スパイダーマン初のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が2019年3月8日に公開される。キングピンの策略により時空が歪められた! 阻止しようとしたスパイダーマンは絶命。世界中が悲しみに暮れる中、特殊能力を得たブルックリンの中学生マイルス・モラレス(以下、マイルス)は、新たなスパイダーマンとして活動をはじめるがパワーを自在に操れずにいた。そんな彼の前に現れたのは別の次元で活躍するスパイダーマンたち。モラレスは多くのスパイダーマンたちに支えられながら成長し、キングピンへと挑んでいく。

さまざまな次元(マルチバース)に存在するスパイダーマンが一同に集結するという驚きの世界観、手書きとCGを融合させた斬新な映像、マイルスの心の成長を軸とした感動的ストーリー、最先端のカルチャー描写にハイテンションな音楽など、あらゆる面が最高。MCU版スパダーマンとの共存など懸念材料もあったがジリジリと評価を高め、遂にアカデミー賞長編アニメーション部門ノミネートも果たした。

たしかにお馴染みの悪役の登場など過去作を知っていると楽しめる面もあるけれど、これがファースト・コンタクトでもまったく問題ないどころか、ここからいろいろなスパイダーマンを楽しんでいこう、と思えるようになっているところがスゴイ。本当にスゴイ。脱帽。

このスパイダーマン史に名を刻むであろう名作の主人公マイルスの声を担当した小野賢章さんに、声優として参加した感想を聞いた。小野さんとマイルスのハマり具合もスゴイのです!

Interview:小野賢章

マイルス役・小野賢章が語る、憧れのスパイダーマンを演じて感じたマーベル熱 interview190218-spider-verse-ono-kensho-28

──最高のスパイダーマン映画になっていますね! 

ありがとうございます。元々スパイダーマンが好きだったんです。いや、もはやファン。そういう感じだったので、自分が演じるのはどうなんだろうと思った面もありました。だって、他の方が演じているほうが純粋に楽しめるじゃないですか。僕だって楽しみたい。だから、ちょっと迷いました。でも、マーベルヒーローになることは僕の夢だったので、それが叶った瞬間でもありました。特にスパイダーマンはもっとも好きなマーベルヒーローで、まさか自分が演じることになるとは。いざ完成した作品をみたとき、自分の声であることも忘れるくらいに夢中になりました。ストーリーのおもしろさ、スピード感。マイルスの成長を思わず応援したくなる映画になっていると感じましたね。

──まさかマーベルヒーローになりたかったとは! もう完全に仲間ですね。きっかけはどの作品ですか?

トビー・マグワイア時代のスパイダーマンからずっと好きですが、最近のマーベル熱は『アベンジャーズ』(2012年)からですね。そして、『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)を観たときは衝撃を受けました。何も知らずに観ていたら、いきなりスパイダーマンが出てきたんですから。僕が映画を観ているということは、既に誰かが吹き替えはやっているということじゃないですか。すぐに調べました(笑)。

──スパイダーマンが好きな理由とは?

戦い方が好き。あといちばんいいな、と、思うのは、応援したくなるところです。他のヒーローはムキムキで何とかしてくれそう感が出ていますが。スパイダーマンはひょろっとしていて、メガネもかけていてヲタク気質もあり、どこにでもいそうな人物像じゃないですか。ヒーローになることに葛藤もあったり、人間味があるところが好きで応援したくなります。

──マイルスも、まさに応援したくなるキャラクターですよね。

スパイダーマンは愛嬌があってコミカルな印象を持っていましたが、台本読んだ時もそういう描写がありますし、シリアスの中に軽いボケがあって、スパイダーマンの愛らしさやポップな感じが出ていると感じました。マイルスの可愛らしさやおちゃらけた部分もうまく出して、応援してもらえるキャラクターになればいいなと思って演じました。

──マイルスに共感できる面はありましたか?

親に反抗するところ。内緒で自分の心に素直に従ってやりたいことをやっているところですね。厳しい学校を抜け出しておじさんのところに行き、スプレーで絵を描いているところは印象的。僕もそういう反抗的な時代があったなって。

──たくさんのスパイダーマンが登場し、仲間に支えられてマイルスは成長します。小野さんご自身は仲間というものをどのように捉えていますか?

僕は舞台にもよく出演するのですが、長期間に及ぶ舞台も多く、それが最後までやりきれるのは共演者という仲間がいるからだと日頃から感じています。ひとりじゃ何もできない。体力的、精神的に辛いときも友だちや仲間の支えがあるから乗り越えられます。足を引っ張り合うのは仲間じゃないですよね。仕事の話になってきますが、お互いに尊敬できるところがあったうえで切磋琢磨して、芝居の技術を向上させたり。友人関係でも、親しい仲にも礼儀ありという考え方はあって、大事にしてもらいたいなら大事にしないといけないけれど、そういうことすら意識せずとも自然とそういうことがお互いにできるのが仲間かなって思います。

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──たしかにそうですね。マイルスとスパイダーマンたちの関係性にも近い気がします。

でも、今回の吹き替えはたったひとりでの収録だったんですよ。ひとりでマイルスに入り込んでいって…。

──そうなんですか! アクションシーンなどはかなりのテンションが求められるじゃないですか。それをおひとりで演じるのは大変だったでしょうね…。さて、ストーリーと共に斬新な映像も話題です。

新しいものを観たな、という感覚を持ちました。キレイなだけじゃないですし、実写に近づけようと作っているわけじゃないところがおもしろかったです。CGの中に突然アメコミみたいなところもあるし、いろいろなジャンルのアニメーションが織り交ぜられていて、不思議な感覚になりましたね。最先端のファッションやアートを観ているかのような感覚というか、舞台であるニューヨークのポップカルチャーやストリートカルチャーに寄り添ったアートというか。ひたすらきれいな映像を目指したものとは違いますね。

──アメコミ調になるところは本当にオシャレですよね。映画なのにまるでアメコミを紙で読んでいる感覚に陥りました。まさにアメコミ映画という感覚で。

マーベル好きだと、冒頭の「MARVEL」ロゴ登場のファンファーレで泣けたりするじゃないですか。

──まさに! あれは不思議です。本編に入る前に一度泣けてしまうんです(笑)。

あれを見た瞬間にテンション上がりますよね。それが今回ピカイチにカッコイイので、ぜひ楽しみにしていてください。僕も冒頭でテンションがぶち上がりましたね。マーベル作品って実写なイメージがありましたけど、アニメーションにも向いていると思います。生身の人間が戦うのと同じくらいアニメーションのアクションシーンもカッコイイんです。見応えあると思います。

──スパイダーマンは、昨年亡くなったスタン・リーさんが生み出した等身大のキャラクターです。彼がキャラクターに背負わせたテーマが、ものすごく明確に描かれている点も素晴らしいですよね。

スタン・リーさんのメッセージがこの一本に集約されていると思います。僕の家にはスタン・リーさんのサイン入りのスパイダーマンのフィギュアがあるんです。むちゃくちゃ高かったんですけど(笑)、がんばって買ってよかったです。

──小野さんにとって、この作品はどんな意味を持ちますか?

ずっと夢に描いていたマーベル作品に出るということが叶い、とても光栄です。その個人的な気持ちを取り除いても、こんなに素晴らしい作品に参加できたことは今後の人生に大きな意味を持つと思います。僕が好きなシーンに、マイルスと父がドア越しに語り合うシーンがあるんですね。ほぼセリフはないんですが、家族の絆や誰かのために勇気を出してがんばる心とか、繊細な感情が上手に表現されていて。そのシーンを機にマイルスが立ち上がる重要なシーンだと感じたんです。僕は、ヒーローの在り方がこの作品で変わる気がしています。ヒーローって強いだけじゃないし、悩みもある。スパイダーマンは「親愛なる隣人」と言われていますが、誰でもスパイダーマンになれる可能性があるんじゃないかと思わせるような作品になっているので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。あ、でも僕は仮にスパイダーマンになっても、前線系じゃなくて遠距離系、遠目から能力を使うようなサポート系がいいです(笑)。

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Photo by Kohichi Ogasahara
Interview by maomao

『スパイダーマン:スパイダーバース』
2019年03月08日(金)公開

ニューヨーク、ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった――。

原題:Spider-Man:Into The Spider-Verse  
全米公開:12月14日
製作:アヴィ・アラド、エイミー・パスカル、フィル・ロード&クリストファー・ミラー(『LEGO(R)ムービー』『くもりときどきミートボール』)、クリスティーナ・スタインバーグ
監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン  
脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン
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