――ライヴ録音した当日のことを教えてもらえますか? これまでのスタジオ作品と違って、現場でハプニングなども十分起こりうる状況だったと思うのですが。
ジェイムス 最高だったよ。ライヴ・レコーディングの会場はロサンゼルスから車で2~3時間かかるところで、色んな場所から人が集まってくれたんだ。演奏されるのはまだ誰も聴いたことのない曲で、集まった中には僕らのことを知らない人も大勢いたんじゃないかな。そういうこともあって始める前はちょっとナーヴァスになったし、観客の中には「一体これは何だ?」と思っていた人もいたと思う(笑)。でも、僕らとしてはすごく楽しかったし、みんなも楽しんでくれたと思うよ。目の前でアルバムを録音してるって状況や、彼ら自身の盛り上がりが作品に影響を与えるってことも含めてね。そして観客の前でライヴ録音するという状況は、当然のように僕らの演奏にも影響を与えてる。会場に集まった観客のみんなが返してきた反応によって、こっちが音を変えっていったりもしてね。それが最終的にアルバムにとってのいい味付けになったと思うな。
『ウァール』ジャケ写
――当初想定していたものと実際の完成版とでは音が変化しているということですね。
ジャス ああ。録音が一通り終わった後、自分たちがロンドンのスタジオで準備した時のものと、ライヴ・レコーディングした当日のものを聴き返してみたんだけど、音にこもってるエネルギーや熱も全然違ってて驚いたよ。ロンドンでレコーディングした音源は聴き返してみるとかなり大人しかった。砂漠で録ったリハーサルのジャム音源にしてもそうだと思う。でもライヴ・レコーディングしたものには、バンドが新曲を初めて演奏する時の、アドレナリンが出まくってる感じがはっきりと出ていてね。3本並べてみると、思った以上にそれぞれの持ち味が違っていた。だから、基本はその3つを組み合わせて作ったけど、中にはそれぞれのテンションが違い過ぎてすべてワン・テイクを採用した曲もある。せっかく3回分の素材を用意したのにね(笑)。まぁでも、それでよかったんだよ。違う場所に行って録ったのに、全て同じ音になっていたら逆に腹が立つし(笑)。
――(笑)。とはいえ、ユニークな経緯で制作されたものでありながら、全体の雰囲気は緻密に構成されたスタジオ作品になっているように感じます。曲順や流れに関してはどんなことを意識したんですか。
ジェイムス 実は全体の流れに関しては、曲作りの段階ではあまり考えていなかったんだ。この曲順や構成はたぶん、ライヴ・レコーディングをする際に出てきたものだと思う。今回の僕らは自分たちのスタジオ作品を録音しながら、同時に目の前の観客を満足させなければいけなかった。つまり、ライヴのセットとして相応しいものにする必要があったんだ。静かなオープニングから徐々にビートが入ってきてリスナーを盛り上げていくっていう展開は、まさにライヴ的なものだよね。だから、「観客を迎えたライヴ中に行なわれる録音だ」ってことを想定してなかったら、まったく別の構成になる可能性もあったんだよ。