塩入冬湖FINLANDS)が、5枚目のミニアルバム『大天国』をリリースする。これまでソロ作品は主に宅録で制作されていたが、本作では楽曲プロデュース・編曲に、塩入がかねてより敬愛していたいちろー(ex.東京カランコロン)を招聘。個性溢れる豪華なレコーディングメンバー達と、彩り豊かな作品を完成させた。

また、塩入としては、2020年に発表した前作『程』から今作までの期間で、FINLANDSは結成10周年を迎え、プライベートでは結婚・出産を経験と、公私共に大きな出来事を経ていくその道中で完成させた1枚でもある。

そんな彼女の今が存分に表れた1枚を紐解くべく、塩入といちろーの対談を実施。撮影の合間も終始会話が途切れることなく、賑やかで、それでいてお互いへの信頼の深さが窺い知れるインタビューになった。

対談:塩入冬湖 × いちろー

“自分の大好きな音楽家に丸投げしたらどうなるんだろうとか(笑)”

2年ぶりのソロ作品集『大天国』を作り上げた「狂気」と「愛」──対談:塩入冬湖 × いちろー interview230126-shioirifuyuko-ichiro-02
(L→R)塩入冬湖/いちろー

──お2人が初めて会ったのはいつ頃だったんですか?

いちろー 最初に会ったのは(新代田)FEVERだったよね?

塩入冬湖(以下、塩入) そうです。2017年でした。いちろーさんがFINLANDSのワンマンライヴを観に来てくれたんですよ。そこで初めてちゃんとご挨拶させてもらって。

いちろー そのときに撮った写真を、今回の制作のグループLINEのアイコンに使ってたんですよ(笑)。

──いまマネージャーさんに写真を見せていただいたんですが、お2人とも表情が固いですね(笑)。

塩入 初対面ではそうなりますよね(笑)。でも、2011年だったかな。私は個人的に東京カランコロンのライヴを観に行ったんです。それがめちゃくちゃかっこよくて、それから聴いていたんですけど……という話をいちろーさんにしたら、そのときのライヴがあまりよくなかったらしくて(笑)。

いちろー あの後、1年ぐらい引きずったライヴだったから(笑)。

──いちろーさんにとって、FINLANDSは気になる存在だったんですか?

いちろー YouTubeか何かで観て知った感じでしたね。それでライヴを観せてもらったんですけど、思っていた以上に硬派なバンドなんだなと思いました。そこはこの前、去年の12月にKT Zepp Yokohamaのワンマン(<FINLANDS TENTH ANNIV.〜記念博TOUR〜>)を観て、マジでFEVERの頃からやってることが1ミリも変わってない! と思って、ちょっと感動した(笑)。

塩入 そこはいいのか悪いのかですけど(笑)。でも、まだ伸びしろがあるってことで。

いちろー いや、いいんじゃないですか、そのままで。積み重ねてきたものの重みを感じられてよかったし、それがあってソロワークではまた違うことができるわけだから。

塩入 そこは本当にありますね。

──塩入さんは、2021年にFINLANDSで『FLASH』を発表された際に、これまでは自分達の扉を開けてきてくれた人達に向けて歌っていたけど、自分から扉を開けていこうと思ったというお話をされていましたよね。そういった開かれたモードがソロにも繋がっていた感じだったのか。あとは、ソロで発表された前作の『程』から今作までの期間で考えると、結婚や出産といった大きな出来事があり、そこでいろいろ考えることがあったのか。どんな気持ちで今回の制作を始めたんですか?

塩入 今回はそういうことをまったく考えなかったんですよ。パソコンと向かい合ってギターを弾いて曲を作っていると、すごく楽しいんですけど、やっぱり凝り固まっていくんですよね。必ず選ぶ音とか、歌い回しとか、符割りとかが出てきて。それは自分の好きなものではあるけど、これから先もずっと音楽を作っていきたいと思っているからこそ、もっといろんなことを知ってみたいなというのを、ここ2、3年ぐらい思っていて。

──なるほど。

塩入 そのために、いろんな音楽を聴いたり、新しい作り方を調べたりすることもできるけど、それよりも誰かと会話をしたり、一緒に作ったりしたほうがおもしろいし、手っ取り早くいろんなことを知れるんじゃないかなって。だから、本当にそれだけですね。新しい経験をしてみたいとか、悪い言い方ですけど、自分のぴろんぴろんなデモを、自分の大好きな音楽家に丸投げしたらどうなるんだろうとか(笑)。そういうワクワク感とか、興奮とか。それ一択でした。

──いち音楽家として純粋な興味と、欲望と。

塩入 もう本当にそれしかなかったです。セールスとかそういうものは、後からついてくればいいやって。作っているときから楽しすぎたし、そのままマスタリングまで終えられて、これはめちゃくちゃいいものになったから聴いてもらえるだろうなっていうぐらいの気持ちでしたね。

──作っている最中から「大天国状態」というか。

塩入 そこはもう制作が始まったときからずっと「大天国状態」でしたよ(笑)。

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音楽に対する「狂気」

──最高ですね(笑)。いちろーさんというソングライターのどういう部分が好きだったんですか?

塩入 私はいちろーさんの狂気的なところが好きなんです。カランコロンって、大衆性もあるけど、すごくコアな部分もあって。聴く人が聴いたらびっくりするバンドですけど、いちろーさんは穏やかで、爽やかで、シュっとしているのに、めちゃめちゃ狂気的だなと思うところを随所に見受けられて。

それはファンとして聴いていたときにも感じていたんですけど、こうやってお話しさせてもらうようになってから、より感じるようになったんですよ。ああいった狂気的な振り切り方って、普通は気を衒ってやることが多いと思うんですけど、いちろーさんはそれをナチュラルにやっていたんですよね。そう思ったら、俄然カランコロンの音楽に興味が出てきて。

──いちろーさん、狂気的とのことでしたけど。

いちろー やめてください、そういうこと言うの。俺が狂ってるみたいな(笑)。

──しかもナチュラルに(笑)。

塩入 ははははは(笑)。

いちろー 俺、ちゃんと仕事しますよ?

塩入 めちゃめちゃちゃんとしてます。そのちゃんとしてるところが狂気的というか。たとえばひとつの音に対してのこだわりとかも、私としてはそれをどうでもいいと思っているんじゃなくて、気付かないんですよ。でも、いちろーさんは絶対に気付くんですよね。一緒に楽曲を作っていく中で、これはいちろーさんにはどう聴こえているんだろうと思うことがかなりあって。

いちろー でも、そういうものはみんなあると思うよ? 他の人を見ていても思うんだけど、どうでもいいところに延々と時間を費やしたりとか。

塩入 それがその人の個性であり才能で、そこを突き詰めていくところが私の言う「狂気」というか。それって育てていこうと思っても、なかなか得られないものだと思うんです。それを知りたかったというか、一緒にやることで経験してみたかったんですよね。

──「ぴろんぴろんのデモを丸投げ」という表現をされていましたが、まずは塩入さんがラフなデモを作って、それをいちろーさんに投げるというのが基本的な流れだったんですか?

塩入 そうですね。歌とギターだけとか、そこにちょっとリズムを入れたぐらいの、いつもだったらもうちょっと作ったほうがいいかもな……って思うぐらいの状態のデモを渡す感じでした。

いちろー これまでのアルバムは、できあがったら冬湖ちゃんが送ってくれていたから聴いていたんですけど、話を聞いて衝撃だったのが、アレンジ含めて全部自分でやっていると言っていて、すごいわね、と。でも、あそこまで作り込まれたものを渡されると、それをブラッシュアップするぐらいしかできないので、ラフな状態で渡してくれたのはありがたかったです。冬湖ちゃんが望んでいた、自分の好みというある種の柵を壊すところまではいかなかったと思うので。

塩入 でも、1日、2日は恥ずかしかったですけどね。ぴろんぴろんのデモを送っちゃった……って(笑)。

──収録曲の中で“ランサー”を先行配信されましたが、これが最初にお2人で作業された曲ですか?

いちろー そうです。細かい部分は歌詞を読み込んで色付けしましたけど、全体の流れは、最初にデモを聴いたときに浮かんだものがそのまま形になってますね。そこは演奏メンバー含めて。

塩入冬湖(Shioiri Fuyuko)「ランサー」Music Video

──最初に聴いた段階で、「弾いてもらうならこの人」というところまで見えたんですね。

いちろー そうですね。そのメンバーを提案したら、「いいですね」と言ってくれて。

塩入 ゲイリーさん(ゲイリー・ビッチェ/モーモールルギャバン、ヤジマX)は特にそうでしたね。“ランサー”って、そんなに明るい曲調でもないけど、ゲイリーさんのお名前が挙がったときに、妙にしっくりくるおもしろさがあって。私はモールルもすごく好きで聴いていたんですけど、ゲイリーさんは、なんていうか、ちゃんと身体と心で叩くタイプの方というか。

いちろー まあ、野獣だよね。

塩入 いま言葉を濁したのに(笑)。

いちろー アレンジ的に、曲の前半をプログラムっぽい感じにして、最後にどれだけ人間味を出せるかの勝負だったので、限りなく動物的というか、野性味のある演奏となるとゲイリーさんかなって。あの人、あんなにキレイなレコーディングスタジオで、メガネ、半パン、裸足でウロウロして、ケータリングのカレー食ってたから(笑)。

塩入 愛おしみがすごい!

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対話から広がった『大天国』の構想

──今作を聴かせていただいた印象として、シンプルに「愛」という言葉が浮かびました。歌詞に出てくる《あなた》への想いが溢れ出て、止められなくなっているのを感じたんですけども、いちろーさんはデモ段階からそういったものを感じました?

いちろー めちゃくちゃ感じましたね。「ラブラブやなぁ」みたいな。ウザいなって思うぐらい。

塩入 私は制作中にウザがられていたんですね(笑)。

いちろー なんか、インスタのクローズドのストーリーみたいな感じ(笑)。でも、どれも愛ゆえの不安とか、寂寥感とか、祝祭感とか。すべて愛に起因してはいるけど、それは決して不幸なことではないので、全体として悲しげな感じにはあまりしたくないというか、ならないだろうなとは思ってましたね。

塩入 “ランサー”で自分が言い表したかったことって、言語化するのが難しいなと思っていたんですよね。そのときにいちろーさんが「この曲ってこういうこと?」って送ってくださったんですけど、それがちょうど電車の事件があったときで。

いちろー ああ。小田急線のね。歌詞を見たときに、あの事件のことが頭に出てきたんですよ。たとえば、自分が家にいて、好きな人はちゃんと帰って来れるのかな、もし同じ車両に乗っていたらどうなっていたんだろうって、主人公が考えているように感じて。要は、愛しているからこその不安みたいなもの。実際はちょっと違ったんだよね?

塩入 いや、すごく言い当てていたというか。前に読んだ小説に、旦那さんがごみ収集の仕事をしていて、仕事中にガラスで手を切らないか毎日心配している人の話があって。そのときは、そんなことまで心配して生きていかなきゃいけないのって大変だなと思ったんです。でも最近になって、わかるかもなと思ったんですよね。わかるようになってしまったというか。自分の家族に対して心配する局面が増えたし、自分が守られる立場じゃなくて、守る立場に年齢的にもなってしまったんだなって。

そういうことを書きたかったんです。自分の大事な人をどうにかして守っていきたいと思う気持ちとか、その人がもし何かの事件に巻き込まれたときに、私は許せるのかな、私はどうなってしまうんだろうなということを。だから、いちろーさんがあの事件に置き換えたときに、すごくわかるなと思って。そこからまた歌詞を書き直したりしましたし、『大天国』という作品の構想みたいなものも広がっていって。

──どんな構想が広がったんです?

塩入 『大天国』は、いちろーさんに声をかけた2021年から作り始めたんですけど、それまでに作り溜めていた曲は一切入っていなくて。だから、作り始めたきっかけになった“ランサー”みたいに、自分の現状を歌った作品にできたらいいなと思ってました。いまの自分を書き記すことの恥ずかしさは、昔よりはないかもしれないけど、やっぱりありますし、いまの気持ちがこの先変わっていくこともあると思うんですけど、私は現状がすごく好きなんですよ。いまの自分の人生とか、環境とか。

──その気持ちを表した言葉が、『大天国』。

塩入 最初は、いちろーさんと一緒に音楽を作ること、新しいことをたくさん知れるというその状況自体に『大天国』とつけようとしていたんです。でも、『大天国』という言葉を考えていくと、人が生きていく上で、最終的に天国に行くことがゴールなのだとしたら、それよりもいまのほうが私は好きだなって。そもそも、生きていく上でのゴールって何だろうと思うことが多いんですよ。なんか、ゴールも目標もないんだけど、とりあえず現状をよりよくするために世の中は進んでいるというか。でも、そうしている限り、満たされることなんてずっとないんじゃないかなと思うんです。死んだ後の天国も私には信憑性がないし、だったら私はいまが幸せだし、いまが大天国だなと思って生きているほうが、私にとっては幸せだなって。

──そういった話もレコーディング中にされたりしたんですか?

いちろー 「大天国」の話はしてなかったね。

塩入 基本的には世間話でしたね(笑)。引っ越しの話とか、子育ての話とか。今回、私はレコーディングメンバーと直接お会いできてないんですよ。

いちろー お腹の中に子供がいる状況で作っていたので、現場は僕がディレクションしていて。

塩入 全部取り仕切ってもらって本当に助かりました。

いちろー 歌入れのときはしこたましゃべってたけどね(笑)。

塩入 今回は歌入れが2回あったんです。1回目は臨月直前で、2回目は生まれた後。去年の12月とか。

いちろー しかも、生まれて、(FINLANDSの)全国ツアーをした後だよ! すごすぎるよね!? マジか! と思った。

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──ちなみに、1回目の歌入れで録った曲というと?

塩入 “ランサー”と“遠い星じゃなくたって”ですね。“不慣れな地球でキスをする”は、産前ギリギリまで作っていて、産んで戻ってきてから続きを作ったんですけど、最終的に子供の曲になりました。最初は自分のことを歌っているパーセンテージが高めの曲だったんですけど、帰ってきて作っているうちに自然と変わっていって。

──それは無意識的に?

塩入 どうなんだろう……意識してたのかな。出産したことに対しての感動とかではないんですけど、気づいたら変わってましたね、すごく。

──収録曲の中で、いちろーさんがアレンジの方向性に悩んだ曲はありました?

いちろー “昨日になれない私たち”は悩みましたね。なぜかというと、この曲を最後にアレンジしたからなんですよ。1枚まるごとまかせてもらうにあたって、雰囲気が似通っている曲があったり、並んでいるときにどちらかが損したりする感じにはしたくないと思っていたんですけど、冬湖ちゃんが送ってくるデモが、全部テンポが遅かったんです。

塩入 そうなんですよね(笑)。

いちろー それで自分の中での選択肢が若干少なくなっていたのもあって、けっこう迷いました。この曲は冬湖ちゃんも苦労してたよね。

塩入 めちゃくちゃしました。

いちろー この曲だけ、俺からのリクエストも多かったからね。アンプラグドライヴを生録りしたようなイメージで作ったんですけど、これまでの冬湖ちゃんのアルバムに、歌とアコギだけですごくいい曲がたくさんあるんですよ。それと同じことをしてしまうと、過去の楽曲と相違がなくなってしまうから、アコースティックといってもひとりでやっている感じではなく、みんなのグルーヴ感みたいなものを大事にしたいというのを、演奏の方達にも、冬湖ちゃんにもかなり言っていたので。

塩入 そこは言ってほしかった部分でした。普通は、演奏があったら歌がそのちょっと上にあるイメージだけど、この曲は全部をフラットにしたかったんです。そうなると、自分の癖とか、どうしてもやってしまうところを客観的に指摘してもらったほうがそっちに近づくので、言ってもらえて助かりましたね。それを経ても、やっぱり難しかったです(笑)。

──お話を聞いていて、お2人の信頼感や、本当に楽しみながら制作されたことが伝わってきましたし、そんな作品が『大天国』という名前で世に出るということが本当に素敵だなと思います。

塩入 音楽を作っていく中で、世の中に認知されなきゃいけないとか、売れるためにはこういう曲を作らなきゃいけないとか、いろんなことがあると思うんですよ。それを私が実践しているかいないかは別としても、そういう事実はもちろん心得ているつもりで。でも、それと関係なく、私は音楽を好きで作り続けているというのを忘れちゃいけないなと思う瞬間がすごくあって。やりたいと思うことをやっているのが、やっぱりバンドマンだと思うんですよね。そこを惜しみなくやらせてもらえた作品だと思うし、それを自分だけじゃなく、いちろーさんを始めいろんなアーティストの方々と具現化できたことは、このご時世においてすごいことだなと思うし、本当に素晴らしいことだなと思いますね。

──いちろーさんは、今回制作されてみて、改めて塩入冬湖というアーティストに対してどんなことを思いました?

いちろー 今回一緒にやる前から思っていたことなんですけど、冬湖ちゃんは……これは言い方に気をつけないといけないんだけど(笑)。

塩入 何!? 怖い!(笑)

いちろー なんか、「苦労人」っていうのは違うんだよ。要は、自分がちゃんとかっこいいと思うものを作り続けていて、それでちゃんと結果も出しているけど、それが世に浸透するまでには、それなりに時間がかかったなと思っていて。でも、目先の利益や数字を追いかけずに、戦って積み重ねてきたものがいまの結果になっているから、そこはもう本当に、この人は「強えな」って思いますね。このあいだもミュージシャンの友達と飲んでたときに、その人が人生で音楽に救われた経験があるかどうか、曲を聴いたらわかるという話をしていて。なんとなくそうじゃない人って、途中で音楽をやめてしまったりするんですよ。まあ、具体例は絶対に挙げられないですけど(笑)。

塩入 ははははは(笑)。

いちろー これも言い方がちょっと難しいんだけど、この人は音楽じゃなくてもよかったんだなって思っちゃうんですよね。それは、その人に才能がないと言っているわけじゃなくて、ビジネススキームとして音楽をやっているというか。音楽に救われた経験がある人って、音楽を裏切れないというか、完全にビジネスとして括ることを、たぶん死ぬまでできないと思うんです。僕としては、働く者として、社会に生きる者として、ビジネスで音楽をやることも、音楽に救われたから音楽をやることも、どちらも正しいと思うんです。でも、冬湖ちゃんは、ちゃんと仕事にもしているんだけど、完全にビジネススキームじゃないほうで音楽をやり続けているから、そこに対する尊敬はすごくありますね。

塩入 嬉しいなぁ。

いちろー だから、冬湖ちゃんの「強えな」っていうところは昔から変わっていないですし、それをより一層強く感じてます。お母さんになってからさらにすげえなって。

──そこも感じますか。

いちろー だって、産後半年で全国ツアーは、さすがに正気か!? とは思いましたよ(笑)。

塩入 やりたくなっちゃったんですよね(笑)。

いちろー その話もレコーディングのときにしてたんですよ。「次に音楽でやることがないと落ち着かない」って。それもすごいと思う。

塩入 忙しすぎるのは嫌いですけど、何かやることがないと希望が持てないというか。それが結局家族に迷惑をかけることにもなるし。だから、妊娠中は今回のソロがあることがすごく励みだったし、支えでしたね。いちろーさんにおまかせしていられる安心感もありましたし、絶対に大丈夫だと思っていて。本当にこの作品があってよかったです。

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Text:山口哲生
Photo:小林真梨子

PROFILE

塩入冬湖

FINLANDSのVo.Gt.として、精力的なリリース並びに様々なイベント、RIJF、RSR、CDJ、VIVA LA ROCK 等の大型フェス、全国大型サーキットへ出演する。
バンド活動と並行してソロワークも積極的に行っており、これまでに「特別になる前に」「落ちない」「惚けて」「程」と 4 枚のミニアルバムをリリースしている。
独特のメロディ、歌詞の世界観が話題となり、ソロ弾き語りワンマンライブも各地でソールドアウトとなっている。
adieu(上白石萌歌)の「よるのあと」「シンクロナイズ」「ひかりのはなし」、Salyu「Tokyo Tape」の作詞・作曲を担当するなど作家としても注目が集まっている。

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いちろー

東京カランコロンのギターボーカル兼コンポーザーとして2012年にメジャーデビュー。
ROCK IN JAPAN FES、COUNT DOWN JAPAN、RADIO CRAZYなど大型フェスに出演し、Zepp Diver City Tokyoでのワンマンライブはソールドアウト。
メジャー4thシングル「スパイス」はTVアニメ「食戟のソーマ」のテーマソングに起用される。2020年12月バンドは解散。

バンド活動中より他バンドのプロデュースやシンガーソングライターのプロデュース・アレンジ等も手がけ、バンド解散後は作曲講座やボーカルレッスン等も行う。

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RELEASE INFORMATION

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大天国

2023年1月25日(水)配信リリース
(2/4(土)東京キネマ倶楽部よりCDパッケージ販売スタート、通販情報は後日発表)

塩入冬湖
収録曲:全5曲(全曲作詞・作曲 塩入冬湖/編曲 いちろー)
01.ランサー
Cho.いちろー(ex.東京カランコロン)、Dr.ゲイリー・ビッチェ (モーモールルギャバン,ヤジマX)、Gt.及川晃治、Ba.鷲見こうた (ズーカラデル)、Key.カメダタク (オワリカラ,YOMOYA)

02. AWARD
Cho.いちろー(ex.東京カランコロン)、Gt.及川晃治、Ba.小西悠太(tacica)

03.不慣れな地球でキスをする
Cho.いちろー(ex.東京カランコロン)、Dr. 佐藤謙介、Gt.及川晃治、Ba. 小西悠太(tacica)

04.遠い星じゃなくたって
Cho.いちろー(ex.東京カランコロン)、Dr.ゲイリー・ビッチェ (モーモールルギャバン,ヤジマX)、Gt.及川晃治、Ba.鷲見こうた (ズーカラデル)、Key.カメダタク (オワリカラ,YOMOYA)、Vn.柴由佳子 (チーナ)

05.昨日になれないわたしたち
Cho.いちろー(ex.東京カランコロン)、Dr. 佐藤謙介、Gt. Tomoaki(EOW) 、Ba. 小西悠太(tacica)、Key. mamushi (EOW)

配信リンクはこちら

LIVE INFORMATION

塩入冬湖ソロバンドツアー「大天国」

2023年2月4日(土)
会場:【東京】東京キネマ倶楽部
時間:OPEN 17:30/START 18:00

2023年2月9日(木)
会場:【愛知】名古屋CLUB QUATTRO
時間:OPEN 18:30/START 19:00

2023年2月10日(金)
会場:【兵庫】神戸クラブ月世界
時間:OPEN 18:30/START 19:00

Live Member:
Vo/Gt:塩入冬湖
Gt:いちろー(ex.東京カランコロン)
Ba:カワノアキ(ar syura)
Dr:矢尾拓也
Key:青木康介(ENTHRALLS)

■チケット
全席自由
一般:¥5,500(tax incl./ドリンク代別)
学生:¥4,500(tax incl./ドリンク代別)
(※小・中・高・大・専門学生対象。入場時に学生証の提示が必須となります)

チケットはこちら特設サイト