オルタナティブフォークバンド・SISシス)が前作「死生」をリリースしてから4年。その間、メンバーそれぞれの人生には大きな変化があり、バンドは5人体制へ進化を遂げて再始動。そして2024年9月から続く、連続デジタルシングルリリースを経て、ついに完成したのが最初にして最新のフルアルバム『MEMENTOPIA』だ。

タイトルに込められた想い、楽曲に刻まれた経験、そして新たなメンバーとともに広がる音楽の可能性。SISが歩んできたこの4年間を、中目黒にあるメキシコ料理店Baja(バハ)にて、アルバムの発売を記念して展開中のクラフトビール「MEMENTOBEER」を飲みながら、バンドのフロントマンであるTxBONEと沢庵にじっくりと語ってもらった。

INTERVIEW
SIS

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アルバム完成まで新生SISが歩み、拓いてきた道

──いよいよアルバムリリースが4月16日(水)に迫りました。僕は昨年から、連続デジタルシングルリリースのプレスリリース用の文章を書かせてもらっていましたが、まずあらためてここに至るまでの過程や思いを聞かせてください。

沢庵:4年前というと、ちょうどコロナ禍に慣れた時期。世の中が一度暗いムードになって、夜明けを感じ始めている頃合いで、その期間は生きることと死ぬことについて、深く考えていました。

TxBONE:個人的な話だと、結婚も離婚も経験して、子供も誕生して、EPをリリースしてから目まぐるしい4年間だったよ。

沢庵:バンドや音楽関係以外の、クリエイティブな異業種の人たちと新しい出会いもたくさんありました。

TxBONE:新体制になり、自分たちで1からやっていく中で、いろんな人たちから力を貸してもらいました。バンドはメンバーが2人増えたね。 バンドとしてのコアはありつつ、いろんな人と関わることで得た、新しいエッセンスがバンドにもアルバムにも入ったなと思う。

──世界情勢や国内に目を向けると時代感として「死」がより身近に感じられるようになった気がしますが、いかがでしょうか?

沢庵:そう思います。同時に、新しい命の誕生もまたリアルに感じました。今までこの世に誕生してなかった命に出会ったり、一方でお別れもありました。 生き死にだけのお別れじゃなくて、自分たちの人生で疎遠になってしまうという意味でのお別れ。そして音楽を作ることも、一つの「命を生む」ような感覚があります。今回のアルバムは、そんな生と死の間で生まれた作品です。

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「カルボシステインめっちゃ飲んでた」新生SISの種が花開く

──ライブで歌われていた楽曲たちが、新しいアルバムに多数収録されてます。曲自体は前作をリリースした4年前から徐々に作っていったんでしょうか?

沢庵:種はあったんですけど、結局この4年がないと完成しなかったんだと思います。最初から出来上がっていて、出すのに時間かかったっていうよりは、納得のいく出来に仕上がるまでに時間がかかりました。

TxBONE:インスト曲も含め、内容は最後まで悩み抜いたね。

──制作自体はいつ頃から、動き出したんですか?

沢庵:アルバムのレコーディングとして、最初に楽曲のドラムを録ったのは一昨年(2023年)の9月頃。その年の年末にかけて数曲、ボーカルも録っていったけど、拓歩(TxBONEの本名)と2人で喉をやられちゃって。めっちゃカルボシステイン*を飲みまくっていた記憶があります(笑)。

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TxBONE:カルボシステインが欠かせなくなってた(笑)。声がガラガラで、気に入らなくて結局全部録り直したもん。

──アルバムタイトル『MEMENTOPIA』についても聞かせてください。

沢庵:もともとバンドの新しいプロジェクト名の候補として考えていたものなんです。“MEMENT”(=過去を思い起こさせるもの)と“TOPIA”(=場所)を組み合わせた造語で、気に入ってくれた拓歩が、足の指にガッツリ彫っていて。

TxBONE:バンドの名前とは別に、プロジェクト名を設けるべきじゃないかと模索してた候補の1つ。めっちゃいいじゃん! かっけーって。ちょうど10文字だから、10本に収まってさ。ほら(足の指を見せてくれる)。このタトゥーと共に地に足つけて人生歩んでいくみたいな思いで足の指に入れたんだよね。

沢庵:SIS(死生)を言い変えて、スケールアップしたイメージ。前回のEPが「死生」だったんで、次の作品としてちょうど良いフレーズが見つかった。 “生きる”ことを、よりシリアスに考えさせられる今の時代にもぴったりかなと思います。

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アルバムの軸を作る、個性が色濃く反映された楽曲たち

──制作にあたって、ターニングポイントになった楽曲はありますか?

TxBONE:まず、スペースシャワーさんのディストリビューションが決まって、最初に「腐る」をリリースしたこと。そこから制作が本格的に動き出した感じ。

「アメンボ」という曲は実は最も歴史が古くて、 SISの初期からやってる曲。俺が小学生の時に作ったピースがベースになっている曲なんですけど、作った当時「Don’t Forget Love」ってタイトルを付けていて、SISで活動してからもその曲名で演奏してた。まだ3人だった頃の時代に、TAKAYAとも相談しながら、もう少し大人っぽくブラッシュアップして再構築した楽曲だから、思い入れは強い曲だね。

沢庵:EP「死生」からの大きな違いとして、拓歩がアイデアやフレーズをたくさん出してくれています。今までは、コード感も自分が持っているものから作り上げることが多かったですね。

TxBONE:前作だと俺は「ケレモ」しかギター弾いてないもんな。沢庵と俺はチューニングが違うんですよ。

沢庵:拓歩はザ・オーソドックスなレギュラーのチューニングなんです。それでしか作れない曲の雰囲気があって、「青赤」のようなストレートなフォークソングは、自分のアウトプットだけでは作れなかったと思う。曲の出だしとかを聴いても、自分からは出てこない新鮮さがあるし、拓歩にしか出せない雰囲気があるというか。

TxBONE:病んでることも多かったからなー。

沢庵:拓歩は病んでない時はない(笑)。でも、あの曲がすごく好きで、結構励まされています。

TxBONE:闇多き人間ですから(笑)。

──連続デジタルリリースの最後を飾った「エントロピー」も重要な楽曲だとお聞きしてます。

TxBONE:当初は漢字読みのバンド名「死生」ってそのまま曲名に付けていたんだよね。

沢庵:まさにバンドを象徴する曲で、出会いと別れ、死と生について歌った曲だから。

TxBONE:「今日は君が 生まれてくれた日だよね」っていうフレーズが浮かんだ時、ベロベロに酔っていたけど、すぐボイスメモに録って膨らませた曲。

沢庵:そのワンフレーズが全て。そこからメロディも歌詞も全部作っていったよね。

TxBONE:そしたらある時「エントロピー増大の法則」って知ってる? って沢庵が言い出して、説明を聞いたら、まさにそれってこの曲じゃん! ってことでタイトルが「エントロピー」になって。

沢庵:俺も全部理解できているわけではないけどね(笑)。曲に通じる部分があったので話してみたら、気に入ってもらって採用されました。

SIS – エントロピー [Official Music Video]

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「これもアリなんだ」──“選択肢”が増えた今のSIS

──メンバーが5人になったことはバンドにどのような影響を与えましたか? 制作面での変化についても教えてください。

沢庵:5人体制になったことで、できることが格段に増えました。以前はデータを送り合いながら制作することが多かったんですが、今はスタジオで直接音を合わせる機会が増えました。

TxBONE:人と人、生身のやりとりが増えたよね。サンプラーを使って、その場でビートの抜き差しをしたりとか、音と表現の幅が広がったのが大きな変化かな。やり取りが増えて調整が大変という面もあるけど、以前は「これじゃなきゃいけない」という固定観念が強かった。でも今は「これもアリなんだ」と思えることが多くなったね。

沢庵:正解が一つではなく、完成に至るまでの選択肢が増えたことでバンドの可能性が広がった気がします。以前よりも柔軟に、いろんなアイデアを試せる環境になっていますね。

──あらためて5人体制になった経緯を教えてください。

TxBONE:大体いつも俺が突っ走っちゃうんだけど(笑)。今回は自然な流れで。前作「死生」を制作した際、アレンジの面白さを知ってから、当時は“ネオフォーク”と自分たちの音楽を呼んでいたんだけどーー。新しい音を取り入れるために、試行錯誤を重ねていった結果かな。

最近ライブでは同期演奏してるんだけど、5人の方がよりダイナミックで多面的な表現ができると感じたし、バンドとしての一体感も増すだろうと、信頼できる2人を誘ったのが経緯だね。あと、単純に人が増えた方が賑やかでいいなって。

──新たに加わったメンバーについて紹介していただけますか?

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TxBONE:UJI(E.Gt.)の明るさはバンドの雰囲気を変えてくれたよね。初めて会った時「海賊みたいな奴だ」と思ったけど(笑)。実際にその存在感やエネルギーが大きなプラスになっているし。

匠(Perc.)はもともと一緒にスリーピースバンドをやっていた仲間で、テクニックもあるし、建設的な考え方ができる。3人体制の終盤、バンドが少し停滞していると感じたときに、「このメンバーが加われば、もっと良くなるんじゃないか」と思って声をかけて。5人になったことは結果的にバンドにとってすごくいい変化になったと思う。

音楽が紡ぐストーリー SISの音に刻まれた“個人的な記憶”

──『MEMENTOPIA』には、フォークを軸にさまざまなジャンルを横断する楽曲が収録されています。その中で時間の経過や作品を通じたドラマ性を感じました。アルバムのコンセプトや、特にこだわった部分を教えてください。

沢庵:曲順についてはかなり、拓歩がこだわって最後まで考えてくれました。

TxBONE:何パターンも考えながら調整して、最終的に今の形になって。アルバムを通して聴くことで、一つのストーリーのようになってるんです。

沢庵:最初はポジティブな雰囲気の曲から始まり、次第に内省的になり、最後は深く沈み込むような展開になっています。この流れが、自分たちの心の動きをそのまま表しているように感じてもらえれば。朝から夜という時間経過や、もっと長いスパンでの人生の変化、年齢を重ねて心境も成熟していくそのありよう。いろいろなシーンで聴いてもらえる作品に仕上がったかと思います。

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──では、リスナーにはぜひ曲順通りに聴いてほしいですね。

沢庵:アルバムを通して聴くことで、より深く世界観に没入してもらえると思います。

TxBONE:密かなこだわりをバラすと、実はアルバム一枚通した秒数が43:21になってる。カウントみたいで面白いかなと。

──収録されている楽曲については、みなさんのライフストーリーが主に反映されていると思います。それ以外で何か制作において意識したこと、影響されたものはありますか?

TxBONE: ライブを大事にしているバンドなので、ステージを意識した部分は大きいかもしれない。例えば「疾走」はクラブでも盛り上がってもらえるような、エレクトロサウンドの曲調を取り入れたかったんだよね。

沢庵:アンセムだね。サッカーのチャントのような、みんなで合唱できるような雰囲気の曲を作りたくて。

TxBONE: 初めてスタジオで演奏した時から超楽しかった。ギターのストロークが最初から最後まで続くので、手が攣(つ)るかどうかだけが問題(笑)。「夢喰(ばく)」も結構昔からあった曲だよね。

沢庵:4年前くらいかな。レゲエを取り入れた楽曲で、SISは割と綺麗な曲ばっかりだったんで、少し怪しい感じの曲も作りたいなってずっと思っていました。

FF7(FINAL FANTASY VII)のスラム街のBGMがあるんですよ(「虐げられた民衆」・植松伸夫)。それが結構レゲエっぽいリズムで、ちょっと危ない感じがするんですけど 子供の頃に強烈に印象に残っていたんです。大人になった今良い感じに楽曲にブレンドできないかを考えました。ライブでも体が揺れて、オーディエンスも反応してくれるようなイメージです。

僕があと10歳年齢が若かったら、影響を受けたアーティストとしてマニアックな名前をカッコつけて挙げていたかもしれません。今は割と幼少期の体験に影響を受けていると感じています。

──僕がSISの2人と同年代だからか、作品を通じてどこかノスタルジーを感じるのは当時のポップカルチャーの影響があるかもしれないと思いました。世代的に刺さるというか。

TxBONE:あの頃は、みんなが同じものに夢中になっていたよね。ゲーム、ドラマ、漫画、映画、話題が共有できて、それはそれで面白かった。

沢庵:「木曜の怪談」とか、「銀狼怪奇ファイル」とか今でも記憶に残ってますもん(笑)。そういった記憶や体験から抽出されたエッセンスが自然と音楽に落とし込まれているのかなと思います。

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TxBONEと沢庵、それぞれの出会いと別れ

──アルバム制作中の出来事で、特に印象残っていることはありますか?

TxBONE:個人的には最後に収録された「真夜中の海」は、初めてピアノでの作曲に挑戦した曲。大田区にある城南島海浜公園という海沿いの公園でインスピレーションを得たんだよね。バンドをサポートしてくれている大夢(ひろむ)に、作業合間の息抜きで連れて行ってもらったとき「なんて素敵な場所なんだ」と思った。それで、海の音や周囲の環境音をボイスメモに録音してその音を楽曲でも使ってる。ちょうどその頃、私生活でも大きな変化があり、頭の整理をするために何度もその公園へ足を運んだことを思い出すよ。

──この曲にはいろいろとSEも入っていますね?

TxBONE:この曲の中で鳴っている心臓の音は、娘がまだお腹の中にいたときのエコー音。「この瞬間を残しておきたい」って思いでiPhoneのボイスメモで録音して曲に入れました。

曲の最後には一瞬だけ赤ちゃんの泣き声のような音が聞こえるんだけど、それは娘が生まれたときに最初の泣き声を録音したもの。新しい命が飛び出してくるイメージを持たせたかったんだよね。そういう細かいところまで聴いてもらえたら嬉しいな。

沢庵:僕は制作中にお別れを経験しました。面識はないんだけど今使っているギターを作っていた職人さんが亡くなってしまったんです。

TxBONE:弾き語りの「愛した愛した」もそのギターで弾いているんだよね?

沢庵:『MEMENTOPIA』の制作は全部そのギターを使っています。SISでの僕のチューニングってダウンチューニング(レギュラーチューニングから半音、一音半など下げたチューニング)なので、普通のギターだとネックの長さが足りなくてなかなか音がまとまらないんです。普通のギターだとEが一番低い音。だけど、SISの場合B♭(Bフラット)まで下げる。だからずっとSIS用のギターが欲しいと思っていたんですが、なかなかコストや条件が見合うものが見つからなくて。

──どうやって巡り合ったんですか?

沢庵:長くなりますが。そもそもアコギをB♭まで下げる人いるのか?って思って調べたら、ニック・ドレイク(NICK DRAKE)というフォークシンガーソングライターが、ダウンチューニングで曲を弾いていたんです。うつ病の中で完成させた「PINK MOON」というアルバムがとにかく素晴らしい。

さらに調べると彼は「GUILD(ギルド)」というブランドのギターを使っていた。同じようにアイルランドの「Lowden(ローデン)」とかダウンチューニング用のギターはとにかく高いんです。そんな中で「KNIGHTON MUSIC CENTRE」という海外ギター販売サイトで「ニック・ドレイクが愛したチューニングにも最適」という説明文を見つけました。Lakestone(レイクストーン)という、イギリスのウエストミッドランズ・ダドリーにあるギター工房が作っているものだったんです。

そこは有名店ではなく、リペアとかも行う街の小さなギター工房。ローカルに根ざしている背景も含めて信頼できると思い、購入しました。値段的にも今の円安だと買うことはできなかっただろうし、職人の方が亡くなってしまったことで、ギターの製造はやめてしまったみたいです。僕はスピリチュアルな人間ではないんですが、縁というか不思議な巡り合わせを感じましたね。

TxBONE:海を越えて届いたとき、沢庵が嬉しそうにギターの動画を送ってくれてさ。名前も付けてんだよね?

沢庵:ギターの色が、大地、土っぽい色をしているから「イオルテ」という地球を表す昔の言葉を基に名前を付けています。

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沢庵がTxBONEに送った動画のキャプチャ画像

SIS✖️クラフトビール「MEMENTOBEER」展開中! ユニークなアルバムプロモーション

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──今回アルバムリリースに関連してクラフトビールを作成したと聞きました。すごくユニークでありながら、SISらしいとも思ったんですがきっかけや経緯を教えてください。

TxBONE:今回『MEMENTOPIA』をリリースするにあたって、新しくチームに裏方として入ってくれた親友の望月悠登と、プロモーションの案を出し合っていく中で決まりました。クラフトビールを作っているバンドって他に聞かないし、「新しいよね」って。

沢庵:拓歩と悠登くんが福岡県糸島市のCamosi Brewingさんと強い繋がりがあって、Camosiさんのご厚意により、今回リリースするアルバムに合わせて、インラインのビールにSISデザインのラベルを貼って販売させていただくことになりました。

TxBONE:悠登や俺の先輩でもあるCamosi Brewingのコウさんという方が、一肌脱いでくれたんですけども、本当に感謝です! その名も「MEMENTOBEER」! いいっしょ?(笑)。

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──「MEMENTOBEER」はどんな場所で飲めるんですか? また、どんな風に楽しんでもらいたいですか?

TxBONE:コウさんが長く住んだ横浜からこのビールのためだけにミネラル豊富な水のある地元・福岡県の糸島に移住し丹精込めて作っているおいしいクラフトビール。俺たちSISと縁があるお店でしか飲めないので、そこに足を運んで味わってもらえたら。飲み終わったら、空き缶を持って帰って、花を挿してくれたりしたら嬉しいな。

※本インタビューの撮影が行われたBAJAでも提供中! そのほかの取り扱い店舗はSISのInstagramをチェック

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沢庵:「音楽」と「食」もそうですが、一見別々のものに見えるものが、こうしたプロジェクトを通じて重なり合い、独自の体験を生む——ということを伝えたいです。人生がより豊かになるきっかけのひとつになれば嬉しく思います。

TxBONE:音楽とお酒って切れない関係にあると思う。やっぱり、ほろ酔いで聴く音楽って最高だし、ワイングラスとかに注いでアルバムを通して聴きながら、ゆったり味わってほしいです。さっきも話したけどアルバム通した再生時間が43:21のカウントダウンになっているので、飲み終えて「また明日から頑張ろう」とか、気持ちをリセットするような楽しみ方をしてくれたら本望です!

沢庵:人がお酒を飲む時、何かを忘れたくて飲むということは往々にしてあるかと思います。でもこのビールは、そういった時に飲むビールではありません。丁寧に一口ずつ味わって飲むようなビールです。リリースするアルバムも同様で「すべて忘れて楽しもう」という時ではなく、ゆっくり、自分が辿ってきた道を思い出さなければならない時こそ聴いてほしい作品です。手に取ってくださる一人一人のかけがえない記憶に、そっと寄り添うように。このビールとアルバムが存在できれば、とても嬉しく思います。

TxBONE:最近はビール以外にもいろいろと新しい企画にチャレンジしていて、4月からYouTubeで「FOLK-US」というカバー企画をスタートしたんだよね。時代を超えて愛される名曲をSIS流のフォークサウンドで再構築するカバーシリーズで、随時更新していくのでチェックお願いします。

喝采 – ちあきなおみ | FOLK-US #001

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6月6日に初ワンマンリリパ開催「フォーク最高! バンド最高!!」

──まさに“生と死”を表すような、2人の体験とエピソードがパッケージされた本作ですが、手が重なったアートワークも象徴的です。アートワークについてもお聞かせください。

TxBONE:アーティストのSENEKT(セネクト)に描いてもらったんだけど、それこそ縁があるアーティストなんだよね。Jägermeister(イエーガーマイスター)の案件でベルリンにライブしに行ったときに偶然会ったり、大阪でのライブに行ったときも街中でばったり会った。そんでライブ誘ったら来てくれたんだよ。彼は手を描くのが好きで「いつかTxBONEの手を描きたいなあ」って言ってくれていたから、今回お願いしました。

SENEKTはアルバム全体を通して“花”を連想してくれたみたいで、俺の手と俺の娘の手を重ねて花のようにも見える最高のアートワークに仕上げてくれた。超嬉しいよ。ケンちゃん(SENEKT)ありがとう。さっき、ビール(MEMENTOBEER)の空き缶を花瓶にしてくれたらって言ったけど、缶のラベルにも、手を花に見立ててくれたSENEKTのアートワークが使われているから、相性がいいと思うんだよね。

──6月6日(金)にはアルバムのリリースパーティも兼ねて、表参道・Robin ClubでSIS初となるワンマンライブを予定しています。ライブへの意気込み、そして最後に読者にメッセージをお願いします。

TxBONE:最初の頃は勢いだけでやっていた部分もあったけど、今はしっかりと「SISのための音を鳴らしたい」という気持ちが強い。バンドとしての一体感をさらに深め、届けたい音を形にしていきたい。6月6日はみんな予定を空けて、ライブを観に来てほしいです。

沢庵: アルバムは、俺たちの人生そのものを音楽にしたような作品です。生と死、喜びと悲しみ、喪失と再生。さまざまな感情が詰まっています。 ぜひ、じっくりと聴いて、自分自身の人生と重ね合わせながら楽しんでもらえたら嬉しいです。

TxBONE:最近「フォーク」って言葉をあらためて調べてみたんだよ。そしたら、『人々や民族、それらに根差した音楽』って出てきて、最高じゃん! って思ったんだ。だから、フォーク最高! バンド最高! ハハハ(笑)。

新時代のフォークを模索するSIS。彼らが奏でるのは、フォークという音楽の持つ本質なのかもしれない。それは時代を映し、人々の記憶をつなぐ音だ。

過去と未来を行き来するように紡がれた楽曲たちは、SISというバンドの進化の証であり、フォークが持つ自由な可能性を広げている。そして『MEMENTOPIA』は、バンドの新たな章を刻む彼らの人生そのものが詰まったアルバムだ。キメラのようにオルタナティブな感性を取り入れつつ、活動開始から10年の試行錯誤の集大成として辿り着いた『MEMENTOPIA』は、まさに「今」を刻むオルタナティブフォークアルバムといえるだろう。

時代が移り変わる中で、彼らの音楽はどこへ向かうのか。このアルバムを聴きながら、その旅の行方を感じ取ってほしい。

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Interview&Text:Tomohisa“Tomy”Mochizuki
Photo:Taiki Ide
Edit:Qetic(Ranji Tanaka)
Location:Baja

ARTIST INFORMATION

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SIS

フォークミュージックを軸にポストロックを横断し、ジャンルレスなサウンドを追求するオルタナティブフォークバンド。頭から足先まで全身タトゥーのTxBONE(Vo./A.Gt.)と、大学教員としての一面を持つ沢庵(Vo./A.Gt.)という対照的な2人のフロントマンとTAKAYA(Dr.)により結成され、2024年よりUJI(E.Gt.)と匠(Perc./Sampler/Cho.)が加わり5人体制となった。バンド名の由来となっている「死」と「生」をはじめ、人が生きていく中で向き合う表裏一体の価値観を、憤怒と慈愛入り混じる歌詞とサウンドで表現している。

NEW RELEASE

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SIS『MEMENTOPIA』
Digital | 2025.04.16 Release | SIS-010
Released by SPACE SHOWER MUSIC / LAD Production
 
1. BLUE SUNSHINE
2. 腐る
3. 疾走
4. 青赤
5. 夢喰
6. FULL SWING
7. 愛した愛した
8. エントロピー
9. アメンボ
10. 真夜中の海

アルバム視聴はこちら

LIVE INFORMATION

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「SIS 10th ANNIVERSARY LIVE “MEMENTOPIA”」6月6日 表参道Robin ClubにてSIS初のワンマンライブ開催!
 
アルバム『MEMENTOPIA』リリースを記念し、SISが初のワンマンライブを開催することが決定。6月6日(金)、会場は表参道・Robin Club(SPIRAL B1F)。当日は一夜限りの特別なセットリストを披露するほか、ゲストアーティストの出演も予定されている。さらに、彼らを日頃から支えてきた仲間たちも多数来場し、SISと共にこの記念すべき夜を祝う。10年間の歩みと、次なるステージへの門出を感じられるこのライブ、ぜひ会場で体感してほしい。チケットはZAIKOにて販売中。

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MV INFORMATION

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リリースアルバムから「エントロピー」のMVを公開! “もしも”を描く静かな記憶の物語
 
SISの最新MV「エントロピー」が、YouTubeにて公開された。監督は香取徹、撮影は丹波おさむ。出演にサトウヒロキ、吉村優花を迎え、ひとつの部屋と、そこに置かれたテレビの中だけで展開される演劇的な物語が描かれる。語り部として佇むTxBONEの存在と、詩的な多重露光や逆再生演出が“記憶の残像”のように観る者の心を静かに揺らす、深い余韻を残す映像作品となった。

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