一部ピンクにしましたから(笑)。フラミンゴがピンクだし、思い切ってピンクにしちゃえ! って。作り込まれたステージもですが、コラージュも是非やってみたかったことだったので、それらが全て実現出来どれも新鮮な気持ちで取り組めました。
Photo by Madoka Shibazaki
“Mottyさんが全てを見渡し俯瞰して
ディレクションをしていた光景は今後の勉強になった“
Rei
──これまでReiさんのMVは一連の監督さんとずっと一緒に作られてきましたが、今回Mottyさんとやってみてこれまでとの違いはありましたか?
Rei 違いました。でも、どの辺りが違うか? と聞かれると具体的には答えられないんですけど、そのMottyさんならではのセンスもですが、やはり普段アートディレクターをやっておられるだけあって、仕事の進め方には感心させられていました。
映像単体だけではなく全てを見渡しながらディレクションをされていました。MottyさんはMVのみならず、ホームページやキービジュアル、スチール等、それらを全て俯瞰で見渡しつつ、感情移入も程よく立ち回れる方で、その辺りがとても魅力的でしたね。
──何か自身と照らし合わせてしまうことがあったり?
Rei 実はここのところリーダーシップをとらなくてはいけない機会が以前より増えてきて。その時に、人とどのようなコミュニケーションをとった方が良いかを相談できる方が周りに少なかったんです。偶然ですが、そういった現場に居合わせられて、私的にはすごく勉強になりました。
──Mottyさんは普段はグラフィックが中心で、いわゆる二次元的なデザインが多い中、今回のMVのような動くものに対するアプローチはいかがでしたか?
Motty これまでも何度かMVは撮らせてもらってきたんです。でも、今回はハーレーさんとのコラボという大きなプロジェクトの下のMV制作でもあったので、これまで以上にかなり緻密にやらせていただきました。
結果、それが良く出たなって思いますね。正直、一瞬迷った時もありました。その時に「どこを切り取ってもグラフィックだと思えばいいや」「ムービーという概念にあまり囚われなくてもいいや」と思えるようになってからは、だいぶ気が楽になりましたね。
抑揚をつけて展開するという部分では、「これってなんかブックレットを作っている際と似てるじゃん」って思ったんですよね。ブックレットにも時系列があるじゃないですか。そんな考え方でいいんじゃないか? って。そう思えたら急に気が楽になって。今回、私もすごく勉強になりました。
Rei 分かります! どこを切り取ってもOKになっている感じとか、すごくグラフィックの概念に近いですよね。
Motty 私の場合、MVの世界で勉強をしたことが無いので、逆にそのような考え方をしないと理解が出来ないんですよね。今回も制作チームのリアルロックデザインのみなさんにサポートしていただきながら完成へと辿り着かせてもらいました。
──とは言え、意表を突く色使いや組み合わせ、コラージュ等、「さすがMottyさん!」と思わずうなずくテイストはキチンと各所に散りばめられています。
Motty おかげさまで結構、好きにやらせいただきました。それをReiちゃんがOKとしてくれて良かったです。相性がイイんだろうと勝手に思ってます。
Rei 相性はバッチリですよ。私もこのMVの完成以降、この曲が流れる度にあの色彩が頭に浮かんできますもん。それって視覚と聴覚という別の五感が結びついていくマジックでもあるわけで。
私も素人ですが、自分でデザインをやったりするので、その色合わせの妙は凄く勉強になりました。色合わせで凄く和風になったりルネサンス風になったり、時代背景や国柄を感じさせられることを知ったり。「Mottyカラースキーム10色」みたいに、それらの組み合わせでMottyさんならではの世界観に結びつけられるのはホントすごいです。
Photo by Masato Yokoyama
Motty 実は、自分の中で色使いのルールがあります。それはトーンを合わせることで。トーンさえ合っていれば、だいたい色が多少異なっても統一感は出させたりするんです。彩度を合わせるのとトーンを合わせる、そこは絶対に気をつけています。
今回に関しては、造形物はポストモダンっぽいもの。色味にしてもバッキバキの色ではなく多少気を遣った色合いを意識しました。もちろん原色も好きだし、よく使ってますけど、今回はもう少し微妙な色合い。そこが重要かなと思いますね。
あとはライティングにもかなり助けていたただきましたね。おかげさまで全体をまとめた際に、あまり子供っぽくなり過ぎずに仕上げることが出来ました。元々その辺りに落ち着かせたい意図もあったのでバッチリでした。
Rei そんなことがあの現場内でMottyさんの頭の中で駆け巡っていたとは……。改めて感心しました。
Photo by Madoka Shibazaki
“情熱的に作ったんで、
その結果、女性にも歓んでもらえたら嬉しい“
Motty
──でもこのMVを観たら女性でもハーレーに乗りたくなる方が多数現れると思いますよ。
Rei だといいですね。
Motty そのようなリアクションが一番嬉しいです。MVが魅力的に仕上がったら、もしかしたらそんなことを想って下さる方も現れるかな……? なんてことは考えていました。
Rei 自分たちがカワイイ、カッコイイと自負できるものを情熱的に作ったので、その結果、女性にも歓んでもらえたら嬉しいですね。私たちが作っている時点で、自然と映像には女性ホルモンが注入されているでしょうから。……と今だったら言えますが、作っている最中は全くそんなことを考える余裕はなかったな……(笑)。
──実際にハーレーの実物を見て、欲しくなったりはしませんでしたか?
Rei まずは免許取得が先かな。なので、まずはイイ感じのメンズにタンデムしてもらう、こちらの方が早くて現実的かも(笑)。
Motty 欲しいけど、きっと自分では倒しても起こせなさそう。原付レベルでもちょっと苦労したタイプだったので、私。
──最後にお互いに今後望むものを教えて下さい。まずはReiちゃんからMottyさんへ。
Rei ミュージシャンや役者さんを始め、色々な方との新しいケミストリーに今後も期待しています。
Motty Reiちゃんの場合は、この若さで既にこれですから。現時点でこんなにも世間から認められているのに、今後成長し続けていったら終いにはどうなるんでしょうね? もう今のまま育ってくれたら必然とカッコいい存在になっていくでしょうから、そのまま大きくなっていって欲しい。
Rei ありがとうございます。目指します。Mottyさんとも、また機会があったら是非一緒に何かやりたいですね。
Photo by Madoka Shibazaki
Photo by Madoka Shibazaki
Masato Yokoyama
Text by 池田スカオ
Rei
卓越したギタープレイとボーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。
兵庫県伊丹市生。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。
2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。
FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。
2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。
2019年11月13日 通算7作品目となる 4th Mini Album『SEVEN』をリリース。
2019年12月からソロ弾き語りによる「Rei Acoustic Tour“Mahogany Girl”2019-2020」を全国10箇所開催、さらに2020年2月からはRei Release Tour 2020 “7th Note”を開催する。
2020年2月 Verve Recordsより1st Album「REI」の英語歌唱によるインターナショナル盤のリリースを発表。
丸井”Motty”元子
大分県出身、東京を拠点に活動中。
デザインスタジオRALPH(現YAR)より2014年独立。
中毒性のある色使い、エッジーでシュールな表現を得意とし、
音楽、ファッション、カルチャーを軸にビジュアル表現を行う。
広告、ロゴ、パッケージ、CDジャケット、カタログ、グッズデザイン、映像監修、
海外ファッション誌への作品提供、コラムの執筆など、独自の目線で幅広く活動中。
RELEASE INFORATION
Mini Album『SEVEN』
2019.11.13(水)
Rei
Reiny Records
Limited Edition CD+DVD 紙ジャケット仕様
UCCJ-9220
¥3,200(+tax)
Standard Edition CD 紙ジャケット仕様
UCCJ-2173
¥2,200(+tax)
EVENT INFORMATION
Rei Release Tour 2020 “7th Note”
2020.02.22(土)
仙台・darwin
open 17:30 start 18:00
info: GIP 0570-01-9999
2020.02.24(月)
札幌・cube garden
open 17:30 start 18:00
info: KYODO WEST 0570-09-2424
2020.03.01(日)
福岡・DRUM Be-1
open 17:30 start 18:00
info: KYODO WEST 0570-09-2424
2020.03.13(金)
名古屋・THE BOTTOM LINE
open 18:45 start 19:30
info: JAILHOUSE 052-936-6041
2020.03.19(木)
大阪・BIG CAT
open 18:30 start 19:30
info: SOUND CREATOR 06-6357-4400
2020.03.27(金)
東京・赤坂BLITZ
open 18:30 start 19:30
info: HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
Reiny Records先行
2019年10月18日(金) 18:00~10月27日(日)23:59
イープラス
Tickets: ¥4,000(+1 Drink)