いま、絶対に見過ごしてはいけないアーティスト。それがシシド・カフカだ。街ですれ違ったら誰もが振り返るであろうエキゾチックな美貌と、どこかミステリアスで凛とした佇まい。175cmのしなやかな肢体から叩き出されるドラミングは男性顔負けのパワフルさで、独特の言語感覚に溢れた歌も一発で記憶に刻まれるほどキャッチー。モデルや女優といったサイドワークにも積極的に挑戦し、マルチな才能を次々と開花している彼女だが、あくまで根底にあるのは「ミュージシャン」としての自分だという。
そんなシシド・カフカが、メジャー・デビュー作「愛する覚悟」に続く2ndシングル「music」をリリースする。ナヨナヨした草食系男子のケツを蹴り上げ、悩める女子には勇気を与えるような、小細工なしの直球ロックンロールがとにかく気持ちいい作品だ。そして収録された全3曲には、間違いなく彼女の「リアル」が詰まっている。本サイト初登場となる今回のインタビューでは、アーティスト名、南米、ボンゾ、山口百恵…etcといった彼女のルーツから、新曲のエピソード、果ては今後の野望に至るまで、ズバリと訊いてみた。衒いのない発言と、意志の強いまなざし。シシド・カフカはハイプなんかじゃなく、本物だ。
Interview:SHISHIDO KAVKA
シシド・カフカの武器はドラム
――Qeticには初登場となりますので、まずはカフカさんがどんな人物か? ということを読者に知ってもらいたいと思っています。「カフカ」という名前はコピーライターの渡辺潤平さんに付けてもらったそうですが、なぜスペルがフランツ・カフカとかの「KAFKA」ではなく「KAVKA」に?
えっと、フランツ・カフカは名前としての「カフカ」なんですけど、(チェコ語の)コクマルガラスのスペルが「V」だったんですね。私がいつも黒の洋服を着ているイメージと、カラスが結びついたみたいで…。もうかなりの愛着がありますね。
――「メキシコ出身」というプロフィールもズルいくらいカッコイイのですが、もしかしてスペイン語もいけたりするんですか?
中学生時代にアルゼンチンに居たので、その時に習得したんですけど…。やっぱり日本では使う機会がないので忘れてしまいました。
――てことは、どれがネイティヴの言語になるんですかね? 歌詞も不思議な言語感覚をお持ちですが…。
日本語です。日本語しか喋れません(笑)!
――ドラマーになったきっかけは、小学生の時に見たテレビの音楽番組だったそうですね。その「影の立役者」みたいなところに惹かれたそうですが、今はバンドの一員ではなくソロのドラムヴォーカルとして注目されています。何か心境の変化が?
その当時に感じていたドラマーの「美学」っていうのは今はまったくないんですけど、ヴォーカルだけでやっていた時に、ソロでのデビューが決まりました。ただ、現在一緒にやっているメンバーはその時代から一緒にやってきてくれた人たちなので、彼らと音楽活動ができていることは大きな喜びですね。
――「叩きながら歌う」というスタイルに決めたのは、ドラムがあるからこそ本領発揮できるから?
もちろん最初はヴォーカリストとしての活動をしていたんですけど、「シシド・カフカの武器って何だろう?」って考えたらやっぱりドラムが叩けることだと。歌とドラムを一緒にやるっていうスタイルも最近はあまり見かけないですし、特にソロ・アーティストとしてはほとんどいないですから。
――アルゼンチン在住時代にドラムを始めたそうですけど、向こうでは師匠と呼べる人がいたんですよね。それは現地の人?
はい。アストル・ピアソラさんというタンゴの神様とも呼ばれている方がいらっしゃるんですが、その方のお孫さんがドラムを演奏されていて、スティックの握り方から一から伝授していただきました。
――すごい(笑)。そして日本に帰国後はThe Newsの3代目ドラマーとして活躍されましたが、当時から自分よりも先輩のミュージシャンたちと仕事されていたんですよね。個人的にカフカさんは「孤高」の存在だとも思っているのですが、逆に同世代でシンパシーを抱くミュージシャンっています?
同世代…というとあまり思いつかないですね。会ったこともない人に仲間意識を持つのも失礼かなとも思いますし(笑)。でも、ライヴで対バンしたバンドさんとご挨拶をさせてもらう機会はすごく増えましたね。あまり友達も多くないので、ありがたいです(笑)。
――では、もっともフェイバリットなドラマーって誰ですか? 自分のドラム・スタイルに影響を与えた人物とか。
一番となると、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムかもしれませんね。The Newsのメンバーが彼のファンだったのもあって、いつも「ボンゾになれ!」と言いながら育ててくださったので(笑)。当時は私自身が好きだったからとかは関係なく、ただ単に考え方として面白いなーと思っていました。The Newsでは色んなことを、ただひたすら吸収させてもらってましたね。
――そしてカフカさんは山口百恵さんの大ファンで、“絶体絶命”や“ロックンロール・ウィドウ”のカヴァーも残していますよね。世代的にはもちろん後追いだと思うんですけど、どんなキッカケで百恵さんを知ったんでしょうか?
越路吹雪さんのカヴァーをやりたいと言った方がいたので、とあるパーティーで披露したんですよね。それでせっかくなので歌詞をしっかり読んでみたら、こっち(歌謡曲)の世界も面白いぞ…ってどんどん掘り下げていくうちに、山口百恵さんにどっぷり浸かった感じです。