シンガー・ソングライター/ギタリスト・Reiによるコラボレーション・プロジェクト「QUILT」。前作の第1弾・藤原さくらとのコラボ曲“Smile! with 藤原さくら”に続き、第2弾・長岡亮介との“Don’t Mind Baby with 長岡亮介”が12月10日にリリースされた。

Reiのルーツであるブルーズ/ロックの要素と、長岡亮介のルーツであるカントリーミュージックが混ざり合うことで生まれた「カントリー・ロック・チューン」である今作。国内カントリーミュージック界では有数のライブハウス&レストランである赤坂カントリーハウスのプレイヤーがサポートに参加した。

もともとReiの1stミニアルバム『BLU』では長岡が共同プロデューサーとして参加しており、今作は両者にとって“久々の再会”となる。しかし、彼女の音楽キャリアの中でも重要な位置を占める彼との共作で、軽快な良いサウンドに乗せて歌われるのは、“出会い”の先にある“別れ”だ。なぜ彼女は彼を再びコラボレーション相手として選び、“Don’t Mind Baby with 長岡亮介”を生み出したのだろうか。今作の重要な鍵を握るスポット・カントリーハウスで話を聞いた。

INTERVIEW:
Rei

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ずっと亮介さんの背中を追ってきました

━━今回のコラボレーション相手である長岡さんは、2014年にリリースした1stミニアルバム『BLU』でプロデュースに入って以来、数年ぶりのタッグとなりますよね。

再会した気持ちです。私にとってすごく特別な人ですし、次もまた「自分にとって分岐点になるようなタイミングでご一緒したいな」とずっと思っていました。

━━最初の出会いはいつだったんですか?

私が出入りしていたライブハウスの楽屋に(長岡)亮介さんがよくいらしてたんです。2人ともフランスの旧車・シトロエンが大好きなので、それで話を聞くうちに、蓋を開けてみたらずっと学生時代から慣れ親しんでいたアーティストの長岡亮介だった、という。運命のいたずらみたいな出会いでした。

━━もともと彼の音楽は聴いていたんですね。

そうです。そこからずっと亮介さんの背中を追ってきました。ギタリストの部分に焦点を当てられている場面が多いと思いますが、佇まいや物事の考え方、そして歌詞の言葉選びや、メロディラインなどは以前から共鳴するところがあって、それで『BLU』を一緒に制作しました。

━━じゃあ、そのライブハウスでの出会いが、本当にエポックメイキングな出来事だったと。

そういう出会いがたくさんあったので、私にとって、そのライブハウスは大切な場所なんです。東京で思い出深い場所といえば、そこが浮かぶくらいに。

長岡さんも然り、そこで生まれたコミュニティは今でも続いています。藤原さくらさんとコラボした前作に参加したハマ・オカモトさんもそうだし、赤い公園やGLIM SPANKY、Suchmos、Base Ball Bearも。それまでの音楽人生はたった一人で活動してきた気持ちが強かったので、同じ志を持った人にやっと出会えた感覚がありました。

━━以前『BLU』でも共作した長岡さんを、なぜ今回プロジェクトのコラボ相手として再びオファーしたのでしょうか?

彼と久々にタッグを組み、改めて自分が今まで培ったものを表現したいと思ったからです。『BLU』をリリースして以降はセルフプロデュースで自ら舵をとって活動していたので。

もともと『BLU』という私の処女作も表向きは“プロデュース”という表現を取っていましたが、厳密には関係の優劣なく対等に扱っていただけました。今回もイーヴンな関係性はそのままに一緒に曲を作りたかった、というのがあります。

Rei – BLU

━━Reiさん自身が『BLU』の時期から成長しているのでは、と思います。実際に数年ぶりに長岡さんと共作してみて、変化を感じる瞬間はありましたか?

いろんな活動を経て視野が広がり、亮介さんのすごさに改めて気づきました。凛とした佇まいだけど、とても気さくで気配りができる人。クールなので、初めて会った時は「何を考えているんだろう」って分かりにくかったけど(笑)、今は内に秘めた音楽、大切な人に対する情熱を感じ取れます。そういうところは私が大人になったからわかるようになったのかもしれません。

印象的だったのは、最初にデモ曲を共有した時に「イイね!」とか「他の曲はないの?」という感想ではなく早速「じゃあこの部分はジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)みたいなアレンジにしようか」という提案から入ったことです。それって言わずして認めてくれた、ってことなのかなと。態度としてそれが伝わってきたのは嬉しかったです。

あと、『BLU』の時は私も「自分が鳴らす音楽はこうあるべき」という固定観念があって、そこから逸脱することを恐れていたんだなと実感しました。年数を経て、臨機応変に柔軟に応えられるようになったことは、私にとって一つの成長だったかもしれません。

今でも臆病なタイプですが、当時、亮介さんが「違和感って必ずしも悪いものではないんだよ」と教えてくれて。それがその後の活動においての礎になっているんだなと感じました。

━━では、実際にレコーディングに入ってから感じた「長岡さんのすごさ」は?

亮介さんはどんな場所でもフィットする演奏力を持ち合わせているけど、どこにいっても揺るがない長岡亮介イズムがある。みんな、そのイズムを求めてオファーしているんだろうなと感じました。

しなやかだけど強さもある。ゴムみたいですよね(笑)。曲げて形は変わるけど、折れはしなくて。逆に硬すぎると折れたり砕けたりするじゃないですか。その根幹はカントリーというルーツや、物事への考え方・価値観ありきで形成されているんだと思います。

実際にレコーディングに入った時、ギターソロのアプローチで私の考えていたアイディアがあって。レコーディングで亮介さんに「こうしたらいいんじゃない?」と別アプローチの提案をいただきました。亮介さんは曲の重要な場面で、大切なアドバイスをくれる。それは「柔軟さ」ありきだなと感じました。

何より亮介さんのギターの音色は、「ザ・長岡亮介のギター」なんですよね。シグネチャートーンを持っていて存在感があります。ギターの音色は私と亮介さんで全然違うので、ぜひ聴き比べてもらいたいです。

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私がブルーズを心の故郷だと思っているように、亮介さんもカントリーミュージックを自分のルーツに持ち続けている

━━今回、楽曲になぞらえて、カントリーハウスで取材と撮影をさせてもらっているのですが、Reiさんが初めてカントリーハウスを訪れたのはいつですか?

初めて来たのは亮介さんと『BLU』を作っている時です。亮介さんがライブをする時に何度か観に来ました。
実は、今回の曲もリハーサルでここを使わせていただいたんですよ。それで久々に訪れました。

━━この場所は、長岡さんのホームでもありますからね。

だからこそ、今回のコラボでは赤坂カントリーハウスのバンドの方々に対する情熱も感じました。カントリーハウスは亮介さんが学生の頃から出入りしている大切な場所。彼がお世話になっている方を私に紹介し「私の曲を一緒に演奏しよう」と言ってくれたのは嬉しかったです。

実は、カントリーハウスが45周年を迎える、というのもオファーした背景の一つです。3者のメモリアルな曲になったと思います。いつかこの箱で今回の楽曲が演奏できたらいいですね。

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━━今回、赤坂カントリーハウスに出演しているプレイヤーがセッションに参加していますが、彼らと演奏した印象をぜひ教えてください。

実は『BLU』に収録されている“my mama”という楽曲に長坂勇一郎さん(Ba)は参加していただいています。彼は2021年のグッドキャラクター賞! 洋服も可愛いし人情深くて、ベースも個性のある演奏をされます。

そして今回、初めてご一緒した尾崎博志さん(Gt etc.)や河崎真澄さん(Dr)、手島宏夢さん(fiddle)もキャラクター、演奏いずれも個性が強かったです。博志さんはカントリーマナーへのアレンジメントをご一緒させていただいたのですが、彼のペダルスチールやバンジョーで世界観が広がりました。

真澄さんのドラムは、プレイもそうなのですが、風通しの良い音色が好き。宏夢さんのフィドルも、軽やかさがありながら歌心もあって、尊敬できる方ばかりでした。おかげで、自分の曲になかった、奥行きのある曲に仕上がりました。

━━Reiさんのルーツであるブルーズと、彼らのルーツであるカントリーミュージックがクロスする仕上がりになりましたね。

今回の曲は「カントリー・ロック・チューン」と呼んでいるのですが、まさにそのミクスチャー具合は聴き応えがあると思います。

私のルーツであるブルーズって発祥を辿ると、いわゆる“ぼっち音楽”なんですよ。一人のブルーズマンが自分の憂鬱や記憶を歌い始めるところからスタートしていて。

でもカントリーは私の中でファミリーミュージック。みんなで一緒にやる音楽なんです。風通しがよくて、明るくて爽やかなイメージ。あと、ブルーズは元々黒人文化で、カントリーは元々白人文化。カルチャーの背景にも対比があって、その音楽性がクロスするのは面白いですよね。

━━そこである意味、対照的な2つのジャンルがクロスするのは確かに面白いですね。

亮介さん自身にシンパシーを感じることがいっぱいある、というのも大きいかもしれません。私が関西のブルーズコミュニティを心の故郷だと思っているように、亮介さんもカントリーミュージックを自分のルーツに持ち続けている。そのシンパシーはあります。

━━Reiさんがカントリーに興味を持ったのは?

亮介さんにドワイト・ヨーカム(Dwight Yoakam)を教えてもらってからですね。最近はブラッド・ペイズリー(Brad Douglas Paisley)というシンガー・ソングライターにハマっています。彼の影響でカントリーを聴くようになったし、ギターのフィンガリングをはじめ、新しいカルチャーに出会えたことは嬉しかった。もっとカントリーを知りたいと思いました。

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いろんな人のパーソナルな気持ちを受け止めるような、ゆとりのある曲ができた

━━“変化”という点でいうと、今回の“Don’t Mind Baby with 長岡亮介”では、日本語と英語のミクスチャーが『BLU』よりも、しなやかになっている印象がありました。そういった言葉の変化の違いを、Reiさん自身が感じることはありますか?

違うと思います。歌詞の面でいうと、この7年間は“日本語との格闘の7年間“だったので。英語と同じくらい、日本語で表現することに執着がありました。

英語と日本語は隣同士の部屋なんだけど、扉も窓もない分厚い壁で隔てられていて。遠回りしないとたどり着けない。でもこの数年をかけて、細い釘でずっと壁を崩していて、そこにやっと穴が空いたのが今。近いのに遠い、という言語のハードルが、徐々に無くなってきたので、歌詞もあわせて読んでもらいたいです。

━━それは、先日開催されたブルーノート東京でのセッションライブ<JAM! JAM! JAM!>でも感じました。そして今回の歌詞は、出会いありきの別れをテーマとした楽曲ですよね。

「出会い」には必ず「別れ」がある、というのがドライブのようだと思って。車に乗り込むということは、目的地にたどり着いたら必ず降りなければいけないわけで。でも、別れを知っているからこそ、今一緒にいる時間を大切にしたくなる。

今回、バンドの録音をした日にいろんな感情が入り乱れて。深夜2時に私のソロを録って、その日は終了だったのですが、最後は鼻水垂らして泣きながら録っていました(笑)。

━━なぜですか!?

感謝もありましたし、音楽を続けられていること、お互いがそれぞれの道を歩いていて再会したことの感動もありました。自分がちょっと大人になったからこそ話してくれたのかな、という亮介さんとの会話もあって。認められたじゃないですけど、自分がやっと対等になれた気がしました。

曲の内容と亮介さんと音楽を作る時間が、また再会するまでに出会いと別れを繰り返したことが走馬灯のように巡って。亮介さんには「なんで泣いてんの!」ってツッコまれましたけど(笑)。

━━ちなみに今回の楽曲のテーマは長岡さんとのコラボありきで決まったんですか?

曲自体は亮介さんをイメージしたのですが、歌詞は自分の大切な人が別れに心を痛めていて、その人に元気を出して欲しいなと思い書きました。

ただ、前作の(藤原)さくらさんとの楽曲でもそうでしたけど、今回の“QUILT”プロジェクトは何かを断定するのではなく、想像の余白を作るような曲にしたいんです。

離れ離れの恋人について歌った曲にもなるかもしれないし、友達の曲かもしれない。どちらかというと、私はこの世にいない人が助手席に座っていて、運転している誰かを見守っている気持ちで歌詞を作りました。カジュアルにも聴こえるし、死生観についての曲にも聴こえる。いろんな人のパーソナルな気持ちを受け止めるような、ゆとりのある曲ができたと思います。

━━それはジャケットで女の子の隣に乗っているのが、犬であるのも関係してきそうですね。

男性にしちゃうと亮介さんだって断定することになるし。見ている人が自分の大切な人と置き換えられるようにしたかった。亮介さんが白いシトロエンでよく現場にきていたので、その車に乗った女の子と犬。今回もバイカラーにして、私は「青」、亮介さんは「緑」で表現しました。亮介さんが愛用しているV型のギターも緑色だし、ペトロールズのアー写でも緑色のシャツを着ているから。

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今作のアートワークの元となった刺繍

━━過去のインタビューで「パーソナルな曲を作りたい」とReiさんが言った直後、キャリアの中ではもっともパーソナルな感情を描いたアルバム『HONEY』が完成しました。今回はそれ以上に、人々にとっての“パーソナル”に触れるような作品になったのではと思います。

確かに『HONEY』での気づきはありました!  私は自分のことしか歌えないと思ったし、自分が強く信じている感情を描くべきだなって。

今回、亮介さんと対話を重ねる中で言われた「(Reiは)スマッシュヒットしたいわけじゃないじゃん。いい音楽を作りたいタイプじゃん」という言葉に救われました。

私は「売れたい」という気持ちも人一倍あるタイプだけど、その「売れる」っていうのは、良い音楽を愚直に作り続けた結果の1つじゃないですか。

私が「いい音楽をやってる人」として亮介さんに認定されているという嬉しさもあったけど、同時に「世の中に迎合して音楽をやるのではなくて、自分の信念を持ちたい」ということを再認識させられた瞬間でした。『BLU』が今までの私にとってそういう作品だったように、これからもこの作品に立ち返ると思います。

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Rei – Don’t Mind Baby with 長岡亮介 (Teaser)

Text:Nozomi Takagi
Photo:Kana Tarumi
Hair & Makeup:Rieko Nakagawa

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Rei (レイ)

卓越したギタープレイとヴォーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2021年11月25日専門学校モード学園(東京・大阪・名古屋)新CM ソングの「What Do You Want?」、SOIL&“PIMP”SESSIONS とのコラボレーション楽曲「Lonely Dance Club」を含む 2ndアルバム”HONEY”をリリース。2021年2月26日 1st Album『REI』の International Edition が、US/Verve Forecast レーベルより全世界配信。

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Don’t Mind Baby with 長岡亮介

Rei
Reiny Records/ユニバーサルミュージック

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Reiny Friday -Rei & Friends- Vol.13

2022年2月18日(金)
東京キネマ倶楽部

1階 自由席 ¥5,500(tax incl./ドリンク代別) ※整理番号付き
2階 指定席 ¥6,500(tax incl./ドリンク代別)

LINE UP:
Act: Rei
Friends: 奇妙礼太郎

<公演に関する問合せ先>
東京公演: HOT STUFF PROMOTION TEL 03-5720-9999(平日12:00〜15:00)

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