INTERVIEW

TARO × TAAR

Text by Ishizumi Yuka
Photo by Hideya Ishima

     

バンドやトラックメーカーの作る音楽の境界線が溶解し、サブスクリプション・サービスによって、よりジャンルを意識せずにダンスミュージックに接するリスナーが増えた今。YOSA&TAARがクラブイベント<MODERN DISCO>で招へいしてきた海外のアーティストの多彩さ(時にFKJやMoon Bootsら「今」を象徴する存在から、Dimitri From Parisのように黎明期のソウル〜ハウス/ディスコシーンを牽引してきたベテランDJまで)は、彼らの初フル・アルバム、その名も『Modern Disco Tours』にも通じている。

YOSA & TAAR / Perfect Fire ft. Taro from Attractions

2月にリリースされた本作には先行配信され話題を呼んだ“Fever ft. SIRUP”を始め、福岡発のロックバンドAttractionsのボーカルTARO、気鋭の女性シンガーソングライターeill、ヒップホップ・サイドからは踊Foot Worksがバンドごと、SNEEZEがラップで参加するなど、YOSA&TAARがこれまで育んできたディスコ/ハウス・ミュージックで振り幅の広いゲストを束ねることに成功している。

今回は、ゲスト達の中でも意外性の高かったfeatボーカリストであるAttractionsTAROを迎え、TAARとの対談を実施。今回のコラボレーションの経緯や、楽曲“Perfect Fire”について、また共振する部分など、この出会いの必然を紐解いていく。

Interview
TARO(Attractions) × TAAR

TARO × TAAR 対談|必然的な出会いから生まれた「共振」その内部を探る interview190328-tarotaar-2

――お二人はそもそもどうやって出会ったんですか?

TAAR 彼(TARO)福岡出身なんですけど、DJをしに福岡に行く機会が一時期すごい多かったんですね。その時もうYOSAとアルバム作ろうと思ってて、「シンガーさん誰かいないかな」ってずっと探してて、それで地方行った時に地元のオーガナイザーに聞きまくってたんです。で、ちょうど福岡でtofubeatsくんとかchelmicoとか呼んでるオーガナイザーがいまして、その彼に「Attractionsって福岡のバンドがいるよ」って言われて、それが“Knock Away”出した直後ぐらいか?面白いバンドがいるからちょっと聴いてみてみたいな感じで聴かせてもらって、それで一発で「なんじゃこの声?」みたいな。

TARO あざっす!

Attractions – Knock Away(official video)

TAAR いい意味でどこの国の人かわからないテイストもあるし、絶対これ好きなもの近いわと思って、『僕らの曲で歌ってくれたらいいかも』と思ってまして。僕が一方的に聴き惚れまして、自分のラジオとかでも曲をかけてて。それから2〜3ヶ月ぐらいして共通の知り合いを通して繋いでもらいました。で、東京でライブをやる時に遊びに伺いまして、生の声を聴いて、「あ、やっぱこの人いいな」っていうのが出会い的な。

TARO 初めてライブ見てくれたのはPAELLASとのイベント?

TAAR 新代田FEVERで。PAELLASは同い年だし、過去にリミックスとかもやってるんで。そういう好きなバンド同士が呼応してる感じとかも、やっぱこの人たち好きだなと。で、「初めまして」して、「実は今アルバム作ってるんですよ」っていう話をして、「ぜひ歌って欲しいんですよ」って直談判したのが馴れ初めですね。

――福岡のシーンが盛り上がっていることも関係しているんでしょうか。

TARO 福岡は最近、盛り上がってきてはいるかなと思って。Attractionsと同世代の子たちはいないんですけど、下の方が今、すごい。Mega Shinnosukeくんとかyonawoとか、あと、ヒップホップも今すごいし。

TAAR クリエーターがどさっと福岡に移ったって時期がありましたよね。5lackもそうですし。

――話を戻して、TAROさんは直談判されてどうでしたか?

TARO や、正直、僕あんまり東京のDJ界隈、その当時そんなに知らなかったんですよ。「東京の人から声かけられた、どうしよう……」みたいな(笑)。「やべえ、めっちゃ怖い人なんやろな」と思って。依頼がきて、「じゃあ一緒にやりましょうか」って時に電話で話した感じ、やっぱクールな人なんだ〜って一瞬思って。

TAAR スカしてた?

TARO スカしてはない(笑)。

TAAR もともとDJやってたでしょ?

TARO そうです。

TAAR 後から知ったんですけど、クラブミュージックに対してすごい造詣があるというか、制作中にも仮歌を彼が録ってきてくれて、返ってきて聴いた瞬間に「あ、この人、ちゃんとダンスのグルーヴがわかってる人なんだ」っていうか。最近、ダンストラックっぽいものをバンドでアレンジして、それをロック的に歌うって解釈だったり、もうちょっとゆるめのをR&B的に歌うって人は他にもいっぱいいると思うんですけど、彼の歌の符割とかメロディラインっていうのはLCDサウンドシステムだったり……なんだろう?

TARO !!!(chk chk chk)とか?

TAAR そう、!!!(chk chk chk)とか、ダンスの文脈をちゃんと知って音楽やってるというか、僕にとっても居心地がいいメロディだったり符割だったので、「この人絶対、どっかでダンスかじってるな」とか「ダンスミュージックをどこかで食らったことがあるんだろうな」って仮歌をもらった時に思って。

TARO 自分の音楽の入り口もUKロックだったりするから、そういう音楽の話しても全然盛り上がるし、お互いにわかってもらえる関係というか。

TAAR 「あ、やっぱ好きなもの一緒だった」みたいな感じとかあって、それで一瞬で仲良くなって。プラス、TAROくん歌上手いんで、当時のUKのフラッターぽいボーカルじゃなくて、ちゃんとUSのディスコっぽい、上もちゃんと伸びるし、下も刻めるし。そういうアプローチとかもあるし、ほんとに「この人とやると楽しい」ってなって。

TARO × TAAR 対談|必然的な出会いから生まれた「共振」その内部を探る interview190328-tarotaar-4

――TARO さんはバンドのボーカル録りと何か違いましたか?

TARO やっぱ緊張感ありますね。でも仕事って感覚はあんまりないっていうか、かっこいいものを作ることに変わりないんで。

TAAR TAROくん、ガッツあるんで何回も歌わせてしまいました。

TARO いやいや、俺が下手だから何回も録らせてもらいました(笑)。

――トラックで歌うのは初めてですか?

TARO そう、ですね。ま、最近はそういうスタイルが多くなってきましたけど、自分のバンドでも。ただ完璧にダンスミュージックのトラックで歌うことは今までなかったので、逆にすごい新鮮だったし、「あ、これ使える、これ使える」ってアイデアも出せたかなと。超楽しかったです。

――今、世界的にはバンドもコ・プロデューサーを迎えたり、客演も多いですからね。

TAAR そもそも、生楽器をレコーディングでバーン!って録って、それじゃなきゃいけないってバンドが逆に少なくなってきていて。

TARO ああ、確かにそうですね。

TAAR ちゃんとスタジオワークでプロデュースをしっかりつけて、そのアプローチの仕方自体が僕らがDTMでやってきたり、僕らは逆にDTMの中に生楽器をどう入れるか?ってアプローチをしてたんで、だからそこの差ってもうないじゃないですか。僕のレーベルの先輩の80KIDZって、多分そういう手法を10年前からやっていて。だからそこで隔たりがある感じは全くないですし。Attractionsのトラックだって、キックにめっちゃコンプかかってんなと思うし。

TARO そうですね(笑)。

TAAR あとは隔たりがなくなった分、「あ、好きだ」と思った人と音楽をすることに対して抵抗がどんどんなくなってきてる。それはメジャーだろうとインディーだろうと、日本だろうと海外だろうと。

TARO ネットのおかげであんま関係なくなってきたっていうのもありますね、今、情報の速度も早いんで、音楽に対して。ロックする人もヒップホップ聴くし、ヒップホップする人もちゃんとロック聴くような状況になってきてるから、お互いに影響し合ってる。

――長い文章をインスタにあげてたり、SounCloudに上がってる音源は下手に話すよりセンスがわかることが多いでしょうし。

TAAR ほんとにそうです。音楽を聴いてフィールするっていうのももちろん大切ですし、その音楽をなぜ作ったのか?っていうクリエーターマインド的な部分でフィールするのが一番早いと思っていて、Attractionsに対しては僕はそれがすごくあって。一方的に思ってました。

――Attractionsに抱くバンド像はどういうところがフィットしたんですか?

TAAR 言葉でいうのは難しいですけど、うまいこと言えるかな?……ベストなアプローチをしてるっていうか、楽曲に対してもそうですし、彼らが置かれてるシーンだったり状況もそうなんですけど、もちろんかっこいいものを作るってことには哲学はそこにあるんですけど、そこに対してベストなアプローチを自分たちでちゃんと選んで、一個一個ディレクションして作り上げていってるっていう、D.I.Y.感というか。福岡だからかもしんないですけど、自分はそれを感じたのかなっていうのは思いましたね。全部自分たちがコントロールしてっていうか。今これをやったら面白いんじゃないのか?ってサウンドだったり、あと、単純に出音がカッコよかったってところもそうで。

――確かに「今流行ってるから」って作らされてる感は全くない。

TARO ああ、それはないです。

TAAR そうですね。あとやっぱ、僕DJなんで、人よりいろんな曲を職業的に聴くんですけど、その分だけサンプリング元が大体わかるんです。このバンドはこう、とか、あのバンドはこの時代のこういう部分とこういう部分をかけ合わせてるな、と。Attractionsはそれの重なり合いの色合いがすごく綺麗。

TARO めっちゃ嬉しい。

TAAR いろんなとこからいろんなものを引用してきて、Attractionsってものを作ってる。でもそれって、やっぱ一歩引いてAttractionsってものをわかってないと。個々がAttractionsに対してプロデューサー的な立場でモノを作ってる感じ?じゃなかったら、あんな曲は書けないんじゃねえの?って僕は思いましたね。

Attractions / Hazy Boy(Music Video)

――今回の『Modern Disco Tours』は珍しいと思うんですよね。こういう、ダンスミュージック・アルバムなんだけど、この時代にあるいろんなビート、割とエンサイクロペディア的というか、そういうダンスミュージックアルバムのあり方は。YOSA&TAARとしてどんなアルバムを目指していたんでしょうか。

TAAR プロデューサーズ・アルバムというか、僕もYOSAも個人の活動で自分のアーティスト名義で作品を出してたりするので、その僕らがお互いの丸が重なったそこの部分を作ろうよっていうのはもともとあって。共作をするのは僕もYOSAも初めてだったけど、なんとなくお互いのDJとか作品も知ってるから、こういう感じにはなるんだろうな、みたいな。で、どんなフォーマットの音楽を作っても、僕らが今面白いっていうものを入れてったら、バラバラになってるけど、その中でも統一感は出るよねっていうのはあって。

TARO 一緒。うちのバンドも(笑)。

――いわゆるひとつのジャンルのビートじゃなくて色々なものが収録されているのはそういうことなんですね。

TAAR なんか今っぽい感じっていうのは多分、客演しているボーカルの方々が出してくれてるんだと思ってて。今っぽいものを作るというよりかは歌ってくれてる人たちが今っぽくしてくれてる感じがするんですよ(笑)。

――もともとイベントが母体になってるアルバムで、このアルバムを聴いていると飽きないパーティだろうなって想像もできるんです。

TAAR 確かに。<Modern Disco>ってイベントは来てくれた人じゃないとわかんないと思うんですけど、基本的に四つ打ちのダンスミュージックでBPM100行かないぐらいのテンションの曲もかかるんですよ。実際、そういう音楽をやってる海外のアーティスト達を招へいしてるし。一方でTodd EdwardsやDimitri From Parisなど比較的BPMの早いアーティストも呼んでるし。

――その幅が面白いところですね。

TAAR それを一個の名前で「Modern Disco」って呼んでるから。ま、そこまでの振り幅はあってOKじゃない?って。じゃ、それって何が共通してんのかって言ったら、曲のミュージカリティ、なんていうんだろう?……ダフトパンクが言ってるんですよ、ミュージカリティって。音楽的であるっていうか、ダンスミュージックってもうちょっと肉体的でもあって。もっとね、音楽っぽい。理論だったり機能も含まれてます。テクノは違う、ディスコはそう、なんだろ?音楽的に表現できる幅が豊かっていうか。ディスコの方が豊かだって感じ。

――極論するとテクノはビートに最もフォーカスされているけど、ディスコはメロディとか色々含まれているイメージですか?

TAAR そうです。いろんな要素が含まれてて、より音楽的である、そういうものを「Modern Disco」っていうもので僕自身は追い求めてたんです。現行のダンスミュージックやリリースされる曲たちをより音楽的っていうか、音楽性豊かなものであってほしい。クラブミュージックであっても、そういう振る舞いをしているものが僕は好きなので。なんかそういうことを僕の中では一個のテーマとして作ってったのかなって思いますけど。

――ところでTAROさんに自分のボーカルトラック以外に好きな曲を3つあげてほしいです。

TARO 難しい……eillちゃんの“Red”いいですね。始まり方がワクワクさせるというか、エロいし、すごいその曲が好きなのと、あと、5曲目の“Work in Lorsch”がムッチャ好きなんです。ベースの鳴りとかも。これ絶対盛り上がるだろうし。あと、SIRUPとの“Fever”はガラージュっぽくてすごいし。いろんなジャンルがありつつも、どれもエモーショナルにも聴けるし、すごくリラックスしても聴けるっていうか、どんな場面にも合うと思います。で、クラブでかかると絶対アガるし、俺はこれはもう宝物だし、聴ける作品になってると思います。

YOSA & TAAR / Fever ft. SIRUP

ーーTAARさんは自分でもこれはシュアショットだなという曲はありますか?

TAAR “Perfect Fire”好きですし、僕も“Red”は好きかな。個人的にも今までのスキルをアップデートしつつできたかなというのはありますね。

――ちなみに「Perfect Fire」をライブで見られることはあるんでしょうか?

TARO やりたいです。僕ももう少ししたら言おうかなと思ってて。今ワンマンで忙しくて、そこまで手が回らない部分があるんで(笑)。

TAAR TAROくんがあるって言った!てことは、あります(笑)。

――どういうやり方で?

TAAR 楽譜書いて渡そうか?

TARO ははは。メンバーでアレンジします(笑)。

――ちなみにシンガーは随時探してるんですか?

TAAR はい。素敵なボーカルがいればぜひやりたいと思いますし、僕、インスタで無名のシンガー探すのハマってて、今、二人ぐらいいるんですよ。いろんなシンガーとはやってみたい。ほんと、メジャー、インディー問わず、女性、男性、年齢も問わず、今この瞬間に音楽やってるシンガーとだったら誰とでもやりたいです。

――話をちょっと大きくしちゃうんですけど、お二人とも国内に限らず活動してると思うんですが、日本に限らずどういうところまで見てますか?

TARO 僕はインドネシア出身というのもあって、日本がもっともっとアジアのシーンの認識を持つべきかなと思って。なんかどことなく鎖国化してて、僕、日本に来て不思議に思ってたことがあって、MTVミュージックアワードってあるじゃないですか。あれ、ジャパンはジャパンだけなんですよね。アジアは日本以外みたいになってるの超不思議で。一緒にやればもっともっと広がるのになと思って。最近、バンドシーンもそうですけど、ヒップホップシーンも東南アジアのあの辺、勢いすごいですけど、日本は超遅れてるんで、それが悔しいから、逆に逆輸入ぐらいの勢いで海外で活動できるようになるまで、ちょっと頑張っていきたいなと思ってて。で、それをちゃんと日本に持って帰ってきて、みんなに紹介できる立場になれればいいなと思ってますね。

TAAR 僕は別にあえて海外とかは全く考えてなくて。逆に東京に生まれて東京で音楽やって、今この瞬間、音楽を楽しめてなければどこに行ったって変わんないと思うんですよ。特にダンスミュージックって、UKとかベルリン、それが良しとされる風潮があるし、そこに移住する人とかもいると思うんですけど、僕、『体のいい都落ち』って呼んでて。

TARO ははは(笑)。

TAAR いや、東京で売れるのが一番難しいし、東京で音楽続けることがすごい難しい。日本で音楽することがすごい難しいと思うんですよ。

――これからのマーケットの縮小を考えると。

TAAR ほんとに。もうここ5年で変わったし。CDは売れない、サブスク出てる、でも音楽やってるっていう奴のほうが、絶対面白いと思うし。だから僕は日本で音楽やってるやつ、今この瞬間、日本で音楽やってる奴が一番尊いと思ってるんで。

TARO 一番ハングリーですからね。

TAAR さっきTAROくんが鎖国って言ってたけど、どっちかだと思うんですよね。鎖国感を出し、日本特有のものだっていうか、海外に直接繋がってこっちを見てもらうか。こっちから向こうに寄せるかっていうことの違いだと思うし、別にそれはあえてやる必要はないと思うし。なんか結果として引っかかってくれたらいいなぐらいしか思ってないんで。

TARO 海外のアーティストとコラボしたりはしないの?

TAAR それはしたい。それは面白いじゃん。

――こちらの「調理室」に素材として入った感じになるのが面白いのかもしれない。

TAAR そうですね。だからなんかアバンギャルドなことをやるとか、すごく簡単だと思うんですよ。振り切れることは誰でもできるんで。そうじゃなくて、僕らは音楽をする上では、絶妙なバランスをとっていたいっていうのはずっとあるかもしれないです。

――それは大きな意味ではポップスということですか?

TAAR そうですそうです。今回のアルバムはJ-POPっていうほどではないけど、ポップスを好きだし、ポップスの要素をどこまで取り入れられるか?みたいなこともなんとなく頭の中にはありましたね。

――最後に。また二人で何かやれる機会があれば、やりたいですか?

TARO もちろん。

TAAR やりたい!

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RELEASE INFORMATION

Morden Disco Tours

TARO × TAAR 対談|必然的な出会いから生まれた「共振」その内部を探る interview190328-tarotaar-jk

YOSA & TAAR
2019年3月27日(水)リリース
Track List
01. Take Off
02. Red ft. eill
03. Slave of Love ft. 向井太一 & MINMI
04. Perfect Fire ft. Taro from Attractions
05. Work in Lorsch
06. Dance in Casbah
07. Under Water City
08. Rain Down ft. SNEEEZE
09. Fever ft. SIRUP
10. HIKARI ft. 踊Foot Works
11. Transit

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