2013年に惜しまれつつも解散したロックバンド、The Cigavettesのフロントマン山本幹宗(G)と、子役より俳優としてのキャリアをスタートし、舞台や映画、ドラマなどを中心に活動する永嶋柊吾(Vo)により結成された新ユニットsunsiteのファースト・アルバム『Buenos!』がリリースされる。

くるりやBoom Boom Satellites、銀杏BOYZなど世代やジャンルを問わず様々な現場でサポート・ギターを務め、ミュージシャンから絶大な信頼を得ている山本の確かな作曲・演奏力と、清々しいほど真っ直ぐな永嶋のボーカルが絶妙なバランスで混じり合う。古今東西の名曲たちを「愛あるオマージュ」でブレンドしつつ、ハイクオリティなオリジナルソングへと昇華させる手腕も見事だ。

メンバーとも親交の深い俳優・仲野太賀によるアーティスト写真、夏帆や中野英雄(太賀の実父)が出演する“転がる石の夜”のミュージックビデオも話題の彼らに、結成の経緯やアルバム制作エピソードについて尋ねた。

Interview:sunsite

sunsite『Buenos!』──山本幹宗&永嶋柊吾による新バンドの「愛あるオマージュ」とまっすぐな姿勢 interview2105-sunsite-4

左から山本幹宗、永嶋柊吾

──まずはsunsite結成の経緯から教えてもらえますか?

山本幹宗(以下、山本) 以前やっていたバンド、The Cigavettesを2013年に解散して以降も、おかげさまでギタリストとしてずっと忙しくしていて。2019年は特にそのピークで、1日2本ライブをしたり、どこかのリハーサルを行った後に別のレコーディングへ向かったりしていたんですよね。本当は(The Cigavettesを)解散してすぐにでも自分のバンドをやりたかったんですけど、そんな時間もなく日常が過ぎ去り、仕事に追われていたんです。もちろん、楽しんでやってきたんですけど。

ところが昨年コロナ禍になって、4月から向こう3ヶ月くらいのスケジュールがすっぽり無くなってしまって。まあ、皆さん同じ状況だったと思うんですけど、近所にYogee New Wavesの上野恒星が住んでいたので、「暇だし何かやるか」みたいな感じでデータのやり取りをしながら1日1曲くらいのペースで作っていたんです。内容もすごく良かったし、「このままアルバム1枚作って『一日一善』というタイトルで出すか」みたいな話をしていたんですよね。

──上野さんとは、結構古い付き合いだったそうですね。

山本 上野は『snoozer』でバイトしてたんですよ。The Cigavettesはよくインタビューを掲載してもらったり、<club snoozer>(『snoozer』主催のDJ&ライブイベント)に呼んでもらったりしていたんですけど、そこに上野も手伝いに来ていて。大学生だったし福岡出身の同郷だったので可愛がっていたんです。その後、僕らが上京した時にはすでに上野も東京でJappersというバンドをやっていて。それでたまに一緒に飲んだりしていたら、いつの間にかYogee New Wavesに加入して、メジャーデビューしてたという(笑)。

──2人で曲を作り始めたときは、どんな温度感だったんですか?

山本 単なるお遊びではなく、リリースすることを念頭に置いて始めましたね。そして、ちゃんと本腰を入れて取り組めば、必ずいいものが出来ると思っていました。

で、「ボーカルをどうしようか?」という話になり、お互い持ち帰って考えていたんですけど、ふと(永嶋)柊吾が去年の2月くらいにやっていた弾き語りライブを思い出して。その時に演奏していた曲は今ひとつだったけど(笑)、「いい声してるな」と思ったんですよね。それですぐに連絡して、「実は今こういうことをやっているんだけど」と話したら、「ローディーでもなんでも手伝いますよ」って。「いや、そうじゃなくてボーカルをやって欲しいんだよ」と頼みました。

sunsite「夏の終わり」

sunsite「転がる石の夜」Music Video

──永嶋さんとはどのように知り合ったのですか?

山本 最初、僕がサポート・ギタリストをしているバンドのライブに俳優の仲野太賀くんがよく来ていて。打ち上げなどで話すうちに仲良くなり、一緒に飲みに行くようになったんですね。で、何かのライブの時に「今度友達を連れて来ていいですか?」と言って連れて来たのが柊吾でした。柊吾も福岡出身だったので、それで意気投合して飲みにに行くようになったんです。

──弾き語りライブをやっていたということは、永嶋さんも音楽活動をされているのですか?

永嶋柊吾(以下、永嶋) いや、全くしたことがないです。ちゃんとお金をもらって人前で演奏するというのは、そのライブが人生初だったんですよ。自分の曲もあるわけではないので、急遽やることになって1ヶ月半くらいで12曲くらい作って下北沢440に出たんです。ギターも歌も本当に趣味の領域というか。一度、菅田将暉に楽曲提供をしたことありますが、あれも本当にノリでしかないんですね。

──でも、菅田将暉さんに楽曲提供した“ベイビィ”はとても良かったです。

永嶋 あの曲が収録されたアルバム『LOVE』(2019年)は、タイトル通り「愛のカタチ」をテーマに制作を行っていました。で、アルバム用の曲が上がっていくなかで、「まだ親子愛についての曲だけ作っていないよね」という話になったんです。将暉と俺という、独身の男2人が「子供への愛ってなんだろうね?」なんて話し合いながら(笑)、思いつく言葉をバーっと並べてそこにメロディを付けていきました。それで終わりかな、と思っていたら、「チーフ(ディレクター)に聴かせた。イケそうやで」と将暉から電話がかかってきて。あれよあれよという間にスタジオに呼ばれて、レコーディングにも参加することになったんです。

菅田将暉 “ベイビィ”

──あの曲でアコギを弾いているのも永嶋さんですか?

永嶋 はい。2人で、一番ダメだったテイクを使おうという話になりました。
役者である俺らが、1発録りでやった意義っていうところで。

山本 柊吾は(柄本)時生くんとバンドもやってたよね?

永嶋 ああ、そうですね。スペシャルゲストに渡辺大知を迎えて。

山本 すごくいいバンドだったんですよ。

永嶋 歌詞でずっと下ネタを言ってるギャグバンドですよ(笑)。なんかそれも、行きつけのお店の周年パーティーとかで、企画でやっただけなんですけど。

──これまで柊吾さんは、どんな音楽を聴いてきたのですか?

永嶋 姉がずっとクラシックバレエをやっていたのもあって、ロックとか聴き始めたのは高校生くらいの頃です。それまでは家で流れていたクラシックを聴くともなしに聴いていましたね。あと中学生の頃に映画を好きになって、様々な映画の主題歌やサントラを聴くようになり、そこを入口に主に邦ロック、一時期はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT辺りを聴き漁っていました。

そのうちハイエイタス・カイヨーテやオアシスなど洋楽も聴くようになったんですけど、ずっと好きで今も聴いているのはくるりですね。ギターを始めたのは大学1年くらいです。それこそ太賀の実家にあったギターを触ったのがきっかけでした。

──では、今作『Buenos!』を制作するにあたって、どんな音楽性でいくのかなど話し合いはありました?

山本 いや、特になかったですね。上野がリファレンス用のプレイリストを作ってくれたので半分くらいはそれを参考にして、あとは思いつくままに作りました。

──なるほど。歌詞はどんなふうに考えているのですか?

山本 歌詞ですか? ええと、まずインターネットを立ち上げ、「never young beach 歌詞」で検索して……(笑)。「なるほど、こういうふうに書くのか」と。

──はははは。

山本 あとはひたすら韻を踏みました。なので、すごく聴き心地がいい歌詞にはなったと思います。俺のライムがフロウしてますね(笑)。

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──アレンジもすごく面白いんですよね。ジョージ・ハリスンやビーチ・ボーイズなどの小ネタも随所にちりばめてあって。

山本 いや、ほんと「面白い」と言っていただけるように頑張りました(笑)。自分でも「うまいなあ!」と思いながら引用していましたし、そこに気づいてもらえるのが一番嬉しいですね。

僕はもう「引用してナンボ」と思っているんですよ。ザ・ビートルズにしてもザ・ビーチ・ボーイズにしても、みんな引用からオリジナルを生み出しているわけで。

──確かにそうですね(笑)。

山本 思いついちゃったら意地でもやらずにはいられない。例えば“レッツゴーレインボー”という曲は、ザ・ビーチ・ボーイズの“I Get Around”と“Do You Wanna Dance?”に似たメロディが交互に出てくるんですよ。で、その後ギターソロにザ・ベンチャーズの“Slaughter on 10th Avenue(10番街の殺人)”と同じメロディが出てきてチャック・ベリーにつながる。なぜなら、ザ・ビーチボーイズはチャック・ベリーの“Sweet Little Sixteen”の歌詞を変えて、“Surfin’ USA”という曲にしてヒットさせているから。その意趣返しみたいな感じですね。

──ちゃんと文脈まで踏まえたオマージュは、ある種の「批評」でもありますよね。

山本 カッコよくいえばそうなります(笑)。僕の場合はただの冗談ですが。

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──(笑)。柊吾さんは、初めてのレコーディングはどうでしたか?

永嶋 難しかったです(笑)。もともと歌い方に付いていたクセを矯正してもらうところから始まって。とにかく幹宗さんからは「まっすぐ歌う」ということを心がけるように言われていたんです。

山本 とにかく柊吾はいい声を持っているので、それを一番良い形で出す方法を模索しました。まずはこれまでのクセを取り払い、まっさらな状態にリセットしてもらうところからスタートでしたね。歌う時は「音価」に気をつけながら、真っ直ぐ丁寧に歌う。自分で歌って気持ちいいかどうかは一旦置いておくというか。楽に気持ちよく歌ってしまうのではなくて、歌詞とメロディに対して真っ直ぐ向き合うことを意識してもらったら、すごくいいテイクが取れました。ここを起点にまた自分なりのクセをつけていくことで、オリジナリティが出ればいいなと思います。

──5月23日(日)にTOWER RECORDS渋谷B1 CUTUP STUDIOで、『Buenos!』発売記念リリースライブが開催予定です。最後に意気込みを聞かせてもらえますか?

山本 Yogee New Wavesの上野がベース、どついたるねんの浜公氣がドラムス、そして元The Cigavettesの篠崎光徳くんがギターという編成でやります。それ以外何も決まっていないですが(笑)、来てくださった人みんなが楽しめるものにしたいです。

永嶋 素人みたいなこと言いますが、とにかく僕はライブが楽しめるようになりたいです。せっかくこんな素敵な人たちとやるわけですし。

──役者としての仕事にも何かしらフィードバックされるものはありそうですか?

永嶋 まだ特にないですけど、でもそのうち絶対あると思います。ただ役者という仕事は与えられた役柄になりきって演技をするので、「自分」という状態でステージに立って人前で歌うのとは全く違う。映画や舞台では経験したことがないので、シンプルに恥ずかしいですね(笑)。自分にとってはかなりチャレンジングなことです。

──楽しみにしています。

山本 ありがとうございます。早くライブがやりたいですね。

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取材・文/黒田隆憲
撮影/仲野太賀

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sunsite(撮影:仲野太賀)

山本幹宗(写真:左)
1984年10月23日 福岡県福岡市出身
元 The Cigavettes
現在、くるり・銀杏 BOYZ・never young beach・エレファントカシマシ等のサポートギターや、様々なアーティストのサウンドプロデュースを手掛ける。

永嶋柊吾(写真:右)
青年座映画放送所属
1992年6月12日生まれ。福岡県出身。
出演作品に、EX『相棒 19 元旦スペシャル』、NHKBSP 『うつ病九段』、NHK『そろばん侍 風の市兵衛』、WOWOW 『コールドケース 〜真実の扉〜』、FOD Netflix『グッドモーニング・コール』シリーズ、映画『予告犯』(15/中村義洋監督)、『クローゼット』(20/進藤丈広監督)、『ヤウンペを探せ!』(20/宮脇亮監督)、『ある殺人、落葉のころに』(21/三澤拓哉監督)など。

RELEASE INFORMATION

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Buenos!

2021.05.05(水)
sunsite
TRJC-1112/¥2,400(+tax)
発売・販売元/TOWERRECORDSInc.

1. ままならない
2. 転がる石の夜
3. ネオンライト
4. Buenos!
5. 夏の終わり
6. 誰もいない海
7. レッツゴーレインボー
8. 聞こえる

☆1st Album 『Buenos!』発売記念リリースライブ
2021年5月23日(日)19:00~
タワーレコード渋谷店 B1 CUTUP STUDIO
※5月5日発売『Buenos!』をお買い上げいただいた方が参加頂けるライブとなります。
イベント参加券配布店舗:タワーレコード渋谷店、タワーレコード新宿店、タワーレコード横浜ビブレ店、タワーレコードオンライン

☆店頭購入者特典
TOWERRECORDS限定特典:sunsiteロゴデザインステッカー
HMV、ディスクユニオン、VillageVanguard限定特典:sunsiteロゴデザインマグネット

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