――新作『エヴリシング・アット・ワンス』は前作に続いてマイケル・イルバートがプロデューサーを務めていますよね。テイラー・スウィフトなど、彼は主にメジャーで活躍するプロデューサーですが、彼の起用によってトラヴィスらしさが損なわれるという可能性を考えましたか。
ダギー そもそも僕たちは“トラヴィスっぽい曲”を作ろうとはしていなくて、彼がスカンジナビア的なポップの感覚をロックに持ち込んでいるのが面白いと思ってお願いしたんだ。
ニール 僕たちだけじゃ、これほどうまく形にすることは出来なかった。マイケルのおかげであれこれ悩むことなく自然に音楽を楽しむことが出来たよ。
『エヴリシング・アット・ワンス』ジャケット写真
――ストリングスが大々的に入った“Animals”など、前作以上にサウンドが外に開かれていますよね。
ダギー 今はみんなSNSを通して、別バージョンの理想的な自分を提示しようとしているよね。嘘っぱちなのに、みんなその姿を通して「ピピピ」ってコミュニケーションしている。そうでないと話もできない。ランニングでも、食事でも、ファックでも、リアルな世界で何か一緒にすべきだろう。というか、他人だけじゃなく、髪の毛とか、手足とか、自分自身の身体と繋がっている感覚すら失われつつある。コミュニケーション全般がフィクションに頼りすぎているよ。この曲で歌われているのはまさにそういう内容なんだ。ちなみに、“Paralysed”や“3 Miles High”にもそういった断絶に関するテーマが含まれている。他のアルバムには自分の人生を振り返るような曲が多かったけれど、たしかに君の言う通り、今回のアルバムから外の世界を意識するようになったのかもしれない。僕らの年齢になるとそうなるのかな(笑)。
Travis – 3 Miles High
――ある意味でこのアルバム全体のテーマとも言えますか?
ダギー アルバムについて話すのは何だか変な感じがするね。僕らは曲単位で考えていて、スタジオでも「こういうテーマでアルバムを作りたい!」なんて話はしないから。まず1曲を作るために動いて、それを繰り返していくうちに曲が溜まったらアルバムが完成。そんな具合さ。予めコンセプトを立てたのは『オード・トゥ・ジェイ・スミス』くらいかな。あれは、どれだけ早く録音できるか、ということに対する挑戦だった。最初の2週間は、粗末でちっぽけな部屋に閉じこもって作曲して、その後の2週間で録音した。曲自体の構想を練っていたわけではないけど、そういうプロセスを踏んだ結果、ガレージっぽいラフなアルバムになったんだと思う。
――方法論やコンセプトよりも、あくまで楽曲がトラヴィスというバンドを支えているということですね。
ダギー 何かデザインされたビジョンがあるわけじゃなく、僕たちは曲単位で動いている。次はデスメタル、その次はレゲエをやる可能性だってあるけど、このバンドをずっと支えてきたのはメロディなんだ。道端を歩いている時に何気なく吹いた口笛から、すべてが始まるんだよ。
photo by横山マサト
RELEASE INFORMATION
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