2000年代末~2010年代初頭に日本にも続々と誕生したネットレーベルの中心的存在、〈Maltine Records〉(以下、マルチネ)などからのリリースで人気を集め、2015年3月には全編を通してカワイイが氾濫するようなCD/配信作品『Butter Sugar Cream』をリリース。2016年に次作『Art Nature』を発表し、その後も様々なアーティストへの楽曲提供やリミックスを行なってきたトラックメイカー、Tomggg。彼が約4年ぶりの最新EP『Unbalance』を完成させた。

この作品では、pinokoや泉まくらといった日本の女性ラッパーに加えて、台湾のLil Ice やAda Shih、マレーシアのAirliftzといったアジア圏の様々なアーティストがラッパー/ボーカリストとして参加。おもちゃ箱をひっくり返したようなキラキラとした音の魅力はそのままに、各ラッパーのフロウに寄り添って空間をたっぷりと取った楽曲に仕上げることで、もともとの個性に「引き算の美学」を加えた、新しい音楽性を作品に閉じ込めている。

彼のこれまでの歩みや、最新EP『Unbalance』の制作風景について、Tomgggに聞いた。

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Interview:Tomggg

━━Tomgggさんはもともと国立音大に通っていたと思いますが、そのときにつくっていた音楽は、よりアカデミックなタイプの、今とはまた違うものだったそうですね。

そうですね。当時の自分が特に凝っていたのは「空間音響」でした。分かりやすく言うと、映画館などで使われている5.1chサラウンドなどと一緒で、メロディやリズムの要素だけではなく、「空間における広がり」のようなものを作曲することに興味があったんです。

━━音が聞こえる方向なども含めて、「空間の中で音をデザインする」ということですね。

そういうことを研究しながら、大学院まで進んだんですけど、修士課程ではお客さんをスピーカーとドラムセット4台で囲んで、パーカッションをつかった攻めた作品をつくったりしていました(笑)。というのも、僕は昔からパーカッションが好きで、もとをたどると、父親のコレクションの中から見つけたキング・クリムゾン(King Crimson)の『太陽と戦慄』の、ジェイミー・ミューア(Jamie Muir)の打楽器がすごく好きだったんです。なので、それがずっと自分の中に残っていて。そういう音楽のアカデミックな側面を突き詰めていたのが大学時代でした。

━━そして、大学卒業後にそういったアカデミックなものとは違う音楽をつくりはじめて、マルチネのような人たちと繋がることになったと。それまでアカデミックな音楽の研究をしていた人が、ネットレーベルのようなストリート感覚のある人たちと繋がるというのは面白いですね。

僕は昔からポップでひねくれたものが好きだったし、メインストリームのものよりも、そこから少し外れたものが好きだったんです。〈Warp Records〉の作品もすごく好きで、クラブイベントにも行っていたので、それをもっとポップにしたのがマルチネなのかな、と思っていました。当時は日本でもネットレーベルがたくさん出てきた頃で、音楽とジャケットがあればつくったものを簡単に世に出せる方法が生まれていました。「音楽をつくるのが好きな人たちがたくさんいるんだな」「みんな音楽を発表したいんだな」というパワーを感じました。

アカデミックな領域で音楽をつくっていると、「果たしてこれを聴いてくれる人がいるのか」という問題にぶつかるんですよ。在学中は学会のようなものもあって、そこで行なわれていたテクノロジーの研究はもちろん価値があるものだと思うんですけど、一方でその技術でつくられた音楽は、先鋭化しすぎていて「誰も聴いてくれないのでは」と思うようになって。そこで生まれた発想を、もっとポップなものに翻訳してみよう、と思ったのが、大きなきっかけだったと思います。自分がそう思っていたことと、マルチネのような人たちのつくっているものとが、あのタイミングでちょうど合ったというか。当時マルチネからリリースされていた音楽は、ワンアイディアのシンプルな構成が多かったと思うんですけど、僕の場合は複雑性を持ったまま、それをポップなものに落とし込んでみたいと思っていました。

━━Tomgggさんの曲は、色々な要素を足し算的に詰め込んでいくような雰囲気ですよね。

最初にネットに音源を上げはじめた頃は、もっとテクノ寄りの音だったんですけど、マルチネからリリースされたbo en(ボー・エン)の音楽を聴いたことが、影響として大きかったと思います。そこで「もっと歌やメロディがあってもいいんだな」「もっと素敵な感じでもいいんだな」と思いました。あと、あの頃って、Soundcloudの「like」を見られる機能を使って、「この人がつけているlikeは間違いない」というものが共有されはじめましたよね。そこから音楽的にもどんどん興味が広がっていったし、僕の曲も、ライアン・ヘムズワース(Ryan Hemsworth)のような海外のトラックメイカーがlikeをつけてくれて、一緒に曲をつくったりするようになりました。そういう経験の中で、国を越えられる感覚というか、「境界線なんてないんだな」と感じたというか。Soundcloudの場合は音楽だけで海外の人たちとも繋がれたので、言語も国境も関係ないんだな、ということを実感として感じられたことも大きかったような気がします。

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━━今回の最新EP『Unbalance』にも、日本だけでなく、アジアの様々なアーティストが参加しています。こうしたアジアの音楽に興味をもったきっかけというと?

最初のきっかけは、中国のヒップホップグループ、ハイヤー・ブラザーズ(Higher Brothers)だったと思います。そこから『The Rap of China』(2017年にはじまった中国のラップバトル番組)やCDCのような人たちがやっていることに触れて、「知らない言語のラップって面白いな」「アジアの音楽事情ってどうなんだろう?」と調べるようになって。そうこうしているうちに、ちょうど2019年の3月に、ベトナムのハノイとホーチミンに行く機会もできたりしたので(国際交流基金アジアセンターのメディアアート交流事業《Bordering Practice 2019》)、今回のEPにもその興味が反映されたんだと思います。pinokoさんや泉まくらさんとともに、アジアで活動する3人の国外のアーティストの方にも参加してもらえることになりました。

━━実際、言語の違いによって、ラップのフロウや歌の節回しは大きく変わってきますよね。

そうですね。言語によってアクセントも違いますし、「言語もサウンドのひとつだな」と思いますね。今回の制作は、まず僕がトラックを送って、そこにラップやボーカルを乗せてもらう形で進めたんですけど、僕は言葉やラップを、「声」というよりは「音のかたち」として捉えている部分があって。音の色や質感のようなもの、たとえば「つやつやしている」とか「コロコロしている」という感覚が、同じように言語にもあるのかな、と思っているんです。今回のEPのリード曲“Misunderstand”も、台湾語のアクセントがすごく立っている感じがマリンバのような音と合うかな、と思ってつくっていった曲でした。

━━声や歌も音のテクスチャーとして捉えている感覚なんですね。

僕はCorneliusのような言葉の響きにこだわってつくられている音楽にも影響を受けてきたので、歌やラップを、歌詞というよりも音として聴いている部分があるんだと思います。今回はそれぞれのアーティストが入れてくれたラップのテクスチャーに寄り添って、自分のトラックも音のかたちを変えていくような方法で作業を進めていきました。

━━では、『Unbalance』について詳しく聞かせてください。そもそも、作品をつくりはじめるときに「こんな作品にしたい」という意味で、考えていたことはありましたか?

今回は4曲ともにフィーチャリングという形で制作していて、ラップや、ラップのような歌を入れてもらっていますけど、今は時代的にも、ラップが歌やリズムのエッジにあって、その可能性を開拓してくれている感じがしますよね。そこで今回は、自分の作品にも、その要素を加えてもらいたいと思っていました。1年前頃につくりはじめたんですけど、まずはビートをたくさんつくって、いいものができたらそれをもうちょっと作り込んでいく、という形で進めていきました。

━━最初にできた曲はどのあたりだったんですか?

リード曲の“Misunderstand”や、pinokoさんとの“Sweet Salt”だったと思います。この2曲をつくりはじめたときは、まず、曲を短くしようということを決めました。今までの僕の曲は5分ぐらいの長めのものが多くて、自分が伝えたい世界観をつくり上げるにはそれぐらいの時間が必要だと思っていたんですけど、tofubeatsの“RUN”を聴いたときに、2分もない短い曲でも構成や展開、伝えたい内容を表現できることに結構衝撃を受けたんです。それもあって、“Misunderstand”をつくっていたら、自分の曲も2分半ほどになりました。それなら、今回は全部3分以内のものにしてみよう、という気持ちで他の曲をつくりはじめたんです。なので、今回は曲の尺をある程度決めた状態で曲をつくっていきました。

━━あえて制約というか、ルールを設けてつくってみよう、と。

そうすると、つくっていてもこれまでとはまた違った感覚で面白かったです。音を詰め込んでしまうと聴きにくくなってしまうし、逆に音を減らしすぎてもつくりたいものがつくれなくなってしまう。そんなルールの中で自分にとっての新しい構成を試したのが、“Misunderstand”と“Sweet Salt”でした。この2曲は、楽曲の山になる部分が1回しか出てこないような構造になっていますよね。そういう曲をつくれたのは、自分的にも満足している部分です。

━━だからなのか、これまでの作品と比べると、Tomgggさんらしいフレーズの出しどころがかなり考えて選ばれているようにも感じました。

今回のようなルールを設けると、印象的なフレーズをピークに持ってくるにしても1~2カ所しか鳴らせないので、鳴らすところでは鳴らして、抜くところでは抜くというふうに、その出しどころを絞っていくことになって。「捨てるところは捨てる」というふうにガンガン切っていったんです。なので、“Misunderstand”でも、盛り上がるところが終わったらすぐに平歌(ひらうた)に行く、という構成になっていて、歌ってくれたAda Shihからすれば大変だったとは思うんですけど、自分の中では「新しい構造の曲ができた」と思いました。

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━━“Misunderstand”と“Sweet Salt”では、ゲストのみなさんとどのようにやりとりして制作を進めていったんですか?

かなりシンプルだったのが“Misunderstand”で、この曲に参加してくれた台湾のLil Iceはトップラインも書ける人なので、トラックを送ったら、コーラスも入れて返してくれました。「僕が手を加えるところはほとんどないな」というものが送られてきたので、メロディラインも任せて、僕はそれを編集していった形です。Lil IceやAda Shihは、中国語圏~アジア圏のラッパーをリストアップしていく中で手を挙げてくれた人たちでした。

2人とも台湾でYouTuberとして活動していますけど、同時に音楽も本格的にできる人で、共通の音楽言語があったのもよかったと思います。『The Rap of China』に出ている人たちに声をかけた場合、彼らはゴリゴリのヒップホップカルチャーの人たちなので、音楽をつくる際に話が通じないとこわいな、という気持ちもあったので。Ada Shihは、Lil Iceとは対照的な歌声の人で、フックの後の平歌もスッと出てきてくれるので、曲の中で温度差をつけやすくてすごく助かりました。2人が参加してくれたことで、曲自体がいいものになったと思っています。

━━歌詞のテーマとしては、Tomgggさんからある程度決まったテーマを投げたんですか?

そうですね。今回のEPの曲の歌詞は、どれも『Unbalance』というタイトルに繋がっています。「Unbalance」とはつまり、「様々な狭間で起こるバランス」のことですね。何か物事があれば、そこには必ず色々なバランスが存在します。たとえば僕の場合は、今はフリーで活動していますけど、このEPをつくりはじめたときは、まだ仕事をしながら音楽をつくっていて。ある意味、当時はまだやりたくないことにかける時間の方が多かったので、それがバランスを考えることに繋がったと思います。なので、きっかけは単純に自分のことでした(笑)。

ただ、もちろんそれだけではなくて、このバランスって世の中の色んな場面において生まれるものだと思いますし、今はちょっとネガティブな意味で使いましたけど、偏りがあることは、必ずしも悪いことではないとも思っていて。むしろその偏りによって魅力的な、コケティッシュなものが生まれたりすることって多いと思うんです。

━━確かにそうですね。全員がニュートラルではなくてそれぞれに偏っているからこそ、人それぞれの個性が生まれる、ということでもあると思うので。

そうですね。そこで今回は、分かりやすく言うと二項対立というか、「過去と現在」「子供と大人」「夢と現実」というような、何かの狭間で揺れ動くことに関するテーマをそれぞれに投げかけて、それをもとに、歌詞を考えてもらいました。

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━━なるほど。“Misunderstand”だと、「過去と現在」がテーマになっていますね。

そうですね。一方でpinokoさんとの“Sweet Salt”では、「子供と大人」というテーマを投げかけてみました。それで歌詞にも、「甘くてしょっぱい」というフレーズや「おとなになれないまま/こどもにも戻れないよ、ママ」というフレーズを入れてくれているんだと思いますし、そこに「夢と現実」というテーマも重ねてくれていると思います。“Sweet Salt”の場合は、トラック自体は最初はもっとシンプルなものだったんですけど、pinokoさんが入れてくれたラップを受けて、さらに音を追加していきました。その結果、僕としてはかなり派手なトラックになったと思っています。この曲は、サビのコーラスも自分でつくったんですけど、レコーディングのときにpinokoさんが、「そこにハモリを入れたい」と言ってくれて。「どう入れるのかな?」と思っていたら、もとのメロディに対して感覚的にハモリを入れてくれてすごく面白かったので、その部分も最終的に残してみました。

━━pinokoさんだからこそ出てくるものを加えることで、楽曲としても「いいアンバランス」が生まれていく、ということですね。

次につくったのは、Airliftzとの3曲目“Growing”です。この曲は、自分では結構ハチャメチャな曲だと思っていて、トラックはデモの段階で完成形とほぼ同じでした。そこにどんなふうにラップを乗せてくれるのかな、どこに乗せてくれるのかな、と思っていたら、Airliftzがすごくいい感じに乗せてくれて。ただ、最初は全編英語詞だったんです。そこで、僕からマレーシアの言語も加えてほしい、とリクエストしました。そうすることで、日本語でも英語でもない、亜熱帯の国ならではの、ちょっと湿気感を感じるような独特の雰囲気が生まれたと思います。AirliftzはYouTubeに曲を色々上げているんですけど、僕はこの人の声が好きで、曲にも魅力を感じて、「絶対この人とやりたい」と声をかけました。

━━ちなみに、今回のEPは、はっきりとジャンルに分けることが難しいものばかりになっているように感じます。制作にあたって、特に影響を受けたものはあったんですか?

制作中に聴いていたもので言えば、トラップもそうですし、エレクトロニック・ミュージックもそうですけど……「色んなものを聴いた」としか言えないような感覚です。それが全部混ざっているというか。たとえばトラップの要素を取り入れるにしても、アトランタ風のトラップを僕がやっても仕方ないと思っていましたし、前作でやっていたようなフューチャーベースとどう距離を置こうか、ということも考えていました。僕の場合、「まだ聴いたことのない、新しいものをつくりたい」ということが一番にあって、同時に色んな要素を取り入れたものにしたいと思っているんです。あとは、EPのすべてに言えることではないかもしれないんですけど、僕はジェイペグマフィア(JPEGMAFIA)が好きなんですよ。あの人の音楽って、基本的に「コラージュの音楽」ですよね。僕は作曲畑の人間なので、その視点から色んな要素をくっつけて、コラージュしたものをつくってみようということは考えていたかもしれません。

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━━では4曲目、泉まくらさんとの“Girl”はどうでしょう?

泉まくらさんとは、2014年に禁断の多数決の“ちゅうとはんぱはやめて feat. 泉まくら”でリミックスをやらせてもらったり、その後もご一緒させてもらったりしたんですけど、福岡在住ということもあってなかなか会う機会はなく、これまでめちゃくちゃ面識があるというわけではありませんでした。でも、いつか僕の作品でも一緒にやりたいな、と思っていたので、今回お声がけしました。この曲は、泉まくらさんらしい、淡々としたラップが映えるようにしたかったので、その魅力を際立たせるために、最初は賑やかなタイプのトラックを送ったんですけど、実際にラップを入れてもらったものを聴いて、トラックに変更を加えました。808のたゆたうようなビートにして、まくらさんの声により合うものにしました。どの曲もトラックを一度ぶつけてみて、そこから「この人により合うものにするにはどうすればいいか」ということを考えていきました。

━━今回のEPをつくっていて、新しく気づいたことはありますか?

僕の場合、基本的に「かわいい音楽」というものに括られがちで、実際にそういうものが好きでもあるんですけど、この間、Hercelotくんと話していたときに、世間一般的に言われる「かわいい」と、僕らが思う「かわいい」にズレがあることに気づいたんですよ。たとえば、僕はkawaii futurebaseも好きですけど、でもそれって自分の思う「かわいい」とはどこか違う感じもしていて。じゃあ、「僕が思う『かわいい』って、何だろう?」という話をして。そこで気づいたのが、「僕は弱いものや小さいものに『かわいい』と思うんじゃないか?」ということでした。

小さなどんぐりでもいいですし、花でもいいんですけど、僕がかわいいと思うものって「小さくて」「見つけられるもの」で、「カワイイはつくれる」の「カワイイ」とは、ちょっと違うんじゃないかな、と。そもそも、自分のルーツにあるエレクトロニカへの興味も、そういうものなんだと思います。あれって単純に音として考えると、(クリック音のような)結構弱い要素でつくられている音楽だと思うんですよ。つまり、自分が惹かれるのはEDM的に「かわいい」という記号を組み合わせて最強の曲をつくる、という発想の「かわいい」ではないんじゃないかな、と気づいたんです。

━━なるほど、とても面白い話ですね。

そもそも、今回のEPでは、「かわいいから遠ざかるにはどうしたらいいんだろう?」と思っていた部分もありました。でも、結局、スケブリさんがつくってくれた“Misunderstand”のMVにしても、かわいい部分が見え隠れしていて。今回のEPの曲自体も、よく聴いてもらうと、音の中にかわいさが見え隠れするような、くすぐるものがあるんじゃないかな、と思っています。今回は「かわいい」をテーマにしている作品というわけではなかったんですけど、そういうものも見つけられるというか、「かわいいはこれだ!」ではなくて「かわいいもあるかもしれない」というか(笑)。そんな変化があった作品でもあるかもしれません。

Tomggg x Lil Ice x Ada Shih – Misunderstand

━━Tomgggさん自身は、その変化って何で起こったんだと思いますか?

ひとつあるのは、自分から目立っていくぞ、ということではなくなってきているんだと思います。以前は、聴いてもらうために過剰なことをしよう、過剰にキラキラさせようと思ったりしていて、それが音にも表れていたと思うんですけど、今は「そうじゃなくてもいいんだな」と思えるようになったというか。もっと、音のよさで惹きつけられる要素を加えられるといいな、と思うようになってきているんです。そういう意味でも、以前のTomgggの音では届かなかったような人にも、今回のEPが届いてくれたらいいな、と思っています。

楽曲提供やリミックスを通じて、曲自体はずっとつくっていましたけど、自分の作品をつくるのは、約4年ぶりのことで。自分の作品は締切がない自分との戦いなので、誰も「これでいいですよ」と言ってくれないんですよね(笑)。でも、今回は5人のラッパー/ボーカリストとの共作という形で、色んな人たちとやらせてもらって、だからこそ作品に加えてもらえた魅力がたくさんあったので、自分の世界が広がったような感覚がありました。今回のEPを通して、「今の自分はこう考えてますよ」ということを伝えられたらいいな、と。

━━この作品のリリース以降、どんなことに挑戦していきたいと考えていますか?

それはやっぱり、ずっと音楽をつくっていきたいな、ということですね。僕は結局、音楽をつくること自体が好きなんですよ。なので、今回の4曲も大切な曲になったし、また新しいことに挑戦したいとも思っています。今回はヒップホップっぽさを全面に出しましたけど、一方でシンガーソングライターにも面白いことをしている人たちがたくさんいますし、エレクトロニック・ミュージックも面白いことになってきていますし、もっとシンプルなハウスのような音楽も、映画やアニメの劇伴もやってみたいと思いますし。やりたいことは本当にまだまだたくさんあるので、これからも色んなことをやっていきたいと思っています。

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Text by Jin Sugiyama
Photo by Kana Tarumi

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Tomggg
1988年、千葉県生まれ。国立音楽大学 大学院 修士課程 作曲専攻修了。劇的な展開・キラキラした音を駆使し、ものすごく楽しくなる楽曲を得意としています。 自身のsoundcloudや、Maltine Records等のネットレーベルにて楽曲を発表を続け、2015年3月には CD /配信で”ButterSugar Cream”をリリース 。2016年5月には CD /配信で”Art Nature” をリリース。2020年1月には4年ぶりの配信EP “Unbalance”をリリース。国外勢とのコラボレーションや、シンガーのプロデュース、広告関係、TV番組の楽曲制作、オーディオビジュアルイベントへの出演などジャンルや国を飛び越えた広がりを見せています。

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RELEASE
INFORMATION

「”カワイイ”ってなんだ?」Tomgggが最新EP『Unbalance』でみせた表現の変化 interview200114_tomggg_jacket

Digital E.P. 『Unbalance』

2020.01.10(金)
Tomggg

1、Tomggg x Lil Ice x Ada Shih “Misunderstand”
2、Tomggg x Airliftz “Growing”
3、Tomggg x pinoko “Sweet Salt”
4、Tomggg x 泉まくら “Girl”

ダウンロード/ストリーミングはこちら

EVENT
INFORMATION

「”カワイイ”ってなんだ?」Tomgggが最新EP『Unbalance』でみせた表現の変化 interview200114_tomggg_flyer

Unbalance -Tomggg New EP “Unblance” Release Party –

2020.02.02(日)
OPEN/START 16:00
Circus Tokyo
ADV ¥3,100/DOOR ¥3,500(1ドリンク別)

LINE UP:
Tomggg feat. pinoko
tofubeats
Seiho
長谷川白紙
has
DJ YEN

TICKET:
リコチケ

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