ーーじゃあ、これが最後です。
おー、ポラロイド。
ーーちょうどいい話題ですね。今回、5000種類のCDジャケットを作ることになった経緯を教えて下さい。
ジャケットの案はデザイナーさんが出して下さったんです。色々な案があったんですけど、ジャケットを含めて一つの作品になるということをずっと言ってきて、そこにすごく力を使わせてもらっているんです。皆さんは私のCDを買うっていう選択をしていただいていると思いますけど、そこからさらに、皆さんに選択をしていただきたいというところで、ジャケットの種類をたくさん作ろうという話になったんです。自分だけのお気に入りを見つけて、それを手元に置いて大切にしていただきたかったんですよね。
ーーなるほど。初回盤と通常盤だけでなく、そこから5000通りもの選択肢がある。
単純に楽しいですし、しかも一期一会じゃないですか。ここのCDショップで見て、あっちのCDショップも行ってみたら、「やっぱり、さっきの写真にしよう」と思って戻ってくるかもしれないですし、何かピンときたところで、決断を下していくのが面白いなと。何が来るかをドキドキしながら待つっていうのも面白いですし、その手元に置いて下さるのが、私も持つことのできない世界で一枚だけのCDなので、それを楽しんでいただきたいと思いますね。
ーー先ほど、ご自身で写真を撮るという話がありましたけど、ご自身でもフィルムカメラを使っているんですか?
はい、NikonのF2ですね。
ーーフィルムが好きなのはどうしてですか?
もともと大学で写真学科だったんです。でも、撮るという作業だけじゃなくて、暗室で焼く作業が好きで。
ーー後行程が好きなんですね。
だから「光とかどうでもいい! 焼きでなんとかしてやる!」っていう感じでした(笑)。黙々と作業する、あの感じが楽しいんですよね。
ーー写真を生業にしようとは思わなかったんですか。
それこそ写真の大学に行ったのも、音楽の延長線上がいいなと思い、映画とか音響を選択して試験を受け、映像を切り取ったものが写真だから、写真も受けておこうと思ったんです。そうしたら、写真学科しか受からなかったんですよ(笑)。それで写真をやり始めたら、「面白いな。将来ジャケ写も自分で撮れるようになれたらいいな」って楽しくなって、就職活動の選択肢の一つとして、写真の道を一応閉ざさない方がいいなとは思ってはいました。もし撮るとしたら、ライブカメラマンとかになるのかなとも考えていましたね。
ーー撮った写真に対して結構厳しい目線なのかなと思うんですが。
はい、面倒くさがられますね(笑)。
ーー(笑)ご自身としては、シシド・カフカの写真はこうあってほしい、こうありたいってありますか。
コンセプトがしっかりしているのであれば、そこにグッと寄っていきますね。でも、画角とか、色合いとかにこだわることはないです。最初の設定がしっかり固まったら、あとは、偶然のものを狙っています。
ーー今回はトータルで7000パターンも写真を撮ったそうですけど、ポージングとか小道具とかは撮っていく中で派生していったものですか?
最初に結構な勢いで用意しましたね。小道具はたくさんありましたし、泣く・笑う、目・鼻・耳を塞ぐっていうパターンを全部書き出して、やったものを順に消していきました。それから、「これとこれを組み合わせたら面白そうだね」っていうアイデアを出していって、スカーフを巻く、投げる、振り回すっていう動作に変わっていく、そんな枝分かれがありましたね。
ーー何日かに分けて撮影したんですか?
1日ですね。スタジオに籠っていたのが14時間で、実際にシャッターを切っていたのが7時間ですね。
ーーうわー、そんなに時間がかかっているんだ。
でも早かったですよ。迷っていられないので、知らなかったポーズも出来ましたからね。ピースなんて普段やらないけど、とりあえずやっておこうみたいな。だから、普段見られないのもいっぱいあります。
ーー特に気に入っているカットってありますか?
それこそさっき言ったスカーフの大きいものを上に投げると、全部違う感じで落ちてきたんですよね。投げる度に違う感じに落ちてくるのがすごく綺麗でした。
ーー撮られるときにいつも意識していることって何でしょうか?
背筋を伸ばす…ぐらいですかね(笑)。慣れているわけではないんですけど、恥ずかしさは出てしまうと思うので、恥ずかしがらない、腹を括るっていうことですかね。
ーーその意識は、撮られることによって強くなったんですか?
昔、カットモデルをしていたときは、髪の毛を綺麗に見せることを意識すればよかったんです。
ーー今はシシド・カフカを撮られているわけですもんね。
そうなんです。でも、シシド・カフカとしてのはじめての撮影のときは、「写真、撮りましょう。ポーズとって下さい」って言われた時は何も出来なかったですね。それにはびっくりしました。今回はそんな事も無く、楽しみながら撮りました。