――話を戻しますが、シンガーソングライターとしてこれまで活動を続けてきて、SIONさんほどコンスタントに作品を出しているアーティストって、世界を見渡してもなかなかいないと思うんです。

なんなんでしょうねぇ(笑)。時々、「あれ? こういうことって前にも歌ったような気がする……」って思うんだけど、「でも、今の自分が思ったことだから」って。やっぱり、歌はどんどん書いていかないと、それがなくなったらさ……。何日か前の朝に、あるメロディが頭に浮かんで、「この曲、誰かが歌ってたな……?」って考えてみたら、加藤和彦さんの曲で。俺、加藤さんとは何のご縁もなくて、「加藤さんって確か天国に逝ってしまわれたよな」と思って調べてみたら、「創作意欲がなくなったら、僕はこの世にいてもしょうがない」っていう話をされていて。俺も同じで、歌を書いていないと焦るんだよ。誰かに頼まれてるわけじゃないんだけど、歌を書いて録音してないと俺も逝くしかないなって思うもん。

――「自分は常に何かを形にしてないとダメだ」っていうことは、別のインタビューでも仰ってましたね。

自分の暮らしも含めて、あまりに何もかもがぼわぁっとしてるからなのかなぁ? ひとつぐらいはちゃんとしたところを見せないとって。普通、この歳(54歳)で会社にいたら偉い人になってるだろうし、家にいたら子供が大学生だったりね。でも、俺は猫と暮らすのが精一杯なんですよ(笑)。人としてはかなり……ね。だから、俺は息をするために歌を書かなきゃいけない。

――先ほども話に出ましたけど、横山健だったりBRAHMANだったり、下の世代のミュージシャンがSIONさんを慕ってくれたり、歌い継いでくれているという。

いやぁ、かなり嬉しい。

――1月に横山さんのライヴを観たんですけど、アコースティックコーナーでお客さんからリクエストを募ったら「“がんばれがんばれ”っ!」という声があがって、それに応えて歌ったんですよ。SIONという名前までは認識してないお客さんも多かったかもしれないけど、曲は確実に刻み込まれてると思うんです。

面白いもんだよね。ありがたいことですよ。……こないだ大きな地震があって、テレビ画面に津波注意報って出たじゃない? 寝ててパッと起きた時にあれを見て、一気に戻った。俺、「あの時のことについて話してください」ってよく聞かれてたんだけど、「話せない」って答えてたんだよ。「俺は動いてないから」って。その頃、TOSHI-LOWだったり、健は飛び回ってた。……忘れもしない話があって。震災の2ヶ月後だったか被災地でのライブに誘われてね、「今は音楽どころじゃないだろう、まだ早いんじゃないか?」ってTOSHI-LOWに言ったら、「俺はSIONの歌を聴きながら、毎日車飛ばして行ってんだ。今、必要なんだ」って。……痺れたよ。あいつはずーっとそれを続けてるからね。健もちゃんと歌い続けてるじゃない? 男だよ。

【インタビュー】デビュー30年のSIONが語る—“俺は息をするために歌を書かなきゃいけない” interview150302_sion_sub2

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