「発見を創る」をコンセプトに、昨年からHOT STUFFが立ち上げた新イベント<of BLUE>。その第4弾が7月1日(木)に恵比寿 The Garden Hallにて開催される。今回は冨田ラボKan Sanoによる初のツーマンライブ。自身の名義での作品作りはもちろん、様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュースなども積極的に行っている両者による、世代を超えた共演はきっと特別なものになるだろう。

そこで今回Qeticでは、冨田ラボとKan Sanoによる対談を実施。実はこれが「初対面」となる2人に、イベントのコンセプトにちなんで「クリエイティブの原点」や、近作で行った「クリエイティブな試み」などディープな話題をぶつけてみた。

INTERVIEW:
冨田ラボ × Kan Sano

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-02

きっかけはビートルズ、世代を超えた音楽との出会い

──お二人が音楽を始めたきっかけから教えてもらえますか?

Kan Sano(以下、Sano) 小学校5年生のクリスマスに、親から買ってもらったのがザ・ビートルズの『Abbey Road』でした。ちょうどその頃ミスチルが流行っていて、初めて自分のお金で彼らのCDを買ったら親が勧めてくれたんです。そこからビートルズにハマって中学生の頃はずっと聴いていました。10代の頃に聴いていた音楽って大人になっても影響してくるじゃないですか。いまだにビートルズは大好きですね。

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-03

冨田ラボ(以下、冨田) 僕は親が音楽教師だったので、物心つく頃には親にピアノを習わされていたんです。でも、弾くならクラシックじゃなくてポップスが良くて、そういう譜面がたくさんあるエレクトーンに替えて欲しいと直談判しました。それからはヘンリー・マンシーニのような映画音楽や、いわゆるジャズスタンダードを弾いていたんですけど、自分の意思で購入した最初のレコードは、僕もSanoさんと一緒でビートルズだったんですよ。

Sano 冨田さんもビートルズでしたか! どのアルバムから聴かれたのですか?

冨田 僕は『A Hard Day’s Night』でした。最初はエレクトーン用にアレンジされたものを聴いていたんですよ。リズムは16ビートで原曲とは全く違ったので、初めてオリジナルを聴いたときは本当にびっくりしましたね。荒々しいギターや8ビートのリズムが逆に新鮮でした。それで、親にねだってオリジナルアルバムが全部入ったボックスセットを買ってもらいました。ギターを始めたのもビートルズの影響ですね

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-04

Sano 僕にとってビートルズは、初めて聞く洋楽だったので最初はよく分からなかったんです。しかも“Come Together”とか1曲目から渋いじゃないですか(笑)。「何がいいんだろう?」と思っていたんですけど、当時はそんなにお金も持っていないし買ってもらう余裕もないから、とにかく繰り返し聴くうちにだんだんジョンとポールの声の違いも分かってきて、曲のよさにも気づいてくる。そんなふうに耳を育ててもらったところもありますね。メロディとコードネームが記載された譜面を見ながら、コード進行を学んだりもしました。

今につながる創作的感性
『学年誌ウルトラ伝説』冨田ラボ

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-05

──では、お二人のクリエイティブの原点というと?

冨田 音楽に関係なくてもいい? 子供の頃の話なんですけど。「俺、これだったわ」というものを思い出して今日は持ってきたんです。以前Twitterにも投稿したことがあるのですが、『学年誌ウルトラ伝説』という本。ここ、見てください。僕が小学三年生の頃に考案した怪獣のイラストが掲載されているんですよ。

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-06

Sano 本当だ、すごい!

冨田 この絵を見ると、最近の自分の音楽と同じだなあと思うんです。ディティールに凝っているくせに、全体像はちょっとイビツだったりして。「幾つになっても変わんねえな」と思います(笑)。他にも『長編 怪獣小説』なんてものも書いていたんですけど、とにかく何かを考えて作るのは子供の頃から好きだったんですよね。

ただ音楽に関しては、当時「自分が作るもの」とはまったく考えてなくて。高校生になって、多重録音などを始めるようになってから「そうか、この楽器がこう動いてこうなるのか」みたいに考えるようになり、ようやく作り始めた。音楽をやるワクワク感みたいなものが、怪獣の絵を描いているときのそれと、「つながった」感覚があったんですよね。

ジャズ・ミュージシャンの伝記から見える「音楽的思考」Kan Sano

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-07

Sano 僕が持ってきたのは、音楽関係の本ばかりなんですが……『マイルス・デイビス自叙伝』と『キース・ジャレット 音楽のすべてを語る』、それから『黒沢明、宮崎駿、北野武―日本の三人の演出家 』。どれも十代の頃に読んだ本です。マイルスの自伝はバークリーに入学する前にずっと読んで、夢を膨らませていましたね。それと映画が好きなので、北野武のインタビューが載っている『黒沢明、宮崎駿、北野武―日本の三人の演出家』も読んでいました。

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-08

冨田 『キース・ジャレット 音楽のすべてを語る』は、グルジェフについて話しているやつだよね。僕も家のトイレの本棚に置いてあって(笑)、今も思い出すとパラパラ読み返しています。すごくディープな内容で。

Sano ディープですよね(笑)。即興演奏をどうやってしているかについてずっと語っているんですが、一度読んだだけだとよく分からなくて、僕もたまに読み返していますね。

冨田 マイルスもそうだけど、ジャズ・ミュージシャンの伝記ってすごくインスパイアされますよね。こういうライフスタイルで、こんなことを考えていたのか……みたいな。でも、『JAZZ LIFE』から刊行された『ジョン・コルトレーン物語(ジャズ・ライフ別冊)』は、ちょっと変わっているんですよ。

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-09
対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-010

──どんなふうに変わっているんですか?

冨田 コルトレーンの研究ってすごく進んでいるじゃない? 伝記も何種類も出ていますよね。レコーディングやライブに関するデータはどんどん更新されるし、彼のライフストーリーはどんどん深掘りされている。『ジョン・コルトレーン物語(ジャズ・ライフ別冊)』は、1980年代に刊行されてすでに絶版なんですけど、バイオグラフィでありながら、かなり具体的な音楽技法にもページを割いています。もちろん史実追求という面では現代には及びませんが、物語と音楽のバランスが絶妙で、すごくインスパイアされましたね。

Sano そうなんですね、気になります。

実験と挑戦を繰り返し続ける二人の音楽

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-011

──では、お二人が最近の作品で行った「クリエイティブな試み」についてもお聞かせいただけますか?

Sano 最近、機材周りを一新したんですよ。僕はこれまで10年くらい、同じMacBookとCubaseというDAW(デジタルオーディオワークステーション)を使って曲作りをしていたんです。使い慣れた機材の方が効率がいいんですけど、どうしてもルーティンになってしまいがちなのをどうにかしたくて。ちょうど仕事が一段落したタイミングでパソコン一式買い換え、DAWもLogic Proにしてみたんです。それで最初に作った曲が、最近リリースした“Natsume”という楽曲。そういう意味ではサウンドも今までとはかなり変わっていますね。

30代になって、どうしても昔聞いていた音楽ばかり聴くようになったり、同じような機材を使ってルーティンで曲を作ったりしてしまいがちなので、今は意識的に新しい音楽を聴いたり、新しい機材を使ってみたりするタームに入っています。

Kan Sano – Natsume [Official Lyric Video]

冨田 でも、DAWを新しく変えるのって大変だったんじゃない? 僕も一度試したことあるけど、一月くらいで元のDAWに戻っちゃったんだよね。

Sano 僕も最初の2ヶ月くらいが本当に辛かったです。戻したくて戻したくて、何度も挫けかけたんですけど(笑)、でも数年前からずっと考えていたことなので、「もうちょっとがんばろう」って。そこを乗り越えたら今はだいぶ楽になっています。

──冨田さんは、今年2月に10分を超える新曲“MIXTAPE”をリリースされましたよね。これはどんなテーマで作ったのですか?

冨田 ここ数年、「アルバムという概念がなくなりつつある」みたいなことがずっと言われ続けているじゃないですか。サブスクリプションが普及して、みんな楽曲単位で聴くようになったと。僕自身もそういう聴き方をしていますが、作り手としては「アルバム」というか、数曲の集合体としての表現には、曲単位とは違った面白さがあると思っています。そこですよね、“MIXTAPE”で表現したかったのは。単位は1曲だけど、アルバム、もしくは僕の作ったプレイリストを聴いているように感じてもらいたかったんです。1曲を数曲の集合体みたいに味わってもらうというのは、ある意味「実験」でもありますけど、楽しかったですね。一部をサンプリングして「夜汽車 feat. BASI & koijkoji」ができたという副次的な面白さもありましたし。

冨田ラボ – MIXTAPE(Short Ver.)

冨田ラボ – 夜汽車 feat. BASI & kojikoji (Official Video)

初の2マンライブ<of BLUE vol.4>に向けて

──では最後に、このたび開催されるツーマンイベント<of BLUE>への意気込みを聞かせてください。

冨田 今お話しした新曲“MIXTAPE”をエクステンドしてノンストップで演奏してみようと思っています。これから着手するので、最終的にどうなるか分からないですけどね(笑)。

Sano 完全に新作のみのライブということになるんですね、面白そう。

冨田 あ、でもわかんない。エクステンドするほど、歌モノもやりたくなるような気がする(笑)。でもとにかくノンストップではやろうかな。メンバーみんな水も飲めなくて大変なんだけど(笑)。

Sano 楽しみにしています。僕は、コロナ禍でライブの本数がかなり減っていて、人前での演奏も随分やっていないので、まずはとにかく開催されることをずっと願っています。そこさえクリアできれば、ライブはもう楽しむだけ(笑)。あと、今回からサポートメンバーを1人増やそうと思っているんです。きっと、今までとはまた違うサウンドになっていると思うのでそこも楽しみにしていてほしいです。

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-012

Text by Takanori Kuroda
Photo by 横山マサト

EVENT INFORMATION

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-15

of BLUE vol.4 by HOT STUFF

2021年7月1日(木)
恵比寿 The Garden Hall
全席指定 ¥5,500(ドリンク代別)※未就学児童入場不可
冨田ラボ/Kan Sano/opening act:VivaOla
一般発売:2021年6月5日(土)10:00〜
販売プレイガイド:
チケットぴあ(Pコード:197-231)ローソンチケット(Lコード:72815)イープラス
お問い合わせ:
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日12:00〜15:00)

イベントオフィシャルサイト

RELEASE INFORMATION

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-013

『夜汽車 feat. BASI & kojikoji』

冨田ラボ
2021年6月23日(水)
形態:配信+ストリーミング

※音楽ストリーミングサービス:Apple Music、LINE MUSIC、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、RecMusic、Spotify、YouTube Music

Produce, Arrangement, Instruments & Treatment : 冨田恵一
Music : 冨田恵一
Words : BASI、kojikoji

Strings : 金原千恵子ストリングス
Recording Engineer : 冨田恵一 at TOMITA LAB STUDIO & 松田龍太 at Audio-Technica astro studio
Mixing Engineer : 冨田恵一 at TOMITA LAB STUDIO
Mastering Engineer : 内田孝弘 at FLAIR
Cover Artwork : Tymen Visser
Original TOMITA LAB Face Icon : Atsushi Kishi
詳細はこちら

対談:冨田ラボ × Kan Sano|「初対面」の彼らに共通する原点と試み interview210624_tomitalab-kansano-01

Natsume

Kan Sano
Kan Sano
2021年8月25日(水)
¥1,800(+TAX)
Cat No.:OPAE-1017
JAN:4526180551881
Label:origami PRODUCTIONS
Format:7″(国内プレス、4Pジャケ付、45回転、生産数限定盤)
track list
Side A: Natsume
Side B: Natsume(naked version)

配信はこちら