今年1月にPIZZA OF DEATHとのマネージメント契約およびポニーキャニオンからのメジャーデビューを発表し、「サバの日」にあたる3月8日に1stアルバム『覚悟を決めろ!』をリリースしたサバシスター。フレッシュでポップ、それでいてパンク譲りの反骨精神も感じさせる『覚悟を決めろ!』の14曲は、DTMをベースにしたソロアーティストの活躍が目立つ2020年代において、バンドの楽しさや痛快さをもう一度世の中に知らしめるものであり、なち、るみなす、GKの3人が活動開始からわずか2年で躍進を遂げた理由を雄弁に物語っている。今回、彼女たちがなぜ楽器に魅せられたのかについて聞くとともに、それぞれが進化を遂げてリリースされたニューアルバムについても語ってもらった。
INTERVIEW:サバシスター
メンバーを支える
自分が一番テンションの上がる楽器
──まずは、現在演奏している楽器を始めた経緯を教えてください。なちさんは小さい頃からピアノやギターを触ってはいたけど、バンドでギターを弾きながら歌うことを強く意識したのは、横山健さんを「HEY!HEY!NEO!」で観たときだったそうですね。
なち:音楽を聴いたり、歌ったりするのも好きだったし、ピアノを習ったりもしていたのですが、テレビで健さんを観たときに、それぞれのパートの楽器があって、それが合わさって構成される「バンド」というものを改めて認識しました。その中でギターを弾きながら歌を歌うことがかっこいいなと思ったんです。
──るみなすさんは中学生の途中で部活をやめて、母親から塾か習い事に通うことを促され、ギターレッスンを選択したそうですね。
るみなす:それまで吹奏楽部でホルンを吹いていたのですが、1年の終わりに辞めて。ずっとアニメオタクだったんですけど、そのときは「けいおん!」がすごく好きで、ギターをやってみたいなと思っていました。塾には行きたくなかったので、「ギターをやりたい」と母に相談したのが始まりです。「けいおん!」の中でもリードギターの中野梓ちゃんが特に好きで、ツインテールを真似したり、初めて買ったギターも中野梓ちゃんと同じギターでしたね。
──GKさんは小さい頃からクラシック育ちで、ピアノやバイオリンをやっていたけど、小学生のときに「太鼓の達人」にハマったのをきっかけに、中学生からドラムを習い始めたそうですね。
GK:もともとは母の勧めで、姉と一緒にバイオリンとピアノを習っていました。結局ピアノは3歳から高3まで続けて、ドラムは自分からやりたいと言って始めたんです。中学生のときはバンドというものをそこまで意識していなくて、毎週日曜日に1人でレッスンに行く程度でした。でも、高校生のときに違うクラスの子から、「ドラムやってるんでしょ?一緒にバンド組もうよ」と誘われて、そこからさまざまな曲をコピーするようになり、バンドにハマっていった感じですね。
──なちさんとるみなすさんが現在使っているギブソンのギターについて教えてください。なちさんが使っているES-335は横山健さんから借りているものだそうですね。
なち:ES-335は立っても座っても弾きやすいので、お借りしてからギターに触る機会が増えました。最初、ギターをどれにしようか迷っていたときに、健さんから「自分が一番テンション上がるものを持っていればそれでいいんだよ」と言われたんです。機材のことはあまり詳しくないので、「憧れの人のギターを借りている」ということもそうだし、色や見た目がかっこいいと思うものを自分で選んで、それを演奏することが一番大事だなと思い、今はES-335に支えられている感じがします。
──るみなすさんはなぜSGを選んだのでしょうか?
るみなす:私が一番尊敬しているギタリストがKEYTALKの小野武正さんで、その方と同じギターを使いたいと思ったのが始まりです。武正さんが弾くと武正さんのギターになるなというのをすごく感じていて、自分もそうなりたいと思ったし、いろんな面で尊敬できるプレイヤーです。武正さんが使っているギターをネットで見つけて以来、ずっとギブソンのSGを使い続けています。
──GKさんの現在の機材についてもお伺いしたいです。
GK:最近シンバル類をマイシンバルに変えたのと、レコーディングのときにブラックビューティーというスネアをお借りして以来、サバシスターの音楽にも自分の演奏にも合うなと思ったので、今そのスネアを取り寄せ中です。なちと同じく、私もシンバルを選ぶときに、音も大事だけど、最終的には見た目もかわいくて、自分のテンションが上がるものを選びました。
挑戦して進化を遂げたニューアルバム
『覚悟を決めろ!』
──『覚悟を決めろ!』でのプレイについても聞かせてください。なちさんは今回のアルバム制作でこれまで以上にギターの魅力にハマり、練習もするようになったそうですが、意識の変化はどういったきっかけがあったのでしょうか?
なち:きっかけのひとつは健さんにギターを借りたことです。私はもともと弾き語りをやっていて、アコギは高く構えることが多いので、手元が見えやすくて、エレキよりも弾きやすいと思っていました。ですが、ES-335はアコギを持ったときの感覚に似ていて、これなら私でももっと弾けるなと思ったんです。あと、私は基本頭の中で音楽を作り上げるタイプで、打ち込みはあまりしないのですが、頭の中で思い描くものをより正確に形にするためには、自分がギターを弾けなきゃまずいと思い、練習するようになりました。
──「覚悟を決めろ!」はリフもなちさんが作っていて、マイナー調だったり、リズムが4つ打ちだったり、新しい挑戦が詰め込まれた一曲になっていますね。
なち:基本的には「こういうことを言いたい」というメッセージが先行して曲を作るんですが、曲を作る動機が音や楽器に向かって行ったんだろうなって。「こういうことをやっているサバシスターかっこいいよね」とか「こういう曲をライブでやれたら楽しいだろうな」っていうのを、客観的に考えて作曲できるようになったと思います。
──「!」では初めてソロも弾いたそうですね。
なち:最初は一番だけしかなかったんですが、健さんが「サビがいいから、2番も作ったら?」と言ってくださって。ただ、一番の歌詞で既に言いたいことは言い切っている曲だったので、私は一番だけでいいと思っていたんです。それを健さんに相談したら、「ギターソロを入れて、それでサビをもう1回やれば?」と。それは自分の中にはないアイデアだったので、それならいいかもと思いメンバーに相談したら、「なちが弾けばいいやん」となり、ソロを弾くことになりました。
るみなす:もともと、なちが弾き語りで演奏していた曲なので、そこはやっぱりなち主体で演奏するのがいいのかなって。
──KEYTALKが好きな、るみなすさんからすると、「覚悟を決めろ!」のような4つ打ちの曲はもともとやりたかったタイプの曲だったんじゃないですか?
るみなす:そうですね。4つ打ちの曲をやるにあたって、KEYTALKや、前から好きだった邦楽の曲を改めて聴いてみたりして、「こういうノリを作るにはこういうアプローチがいいんだろうな」みたいに、判断材料にしていました。もともと4つ打ちの引き出しはたくさんあったので、すごくイメージしやすかったです。
──アルバムの曲の中で、自分にとって挑戦だった曲を挙げてもらえますか?
るみなす:私はライブキッズだったので、「ミュージック・プリズナー」の2ビートはもともと耳馴染みのあるジャンルではあったのですが、速いし、演奏するにはすごくハードルが高いと思って、手を出していませんでした。なので、今回挑戦するにあたって、他のバンドの速い曲をコピーしてみたり、高校生の頃にやっていた練習法でメトロノームを少し速めに設定し、それに慣れさせておいて、後から普通のインテンポに戻すというような基礎練をやり直しました。
──「ミュージック・プリズナー」の2ビートに関して、GKさんはいかがですか?
GK:私はこれまでああいう音楽は聴いてこなかったので、最初は「私にできるかな?」と不安があったのですが、たくさん練習して、今はすごく楽しめるようになりました。「覚悟を決めろ!」の4つ打ちも、「よしよしマシーン」みたいに一曲の中でフレーズがコロコロ変わる曲も、今までのサバシスターにはなかったので、新しい挑戦は多かったですね。「22」のフレーズ自体は単純なんですが、ハットの速さに追いつくように右手を鍛えたり、スティックコントロールはかなり練習しました。
発想力やものの見方の面白さが
純粋なクリエイティブにつながる
──ここまで楽器の話を軸にお伺いしましたが、音楽以外のクリエイティブについても聞かせてください。なちさんはもともとグラフィックデザインを勉強していたそうですね。
なち:昔から絵を描いたりものを作るのがすごく好きでした。で、専門学校を決めるときに、音楽系か美術系かですごく迷ったのですが、音楽は自分がプレイヤーとしてやる未来を想定していなかったのと、今所属している事務所のPIZZA OF DEATHでどうしても働きたくて、私が高校生の頃PIZZA OF DEATHの募集要項に「イラストレーターを使える人、優遇します」と記載があったのを見て美術系の専門学校に進学することを決めました。専門の先生にも「行きたい場所があって、そこに入れなかったらデザイナーになるつもりはないです」と言っていましたね。
──あくまでPIZZA OF DEATHに入る手段としてデザインを勉強したけど、結果的にはミュージシャンとして所属することになったと。でもバンドでもなちさんのデザインが生かされていて、今回のアルバムのジャケットもなちさんが作っているそうですね。
なち:「覚悟を決めろ!」っていう文字は鉛筆で書いたんです。専門学校でタイポグラフィの授業があったので、その技術を生かしました。前から『覚悟を決めろ!』というアルバムを出すなら黒にピンク文字がいいなという構想があったので、そのアイデアを実現できたのはよかったです。あと、メジャー一発目で顔は出したくないと思っていたので、文字だけっていうのはすごくこだわりました。
──なちさんはミュージックビデオの編集や監督もやっているそうですが、るみなすさんとGKさんから見て、なちさんの発想力や、ものの見方の面白さについてはどう感じていますか?
るみなす:なちは無意識で、これまでやってきた人が少ないやり方をやっているなとすごく思います。一見、ひとつの物事に対して歌っているように見えても、実は一筋縄ではいかないぞっていう感じがすごく好きです。
GK:自分が思っているもの、想像しているものをそのまま伝えようとしているから、すごく純粋だなと思っていて。私だったらもっと悪い意味で捉えたりすることでも、なちは純粋にものを捉えていて、それが歌詞とかにもつながっているのかなって。
──3月8日から23本に及ぶツアーがスタートしていて、ファイナルは7月10日の渋谷クラブクアトロでの初ワンマンになりますね。最後にここまでの手応えと、ファイナルに向けた想いを聞かせてください。
なち:ツアーが始まって、お客さんからの期待がすごくあるんだなっていうのは実感します。自分たちが音楽を届けに行くツアーではあるのですが、新しく出会ってくれた人も、これまでずっと応援してくれた人も、メジャーデビューを含め、今のサバシスターを応援しに、お祝いしに来てくれている空気を感じるので、それに対して今できることを出し切りたいです。ファイナルに関しては、クアトロに立つことは自分の夢で、「初ワンマンで初クアトロ」というのはずっと思い続けてきたので、すごく嬉しい気持ちです。20本以上のツアーはやったことがないので、不安もあるのですが、それを乗り越えた先のサバシスターがどうなっているのか、どんなことができるようになっているのかは未知の部分があるので、そこは純粋に楽しめたらいいなと思います。
Text:金子厚武
Photo:日吉”JP”純平
ARTIST INFORMATION
サバシスター
Vo./Gt. なち Dr./Cho. GK Gt./Cho. るみなす
2022年3月結成
心の中にあるトキメキやモヤモヤ、大切な人の大事なもの、そしてたくさんの感謝などを音楽に詰め込んだ歌詞と、 どこか懐かしさを思わせるメロディーでライブハウスを中心に活動中。Dr.ごうけがネット掲示板(ジモティー)でバンドメンバーを募集。 当時上京したてのVo.なちと出会い、その場でバンド結成。 その後、ごうけと同郷のGt.るみなすに声をかけ、3人組ガールズバンドとして2022年3月よりバンド活動開始。
BRAND INFORMATION
Gibson(ギブソン)
1894年の創業から130年以上にわたり、アイコニックな世界的ギターブランドとして業界をリードしてきたギブソンは、ジャンルを越え、何世代にもわたり、ミュージシャンとともにその時代のサウンドを形作ってきました。現在テネシー州ナッシュヴィルに本社を置き、モンタナ州ボーズマンにはアコースティックギターの工場を持つギブソン・ブランズは、ワールドクラスのクラフツマンシップと音楽業界での強いパートナーシップを軸に、楽器業界の中でもこれまで他の追随を許さない先進的な製品を生み出してきました。ギブソン・ブランズのポートフォリオには、ナンバーワンギターブランドであるギブソンをはじめ、エピフォン、クレイマー、メサ・ブギー、KRKなど、ミュージシャンに愛されてきた有名な音楽ブランドが含まれています。ギブソン・ブランズは、これからも何世代にもわたって音楽ファンがギブソン・ブランズの楽器によって生み出される最高の音楽を体験できるように、品質の向上、革新的製品、卓越したサウンドの実現に注力していきます。
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