Official Interview:SWANS(Michael Gira)
──素晴らしい充実作でした。作り終えた今の感想はいかがですか。
どのアルバムの時も思うんだけど、芋虫から蝶に変身したような気分だね。古い肉体から新しい肉体へ移動するような。アルバム作りは好きだし、何度も何度も聴き込んで調整をするわけだけど、一旦作り終えるとしばらくは聴きたくなくなる。ずっと聴いていると、一体自分が何を聴いているのか分からなくなってくるんだ。曲作りはまず、自分の部屋でアコギを弾くところから始めるんだけど、使えそうなメロディーが浮かぶとやっぱり興奮するもんだね。運が良ければリリックも出てくる。そこから、バンドとリハーサルして、ライブで何度も何度もプレイすることで徐々に変化していくんだ。その後スタジオに入ればまた形が変わってくるし、そこからミックス・エディット・マスタリングして……っていう長いプロセスを経てやっと完成するものだから、その作業が終わった時には本当にほっとするよ。
──今回、これだけの傑作になった最大の理由はなんだと思いますか?
はははは! 傑作かどうか、それは聴く人が決めることだね。自分では満足のいく出来だけど、どんな価値があるかは聴く人に委ねるよ。そうだな、強いて言うなら……努力とセックスと血と苦しみと喜びと幸福と宗教的体験と交通事故と、天気がいい日にチェスをする退屈な日々の結晶なのかな(笑)。
SWANS『To Be Kind』
──今回のアルバムから〈MUTE〉と契約となり、そのため日本でもあなた方のアルバムが約24年ぶりに出ることになりました。今このタイミングで〈MUTE〉と契約した理由は?
〈MUTE〉のダニエル・ミラーがスワンズのことを再結成後からずっとフォローしてくれていたんだ。僕自身1990年から〈Young God〉っていうレーベルをやっていて、スワンズを始め、他のアーティストのリリースもしてきているから、敢えて他のレーベルと契約することは頭になかった。でもアメリカ国外のディストリビューションには弱かったからね。ダニエルが〈MUTE〉との契約の話を持ちかけてくれてよかったよ。どちらかというとパートナーシップだね。僕らは若いバンドでもないし、懐の広い叔父さんのレーベルと契約をした訳ではないからね(笑)。音楽というものを心から愛して、サポートの厚いダニエル・ミラーのことは僕自身とても尊敬しているし、〈MUTE〉からのリリースはとても名誉なことだよ。だからこういう流れになって嬉しい。
──今回のアルバムの構想は、いつ、どのような形で始まったんでしょうか。
ライブで曲をプレイし始めて、ツアー中に徐々に作り上げられていった曲もあれば、自宅で作り始めてツアーの合間にアルバムが作れるくらいの要素を集めて音を録り始めるって感じの作り方もする。ざっくり言うとだいたいそんな感じかな。
──今作のサウンド上のコンセプトはなんでしょう。アルバム制作で心がけたこと、注意したことなどはありますか。
大勢の人がそれぞれ風船を持って立っていて、空には肥満体の死体が浮かんでいるようなそんな感じのサウンドにしたかった、それが今回のアルバムのコンセプト。で、この人体風船(肥満体の死体)が割れて、その中からは薔薇の花びらが降ってくるっていうね。はははははっ!
今回のアルバムで注意したことはグルーヴだね。グルーヴに関しては、僕は他の人と違う捉え方をするし、黒人のサウンドを出したがっている白人でもないし、エレクトロニカのバンドでもないからさ。スワンズ流のグルーヴがあって、それをエンドレスに奏でる方法を探求している。“She Loves Us”や“Screen Shot”、“Little God in My Hands”、“Oxygen”にそれがあらわれていると思う。以前のアルバムでは意識していなかった試みだね。
SWANS -“OXYGEN”(TO BE KIND)
Release Information
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