FUJI ROCK FESTIVAL’21>にも出演が決定。“漆黒の高揚感”とも言うべき唯一無比のサウンドで早耳のリスナーたちの評判を呼んできたTHE ALEXXが、セカンドアルバム『God Bless You』をリリースする。

THE ALEXXは杉浦英治(Programing)、tonton(Vocal)、筒井朋哉(Guitar)による3ピースバンド。2019年11月にファーストアルバム『VANTABLACK』をリリースし、昨年はコロナ禍でライブ活動が制限される中、12月にSUPER DOMMUNEで開催されたライブストリーミングイベント<「BE AT TOKYO LIVE STREAMING」Vol. 1>で「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」のデザイナー・宮下貴裕とコラボするなど精力的に表現領域を拡張してきた。

アルバムからは“Art Hurt”、“The Buzzer”が先行配信リリース。サイケデリック・ロック、ポスト・パンク、アシッド・ハウスなど様々な音像を打ち出し、“異世界への誘い”を思わせる独特の美学を描き出すTHE ALEXXの新作について、3人に語ってもらった。

インタビュー|THE ALEXXが2ndAL『God Bless You』で描いた独特の美学 interview210721_the-alexx-01

Interview:
THE ALEXX

━━アルバム『God Bless You』はTHE ALEXXとしてのアイデンティティを強く打ち出した一枚だと感じました。バンドサウンドもダンスミュージックも、どちらのスタイルもありつつ、他に類を見ないタイプの音楽になってきている。みなさんとしては、新作が出来上がってどんな感覚がありますか?

杉浦 英治(Programing 以下、杉浦) みんながお互いのことをより信頼しているのが大きいと思いますね。最初は「この先どうなるんだろう?」ってみんな思っていただろうし、俺も正直わからなかったところがあって。でも、今は「面白いものを作ろう」という感じがどんどん出てきていて、前作よりみんなで作っている感じはありますね。

Tonton(Vocal) 前は「杉浦さんの作った曲を歌う」っていう感じだったんですけど、実験的なものが集約されてきたというか、だんだん「こういうのをやってみたい」と思ったものを形にできるようになってきた感じがあります。

杉浦 そうだね。思いつきからはじめることが多くなってきたよね。

筒井朋哉(Guitar 以下、筒井) コロナのせいでリモートで作る時もあったし、がっつり演奏して作る時もあるし、制作の選択肢がいろいろあったというのもあるかな。

━━THE ALEXXがスタートした時は杉浦さんのソロプロジェクト的なイメージもあったんですが、そこから1年以上をかけて徐々にTHE ALEXXというバンドのアイデンティティが確立されてきたような気がします。

杉浦 共有する時間も多くなったし、仲間っぽくなっている感じはありますね。余計なこだわりがなくなって、より研ぎ澄まされてきた感じはします。

筒井 杉浦くんが言った通り、一緒に旅をしてメンバー同士が溶け合っていったのは僕も感じます。その途中に普通にあるケンカとか、今後も普通にあるだろういろいろなことも含めてね。僕はずっとロックバンドをやっていたので、1枚目の時は新しい作り方に慣れるのに時間がかかってたんですけれど。このアルバムはそれを超えて、もっと広い意味でバンドとして面白いもの、大きなものが作れたとは感じています。

━━アルバムを作る上での最初のアイディアやモチーフは、どんなところから出てきたんでしょうか。

杉浦 いろいろあるけど、宮下(貴裕)さんのショーの音楽をやったのは反映されているかもしれないかな。

━━TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.の宮下さんとは前からの付き合いですか?

杉浦 NUMBER(N)INE(1996年、宮下貴裕が設立したファッションブランド)の時から知っていたし、前からショーにも行っていたんですけど、こんなに仲良くなったのは最近ですね。THE ALEXXの『VANTABLACK』にすごく衝撃を受けた、めちゃめちゃいいって言ってくれて。宮下さんからメールがきたんですよ。そこからいろんな話を週1か週2くらいでするようになった。そんな中で「次のコレクションは初めてショーをやらずに映像で見せたいからその音楽を作ってくれ」って言われて。宮下さんはバンドっぽいっていうか、発想が音楽っぽいんですよね。世界的にもコレクションを映像で見せたのはかなり早かったんじゃないかな。それでコレクション(「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Spring / Summer 2021 collection. doe(s)」)の音楽をやることになって。

━━宮下さんとの共同作業はどんな感じでしたか?

杉浦 「こんな感じの曲を作ってほしい」って言うんだけど、作ったことがないような音楽ばっかり言ってくるから、「なんでそれを俺ができると思ってるんだろう?」って。

tonton (笑)。

杉浦 実際、どう始めればいいんだろう? っていうところから始めて。でも「できない」とか「わからない」って言うのもあんまりないから「わかりました」って言って作って。それが結果としてできたから、そういうところから広がっていったという感じだったかな。アルバムの“Wrathful”っていう曲も、最初のニック・ケイヴ(Nick Cave)っぽいドラムのアイディアをもともとTHE ALEXXでやろうと考えていたのを宮下さんのコレクションに使って。そこから曲になっていったという。

TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Spring / Summer 2021 collection. doe(s)

筒井 “17”もそうだったよね。

杉浦 “17”はその次のやつだよ。“Wrathful”は、宮下さんと最初に一緒にやったコレクションのときに作った曲で、“17”は最近のコレクション(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Autumn / Winter 2021 collection. RE:)の時に作った曲。結局、音楽としては使われなかったんだけれど、そのコレクションはドッペルゲンガーをテーマにしていて。世界に自分にそっくりな人が3人いて、それを見つけたら死んでしまうという話で。だから“17”っていう曲は、3拍子で、3つの音で、3つの展開でっていうふうに、全部「3」で考えようと思ったのが、最初のアイディアだったんです。

TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Autumn / Winter 2021 collection. RE:

━━たしかに「3をモチーフにして3拍子の曲を作ろう」という発想は、普通だったらなかなか出てこないですよね。

杉浦 そうやって、1曲に対してテーマとアイディアを詰め込むようになってきたというのはあるかもね。ただ「いい曲」を作るというよりは、アイディアのある曲を作るというか。THE ALEXXを始めてからアーティストっぽくなった感じがする。

━━そうなんですか?

杉浦 Electric Glass Balloonの時も、SUGIURUMNの時も、ミュージシャンとかプロデューサーとかDJって言われるのはよかったんですけど、アーティストって言われると気持ち悪い感じがあったんですよ。幸運なことに、今までずっと頼まれて、お金を貰って音楽を作ってきたから、どちらかと言うと職人のような立ち位置だと思っていて。でも、THE ALEXXを始めてからは、誰にも頼まれてなくてもやるお金をもらえなくてもやるものになった。完全にこのバンドはゼロから始めているから。

━━それは、扉が開いた感覚ですね。しかも、それが宮下さんという別のクリエイティブに携わる人を触発して、つながりが生まれて、それが新たな作品につながっている。

杉浦 クリエイティブな話ですよね。宮下さんと話しているうちにアイディアとか発想みたいなものが出てきて、それを音楽に翻訳していくような感覚で作っていく。そういう作り方も、もちろん今までもあったけれど、100%そうしたことはなかったから。

━━いくつかの収録曲についても聞かせてください。まず“Cold Love”はどういう風にできていった曲ですか?

杉浦 この曲のメロディは全部tontonだよね。俺たちが作ったオケにtontonが歌ってくれたのを編集して、そこに歌詞を乗せていった感じです。

━━この曲のMVは宮下さんが監督を担当していますが、これは?

杉浦 宮下さんがやりたいって言ったんです。このMV、モールス信号が入ってるんですけど、本当はもっと長いんですよ。長いんで全部は使わなかったんだけど、歌詞をモールス信号に変換して、それをシンセの音で鳴らしてるんです。それを俺が作っていて。実際使われたのはちょっとだったけど、ものすごい量があって。モールス地獄でした(笑)。

THE ALEXX -COLD LOVE-

━━“Art Hurt”は徐々にテンションを上げていくタイプの曲で、アルバムの中でもキラーチューンになっていると思います。

杉浦 ありがとうございます。この曲、サビが一回しか出てこないんだよね。それはビデオを作るときに改めて気付いたんだけど。

━━“Art Hurt”のMVは杉浦さん自身が監督を手掛けていますが、これは?

杉浦 これはもう予算もなかったんで僕がやるしかないっていう選択肢で。これまでも何本かやったんだけど、同じ方法論のやつは通用しないと思ったんで、メンバーがちゃんと映っているやつをやろうと。あと、今、何かを爆破したり燃やしたりするビデオがめっちゃ多いんですよ。トレンドだと思うんですよね。きっと、みんな鬱憤が溜まっているから。

━━杉浦さん自身にも鬱憤や怒りの衝動はありますか。

杉浦 それは本当に、まったくない。

一同 (笑)。

杉浦 むしろ、感謝しかないですよ。でも、世の中的に怒ってる人が多いのはわかる。マジでキツいだろうなって。「燃やすしかないな」って気持ちになるのは、よくわかります。

THE ALEXX – Art Hurt-

━━“Bug”はどうでしょう? これは日本語詞の曲ですけれども。

杉浦 ちょっと変わった曲ですよね。イレギュラーな曲で。“Outsider”を日本語で書いたので、もう一曲日本語で書こうというのは最初から決めていたんですけど、この曲を書いた時は並行世界にハマってて。北海道で1万円玉が見つかったとか、スペインでビートルズが解散してない並行世界に行っちゃった人の話とか、ヤバいのがいろいろあって。時間の歪みのようなものがあって、そういうところから曲になりました。だから、アコギ弾いているんだけど、小節の中で何拍目と何拍目がランダムで逆回転になったりしているんですよ。

筒井 オケはすごい凝ってるよね。

杉浦 あと、最初にフルートの音が入ってるんですけれど、あれは俺と筒井くんがマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)の初来日をクラブチッタ川崎まで観にいった時のことを思い出して。『Loveless』が出た頃で、みんな「このギターの音はどうやって出してるのか」って夢中になってたじゃないですか。あのフルートみたいな音をどうやってギターで出してるのか、どうしてもわからなくて。それでライブを観にいったらステージにフルートを吹いてる人がサポートでいたんですよ。「フルートじゃん!」って(笑)。それを思い出して、あえてフルートを入れたらいいんじゃないかって。

筒井 結果よかったね(笑)。

━━この曲もそうですし、他にも“Ready To Play The Future”とかラストの“Something Great”とか、サイケデリックな感じの曲も多いですよね。じっくりと時間をかけて陶酔感を作っていくという。

杉浦 そうだね。みんなも好きだもんね、こういうの。

tonton そうですね。

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━━“The Buzzer”も強力なナンバーだと思います。これはダンスビートとミニマルなベースラインを繰り返していく中でちょっとずつ興奮の度合いが上がっていくようなタイプの曲で、何よりライブで体験することに意味がある楽曲だと思いました。

杉浦 そうですね。やっとライブが楽しくなってきたし、“The Buzzer”はライブでやりたいですね。この曲は最後にオペラみたいな声が入ってるんですけど、あれもtontonが歌ってるんですよ。

THE ALEXX – The Buzzer

━━今回のアルバムの収録曲で、みなさんとしては、特にこの曲をライブでやってみたいっていう曲はありますか?

筒井 僕は“17”が楽しみです。

杉浦 あれ、いいよね。歌っちゃうよね。

筒井 あの曲はサイケデリックなフレーズをひたすら弾いていて、構成も3で括っているからかもしれないですけど、結構変な構成で。改めて面白いなって思います。

tonton 私も“17”はやりたいですね。あと“Art Hurt”も好きです。

━━杉浦さんはどうですか?

杉浦 僕は“Ready To Play The Future”かな。あの曲、ドラムがビートルズ(The Beatles)の“Tomorrow Never Knows”じゃないですか。「未来はこうなる」ってわかってる歌にしたかったから、あえてあのドラムにしたんですけど、そうしたらすごいハマったんです。で、今はライブのオケを作ってるんですけれど、ここにフューチャー(Phuture)の“Acid Tracks”みたいなTB-303の音を入れたらさらに未来っぽくなっていいかなって。それをライブでやるのが楽しみです。

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Text by 柴那典
Photo by Maho Korogi

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THE ALEXX

tonton(Vocal)、筒井朋哉(Guitar)、杉浦英治(Programing)による3ピースバンド。

公式⾳源リリース前のFUJI ROCK FESTIVAL’19にて初ライブを披露したのを⽪切りに活動をスタート。
2019年9⽉にデビューシングル『Beatwave』、11⽉にファーストアルバム『VANTABLACK』をリリース。
2020年5⽉に配信限定でリリースした『Beatwave(Takkyu Ishino Remix)』はSpotify、Apple Music等各種配信サービスに特集され、緊急事態宣⾔下の東京で撮影された同曲のMVも話題となる。その他にもバンド初のライブ映像作品「DogManLive」episode1からepisode3をYouTubeで公開する。
その後コロナ禍となり予定していたライブは全てキャンセルになったが、9分46秒の⼤作『Something Great』、初の⽇本語詞曲『Outsider』2曲の新曲をリリースし、千葉県の海辺の公園で⾏った無観客ライブをYouTubeで公開した。
2020年⼤晦⽇から2021年元旦にかけてオールナイトで開催されたフジロックʻ21へのキックオフイベント『KEEP ON FUJI ROCKINʼ II -On The Road To Naeba 2021-@東京ガーデンシアター』にクロージングアクトとして出演し、⽇本全国の“フジロッカー”に向けたライブが⽣配信された。
2021年2⽉、配信シングル『COLD LOVE』リリース。ファッションブランドTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.のデザイナーTakahiro Miyashita⽒が監督した7分41秒のショートムービーが本作のミュージックビデオとして同時公開され、ミュージックシーンに留まらずファッションシーンでも話題となった。
2020年代の⽇本の⾳楽シーンで異質とも⾔える独特な世界観を多⾓的な⼿法で展開し続けている。

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RELEASE INFORMATION

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The Buzzer

2021年7月23日 配信リリース
THE ALEXX
ダウンロード・ストリーミングはこちら

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God Bless You

2021年8月6日配信リリース/8月27日 フィジカル販売開始
THE ALEXX
Rexy Song

1. Cold Love
2. 17
3. Wrathful
4. Art Hurt
5. Bug
6. When You Lost Trip
7. The Buzzer
8. Outsider
9. Ready To Play The Future
10. Something Great

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EVENT INFORMATION

インタビュー|THE ALEXXが2ndAL『God Bless You』で描いた独特の美学 music210716_fujirockfestival21_1-1440x1439

FUJI ROCK FESTIVAL’21

2021年8月20日(金)〜22日(日)
新潟県湯沢町苗場スキー場

※THE ALEXXの出演は21日(土)

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