ーータイトルの『Dodge and Burn』というのは、写真用語とも聞いたのですが、こちらを選んだ意図を教えていただけますか?

僕らの友人で、今回のアルバムのカヴァー写真も撮ってくれたフォトグラファーのデイヴィッド・スワンソンがその言葉について話していたんだ。彼はそれが写真用語で何を意味するかについて話していたんだけど、僕らは単純にその言葉の響きがすごく気に入って、良いアルバム・タイトルになるんじゃないかと思った。それが何の用語なのか知らない人が聞いても、何かしらの意味がある言葉のように聞こえて、何かをイメージさせるような言葉だからさ。

ーー今回、アルバムをサポートするためのツアーは行なわないことを発表していますが、その理由を教えていただけますか?
純粋にスケジュール上の理由だよ。僕はこのインタビューの1時間後にはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのリハーサルに行くところだし、アリソンはニューヨークでザ・キルズのアルバムの仕上げに入っているところで、僕ら全員今は別の世界にいるんだ。ジャックは長いことツアーを続けていたから休憩が必要だしね。将来的には(ツアーのための)時間と機会を見つけられるといいなと思っているよ。とりあえず今はまずアルバムを一緒に作りたかったんだ。

ーージャックは先日ファンからの質問に答える形で、現在の音楽業界におけるツアーやフェスティバル出演の問題点について述べていましたね。あの時の彼の発言の意図は何だったのか、分かる範囲で教えてもらえますか?

個人的には、今の時代に若いミュージシャンとして新しいバンドを始めたくはないなと思うよ。僕が若い頃に一番楽しかったことといえばバンドに入ってツアーを回ることだったけれど、今ツアーをすることはどんなレベルのバンドにとっても金がかかるし、疲れるし、大変なんだ。メディアでの露出以外にバンドをブレイクさせる方法は延々とツアーをし続けることで、ずっとそれを続けることに耐えられればいつかチャンスがやってくるかもしれない、ってものだけれど、今はそこまでツアーを続けることが本当に難しい。今も良い音楽を作っている良いバンドは沢山いるけれど、それらのバンドが相応の注目を集めるのにかかる苦労は見合わないと思う。人々はそういう問題に気付きつつあるし、やがてはその対処方法を見つけ出すと思うけれど、とりあえず現時点で僕自身がそういう立場だったら、新しく音楽でのキャリアを始めようとは思わないね。

ーーTidalに参画したのも、そうしたことと関連してのことだと思うのですが、いかがでしょうか?

多分世間的にはTidalについてある程度先入観が存在していると思うけれど、提供しているサービスは(他のサブスクリプションサービスと)同じだよ。無制限の音楽アクセスさ。でもTidalはさらに高音質のサービスを提供していて、オーディオファンにとっては有り難いものだと思う。ニール・ヤングのポノにも近いけど、レコードをその本来のクオリティで聴きたいと思う人々は一定数存在しているから、そのための選択肢が存在するっていうだけでも意義のあることだと思うよ。サービスの発表のされ方から誤解されてしまった部分もあるかもしれないけれど、今のところ良いサービスだと感じている。

ーークリエイティヴィティの面で、今もっとも刺激を受けていることを教えていただけますか?

僕にとって、ザ・デッド・ウェザーのアルバムをレコーディングする機会自体がとても刺激的なことだよ。インタビューの最初の方でも説明したような理由からさ——僕自身がとても尊敬するミュージシャンたちと一緒にギタリストとして素晴らしい曲を演奏できるっていうのはとても刺激になる。(ザ・デッド・ウェザーのレコーディングは)いつも僕ら全員にとって必要なタイミングで起きて、僕らそれぞれの別のプロジェクトにフォーカスする助けにもなっている。例えば今は僕自身これからクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの新しいアルバムを作り始めようとしているところだけれど、今回のザ・デッド・ウェザーのアルバムを作ったことで、新しいアルバムにもより多くのものを与えられるようになったと感じるんだ。ザ・デッド・ウェザーのレコーディングは、何であれその次にやることに対して、より精力的に、より自信を持って、よりフォーカスさせてくれるよ。

ーー今後の活動のヴィジョンについて、今どう考えているか、教えていただけますか?

ザ・デッド・ウェザーには、これまでもこれからも、計画やヴィジョンは存在しないよ。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジはこれからまた来年に向けて活発に活動するようになるから僕の焦点はそっちになるし、アリソンにとっても来年はザ・キルズが中心になると思う。でも僕ら全員、ザ・デッド・ウェザーを意味のある存在として続けていきたいという願いが脳裏にあるんだ。それがまた別のレコードを作ることであれ、あるいは願わくばステージで一緒に演奏をする機会であれ、いずれにしろきっと直前になって決まると思うけれど、お互いに電話で「近いうちに時間ある?」って聞いて、タイミングが合えば何かしらやることになると思うよ。

▼The Dead Weather – “Be Still” – Live Performance Video

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interview & text by古川琢也