平成生まれのHIPHOPチーム・SANABAGUN.(以下、サナバ)の勢いが、令和になって加速している。6月から東京・大阪計4公演のマンスリー・ライヴ<2013 – 2018>、7月末には初の<FUJI ROCK FESTIVAL>出演。さらに10月23日(水)にはNEWアルバム『BALLADS』の投下を控え、それに伴うリリースツアー<TOUR BALLADS>が11月からスタートする。
さらにその勢いのまま、フロントマンの1人・リベラル a.k.a. 岩間俊樹が、2ndアルバム『surrearhythm』を12月11日にリリースすることを発表した。ソロとしては、2016年12月に発表した1stアルバム『I.MY.ME』から約3年ぶり。待ちに待った新作だ。
Qeticでは今回その『surrearhythm』を読み解くべく、異なる角度から2つのインタビュー企画をお届け。アルバムの全貌にがっつり迫るリベラルの単独インタビューは第2弾に取っておくとして、まずは8月8日にリリース&MVも公開されているアルバムリード曲“LiLiA”でコラボしたシンガー・SARMとの対談インタビューをチェックしてほしい。
リベラルa.k.a岩間俊樹-LiLiA feat.SARM track by SWING-O(Music Video)
Interview:リベラル a.k.a 岩間俊樹×SARM
もう「圧がすごい……」しか出てこなかった(SARM)
━━まずお2人が知り合ったキッカケを教えていただけますか?
リベラル a.k.a 岩間俊樹(以下、リベラル) サナバのワンマンで<DEAD PRESIDENTS>というのがあって、東京のファイナルにSARMちゃんが来てくれたんですよ。そのときに最初の顔合わせはしてるんですけど、あれ……言っても大丈夫?
SARM ……印象悪いやつですか? ハハハ!
リベラル フフ、印象悪くはないけど。まずライブのあとって「カッコ良かったです!」とか「ありがとうございました!」とか、まあベタな挨拶があるじゃないですか。でもSARMちゃんは現れて俺らを見るなり「圧がすごい……」って。さらにそれを3回ぐらい言って、帰って行ったんですよ。それを聞いて今っぽい子だな〜と思って、それが……出会いでしたね。
SARM ハハハハ!
リベラル でもそのあとに僕のことをタグ付けしてくれて。「あ、“圧がすごい”の子だ」と思ってアカウントをのぞいたらSoundCloudに曲があって、聴いたらめちゃくちゃカッコよかった。そのときにはソロアルバムの制作が始まっててちょうど女性シンガーを探していたので、すぐ知り合いにSARMちゃんの連絡先を聞いて、「一緒に曲を作ろう」って依頼しました。
SARM – I still got it(Official Music Video)
SARM 私は何年か前からサナバのファンで、それでさっき言ってた挨拶のときも、何を言おうかめっちゃ考えとったんですよ。ただズラーッと皆さんが並んでて、それを見たときに言おうとしていたことが全部飛んでしまって。もう「圧がすごい……」しか出てこなかった。
一同 ハハハハハ!
リベラル ただそのあとに、岩間さんからDMで「一緒に曲作ろう」って連絡が来たときはめちゃ嬉しくて。もう即答で「お願いします!」って感じでした。
━━先ほどSARMさんに出会ったころには制作がスタートしていたと仰っていましたが、本格的に取り掛かり始めたのはいつぐらいですか?
リベラル 前作の『I.MY.ME』から2年経っていたので少し焦ってたのもあって、実は去年の今頃にアルバムを出したいと思ってたんですよ。でもなかなか遅れてしまって、年明けぐらいから本格的に作ってましたね。この2年は母体のサナバがいろいろあって、それを言い訳にするわけではないですけど、それどころじゃなかった。10月23日にサナバのNEWアルバム(『BALLADS』)が出るんですけど、自分のソロと並行して作ってたので大変でしたね。
リベラルa.k.a.岩間俊樹 – 夢の最中(Music Video)
ソロのアルバムにはやっぱり“華”が欲しかった(リベラル)
━━12月リリースの『surrearhythm』に収録されている“LiLiA feat. SARM(track by SWING-O)”ですが、この曲はアルバムの中でどういった立ち位置で制作したんでしょうか?
リベラル この曲自体、特に内容が決まっていたわけではないです。でもソロのアルバムにはやっぱり“華”が欲しかった。あと普段はサナバだと隣に高岩遼しかいないので、そこで見せる自分とは違う一面にアプローチしたかったのもあって。ソロの作品に関しては、女性シンガーでもラッパーでもいいんですけど、そういう要素は入れたいなといつも思ってます。
━━その意味で、SARMさんはこれ以上ない存在だったと。
リベラル そうっすね。今回は「こういう曲を作りたい」というよりは、「SARMちゃんと一緒に作りたい」っていう気持ちの方が強かったです。初めて彼女の歌声を聴いたとき、声の質もそうだし、オシャレな世界観もそう。いやらしい言い方かもしれないですけど、「この子、売れるんだろうな……」と思いました。
━━LiLiA feat. SARMに関しては共作というイメージが強いです。
リベラル まず印象的だったのは、最初の打ち合わせでSARMちゃんが「コーラスだったらお断りしようと思ってました」って言ってたこと。実際、サナバではシンガーにコーラスをお願いするときがあって、そのブッキングを僕がやってたりするんですよ。ただSARMちゃんは「一緒に曲をクリエイティブできるならと思ってOKしました」みたいなことを言っていて。その言葉に“THE・フロントマン”みたいなものを感じたし、お願いして良かったなと思いました。
━━トラックを手がけているのはキーボーディストのSWING-O氏。この組み合わせも意外に感じますが、最初に音を聴いたときにどんなイメージが湧きましたか?
リベラル 実はSWING-Oさんには別の曲をお願いしていたんですけど、ストックも全部で4曲ぐらい送ってもらってたんですよ。それを「SARMちゃんと一緒にやるならどれがいいだろう」って考えながら聴いてて、最終的に2曲に絞ってSARMちゃんに相談しました。
SARM 最終的に“LiLiA”で使われているトラックじゃない方は、ジャズ・ファンクみたいな感じだったんですよね。
リベラル うん、ベースラインが特徴的な曲だった。
SARM ほんまはうちのスタイル的に、そっちの方が好きな感じだったんですよ。でももう一つの方がめちゃ華やかだった。その意味で、2人でやったら映えるかなと。
━━SARMさんはもともとジャズが好きだったんですか?
SARM ジャズとかブルースですね。17歳ぐらいからライブバーで歌い始めたんですが、そこで流れてたのがそれまで聴いたことのなかったジャズとかブルーズだったんです。聴いててすごいしっくりきたし、なんかすごいドキドキするような感じがして。そこからそういう曲が自分の声にも合ってると思って、オリジナルの曲を作るようになりました。
歌詞を書いていて思い浮かんだのはブリジット・バルドー(SARM)
━━“LiLiA”という曲に関して、リベラルさんは「LiLiAは世界中のさまざまなところで男たちを虜にする魅力的な女性の象徴として描きました」というコメントを寄せています。このテーマというかストーリー性はどのようにして決まっていったのですか?
リベラル トラックが決まったあとの打ち合わせで、SARMちゃんが「もうメロディーが少し思いついてるんです」って言ってて。それで録ってみたときに他の歌詞はフェイクだったんですけど、あるとこを「LiLiA〜」みたいに歌ってたんですよ。僕の中でそれがすごく印象に残って、それをなんとかうまく使いたいなと。サナバでも音でハメたのが良かったりするんですよね。
━━“LiLiA”というワードは自然と口から出たんですか?
SARM 最初にプリプロするときって大体、日本語でも英語でもない言葉をふにゃふにゃ言ってるんですけど、それが今回はLiLiAって言ってたみたいで。
リベラル LiLiAっていう響きが良かった。LiLiAって日本人でもいそうだし、白人のブロンドでもいそうだし、南米のラテンっぽい感じでもいそう。そこで各々がLiLiAをイメージできるような内容で作れたらなと。それをサマーチューンと組み合わせていこうって感じで進めました。
━━たしかにLiLiAみたいな女性はそれこそ海とかにいそうって思いました。大抵の男は眺めているだけで終わる、ワンランク上の女性みたいな。
SARM 歌詞を書いていて思い浮かんだのはブリジット・バルドー。ちょっと小悪魔的なキャラクターのイメージで歌詞を書きました。
━━リベラルさんはLiLiAに近いイメージの人はいましたか?
リベラル これ全然違うんですけど、いや……うん、いないっす。
━━フフ、どうしたんですか?
リベラル 今ぱっと思い浮かんだのが、CYBERJAPAN DANCERSだった。
リベラル wear out the souls
━━あの方々はLiLiAの集まりだったんですね。
SARM レコーディングしてるときに……フフ、もうちょっと気持ち上げないとみたいな感じで、岩間さんが携帯でセクシー系のお姉さんを検索してて。これ言って大丈夫でした?
リベラル 全然大丈夫。たぶん「水着 女性」とかで調べたんだと思う。CYBERJAPANよりもっと日本人離れした女性がビーチでポーズを取ってるような画像を用意して。歌詞はもうそのときには覚えてたので見ないで、代わりにその画像を見ながらレコーディングしました。
SARM ハハハ! でもそれで良くなっていったんですよね。
周りから何を言われても、自分を貫いた方がいい(リベラル)
━━制作中はSARMさんからけっこうバシバシ意見をもらったんですか?
リベラル むしろSARMちゃんの方が具体的なLiLiA像を持っていて、MVのモデルさんを選ぶときにもいろいろ意見をくれました。あとすごいなと思ったのは、わかんないことはわかんないって言うし、こういうのは苦手だから考えてほしいって言ってくれるし、自分はこうだっていう部分をしっかり伝えてくれる。そういうのはすごい助かるし、素晴らしいなと思いました。
SARM ありがとうございます。岩間さんはこう言ってくれてますけど、人によっちゃうるさいと思われてることもあるのかなって。でも今回、あるとき岩間さんに「こうしたい、ああしたいってことに対して、周りから何を言われても自分を貫いた方がいい」みたいなことを言ってもらって。その言葉は自分の中に残ってます。
リベラル 貫き通した方が良くないっすか、SARMちゃんは。
━━このままでいてほしいですね。
リベラル うん。あと苦労してほしくないっすね。するべきじゃない。俺みたいに、泥水すすって這い上がるみたいなのは似合わない。周りにSARMちゃんがやりたいことを叶えてくれる人や環境が常にあるような、そういう表現の仕方が合ってる気がします。
岩間さんは音楽をちゃんとやってる人やなって思いました(SARM)
━━あとMVに関して、やはりラストの“あのシーン”についても触れたいです。個人的には、あのラストの描写があって安心しました。
リベラル なんかオシャレなMVを作ってなくて良かったみたいな?
━━「ああ、そっちの世界に行ってなくて良かった」みたいな。
リベラル 行きたかったんですよ、ホントは。でもああいうオチを求められている気がしたんで。ただ、あのラストはアルバム全体のコンセプトに近いんですよ。最後はコメディっぽく終わってるけど、「見えてるものだけが真実じゃない」っていうメッセージに繋がってる。それをあのオシャレなMVの中で表現するには……って考えた結果、あのオチになりました。
━━オシャレな感じを求めている人を満足させつつ、サナバのファンも最後でケアしてる感じがして、誰も損しないMVのように感じましたよ。ファン的にはスイカが黄色いのすら笑える。
リベラル あれも偶然がいろいろ重なったんですよ。撮影で家を貸してもらったんで何か手土産と思ってスイカを買いに行ったんですけど、千円と二千円のスイカがあって。店のおじさんに「どう違うの?」って聞いたら、「こっち(千円)はまずい」って。
一同 ハハハハハ!!!
リベラル まずいって売る気ないでしょって思ったけど、どんだけまずいのか気になっちゃって。それに「クリームだよ、クリーム」って言ってて、そのときは何言ってんだと思ったけど、割ったらあの色だった。それで食ったら案の定、この世にこんなまずいスイカがあるのかってぐらいスッカスカの、逆に水分持ってかれるぐらいの乾いたスイカだったんです。
━━あれはセリフじゃなく、ホントにまずかったんですね。
リベラル はい、あれは全部アドリブなので。ホントにまずかったっす。
━━あのリアクションが腑に落ちました。改めて今回2人で曲を作ってみて、刺激を受けた部分や、改めて学びになった部分などがあれば教えてください。
SARM どうだろう。自分自身、まだHIPHOP界隈への視野が狭いのかもしれないですけど、ラッパーの人があまり音楽をやっているイメージが無かったんですよ。何て言うかリズムを刻んでるけど、音楽の感覚があまりないというか。だけど岩間さんは音楽をちゃんとやってる人やなって思いました。サナバもそうですし、岩間さんがソロでやっていることも。
リベラル うわ……めっちゃ嬉しい。やっぱ僕としては「ラッパーとして音楽でクリエイティブしてる」とか、「“Good Music”を追求しているラッパーだ」みたいに言われるのが理想。ここ数年はサナバの活動がメインだったので、自然とそういう音楽的な部分が伸びた気がします。あと制作の最初のころ、SARMちゃんに「そういう連想の仕方やトピックの作り方をしてるんですね。何かあったら相談してもいいですか」みたいなことを言われて、それも嬉しかったです。改めて自分がラッパーとして他と何で戦うか、それこそ自分よりラップが上手い人はたくさんいると思う。ただトピック選びとか、サビのワードの作り方とか、あとはそのトピックに対してどうやって全体のバースを描いていくかーーそういうところにラッパーとしての自信はあります。
Interview & Text by ラスカル(NaNo.works)
Photo by 三澤 亮介
RELEASE INFORMATION
『surrearhythm』
リベラル a.k.a 岩間俊樹
2019.12.11(水)
Tracklist
1. Wear out the souls.
2. ONE
3. start feat. Ryohu
4. surrea-lism
5. surrea-rhythm
6. LiLiA feat.SARM
7. MANI MANI feat.HI-KING TAKASE
8. Cider feat.Shunske’G
9. Simple
10. Let Me Show feat.DinoJr./MEEKAE/Valley in the Book
11. にぎりっぺ
12. Fresh feat.HARZEY UNI
EVENT INFORMATION
「Surrearhythm」 Release Tour
2019.02.01(土)大阪 心斎橋CONPASS
2019.02.02(日)広島 音楽食堂ONDO
2019.02.06(木)宮城 仙台SHAFT
2019.02.08(土)福岡 graf
2019.02.09(日)長崎 佐世保LAST
2019.02.14(金)東京 TSUTAYA O-nest
2019.02.16(日)静岡 Freaky Show
リベラル a.k.a 岩間俊樹
SARM
slugger PRODUCTION
2019年10月に始動。
業界の形式にとらわれないアーティストファーストを目指すプロダクション。
音楽に限らず、デザイナー、映像作家、ライターなど様々な表現者が所属をし、
それぞれの活動において本来あるべきアートの姿を共に創造発信していくステーション目指す。
”Performance,Expression,Management,Direction,Promotion,Sales,Consumer=ART_”
–表現者から消費者に届くまで、関わる全ての行程がアート-
LABEL HP