イメージはサイケデリック、歌はソウル、音数は限りなく少なく、魅力的な余白を残す。リスナーはそこに自分の記憶や体験を勝手にリンクさせ、楽曲を補完することができる。彼らほどイマジネーション豊かなポップソングを書く若いバンドを、私は他に知りません。個人的に、演奏がもう数段階タイトになりさえすれば、彼はアメリカのウェストサイドと東京のローカルを華麗にサーフする最強のバンドになると思っています。
今年2月にデビュー盤『from JAPAN』、8月には同アルバムのLPをリリースした彼らは、感覚的にすべてを選びとっているように見えて、ロジカルかつ戦略的に楽曲を構築しています。それは、このタイミングで、日本ではスルーされがちだったアンノウン・モータル・オーケストラのミニマムソウルを引用したセンスからして明白。そこにどんなバックボーンが眠っているのか。改めて、メンバーそれぞれが「夏に聴きたい曲」というテーマの元に挙げてくれたプレイリストを紐解きながら聞いてみました。
Tempalay / made in Japan (Official Video)
Interview:Tempalay
小原“生きてきた中で見てきた景色とか、そういう記憶が自然と楽曲にリンクしていく”
――曲を書いているのは綾斗さんですよね。ソングライティングの具体的なプロセスについて教えてください。
小原 最初から曲の全体を思い浮かべることはなくて、フレーズから作っていくことが多いですね。イメージについては、曲を作るためにロケハンをするわけではなく、これまで生きてきた中で見てきた景色とか、そういう記憶が自然と楽曲にリンクしていく感覚です。
――綾斗さんからラフがあがってきて、竹内さんと藤本さんがそれを楽曲の形にしていくとき、どんなフィーリング、ムードを重視しましたか?
竹内 Tempalayだからこれ、というのはなくて、楽曲ごとにざっくりしたイメージを綾斗に確かめます。森か街か海か、昼か夜か、みたいな感じで。
小原 そういえば、“Have A Nice Day Club”は大阪万博みたいなイメージって言ってたよね。要するに表面上の“万博”じゃなくて、もっと奥底にある雰囲気。でも、全然伝わらなかった(笑)。
竹内 最初は四つ打ちにしようと思ったら、「全然違う」と(笑)。
――『from JAPAN』でのTempalayはアンノウン・モータル・オーケストラからあからさまに影響を受けていますが、そもそも彼らの音楽と出合ったきっかけは?
小原 まだTempalayの前のバンドをやっていた時に、サイケな雰囲気で、綺麗なメロディがちゃんとあって、リズムがヒップホップっぽいものを3人でやっている奴らはいなんかなと思っていたら、“Funny Friends”っていう彼らの代表曲をYouTubeで見つけて、「うわ、これや!」と。
藤本 この話しまくってたら、彼らが来日する時に前座とかできないかな(笑)?
――それでは、プレイリストに話を移しましょう。まずは小原さんから。“Open”は2010年代を代表するライの名曲ですが、これは静謐でミニマムなムードに惹かれたということでしょうか?
小原 僕の中で夏の曲といえば、一人で静かに聴くもの。“Open”に関しては、僕の地元がまさしくこの曲のビデオに出てくるような田舎で、路面電車と汽車しかないんです。それで、夕方やったかな、車窓から外を眺めている時にiPodからこの曲が流れてきて、普段の景色がガラッと変わって見えたんです。
――レオン・ブリッジズは、今年の<FUJIROCK FESTIVAL>(以下、フジロック)でも観たと言っていましたよね。
小原 ライブが予想以上にミニマムで、めっちゃ格好良かったですね。
Leon Bridges – “Lisa sawyer”
――久石譲“One Summer’s Day”は『千と千尋の神隠し』のオープンニング曲です。この曲以外の久石譲の作品も普段から聴きますか?
小原 聴きますね。特に、これにするかどうかも迷ったくらい、『千と千尋の神隠し』の曲って全部良いんですよ。この曲に出合った頃は友達がいなくて、家で一人で遊んでいたんですけど・・・(笑)。自分の部屋の窓を開けると田んぼがバーっと広がっていて、そのむこうに線路が通っているんです。その光景を思い出しますね。
――キリンジ“エイリアンズ”、発売当時はいまいちヒットしませんでしたが、その後ハナレグミなど多くのミュージシャンにカバーされています。この曲を知ったきっかけは?
小原 キリンジがずっと盲点で、僕はこの曲から入ったんです。ユーモアのある歌詞と美しいメロディのギャップが僕の中では理想的だった。この人たち、天才なんやと思いますね。
――RIP SLYME“楽園ベイべー”はイントロのギター、フロウ、コーラス、MV……すべてがパーフェクトすぎる大名曲ですが、ここで綾斗さんのこの曲に対する愛を語り尽くしてください。
小原 こんなに夏を感じる曲、あります?(笑)“楽園ベイベー”っていう曲名を知らなくても、リスナーがその曲名を勝手につけそうじゃないですか。童貞っぽい歌詞とか、イキってる感じとか、すごくユーモアがあって……音楽ってユーモアですよね。
――井上陽水“少年時代”。あえてこの曲のすごさを説明するとすれば?
小原 もう、23年間くらい好きな曲ですね。この曲の歌詞、何言ってるかわからないんですけど、何言ってるかわかるじゃないですか。風あざみとか宵かがりとか、造語やから意味はないんですよ。でも、音楽とバチッとハマっているから、言葉になっている。
――お次は竹内さんの番です。シールズ&クロフツが1972年にリリースした“Summer Breeze”のアイズリー・ブラザーズによるカヴァーは、ソフトロックのスウィートなメロディがサイケデリックの中に息づいています。
竹内 僕はこの曲の元ネタを知らなくて。この前原曲を聴いたらカヴァーと違ってすごく爽やかだったから、“Make Me Feel Fine”のリリックがやっと自分の中でマッチしました。シールズ&クロフツは都会の初夏で、アイズリーがジャングルの熱帯夜な感じですよね。
The Isley Brothers – “サマー・ブリーズ”
――ステファン・ステインブリンク“Now You See Everything“、こちらも現代のソフトロックです。
竹内 一番聴いていた曲ですね。声質がずば抜けている。
Stephen Steinbrink – “Now You See Everything
――冨田ラボ“ペドロ~消防士と潜水夫~feat.佐野元春”はリアルタイムで聴いていましたか?
竹内 リアルタイムですね。ファーストとセカンドは本当によく聴いていました。これは記憶の底にずっと眠っている曲で、今回のテーマを聞いた時に思い出しました。リフが夏っぽくて、冨田さんの声が涼しげだから。
富田ラボ – “ペドロ~消防士と潜水夫~feat.佐野元春”
――アンダーワールド“Scribble”、僕はこの曲を完全に聴き逃していました。改めて聴くと、コーラスにすこし古めのリーナ感があって、めちゃくちゃアガりますね。
竹内 このアルバムが出た時にちょうどイギリスのエレクトロをよく聴いていて、自分の気分とリンクしたんです。アンダーワールドがドラムンベースをやった! っていう。あと、打ち込みなのに血が通っているというか、バンドっぽいのも良かった。
――最後、サブライム“Santeria”って、みんな一度は通りますよね。
竹内 実は、『テラスハウス』にこの曲が使われていることを知らなくて……ちょっとショックだった(笑)。歌詞が全然わからないんですが、すごく夏っぽい(実際は「自分の愛する女を奪いとった男をぶち殺してやる」というなかなか物騒な内容)。
その他、Tempalayの意外なルーツがわかる楽曲とは!?
RELEASE INFORMATION
from JAPAN
2016.01.06(水)
Tempalay
[amazonjs asin=”B017O7TAX4″ locale=”JP” title=”from JAPAN”]
EVENT INFORMATION
BEACH TOMATO NOODLE
2016.10.01(土)
OPEN 11:30/START 12:00
千葉 白浜フラワーパーク
ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000
りんご音楽祭
2016.09.24(土)
START 9:30/CLOSE 21:00
長野県松本市アルプス公園
2日間通し券 ¥12,000 / 2日間通し券+キャンプ券 ¥27,000
CLAPPERCLAPPER 10th ANNIVERSARY
2016.10.03(月)
OPEN 18:00/START 18:30
大阪・アメリカ村CLAPPER
ADV ¥2,500/DOOR ¥2,500
WASEDA MUSIC SHOWCASE Vol.2
2016.10.15(土)
OPEN 13:00/START 13:30
渋谷 WOMB
ADV ¥2,500/DOOR ¥3,000
TAMTAM “NEWPOESY” Release Tour 東京公演
2016.11.04(金)
OPEN 19:00/START 19:30
渋谷 TSUTAYA O-NEST
ADV ¥2,800/DOOR ¥3,300
photo by Kohichi Ogasahara