――アナログリリースの発表もありましたよね。
はじめから全編アナログ録音でやりたい。そう考えていたんです。せっかく入口から出口までアナログでやってきたのに、もったいないなって。
――すべて生演奏、アナログでやったこだわり結果ですね。
かなりこだわりました。しかも、恥ずかしながら……実は音楽業界25年ではじめてなんですよ。SLEEP WALKER、MONDO GROSSO、KJM、COSMIC VILLAGE…すべてのプロジェクトで、かならず一度はコンピューターを通しているので。
――マスタリングやトラックダウンはひとりで立ち会ったと聞きましたが、このそうそうたるメンバーが揃っていながらなぜひとりでこなしたのでしょうか。
船頭が多いと、意見の対立や衝突があった時にまとまらないんです。僕はいままでに先ほど言ったプロジェクト、そのほかにもいろいろなプロジェクトをやっていますけど、ここまで強力にリーダーシップを発揮したことは初めてかもしれない。
――最終確認はメンバーみんなで?
してないです(笑)。アルバムがすべて完成してからです。メンバーには申し訳ないけど、このプロジェクトでは、僕の判断でやって、僕が全部責任を負います。やっぱりバンドっていうよりも、このプロジェクトは「ジャズ日本代表」ですね。
――おかしな表現かもしれませんが、このジャズ日本代表がもし他国と試合をすることになったら。
いいんじゃないですか。そういうことが当然だと思うし、誰がかかってきても問題ないです。それにこのプロジェクトのメンバーは、世代の幅もさまざまです。でも、あえて若手と組んだっていうのは今回のメンバーもそうだし、さらにはその下の若い世代を育成していきたいという想いがあるんです。監督は一緒だけど、メンバーはフレキシブルに変わっていくかもしれない。それぐらい緩やかです。でも、現時点で彼等が僕にとってのジャズ日本代表のベストメンバーだし、それに彼らも僕のミッションに賛同してくれました。
――若い世代にも目を付けているとのことですが、このプロジェクトは現在ジャズが流行っている中で若いアーティストやリスナーへ向けて提案の意味合いもありますか?
僕の中ではジャズはずっと流行っているんです。僕の中ではね(笑)。もちろん近頃、若い子がジャズに興味を持っているのも知っています。だけど、僕はいままで聴いてきた蓄積があるんですよ。それをしっかりと次世代に伝えたい。
――日本のレジェンドとしての使命ですね。
僕ら世代の前には、踊れるジャズをやってる人はいなくて、僕らの世代から踊れるジャズが出てきて、今バリバリやってる世代は、僕らの世代を聴いて育った「初めから踊れるジャズが普通だった世代」。踊れない音楽で、試行錯誤して踊らせていた世代と、あらかじめ踊れる音楽と知ってる世代が作るものって全然違うんです。「君たち、そんな甘い考えじゃだめだよ。」とか、そう思ってないかもしれないけど「とりあえずBPM125くらいで、4つ打ち踏んでおけば踊れるジャズになるでしょ?」そんな感じにも聴こえてしまうわけで。
――どんなジャンルでも、BPM125くらいなら踊れるんだな。というのは感覚でありますね……。
もうはじめからそういうことを知識として持ってるからね。でも、僕らの世代は何で踊ってくれるかもわからなかったし、自分たちがやっていることがジャズとも評価されなくて、とても辛く苦しい時代だった。
――その時の沖野さんは監督ではなく選手だったんですね。
その時はフィールドプレイヤー。というかマネージャーみたいな感じで水汲み役だったんです。その時の経験があるから、上から目線で教えるというよりも、僕らが持っている知識、思想みたいなものを受け継いで欲しいし、そこを叱咤激励して、彼らを最前線に送りだしたい気持ちがある。KYOTO JAZZ SEXTETで僕とやることによって、若手もいっきに世界の最前線にでられる。それでどこの国に行っても「もう沖野さんがいなくてもやっていけるよ」ってなってほしいし、どんどん卒業していって、僕はもっと若手を育成していく。学校っぽいかな。
――本当にKYOTO JAZZ SEXTETはバンドというよりプロジェクトですね。
例えば、ジャズの帝王マイルス・デイヴィスや、多くの新人を発掘したジャズ・メッセンジャーズのアート・ブレイキーもそうなんです。ジャズって誰か有名なプレイヤーのピックアップで新人が注目されて、それからコンボとかバンドを抜けて独立していく。だから僕の手法もジャズの歴史と一緒で、レジェンドのやり方に影響を受けているんです。
――リリース後のKYOTO JAZZ SEXTETの動きを教えてもらえますか。
まず<KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭>期間中、4月26日(日)に京都でライブ。東京公演は5月25日(月)で、その後は国内外で計画中です。
――そして、沖野さん個人とKJMの今後の展開も気になります。
KJMのリリースは僕はいつでもやる気満々ですよ! 弟のハードルが高くて、なかなかOKをだしてくれない。この15年間、数えきれないほどデモを作って、OKもらえたのは2曲です(笑)。このペースだとKJM、次作のアルバムリリースが70年後くらいで、僕は118歳ですかね……。後は弟に聞いてください(笑)。
――(笑)。今年の<Tokyo Crossover/Jazz Festival(TCJF)>の予定は……?
ドキっ(笑)。一応11月に日程2日間で仮押さえはしています。構想としては、日本代表対アメリカのレジェンドと試合みたいに、KYOTO JAZZ SEXTETと大物レジェンドクラスで対バンしたいなと。その時は親善試合感覚じゃなくて、国際大会として本気で挑みますよ。今年の<TCJF>は海外からもお客さんに来てもらえるようなブッキングにしたいですね。
――今年は自伝も出版しましたね。
四半世紀を振り返って、自分の中でけじめというか、区切りをつけてもいいかなと。自伝は2年前で終わっていて、その後、僕はこのプロジェクトを始める。KJMと名乗ってきたけど、その25年は自分名義でジャズアルバムを出していないんですよ。たまたま四半世紀をひとつの単位として区切れて、次の25年とは?というのがあったのかもしれない。
――沖野修也、KYOTO JAZZ SEXTET、KJM、<TCJF>……今後の活動がさらに楽しみですね。
KYOTO JAZZ SEXTETのライブは面白いですよ。僕が一体何をするのか? いろいろと秘策を考えておりますので……(笑)。
――気になになりますよ。沖野さんはライブで一体なにをするのだろうか……?
監督ですけど、バンドに有機的に絡んでいきます。楽器は演奏したりはしないけど、これはひとつのテーマなので。もしかしたら一番前で座っているだけかもしれないし…客席から「もっと前、前!」って指示だしたりしている……可能性もあります(笑)。そこは音源聴いてもらって、ライブに来てもらってからのお楽しみです。
KYOTO JAZZ SEXTET – 『MISSION』 album trailer
(interview&text by Mako Masaya[Social Designer Mako/Walkin Media “ennas”])
Event Information
KYOTOGRAPHIE presents
「KYOTO JAZZ SEXTET tributes to BLUE NOTE RECORDS」
2015.04.26(日)@ハイアットリージェンシー京都ザ・ボールルーム
OPEN 18:00/START 18:30
ADV:お一人様¥12,000(ディナー、ファーストドリンク付)
LINE UP: KYOTO JAZZ SEXTET(Guest 菊地成孔)
(Member:平戸祐介[Piano]、小泉”P”克人[Bass]、Hiderow[Trumpet]、レイモンド・マクモーリン[Tenor Saxophone]、藤井伸昭[Drums]、沖野修也[MC&SE]、Guest 菊地成孔[Tenor Saxophone])
沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)、沖野好洋(KYOTO JAZZ MASSIVE)
OPEN DJ:沖野好洋(KYOTO JAZZ MASSIVE)
第1部【沖野修也 x 菊地成孔トークショー】19:00 START
第2部【KYOTO JAZZ SEXTETライヴ】20:00 START
CLOSE DJ:沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)
主催:KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
*お席がなくなり次第ご予約の受付を終了いたします。
ご予約・お問い合わせ:ハイアット リージェンシー 京都 セールス&マーケティング
TEL:075-541-3161/Eメール:sales.kyoto@hyatt.com
Kyoto Jazz Sextet 『Mission』 Special Live 2015(Guest 菊地成孔)
2015.05.25(月)@ビルボードライブ東京
1stステージ OPEN 17:30/START 19:00
2ndステージ OPEN 20:45/START 21:30
LINE UP:類家心平(tp)、栗原 健(ts)、平戸祐介(p)、小泉P克人(b)、藤井伸昭(ds)、沖野修也(SE/MC)
GUEST:菊地成孔(ts)
料金:サービスエリア¥6,800 カジュアルエリア¥4,800
ご予約・お問い合せ:03-3405-1133
KYOTO JAZZ QUARTET LIVE SESSION
2015.05.2(土)@渋谷 The Room
OPEN/START 19:00/Live Start 20:30
LINE UP:Kyoto Jazz Quartet
(Member:平戸祐介(p)、小泉P克人(b)、天倉正敬(ds))
DJ:沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)