ーーなかでも、今回のファースト・シングル“I Feel Love(Every Million Miles)”は、ザ・デッド・ウェザーの楽曲のこれまでの楽曲と比べても最も素晴らしい曲の一つだと思いました。この曲ができた時のことを教えていただけますか?

他の全ての曲と同じく、嵐のように一気に出来上がったよ。スタジオでの僕らには静寂の隙は一切なくて、スタジオ入りしてすぐに演奏を始めてレコーディングが始まるんだけど、この曲も休憩から戻ってきてすぐにギターを手に持ってあのリフが生まれてきて、それがそのままあの曲になって、それから25分もしないうちにアリソンが詞を完成させた。曲自体は元々アリソンがだいぶ前に作った詩を元にしていて、それがちょうど曲の音楽性と合っていたんだ。リフが出来てから曲が完成するまで、全部合わせて1時間もしないうちに出来上がったよ。はっきりとは思い出せないけど、3回目のレコーディングセッションの始めの方で出来たと思う。

▼The Dead Weather – I Feel Love (Every Million Miles)

ーーこの曲のビデオ・クリップも印象的でした。出演しているのはアリソン・モシャートのみとなっていて、完全にジャック・ホワイトのバンドでないことが窺えます。アリソン一人でいいのか、ということはバンドでも話し合われましたか?

特に話し合ったりはしなかったよ。曲に合ったビデオのアイデア自体が重要なもので、それを具体的に誰がどういう風に形にするかはさほど重大なことじゃなかったから、今回嵐の中で吹き飛ばされたり這いずり回る役はアリソンに譲ったのさ(笑)。楽しそうだし、僕もぜひやってみたかったね!

ーーレコーディング中のエピソードで興味深かったものがあれば、いくつか教えてください。

制作過程が少し面白かったのは“Let Me Through”で、レコーディングの最後の方に出来た曲なんだけど、レコーディングの終盤で少し気も緩んできたところで、それまでに出来た曲を見直してみたんだ。この曲はその中でも全くの未完成で、ジャックとLJ(ジャック・ローレンス)が一緒に演奏しているところを2分くらい録音しただけのものだったから、そのままボツにしようとした。するとアリソンが一旦それを家に持ち帰って、スーサイドっぽいすごく良い詞を書いてきたんだ。その詞を見た僕らはそれに刺激されて、そのまま曲を発展させて完成させた。そして結果的にその曲が僕にとってアルバムの中でも特にお気に入りのものになったんだよ。そういう風に、何でもないようなところから何か良いものが生まれるっていうのはいつだってクールだね。僕らのダイナミクスの良い一例でもあるよ、誰かひとりには見えないものを他の誰かが見つけ出すことができて、お互いに信頼しあっているんだ。僕らそれぞれ違ったパーソナリティーを持っていて違った要素を持ち込みながら、ごく自然に音楽が生まれてくる。特にこういうサウンドにしようとか、事前にどうするかの計画について話したりはせずに、ただ楽器をアンプに繋いで演奏を始めて、化学反応が起きるんだよ。

ジャック・ホワイト率いるモンスターバンド。アルバムへの想い The-Dead-Weather-2

アルバム『ドッジ・アンド・バーン』ジャケット

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