――構想は2年前からとのことですが、本格的にこのプロジェクト始動させるきっかけはいつだったのでしょうか。
〈ブルーノート〉75周年だった昨年の11月に、<KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭>で、主宰の方とお会いする機会があったんです。イベント内に〈ブルーノート〉のカヴァーアートを手掛けたフランシス・ウルフの作品展示が予定されてるらしく、その場で「KJMとコラボできませんか?」そう聞かれて、逆にこんな企画(KYOTO JAZZ SEXTETでブルーノートをカヴァーする)ありますよって話したら「それならぜひ、展示とリリースのコラボを一緒にできませんか?」となったんです。これがきっかけですね。フランシス・ウルフの作品展示があったというのは重要なポイントでした。
――それが昨年の11月で、そこからリリースまで凄いスピードですよね。
レコード会社の担当ディレクターに相談したのが11月末。実際の制作期間は12月の上旬から3ヵ月間くらいですね。
――ではメンバー構成はもとからあったんですね。
いや、11月末に担当ディレクターに相談してからです。メンバーには日本代表みたいに召集レターを送って……それでも3ヵ月でできました(笑)。
――3ヵ月でこのメンバーを招集して、さらにアルバムができるなんて信じられないです(笑)。
それでも、60年代の楽曲をカヴァーして最新のジャズを提案する。という目的がある中で、このメンバーでしか実現できないっていうラインナップが最初あったし、メンバーにもしっかり相談しました。それに召集レターを送った候補の中で、ベターじゃなくてベスト。奇跡的にトップチームができました。このメンバーはまさに日本を代表するミュージシャンたちだと思います。
――KYOTO JAZZ SEXETの”SEXTET”には六重項、六重奏など6という意味が強くありますが、この6とはゲストの菊地さんを含めて? それとも沖野さんを含めたオリジナルメンバーの6ですか?
この6という数字は凄く微妙な数字で、厳密にはバンドのメンバーは5人。そこに僕が入ることで6にもなるし、菊地さん含めても6にもなる。菊地さんが入って6なのか? 僕の存在を含めて6なのか? っていろいろ考える人もいると思いますが、あえて核となるメンバーは5人としています。最近は意味を考えさせられるプロジェクトあまりないじゃないですか? 聴く人が問われるような音楽・プロジェクト。そういうのにしたかった。
――沖野さんの本職はDJですけど、このプロジェクトではどういった役割なのでしょうか?
僕はヴィジョンを示す人。どの曲をカヴァーして、どうゆうアレンジをするのか。そして演奏のクオリティのチェック。この全部が僕の仕事で、OKを出さないと永遠に完成しないんです。監督ですよね。このプロジェクトは、“オシム・ジャパン”とか“ハリル・ジャパン”とかと同じ、“沖野ジャパン”です。
――ではプロジェクトの別名はジャズ日本代表、通称“沖野ジャパン”ということですね。
そうですね。このメンバーは海外のミュージシャンとわたり合えるし、オリジナルと聴きくらべてもらった時に比較されるのを前提にカヴァーしているので、望むところではあります。過去から今の音源も含め、全てを聴いたうえで僕からの提案です。僕はジャズだけじゃなくて他の音楽も聴いているので、それを踏まえて、いろいろな秘密や謎が仕掛けてあって、その謎解きをするのも面白いとおもいます。僕が一体なにを聴いて、このアレンジをおもいついたのか。そのネタ元があるので。生だからサンプリングはしていないけど、人力のサンプリングをしたんです。
――人力のサンプリングですか?
人力のサンプリングであり、人力のマッシュアップです。僕はいつも頭の中で、さまざまな音をサンプリングしてループして曲やアレンジを作っていくから、それぞれの曲に元ネタがあって、それを人力のサンプリングとマッシュアップで構成してる。聴く人はそれを見つけるのも楽しみにしてほしいですね。
――聴く人に楽しみを与える、これもアルバムのタイトル『ミッション』のひとつですね。
このアルバムには使命がドッサリ詰まっています。単に沖野修也のニューアルバムじゃなくて、聴く人に「今の時代に演奏されるべきジャズとは? 21世紀のジャズとは?」ということを考えてほしいんです。次作は完全にオリジナルで、まぎれもなく僕が1から作ったものになると思う。その時どう進化するのかも見届けてほしい。
『ミッション』ジャケット