卓越したドラマー&シンガーでありながら、同時にモデル/女優業でも幅広く活動するソロ・アーティスト、シシド・カフカさん。実はカフカさんは、大学で写真を勉強していた経歴の持ち主です。そこで今回は、最新作『トリドリ』のリリースを控え、5月からはライブハウスツアーも決定している彼女に、写真にまつわる思い出やチェキの魅力、意欲作となった新作について語ってもらいました。この企画を通して写真への熱が再燃したというカフカさん。写真学科出身ならではの美しいチェキプリントの数々も、お楽しみに。
Interview:シシド・カフカ
――カフカさんはもともと、大学で写真学科を専攻されていたそうですね。
そうなんです。4年間、大学の写真学科に通っていたんですよ。もともと音楽をやりたかったので大学に行く気はなかったのですが、「今時のミュージシャンは全員大学を出ている」と母親に騙されて……(笑)。受験したところ、写真学科に受かったんです。それではじめてみたら、面白くて夢中になってしまって。写真を撮ることの楽しさはその時に覚えたと思いますね。去年文化祭のライブで母校に呼んでもらう機会があったので、実は最近写真への熱が再燃しています。
――在学当時、写真のどんなところに魅力を感じていましたか?
私は撮るよりも焼く作業が好きなんです。暗室に入ってずっと写真を焼いていると、だんだんと映像が出てきますよね。その過程で色んなことを調整しながらものを作っていくことが楽しく、魅力を感じていました。
――もしかしたら、音楽で音色を調整したりする作業に似ていたのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。エフェクトをどれにするか選ぶのと同じですよね。当時の私は、写真を適当に撮っては「焼きで何とかする!」ということをずっとやっていました(笑)。
――写真を「撮る」という意味で、これまで行ってみて楽しかった場所はありますか?
私の場合、海外旅行は写真を撮るために行くような部分もあるんです。なかでも覚えているのはチェコですね。CMのお仕事で行った時に、プラハの修道院や市場を歩いて写真を撮ったんです。大道芸をしている人がいたり、子供がなにかに見入っていたりして、その様子を撮ったのを覚えています。
――海外と言えば、カフカさんは中学生のころアルゼンチンのブエノスアイレスに暮らしていましたね。あの街にも、写真を撮るのにおすすめの風景はありますか?
ブエノスアイレスだと、大通りから2~3本入った住宅地がいいと思いますよ。その辺りはいい意味ですごく雑多で生活感があって、人の息や存在が感じられるんです。もちろん、「南米のパリ」と言われるだけの場所もあります。ブエノスアイレスは色んな文化が混ざっていて、色んな表情を見せてくれる街なんです。
――日本だとどうでしょう?
日本だと、浅草とか巣鴨などの人がごったがえしているところがおすすめです。そういったところの方が、その国の色がよく出ているなと感じます。私の場合はその方が風景を見ていても楽しくて、フィルムがなくなるほど撮ってしまいたくなるんです。
――さて、今回はそんなカフカさんにチェキで写真を撮っていただきました。まずは率直に、チェキを使ってみてどうでしたか。
一眼レフとはピントが違うので慣れるのが難しかったのですが、それが逆に良い写真になったりして。その魅力を生かそうと思って、わざとファインダーを覗かずに手を伸ばして撮ってみたりしました。あとは、チェキはフラッシュをたかなくていい場合は自動でたかないですし、デジタルカメラと同じぐらいの機能がついているのもすごいですよね。
――カフカさんが撮った写真は、みなさんとても自然な表情をしているのが印象的ですね。
今回撮った写真を改めて見ると、自分は人が好きなんだなぁって思いますね。でも、何かにフォーカスするのも好き。余白があったりするのもいいし……。どんな写真が好きなのかを絞るのって難しいですね(笑)。あと、そのものの特性をいかに捉えて、「近づく/離れる」を判断するのも楽しいです。それに、写真を撮ろうと思っていると、いつもいるスタジオでも「あ、ここが面白いのか!」と気づくことがありました。写真には、そうやって日常の面白いところを見つけさせてくれる楽しさがあると思うんです。写真には自分のアンテナを鋭くさせるようなところがありますよね。
――なるほど。そうやって雑多なもののなかから魅力を見つけ出していくというのは、亀田誠治さんや織田哲郎さんを筆頭にさまざまな方とコラボレーションした最新作『トリドリ』の魅力にも通じる部分があるように思えます。
あっ、繋がりましたね(笑)。私はもともと同じメンバーと作品を作ることが多かったのですが、活動をしていくなかで色々な変化球を受けるうちに、自分の内から凝り固まったものを出すより「変化球を受けて100%で向かっていく」方が合っていると感じることが多くなったんです。今回の『トリドリ』は、そうして「多くの方と一緒に何かを作る」ことに挑戦した作品ですね。
――チェキが活躍する「パーティー」にも、さまざまな人が集まる場所ならではの魅力があります。カフカさんが大切にしているライブもそれに通じる空間のひとつですが、「ライブ」や「パーティー」に楽しさを感じるのはどんな時ですか?
ライブでいうと、やっぱりお客さんとキャッチボールができた時ですね。制作が大変でも、そのために頑張れます。来てくれた人がちょっとでも気に入ってくれて、笑顔を向けてくれたら、それだけでいいなと思います。パーティーやライブは、楽しさしか詰まっていない空間だと思うんですよ。他のアーティストの方のライブに行っても、私は10分に一回ぐらいお客さんがどんな顔をしているのかを見るんです。その人たちがいい顔をしていると私も嬉しくなったり、「みんなをそんな顔にさせてしまうこのアーティストの方はすごいな」と思ったりするんですよ。
――最新作『トリドリ』を4月27日(水)にリリースして、5月からはツアーが始まりますね。今回のライブはどんなものになりそうですか?
今回はライブハウスツアーということで、みんなと近いところで演奏ができます。原点に立ち返るというか、「みんなで汗を飛ばして、暑苦しいライブをやろう!」と思っています。