——その意味でも、4人でチャレンジや実験してるような雰囲気も感じたし、それが出来るパッケージだったという事ですね。
JYAJIE 一曲目の“未知との遭遇”からしても「家感」っていうか、ガレージ・ヒップホップのような印象が僕らの中で強くて。遊びつつ、でも割と渋く作れたと思うし、この曲を作った事で、アルバムの全体像が見えた感じですね。
SIKK-O 全体の匂いが決まった感じだよね。
——ドラムとベース・ループを軸に引っ張っていって、そこにカラフルに上モノが乗かっていく感じも、90sっぽい質感があって。
JYAJIE フックもJurassic 5っぽい、ユニゾンで引っ張っていく感じにしたくて。そこはかなり練習しましたね。
SIKK-O この曲みたいな、ユニゾンで揃えるようなメロ・フックは今まで無かったし。
DULLBOY このアルバムのどこが良かったって話をした時に、フックが一番良かったっていう話になるぐらい、全体的に今回はフックにはこだわってるし、メンバーも気に入ってますね。
——その意味でも、トラックの質感は硬質になってるけど、THC的なポップさや柔らかさもそこにちゃんとあるのが印象的で。リリックとしてもこの曲は全員、見せ場を作ってて、SIKK-Oくんの《泣くまで待とうが聴かす音飛び》は、リリックの構造と聴かせの塩梅がスゴく上手いし、DULLBOYくんの《結論言うとおれらは109 あなたの新たな煩悩さ》っていう部分はすごく独特なボースティングで、JYAJIEくんの《流星》から《三代目ならば志ん朝》って流れる部分はスゴく粋なリリックの流れになってて。
SIKK-O ユーモアみたいな部分も、今まではひけらかし過ぎてたと思うから、今回は忍ばせ方を覚えた感じはあるかなって。面白いことを格好良く、スマートに言いたいって思ったのかも知れない。
——とは言え、アルバムの入り口が《お目にかかりたい/鍵かかった胸にかかるG》という非常にボンクラなリリックで始まってるのも、しょうがねえな、と(笑)。
TSUBAME JYAJIEは胸ネタが多いよね。“東京Swingin’”の《あの子のBust No Gravity》とか(笑)。
SIKK-O 巨乳好きが出ちゃってるね。
JYAJIE いやいや、デカい小さい関係なく、おっぱいは好きなんで。
——振っといてなんだけどどうでもいいわ(笑)。“TAXI”はメンバー3人がそれぞれ別の女性キャラクターを演じてるのも面白いですね。
SIKK-O タクシーを題材にした曲が作りたいっていう前提があって、その上でDULLBOYが「乗客が俺らのライブを見に来るっていうイメージにしたらいいんじゃない?」って。明確なストーリーテリングは今までやってなかったし、しかもそれを女性の目線で書いてみるのも、新しい方向性に進んでるこのアルバムに相応しいと思ったんですよね。だけど、最初に話合わないで作ったら、みんなやさぐれたOLみたいになっちゃって(笑)。
TSUBAME 女性のイメージ作りがヘタだったという(笑)。
SIKK-O 経験値が少ないんで(笑)。それで一人一人、どういう生活をしてる女の人なのか、みたいなことをちゃんと話し合って決めて、そのキャラクターになりきって構成していったんですよね。
DULLBOY 「女の子のことをあんまり分かってないのに、こういう内容を書くのってウケない?」っていう「なんちゃって」な部分もあるよね。MVをもし作ったら、僕らが女装して出てくるパターンとかも出来そうだし(笑)。
——THCのリリックは観念的ではなくて、イメージの浮かびやすい、状況を描くようなビジュアル的な側面がありますが、この曲はそれをもっと推し進めた内容になってると思います。そして、そのそれぞれの物語が、最後はTHCのライブ会場に収斂するっていう群像劇的な構造がスゴく良く出来てるなと。
SIKK-O DULLBOYがそこは纏めてくれて。というか、この曲になったらいきなりDULLBOYが仕切り始めて、誰よりリリックをちゃんと考え始めて。いつもは遅れてきた上にリリック書いてないようなやつなのに(笑)。
JYAJIE 来なかった時すらあったのに(笑)。
DULLBOY 責任感出たよね。
SIKK-O 美味しいところを持ってったという気もするけど(笑)。
JYAJIE “CITY GIRL 2015”とは違う街の書き方もしてみたかったんですよね。アルバムでこれが一番最後に出来た曲だったよね。トラックも最後に上がって来て。
TSUBAME 色々出したんだけど、DULLBOYにボツにされたトラックもありつつ。オーダーがいつもキツイんですよね。「これは売れるみたいなの上げてこい」とか、「安心するトラック混ぜといて」とか。一番リリック書くのは遅いくせに! (笑)。
DULLBOY でも、色々ボツにした挙句に出てきたトラックが最高だったから、メッチャいいじゃん! 良い曲になるじゃん! って思ったよ。
WEGO Presents 『WE GOOD TOKYO』 ”TOKYO CITEE” WEB CM
——俺のおかげだ感が(笑)。“東京Swingin’”はWEGOとTHCがコラボした企画「WE GOOD TOKYO」にも使われましたね。
SIKK-O そのプロジェクトに向けて作った曲を、アルバム用に作り直した感じですね。アルバムとしても、あまり街とか東京みたいな事は言ってないので、この曲がその部分を補完してると思います。
——フックで「無いものが無い 東京City あるものばかり 東京City 」と言ってるけど、それが希望に溢れたキラキラした感じというよりは、ややペーソスも感じるような雰囲気もあって、必ずしも「買い物バンザイ!」みたいな感じではないのも、THCっぽいのかなって。
SIKK-O ただただ明るいようなモノは面白くないし、明るいモノには暗いモノも少し込めたいというか。
TSUBAME 毒入れちゃいましたね。
SIKK-O 素直に明るいものはやっぱり出来ないんですよ。
JYAJIE 根がひねくれ者なのか。
DULLBOY 恥ずかしいっていうものあるかな。
TSUBAME 欲しいものがあった時に「欲しいぜ!」って言いたい?
SIKK-O ちょっと難しいというか、恥ずかしいよね。
TSUBAME うちのメンバーみたく、中くらいの裕福さの中流階級で育つと、こうなるのかな(笑)。
JYAJIE でも、その感情も僕らにとってはリアルなんですよね。「GET MONEY!」とか「成り上がり!」じゃない、フラットな気持ちっていうのも、僕らにとって普通だから。
——ヒップホップらしいアルバムでありつつ、いわゆるマッチョな方向性ではないっていう感覚はこれまで通りなんだけど、一方で”Skit -キャトルミューティレーションPart.2-“では、「強い日本語ラップ」の象徴とも言えるキングギドラ“未確認飛行物体接近中”のヴァースを引用してて。だから、B-BOYスタンスとか、ヒップホップ的な強さを面白いと思いながらも、「それをそのままトレースしたりするのは自分たちのやることじゃないし、自分たちなりのヒップホップを表現したい」っていう、「ヒップホップ性」に対して相反する感情があるのが、THCの肝なのかなって。そこにDE LA SOULみたいなニュースクール的なモノを感じたりもして。そして“IT’S ALL RIGHT”はメロディ感であったり音感的な部分が強い曲ですね。
TSUBAME フックのメロディはJYAJIEが考えたんですけど、そのアレンジと歌をkiki vivi lilyさんにお願いしたら、スゴく良いものが返ってきて。
JYAJIE 僕の入れてたラフが全然良くなくて、やべ~、大丈夫かな~と思ってたんだけど、kikiさんにやって貰ったらもう一気に完璧になって。20点が100点になった(笑)。
TSUBAME kikiさんの才能で保ってるような曲ですよ(笑)。
SIKK-O リリックもアルバムの中で一番苦戦したよね。どう固めていくかを手探りで作った感じで。
JYAJIE まずテーマとリリックを噛み合わせるまでに時間がかかって。
SIKK-O セルフ・ボーストにしたいっていうイメージはあって、トラックに勢いもあったから「さくっと作れそうだね」みたいな感じだったんだけど、いざ作り始めたらセルフ・ボーストに慣れてなさすぎで全然噛み合わなくて(笑)。
——「おれが通れば 道ばた花咲く」とか、ボースティングがみんな可愛らしくて、全然マッチョじゃない(笑)。
TSUBAME ボースティングそのものが性に合ってない(笑)。びっくりするぐらい時間かかったし、「何言ってるか分かんないからもう一回考え直してきて」って常に言ってた曲でしたね。
TOKYO HEALTH CLUB「supermarket」
——“supermarket”は、トラックの浮遊感はこれまでのTHCと近いイメージがあるけど、リリックは内省的だったり、自分の気持ちを書く部分があって。そういったパーソナルな部分は今までTHCは出してこなかったので、この曲も意外性を感じさせられました。
SIKK-O ヒップホップのアルバムにしたかったから、そういった部分を出す必要があるなって。だから俺はこう生きていて、こう思ってるみたいな事も曲にしたほうが良いなと思ったんですよね.
JYAJIE ちょっとこっ恥ずかしい部分もあるんですけど、あえてそれをラップにしてみて。
DULLBOY ラップを通して言いたいことが出てきたんだとも思いますね。
SIKK-O でも「俺はこう思うぜ!」じゃなくて、「俺はこう思ってるけど、そっちはどう?」っていうテンションですね。
——パーソナリティを出すことで、メンバーの個人としての部分も見えやすくなったし、THC像が立体化した感じがありますね。
TSUBAME THCはやっぱり閉じてる部分もあると思うし、それは打破したい部分でもあるんですよね。
——その上で、これからの作品についてイメージは浮かびましたか?
SIKK-O 次がどうなるって事は全く考えてないっすね。
——威張って言うな、という感じでだけど(笑)。
SIKK-O 必死なんですよ、「いま」に(笑)。やっぱり、これからのライヴが楽しみですね。曲数やバリエーションが実際に増えたと思うし、いろいろ新しい展開も見せられればなって。
TSUBAME 他人の反応や目線を消化したり——こう言われてるけど、とか——して新しいイメージが浮かぶ事も多いので、今回も反応を受けてからまた新しい事を考えられたらなって。作品としてはヒップホップらしさを目指したけど、同時にコミカルとかサブカル、緩め、みたいな、今までのTHCのイメージを望むような人のシーンにも、ちゃんと食い込めるようなポジショニングが出来ればいいなって。
SIKK-O 「THC、ホントに大好きです!」みたいな人が増えたりすると嬉しいですね。そんな人がいるんだ!? とも思うし(笑)。
JYAJIE 共感を求めるような曲を作ってないのに、それでも好きですって言って貰えるのは面白いよね。「お前もヤバイんだな……」って。
SIKK-O 「お前も根暗か……」って。
——リスナーと傷舐めあってどうすんだ(笑)。
EVENT INFORMATION
:”SUNSET LIVE” W RELEASE SPECIAL IN STORE@Manhattan Records
2017.05.28(日)
START 15:00
マンハッタンレコード & DOOR Shibuya
入場無料
出演者:TOKYO HEALTH CLUB 、唾奇×Sweet William
RELEASE INFORMATION
MICHITONOSOGU
2017.05.17(水)
TOKYO HEALTH CLUB
CD価格:¥1,500(+tax)/デジタル:¥1,050
LEXCD17009
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詳細はこちら
text & interview by 高木”JET”晋一郎