――次の曲はRFさんとしては初のオリジナル曲です。タイトルの“Trane”はジョン・コルトレーンの愛称ですが、これはどういった経緯で?
板谷 この曲って、実はコルトレーンの特徴的なコード進行をモチーフにして作ってるんですよ。それから、真ん中にコルトレーンの“ネイマ”(60年作『ジャイアント・ステップス』に収録)をちょっとだけ挟んだりもしていて。
Farah そうですね。オリジナルの曲を作ろうとなった時に、メンバー内で曲のコンペをやったんですけど、そこで板さんが持ってきてくれて。そこからみんなで発展させていった曲ですね。
カオル ライヴでも最近はお客さんがどんどん盛り上がるようになってきていて、「オリジナルって重要だな」と思いましたよ。誰のものでもないから、それが自信にもなっていくというか。
成川 よくカヴァーをやってる人がオリジナル曲を作るとコケたりするじゃないですか? だから最初は怖かったんですよ。「ああ、エゴが出たよ」「やりたいことをやりたくなったんでしょ?」みたいに受け取られることもあるわけで。でもこの曲は、アルバムの中に並べてもどれがカヴァーでどれがオリジナルか分からないぐらいのところまで持ってこられたかもしれないですね。俺は別名“ボレロ”って呼んでるんですよ。「ダカダダッ、ダカダダッ、ダカダダッ、ダカダダッ……バーン!!!」みたいな(笑)
Farah 次のリアーナの“Diamonds”は、もともとは別の企画で一度録音したものだったんで、基本的にアレンジはそのままです。ただ今回のレコーディングでは素晴らしいアコースティック・ギターを使わせて貰っていて、レコーディングが始まりギターの最初の一音が聞こえてきたとき、「あれ? 何のギターが鳴ってるんだろう」って思わず身を乗り出しましたね。そういう意味でも録り直してよかった曲です。
Rihanna – “Diamonds”
――そして最後はまたサン・ラの“Door Of The Cosmos”が出てきてアルバムのラストを迎えます。
Farah これは他の曲を全部録り終わった後に、片づけていく途中でマイク一本で録りました。
カオル スタジオにパーカッションとかが置いてあって、カリンバとかもあったんで「じゃあFarahが演奏すれば?」という感じで、みんなで輪になって演奏したんですよ。
Farah だから、50~60年代のジャズみたいな録り方ですよね。ミュージシャンがふらっと集まって、その場の演奏を録音して。だからこそ僕らのリラックスした感じが出てると思いますね。
Sun Ra – “Door Of The Cosmos”Door Of The Cosmos
――こうして話してもらうとよく分かりますが、RFさんというバンドはやはりリミックス的なものに通じる雰囲気がありますね。みなさんがこうした手法や活動に惹かれるのは、一体なぜなのでしょう?
カオル (Farah氏の方を向きながら)やっぱり彼がDJなんで、持ってくる曲がミュージシャン的な視点とは全然違って、そこが面白いんですよ。そういう曲を共有したいっていう彼の気持ちを、僕らが発展させていくのがRFなんです。だから、彼がいなければまず今のようにはなってないですね。ただ、そんな中でも作品を重ねるごとに僕らもだんだんやり方が分かってきて、それでみんなが意見を言い始めてるのが今ってことなんだと思います。
だから今回のタイトルも『New Birth』という形になったんだと思うし、今は当初とは違って、ただの雇われミュージシャンとしてやってるわけじゃないっていう気持ちをみんなが持っていて。だから、これからは意見の食い違いも前より増えるとは思います。でも、それってむしろいいことだと思うんですよね。言わないとわからないし、ぶつかるって重要なことだと思うし。やっぱり、落ち着いてしまうと面白くないですから。
成川 うん、それは絶対よくないよね。
――この『New Birth』でも、意見を出しあってぶつかった瞬間はあったんですか?
カオル たとえば“luz da terra”なんかは、サビのところでギターが聞こえにくいんで、音色について色々と意見を出し合った部分はありますね。
成川 僕からすれば、ガット・ギターの領域での経験から自分なりに一生懸命やってるわけですよ。なのにみんなが「ダメ」って言うから、「じゃあどうすんの?」ってお手上げ状態になって(笑)。でもそうなったからこそ、この曲ではサビでエフェクターを使って、新しい領域に行くことが出来た。結局そういうことだと思うんですよね。
――では最後に、今後についてやってみたいことや、今回『New Birth』を作ったことで感じているRFさんの新たな可能性などがあれば教えてください。
カオル それは沢山あり過ぎるんですけど、たとえばライヴにしても、今ってこれまで以上に地方に長く行かせてもらってるんですよ。この間も岡山に行ったんですけど、そこでは反応が全然違ったりして。最初はそれに驚くんだけど、その土地を観光してみると「ああ、なるほど」って理由が分かったりする。九州は九州でまた反応が違うし、いくら日本が狭いと言っても、土地それぞれの風土みたいなものってあるんですよね。そういう中で自分たちのアイデンティティの重要さを感じましたね。だから音楽にしても、元ネタがヒップホップだったらヒップホップにする、ラテンだったらラテンにするということじゃなくて、自分たちなりの解釈を曲に与えることが重要なんだと気付いたりもして。あとは、音色にもこだわりたい。マイクで録った音と生音で聴こえる音って違うと思うんですけど、マイクを通して録った時に入ってる音が伝わるように演奏出来ればより面白いことになると思いますしね。
板谷 僕はオリジナルをもっと作りたいな。
――ゆくゆくはオリジナル曲だけでアルバムを作るという可能性もありますか?
板谷 そうですね。それもあると思いますね。
成川 いや、どうかなぁ。カヴァーは続けると思いますよ。その面白さもあるわけだから。やっぱり「いい曲」ってあるじゃないですか。それは柔軟に取り入れたい。今って多様性の時代だし、「こうじゃなきゃ」っていうよりは、様々なものが混ざっている方が面白いと思うし。あと、俺は思うんですけど、どれだけ編集を加えたり新しいことをやったとしても、結局1枚目から変わってない部分ってあるんですよ。だから変わっていく部分と、全然変わってない部分もあって。そのどっちかを取るのではなくて、「それでいいかな」と思うんですよね。
Farah 現状ではカヴァーとオリジナルは半々ぐらいと考えています。僕もオリジナル曲には可能性を感じますし、もっとやりたいと思っています。でも同時に、カオルさんが言った音色のことも含めて、カヴァーでもまだ出来ることは沢山ある。それに、僕らの音楽を聴いてくれる人たちの中には、その2つの要素が好きな人たちがそれぞれいると思うんです。だから、新しいこともしたいし、僕らの音楽を支持してくれた人たちも大切にしたいですね。
カオル さっきナリさんが言ったことが本質を突いてるんですけど、結局、このバンドってリーダーが不在なんですよ。Farahが発起人ですけど、彼がリーダーシップを強烈に発揮するタイプではないので、みんなでアイディアを出し合いこういうアルバムが出来てる。だからさっきの話でも、「オリジナル曲だけでアルバムを作っていいんじゃないか」と思う人もいて、僕もそう思ったんですけど、一方でそうじゃない人もいるという感じなんですよ。
Farah やはり、1人の意見よりも、全員の意見を引き出してモノを作る方が楽しいですからね。リーダーシップを取ることの重要性は、理解はしていますが、それだけが物作りのアプローチではないなと。
カオル いやいや、それは言い訳でしょう(笑)。
成川 この感じね(笑)。それでいいと思うし、僕らは先のことがどうなるかも特に限定するつもりはないんです。でもその中で、「もしかしたら新しいことをしてるかもしれない」と感じられるのが、僕が思うこのバンドのいいところなんだと思いますね。
(text&interview by Jin Sugiyama)
Event Information
RF Tour
初の全国ツアー集大成となるワンマンを渋谷JZ Bratで開催!
2014.11.08(土)@渋谷JZ
1st:OPEN 18:00/START 19:30
2nd:START 21:00
※時間が通常と異なります。
ADV¥4,000 DOOR¥5,000
その他ツアー日程
2014.11.21(金)@京都Urbanguild
2014.11.22(土)@津山Dot Cafe