【インタビュー】苗場に新たな伝説を刻むであろうニューオーリンズからの刺客＝ザ・ホット・8・ブラス・バンド。中心人物ベニー・ピートが語る過去・現在・未来

――ご存知かもしれませんが、日本でも2011年に3.11大震災が発生し、いま現在も被災地暮らしを余儀なくされている住民が数多くいます。震災当時は音楽イベントなどのエンターテインメントがことごとく自粛・中止に追い込まれていたのですが、ニューオーリンズの街はジャズ発祥の地とも呼ばれていますよね。やはり、自然と街の中に音楽が帰ってきたのでしょうか？

うん、そうだね。街の復興と同じくらいの時期に音楽も戻ってきたと思う。スーパーボウルをニューオーリンズで開催したりもして、着実に未来へ進んでるっていうのはとても嬉しいよ。

――あなたは「亡くなった者達の魂を解放させ、俺たちの町とバンド・メンバーの人生を祝福するのさ」と語っていますが、この2枚のアルバムを完成させたことによって、ホット・8はやっと未来を向いて歩んでいけるんじゃないでしょうか？

その通り。これでやっと僕たちの新しい章をスタートできるという感じだね。カトリーナ以降、亡くなったメンバーのこととかで悲しみに暮れていて、忘れようとしたって忘れられないし、乗り越えたつもりでも乗り越えられていなかったんだと思う。だけど、いつまでもウジウジしてたって何も始まらないし、かといって忘れることもできない……。でも、僕たちには時間が必要だったんだ。だからこのアルバムを出せたことで、やっと気持ちの整理がついたっていう感じはするね。

――そして『ザ・ライフ＆タイムス・オブ…』のブックレットにはバンクシーのグラフィティが使用されていました。彼が作品の使用許可を出すのはきわめて珍しいと思うのですが、あらためてバンクシーとのエピソードを教えていただけませんか？

実は、彼がニューオーリンズに来た時にレーベルの担当者が彼に会うチャンスがあってさ。なんとバンクシーが僕らのライヴを見にきてくれて共感してくれたらしいんだ！　そして、ぜひ何か一緒にやろうということになって、レコーディング・スタジオにも遊びに来てくれたんだよ。彼はそこで絵を描いてくれた。とても不思議な縁だけど、素晴らしいものを一緒に作り上げられて本当に良かったと思ってるよ。

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――さて、夏には＜フジロック・フェスティバル＞出演のため初来日を果たしますね。日本に着いたら行ってみたい場所、やってみたいことはありますか？

そうなんだよ！　はじめての日本、すごく楽しみにしているんだ。今回、僕は叔父さんを連れて行くつもりなんだよ。カトリーナで色々と辛かったし、その時に僕のことを一生懸命サポートしてくれていたから、僕なりの恩返しみたいな感じだね。一緒に日本の色々なところに行ってみたいと思ってるんだ。

――＜フジロック＞には、これまでもギャラクティックやファンキー・ミーターズ、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド、トロンボーン・ショーティ、ダンプスタファンク…といったニューオーリンズのバンド／アーティストが数多く出演しているんですよ。メンバー編成はどのようになりますか？　また、ホット・8のステージを最大限に楽しむための、秘訣のようなものがあれば教えていただけますか？

ワオ！　編成はいつも海外遠征する時と同じで、8人だよ。この人数がいちばん最少だけど、旅をするにはちょうどいいんだ。地元だと10人前後に増えることもあるけどね（笑）。トランペット×2、トロンボーン×2、サックス……と、必要最小限だけど1人も欠かせないメンバーなんだ。あと、ライヴを楽しむコツみたいなものなんて何もないね。ただ僕たちのライヴに参加してくれれば、それでいいんだよ！　出演が決まってから＜フジロック＞のサイトを見てみたんだけど、きっとすごく素敵なフェスだと思うから、そんな場所でホット・8のライヴを共有する――それだけで楽しいものになるはずさ。たくさんの人たちが見に来てくれるのを、楽しみにしてるよ！

（interview & text by Kohei Ueno）

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