INTERVIEW

向井太一

Interview/Text by Natsumi Kawashima
Photo by Hanako Kimura

     

シンガーソングライター・向井太一の音楽は、ブラックミュージックがバックグラウンドにありながら、メインストリームに浸透するJ-POPとしての側面も持ち合わせ、歌詞の題材からサウンドに至るまですべてが多岐に渡る。27歳を迎えた今年、国内では東阪のビルボードライブで単独公演を行い、海外では台湾、中国、韓国、フランスのステージを経験するなどその活躍は目覚しい。そんな彼が自らの年齢を冠した7曲入りの最新作には、現在の向井太一が抱くリアルな心情が垣間見えた。このインタビューでは、本人の言葉とともにEP『27』を紐解いていく。

27歳の今、綴るリアル — 向井太一、EP“27”を語る

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──今作のEP『27』は、自身名義としては今年2月の配信シングル“道”以来のリリースですね。3年前には2nd EP『24』がありましたが、年齢をタイトルにした作品にはどんな思いを込めているのですか?

年齢に沿った作品を出し続けようという思いは特になかったんですが、「The 27 Club」(※)という言葉があるくらいミュージシャンにとって27歳はひとつの節目なのかなと思っていて。今回のEPは、自分の活動の過程で聞こえてくるポジティブだったり、ネガティブだったり様々な声を受けた上で、今の自分の作品に対しての熱意やアーティストとしてのプライドを表現したような作品になりました。※ジミ・ヘンドリクスやカート・コバーンなど、27歳で他界した音楽家たちの総称。

──タイトルトラック“27”は、アルバム『PURE』に収録された“Haters”に通ずるメッセージ性を感じました。特に「歌以外はやるな そう言うお前は 言えるような誰かなんだろな」というフレーズは、浮遊感のあるトラックからは予想できないほどダイレクトな表現ですね。

最近、著名人に対してのSNSを介したバッシングが多く見受けられますよね。顔も名前も見えないから誰でも好きなように言えるし、客観視すると「どうしてこんなこと言うんだろうな?」と思う発言ばかりで。僕は音楽に限らず、ファッションやアートについてもSNSで発信していくことを重要視しているんですけど、中にはそれを“音楽を軽視している”と捉えて「音楽以外はやらないでいい!」と言う人もいて。僕は、ミュージシャンがファッションやアートワークまでセルフプロデュースできるのは大きな強みだと思うので、音楽以外はいらないという考えは不思議なんですよね。だから、活動の上で色んなことをするけど、すべて自分の音楽に繋がるものなんだという思いを歌詞にしました。発表するか迷いましたが、今だからこそ自分の好きなことややりたいことを胸を張って言えるようになったので、これを1曲目にしてEPを作ったんです。

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──“「誰でもなくて」また僕は歌に救われる”という歌詞もまた、大きなポイントになっているように感じます。

自分が昔書いた歌詞を聴いて「今の僕には書けないな」と思ったり、勇気づけられることがあるんです。それに、日頃のネガティブな感情は楽曲を作ることで消化していることも多いです。どんな感情も音楽にできるけど、悔しいことや腹が立ったことが原動力になって生まれる楽曲は強いパワーを持つんですよね。

──“27”に続く“Go Away”も、ネガティブな題材をもとにした歌詞だと思いますが、そういったテーマの楽曲でトラックにおいてはどんなことを意識していますか?

僕は「トラックとリリックにギャップを持たせたい」という天の邪鬼な節があるんです。以前の“FLY”では、爽やかなサウンドなんだけど歌詞では聴き手を熱く鼓舞していたり。“Go Away”は歌詞のメッセージ性が強いので、トラックはアッパーじゃないけど揺れられるテンション感を目指しました。1stアルバム『BLUE』から2ndアルバム『PURE』にかけては、トラック以上にリリックに重点を置いていたんですが、今作は“24”の頃のようにリリックとトラックのバランスをとって、トラックとしても聴けるような楽曲作りを心がけましたね。先日フランスでライブをしたとき、お客さんは日本語の歌詞は理解できないはずなんですけど“Go Away”は特に反応が良かったんですよ。

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──今年だけでもアジアツアーやフランスでのフェス出演を経験されていますが、海外でライブをするとどんなことを感じますか?

キャリアを重ねていつも観に来てくださるファンのかたたちが増える中で、自分をほぼ知らない人たちの前でライブをするのは刺激になりますし、まだまだ必要な部分がたくさんあるなと感じます。海外の人たちは「良いものは良い、良くないものは良くない」というのがはっきりしていますね。フランスのフェスでは、日本でのライブでメインに据えるような楽曲をほとんど外した挑戦的なセットリストだったんですが、お客さんがどんどん増えていって、PAさんやスタッフさんも気に入ってくれて嬉しかったです。音響もとても良かったですね。

──EPのお話に戻りますが、特に私の印象に残ったのは“もう一度”です。メロディー、歌詞、トラックに含まれる音のひとつひとつまで、幼い頃に聴いていた2000年代の日本のR&Bを想起しました。

当初、2000年代のR&BにインスパイアされたEPを制作しようというアイデアがあって、結果的に今作は違ったコンセプトに落ち着いたんですが、そのアイデアが色濃く反映された楽曲です。“J-R&B”と呼ばれたジャンルの音楽で多用されたメロディーや歌詞の乗せかたを意識したので、僕と同じような音楽の聴きかたをしてきた人には、「わかるわかる!」と感じてもらえる要素が詰まっていると思います。今のメジャーシーンでは古く聴こえるかもしれないという懸念もありましたが、色んなサウンドをやってきた自分ならルーツであるこの音楽性をしっかりと形にできると思ったので、EPに収録しました。

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──“もう一度”に続く“Last Peace”は、EP収録曲の中で最もそぎ落とされたサウンドで、新進シンガーFriday Night Plansとの共演が実現しています。顔を見せずに活動するFriday Night Plansにはミステリアスでアーティスティックなイメージを持っていましたが、この楽曲で聴ける彼女のピュアで柔らかい歌声は、向井さんとのデュエットだからこそ引き出されたものなのではないでしょうか。

彼女はどんな曲調でも歌えるんですよね。JJJとSTUTSとやっていた“PRISM”ではラッパーさながらのフロウを聴かせていましたし。彼女名義の作品にはトラックに重点を置いた楽曲が多くて、ヒップホップやR&Bの中でもひときわ尖ったアプローチだと思うんですが、この曲では彼女の声の魅力を十二分に引き出したかったので、アレンジは極力シンプルにしました。ボーカルもほぼ重ねずに少しコーラスが入ってるくらいで、“生”の質感を大切にしています。メロディーは主にFriday Night Plansのアイデアが軸になっていて、歌い出しも彼女からです。歌詞は二人でどのようなストーリーにするかを決めてから、それぞれが歌うパートを書いて持ち寄りました。この歌詞では長年付き合った二人が、“結婚”といった次のステージへ気合いを入れて飛び出すのではなく、じんわりと自然に新しい形を迎えて一緒に進んで行く様子を描きました。27歳になった今だからこそ歌える内容なのかなと思います。

──中にはこの楽曲でFriday Night Plansに出会うリスナーもいると思いますが、彼女がアーティストとして特に秀でているのは、どんな部分だと思いますか?

技術があるのはもちろんですがそれだけじゃない、彼女のように歌に対しての良い解釈を持ったアーティストは、なかなかいないと思います。あとは、今ヒップホップやR&Bをやっているアーティストたちはトレンドを取り入れるのが上手いんですが、彼女はその中に自身の個性を活かすセンスを持っていて、バランスがいいですね。この曲のレコーディングで録ったすべてのテイクが素晴らしくて…もはや僕はただのファンですね(笑)。

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──そしてEPは“24”のリミックス(※)で締めくくられます。オリジナルは深みのあるビートレスなバラードですが、日本のアーティストと多く関わっているプロデューサーDevin Morrisonの手により、1990年代を彷彿とさせるアーバンな質感に生まれ変わっています。 ※iTunes/Apple Musicのみの限定配信

“24”は自分の楽曲の中でも、未来を見据える歌詞が特に好きなんです。Devin Morrisonは、僕も大好きな1990年代〜2000年代のサウンドをうまく落とし込んでくれる人なので、レイドバックしたヒップホップのビートによってまた新しい楽曲になりました。このEPはCDではなく配信でのリリースですが、このリミックスを含め7曲に僕のアイデンティティが色濃く出ています。リリースを重ねるごとに感じますが、今作もまた今の自分を象徴するような名刺代わりの1枚になりました。

──27年間の経験で抱いた様々な心情が反映されたEPでしたが、これからの“向井太一”が歳を重ねても変わらず貫くものは何でしょうか。

全員に良く思われることは難しいけど、批判する人たちの言葉に左右されることは今後もないと思います。先ほど話したように僕は天の邪鬼な節があるので、逆にその人たちが批判できないくらいやりきろう! と思ってしまう(笑)。自分でも驚くほどペースが速いんですが、次に向けた制作もどんどん進んでいて、これまでとまったく違うものになっています。これからも作品を通して自分のやりたいものを素直に表現していくので、期待して待っていてもらえたら嬉しいです。

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Interview/Text by Natsumi Kawashima
Photo by Hanako Kimura

向井太一 Digital EP“27”

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1. 27
2. Go Away
3. 声が聞こえる
4. I Like It
5. もう一度
6. Last Peace feat. Friday Night Plans
7. 24(iTunes Store/Apple Music限定配信)

向井太一 ONE MAN TOUR 2019(仮)

2019.10.18(金)
愛知県・名古屋ボトムライン
OPEN 18:15 / START 19:00

2019.10.22(火・祝)
大阪府・なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00

2019.10.25(金)
福岡県・福岡DRUM LOGOS
OPEN 18:15 / START 19:00

2019.11.03(日)
宮城県・仙台Rensa
OPEN 17:30 / START 18:00

2019.11.10(日)
北海道・札幌ペニーレーン24
OPEN 17:30 / START 18:00

2019.11.14(木)
東京都・Zepp Tokyo
OPEN 18:00 / START 19:00

ADV ¥4,500(税込・1drink別)※
※Zepp Tokyo公演のみ1Fスタンディング ¥4,500、2F指定席 ¥5,500(共に1drink別)

オフィシャル1次先行受付
2019.07.04(木)22:00 〜 2019.07.15(月・祝)23:59
https://eplus.jp/taichimukai19/

Shooting Location

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Photo by Nacasa & Partners

9h nine hours Kyoto

TEL: 075-353-7337
所在地:京都市下京区寺町通四条下ル貞安前之町588
URL:ninehours.co.jp/kyoto

向井太一

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