––––音の奥行きを感じさせるシューゲイザーで、ご自身たちの表現にも新しい空間が生まれるというか。シューゲイザーには緻密に構築された音楽というイメージがあるので、そういった即興のような一面は意外ですね。
須長 ベースのフレーズも完全にその場ですね。1人で曲を作って、1人で完成させるとワンパターンになってしまいがちですけど、3人から刺激が来るので、そこで変化していくんです。
––––シューゲイザーは90年代前後に生まれた音楽ジャンルですよね。当時のものを現代に落とし込んで、どう新しく表現できるのか。今は新しい可能性を探っている最中だと感じます。
椎名 The Floristはシューゲイザーといっても、聴きやすいと思いますね。根っからのシューゲイザーではなく、僕もどちらかというと、レディオヘッドからのマイブラなので、90年代後半から遡っている感じなんです。それと、メンバーそれぞれがエモを通ってきたから、メロディーが生命線という意識はずっと消えないじゃないですか。今はシューゲイザーを纏っているけれど、その内側にはエモがある。そこが生粋のシューゲイザーの先輩方とは違うと思いますね。
今村 そう、生粋のシューゲイザーがメンバーに一人もいないんですよね(笑)。今僕らがやる音楽は、各々の違った背景を踏まえた上でのシューゲイザーかなと。思いきってエレクトロに振り切るのもいいけど、それは僕らのやることではなくて。
––––それと思ったのは、皆さんにとってアルバムのリリース自体、かなり期間が開いていますよね。
渋谷 1年前にシングル『Middle Of Winter』を出すときに「俺、レコーディングするの何年ぶりなのかな」と思いましたからね。定期的に刺激があると、音楽への気持ちが途切れない。
須長 俺は2年振りぐらいかな。まだ、そんなに空いたっていう感覚はないですね。
椎名 サポートメンバーではなく、自分が正式メンバーとしてフルアルバムを出すのは11年ぶりぐらいですね。ほとんどミニアルバムだったから、一番感慨深いですね。
今村 フルアルバムは4年振りとかになるのかな。僕らのこと、シューゲイザーを知らない人が聴いても、グッとくるアルバムなんじゃないかなという希望があります。ライブをやって作品を出し続けていく。いわゆるバンド活動の循環を続けていくことで、自分たちが思ういい音楽を届けていきたいですね。それは「The Florist」というバンド名にもリンクしているんです。
The Florist – “Middle Of Winter”