何より良いメロディが必要だ、と口にするバンドは多いけれど、トラヴィスの場合は良いメロディさえあれば他に何もいらない、という求道者のような姿勢でかれこれ20年も活動を続けてきた。デビュー時こそブリット・ポップの残り香を感じさせるロック色の強いサウンドだったが、セカンド『ザ・マン・フー』でバラッド中心に路線変更し、じわじわと評価を得て最終的には全英1位。ただ、その商業的な成功が音楽的評価と結びついていたかというと、決してそうではない。特に近年、音楽的野心に満ち溢れたミュージシャンたちが次々とエキサイティングな実験を行い、それがポップソングという形で結実している現状から見れば、頑なにサウンドの形式を変えないトラヴィスの姿はともすると退屈に映るかもしれない。だが、世の中でどんなサウンドがもてはやされようと、トラヴィスは優れたメロディを発掘することに集中し、これまで多くの名曲を残してきた。ある意味で、彼らはずっと時代に抗い続けてきたのだ。

トラヴィスが語る最も大切なもの。“僕たちの曲は君のために書かれている” interview160428_travis_4

photo by Kazumichi Kokei

今回の<Hostess Club presents Sunday Special>は新作『エヴリシング・アット・ワンス』のリリースを間近に控えてのステージだったが、セットリストにおけるハイライトはここ10年間でほとんど変わっていない。“Why Does It Always Rain On Me?”“Turn”“Sing”“Closer”、そしてフラン・ヒーリィ[Vo,Gt]がアコギ一本で弾き語る“Flowers In The Window”。この日は、一部のビデオが公開されたばかりの新曲に対する反応も上々だった。6曲目に披露された“Animals”のビッグなコーラスは、今後“Turn”並のアンセムになる予感を孕んでいたし、“Flowers In The Window”のプロダクションをよりメジャー仕様にしたような“Magnificent Time”ではオーディエンスがピョンピョン飛び跳ねていた。まるで単独公演のような親密な雰囲気。だが、ステージ上の彼らは、もはやただの“ハートウォーミングで穏やかなバンド”ではなかった。彼らは本気で私たちにトラヴィスの曲を引き継ごうとしているのかもしれない。

Travis – Magnificent Time

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photo by Kazumichi Kokei

さて、そのライブ前にインタビューを行った相手は、近年のライブで楽曲の高音パートをフランの代わりに歌っているベースのダギー・ペイン(美声)と、番人のような佇いで文字通りバンドのボトムを支えるドラムのニール・プリムローズ。トラヴィスというバンドにおいて何が1番大切なのか、改めて訊いてみた。

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