——今回のコラボ相手には日本のロックシーンにおける重要人物たちが関わっていますが、ご自身としては彼らに委ねた結果、どんな作品になったと実感していますか?
皆さんの“節”が好きでラブコールを送らせていただいて、そこに私自身がドラマー、ヴォーカリストとしても参加できたというのがすごく嬉しいですね。皆さんそれぞれがシシド・カフカとセッションするということを真剣に捉えて楽曲を作ってくださったので、私が知らなかった自分の中の扉を開けてもらえました。完成したものを聴いて自分でもびっくりというか。自分の知らない顔があるので、普段は自分の楽曲って作った後はあまり聴き返さないんですけど、今回のアルバムはすごく聴いていますね。
——では、セッションした5人のミュージシャンについて聞かせてもらえますか? まずは甲本ヒロトさんからいきたいのですが、カフカさんのプロデュースを手掛けている大島賢治さんはTHE HIGH LOWSのドラマーでもありましたよね。
ヒロトさんは、はじめてお会いしてコーラスを入れていただいたときに、初対面の私に向ける笑顔もスタッフさんへの気遣いもそうですけど、穏やかさと優しさが満ち溢れていましたね。もっとシャイで無愛想なイメージを勝手に持っていたんですけど、そうじゃないんだなって。大島さんがヒロトさんとTHE HIGH LOWSを一緒にやってたときのことを聞いたんですけど、大島さんの笑いを取りたいがために大島さんの好きなアーティストのTシャツをご自身で作って、ある日に着てきたんですって。気遣いというか、お茶目な人なんだなって結構ビックリしました。
シシド・カフカ「バネのうた」MV/Short Ver
——甲本ヒロトさんとの“バネのうた”と同じく、斉藤和義さんとの“Don’t be love”もMVになっている楽曲ですよね。
斉藤和義さんとは今回、一番長い間レコーディングしていて。歌詞も一緒に書かせていただいたのでいろいろとお話する時間が沢山ありましたけど、不思議でセクシーな人ですね。ステージで歌っているとき、MC、テレビで見ているとき、実際にお会いしても何一つ変わらない方なんです。
——ずっと、あの飄々とした感じの自然体な方なんですか?
そうなんですよ。和義さんに限らず皆さんそうでしたけど、一緒にレコーディングしていて、私がドラムを叩いた後とか歌った後、「どうだろうな?」ってリアクションを待っていると、必ず「イェーイ! いいねいいね!」って喜んでくださるんですよね。私が持ってきたものを必ず受け入れてくださったのがすごく嬉しかった。和義さんはわざわざブースにまで来て、「いいね!」と言ってくれて。和義さんは制作期間が長かったこともあって、いっぱい和義さんの曲を聴いて、どんなフレーズが好きなのか、どういうドラムを当てはめているのかをすごく研究したんですよ。考え抜いて自分なりの色を出したものを喜んでもらえたときは、ヤマが当たったというか、すごく嬉しかったですね。歌詞を書くときもすごく向き合ってくださるというか。2人で1時間くらい何もアイデアが出なくて、パソコンに向かいながら「何か出た? どうしよっか?」と一緒に悩んだ作業もまた楽しかったですね。
シシド・カフカ – “Don’t be love feat.斉藤和義” MV/Short Ver.
——KenKenさんは今回のコラボ相手の皆さんの中では最年少だと思いますが、アルバムの中ではインタールード的な楽曲というか。1曲目のカフカさんのインスト曲とはまた違うインスト曲に仕上がっていますね。
KenKenは私と同い年だと聞かされてショックでしたね。「うわ、同い年でこんなすごいプレイヤーがいるのか……」って。KenKenとは前から面識があって、去年の<COUNTDOWN JAPAN14/15>のステージにゲストとして出演してもらったことから、今回一緒にセッションしてもらいました。スタジオでセッションして、ベーシックなものをブラッシュアップして今回の曲が仕上がったんですけど、レコーディングが終わったと思ったら、「何か面白いものないかな」って素材を探し始めたんですよ。エンジニアさんのパソコンに入っている新しいソフトから声の素材を使って、好奇心と思いつきで完成した曲っていう感じですね。多分KenKenは、新しいものへの抵抗や恐怖心がないんだと思います。素直に面白いと思ったものに飛びつける人ですね。
Session Movie/シシド・カフカ – “Trans fatty acid – feat.KenKen(LIFE IS GROOVE)”
——アンテナ感度が高いんですね。渡辺俊美さんはどうでしたか?
俊美さんはほんとに穏やかで、お父さんみたいな方というか。でも、すごく鋭い言葉や視点を持っていて、心はパンクなんだなと思いました。俊美さんはドラムに関して一番リクエストがなかったかもしれないですね。俊美さんが作ってくださった土台の上に私がやりたいようにドラムを乗せさせていただいたという感じです。
——カフカさんの色を出すために、手放しのスタンスの人もいれば、提案して引き出そうとする人もいる。やり方は大きく分けて2つあるんでしょうね。そういう意味ではYO-KINGさんはどうだったんでしょうか。
YO-KINGさんもお父さんみたいな方ですね(笑)。最初のミーティングで「どんな曲がいいですか?」と聞いてくださって、「楽しい感じがいいです」とお答えしたんです。YO-KINGさんのデモ音源はそれこそギターと歌だけのものが届いて、他の方たちと違ったのはドラムなんですよ。他の方たちはドラムを含めてなんとなく雰囲気がわかるデモをくださったんですけど、YO-KINGさんは一番ざっくりしてました。なので、スタジオに入ってから構成を考えて、せーので合わせてみることからその場で全部作ってしまいましたね。受け入れるというスタンスもすごく感じる方ですけど、「もう一回やってみよう」と優しく仰って、これというものが頭の中にあれば絶対に離さないというか。「今のよかったよ!」と言って、気になった部分から広げていくという作業が印象に残っています。
——今回のコラボアルバムは、CD+DVD以外にCDのみのパッケージもリリースされますが、そちらには大橋トリオさんのピアノアレンジでの“Don’t be love”が収録されていますよね。
大橋トリオさんにはお会いしてないんです。最初に曲をもらったときは「え、私歌えるかな……」って衝撃を受けましたね。仮歌で大橋さんが歌ってくださってるんですけど、それが素晴らしくて、そのまま作品として出したいなって思うくらいでした(笑)。ピアノ一本だから合わせるのが大変で、声の出し方も違うので相当練習しましたね。和義さんと大橋さん、それぞれの“Don’t be love”が一枚に入っているというのがまた面白いですよね。