内田珠鈴(うちだ・しゅり)を知っているだろうか? モデルとして『JSガール』の表紙に14回登場(歴代最多)し、現在は『めざましテレビ』にて現在のトレンドや話題のものを紹介する「イマドキガール」としても活躍している、高校3年生(2019年5月時点)のアーティストだ。Qeticの読者にとっては、『コウキシン女子の初体験』でおなじみかもしれない。

そんな彼女が初のEP『光の中を泳ぐ』をリリース。一聴してわかる通り、ギターやピアノをベースとしたこれまでのポップソングとは一線を画した、アンビエントでエレクトロポップな楽曲に仕上がった。内省的になった歌詞にはよりナチュラルな内田珠鈴がそのまま反映されており、過去作を聴いてきたリスナーに新鮮な驚きを与えてくれる。音楽性、音楽そのものへのスタンスともに明らかな変化が見られ、本EPが彼女の最初のターニングポイントになることは間違いなさそうだ。

アーティストは基本的に、誰かの二番煎じになることを嫌う。しかし内田珠鈴については、世界の音楽シーンで現在主役になりつつあるアーティストの名前をあえて借りることで、その変化と進化をわかりやすく明示しても良いのではないかと思う。

すなわち、「内田珠鈴は日本のビリー・アイリッシュになるかもしれない」と。

「大人になるのが楽しみ」

内田珠鈴はなぜ、自分をさらけ出そうと思ったのか? 初EP『光の中を泳ぐ』について語る interview190517-uchida-shuri-4

ーー「珠鈴」ってすごく素敵な名前だと思います。この名前と漢字にはどういう意味が込められているんでしょうか?

内田珠鈴(以下、内田) わたしもずっと気になっているんですけど、親が教えてくれないんです(笑)。父の希望だったらしいけど、お母さんは違う名前にしたかったとか……。いつ聞いてもなんとなくはぐらかされちゃう。漢字は画数を考慮して、最終的にはお寺で決めてもらったそうです。

ーー「珠」という字には「美しい」「立派である」「完全なもの」という意味があるそうです。「珠」に加えて「鈴」という、音を感じさせる言葉をあてて「しゅり」と読ませる名前は、本当に素敵で、内田さんにぴったりだと思いました。

内田 ありがとうございます。嬉しい。

ーー今年で高校卒業ですね。今のうちにやっておきたいことはありますか?

内田 高校生のうちにもっと知られて、ちゃんと結果を残したいという気持ちが強くあります。「現役女子高生」や「10代」と言えなくなる怖さがあるし、将来についてはよく考えます。ちょっと焦りもあるけど、大人になるのが楽しみでもあります。

自分をさらけ出した楽曲たち

ーー初のEP『光の中を泳ぐ』は、内田さんの「結果」になると思います。完成した作品を聴いて、率直に、どんな感想ですか?

内田 「やっと聴いてもらえる」という気持ちがいちばん大きいです。このEPには、これまでライブで歌っていた曲がたくさん入っているんです。ライブに来たことがない方、遠くに住んでいて来られない方々に聴いてほしい曲ばかりなので、そういう方々に届けられることが本当に嬉しいです。初めてのEPなので、気合を入れました!

ーーアンビエント寄りの楽曲で統一されていますが、もともとこういう音楽が好きだったんですか? 

内田 すごく好きなんです。最近は、ビリー・アイリッシュさんにめちゃめちゃハマっています。同い歳でこんなにすごい人がいるということは、やっぱり刺激になります。コーチェラもYouTubeで見てました。

ーーこれまでに発表した『少しずつ』や『青の季節』という曲はピアノやギターがベースのポップスだったので、今回ガラッと音楽性が変わっていますね。

内田 全然違いますよね(笑)。これまでの曲ももちろん気に入っているけど、もっと自分を出したいという気持ちがあったんです。今回は、曲調に合うかどうかを気にせずいろんな方向性から歌詞が書けました。

ーー以前の曲は、今の自分の気持ちに合わないですか?

内田 というより、これまでは、自分の最大限の明るさを表現した曲だったんです。今回は、そのままの自分をさらけ出しました。

ーーEP全体から「うまくいっていなかった自分をリセットして、新たなスタートをきる」という想いをひしひしと感じます。

内田 もちろん全部が全部うまくいっていなかったわけではないし、こうして音楽活動もスタートできた点では順調だったけど、そのなかでもいろんな不安があったんです。音楽面だけじゃなくプライベートでも、上京してからなかなか友だちができなかったり……。そういう時に明るい歌詞を書いても「実際のわたしはこんなに明るくない」と思って、嘘をついているような気持ちになってしまったんです。本当にこれは自分の気持ちなのかな、と。それをやめたら、こういう歌詞になりました。

ーーとても勇気が必要だったと思います。

内田 これまで聴いてくださっていた方は驚かれるだろうな、これで本当にいいのかな、という不安はちょっとだけありました。最初にライブで歌った時はすごくびっくりされたんです。でも自分と近い世代の子や友だちは「前の曲も好きだけど、今の曲の方が珠鈴ちゃんっぽい」って言ってくれて。自分でも今回の曲たちを歌うのがすごく楽しいし、本当に良いと思える曲ができました。

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人に流される自分を変えたかった。

ーーすごく直接的に自分の気持ちを歌っていますよね。『うまく進んでいたはずが』なら「何も変わらない毎日」とか「夢だけただ語って立ち止まっていたんだ」とか。

内田 読まれると恥ずかしい……(笑)。

内田珠鈴『うまく進んでいたはずが』MV

ーーこういう歌詞が出てくるのは少し意外でした。というのも、内田さんはすでに華やかな世界である程度成功している人でもあるからです。ハタから見れば順調なのに、「遠くて見えない辛い人生」とまで言っている。

内田 やっぱり辛い時もあります。わたし、3ヶ月に1回くらい理由もなくすごい闇期に入るんです。その時期は何を考えていてもため息しか出ない。これからどうしよう、これで本当によかったのか、って考え込んでしまう。この歌詞は、その闇期のどん底で書きました。

ーー闇期からはどうやって抜けるんですか?

内田 歌詞をワーッと書くことですね。吐き出すと落ち着く。あとは、ボイスメモに喋りかけます。考えていると頭のなかでずっとグルグルまわり続けて抜け出せなくなるので、外に出すことが大事だなと思っています。

ーー何かをつくることが内田さんの精神を安定させるんですね。「遠くて見えない辛い人生」というフレーズは、進路を考える時期だからこそ出てきた言葉なのかなとも思いました。

内田 そうですね。自分のこれからのことを考えてすごく楽しくなる時期もあれば、不安になって落ち込んじゃう時期もある。でも誰しもそういうところはあるんじゃないかなと思うので、「わかるわかる!」と思っていただければ嬉しいです。

ーーめちゃくちゃ「わかるわかる!」と思います。『人に言われて作る人生』は、かなりぐさっと刺さりました。わかりすぎて辛い。

内田珠鈴『人に言われて作る人生』MV

内田 わたしは元々あまり発言をしない人間で、人に流されることが多かったんです。自分の意見を言いたいのに言えない。そういう自分が嫌でした。自分を変えるのは難しいし、時間がかかりますよね。だからこの曲を書いて歌うことによって自分に言い聞かせているんです。

ーーなぜ、言いたいことが言えないんだと思いますか?

内田 なんでなんだろう……。これを言ったらこうなる、と先のことを考えてしまって、じゃあやっぱ言わない方がいいや、と思ってしまうからだと思います。

ーー空気を読みすぎたり、相手の気持ちを想像しすぎたりするんですね。でもそれはきっと、内田さんの長所なんじゃないでしょうか。

内田 どうなんでしょう……。考えすぎは良くないよってよく言われます。なので良いところは残しつつ、自分のことはちゃんと言えるようにしたいです。子どもの頃からずっとそういう性格でした。すごく人見知りでほとんど喋らない子どもで。親には「地蔵」って言われていましたし(笑)。

ーー地蔵!

内田 この仕事を始めてようやく少しずつ地蔵から抜け出せるようになってきたんです。歌詞を書く時も、以前は「これって本当にこれって自分の考えていることなんだろうか?」と思うことがありました。曲調に合わせるのはもちろん必要だけど、勝手に空気を読んで寄せすぎてしまうんです。そうして次第に、その歌詞で本当は何を伝えたかったのかがわからなくなってしまう。でもそんなことを続けていたら辛くなってしまうし、自分をそのまま出した方が、聴いてくれる人にも共感してもらえるだろうと思って。

ーー共感性は高いと思います。『君はもういない』のMVもとても素敵でした。ストーリーも意味深ですし。

内田珠鈴『君はもういない』MV

内田 失恋について書いた曲です。失恋って後まで引きずるじゃないですか。まあ、実際のわたしはそんなにズルズル引きずるタイプじゃないけど……というか、女の子ってけっこう切り替えが早いし、わりとすぐに過去を捨てません?

ーー捨てますよね。男としては辛いです……。

内田 女の子は振られた時は泣くけどすぐ切り替える、男の子はその場では大丈夫だけどずっと引きずる、ということをよく聞きます。あまり引きずっていても仕方ないし、新しく踏み出すために踏ん切りをつけることが必要だと思うんです。

ーー失恋の曲だとわかりつつ、でもこのEPのなかの1曲として聴くと、過去の自分に対する歌でもあるのかなと思いました。過去を捨てる曲を2曲目に置いて、3曲目からは新しい自分や本当にやりたいことに向かっていく、という構成。『光の中を泳ぐ』というEPのタイトルは、内田さんの決意の表れなのではないかと。

内田 そうですね。光の中を泳ぐというタイトルの曲はないけど、全曲を通したテーマでもあるし、聴いてもらえば納得してもらえるタイトルだと思います。

考えても答えが出ないことに興味がある。

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ーー作詞の際に参考にしているものはありますか?

内田 本を読むことが好きで、言葉の引き出しを増やすために読書をすることはあります。でも詞を書く上で参考にしているものはあまりなくて、自分が感じたことを大切にしていますね。それから、良い言葉が思いついたらすぐボイスメモに録音するようにしています。作詞はほとんどボイスメモを使っているんです。後から書こうとしてニュアンスが変わってしまうのが嫌だし、その場ですぐにメモしても、ちょっときれいにまとめて書いてしまうから。

ーーすごく重要な点ですね。書き言葉と話し言葉は全然違うし、そういう作詞のやり方だからこそ、これほどナチュラルなタイトルや歌詞になるのだと思いました。ちなみに、どんな本が好きですか?

内田 「この本」というのはないけど、最近は自己啓発本や、自己啓発本を読んで人生が変わった人の書く本をたくさん読んでいました。「読むだけで幸せになれる」みたいなことを本当に信じていたんです。でもそうじゃないなと思い始めて。どんな本を読んでも、結局、自分が動かないと変わらないということに気づき始めました。あとは「人間はなぜ生まれたのか」みたいな内容の本が好きです。

ーー哲学に興味があるんですね。

内田 そうなんです。たとえば「ふだん自分の意思だと思っているものは、本当に自分の意思なんだろうか。もっと大きな何かにコントロールされているんじゃないだろうか」とか考えてしまいます。

ーーへえ! 「自由意志なんて本当にあるのか」ということですよね。それは自分の歌詞を読んで「本当にこれは自分の気持ちなのかな」と感じていたという先ほどの話に繋がりますね。

内田 大学受験をするかどうかすごく迷っているんですけど、もし進学するなら、そういう分野に進みたいです。考えても考えても答えが出ないことに興味があるんです。死ぬことも、実際には自分で体験できないことですよね。考えていてもわからないことだから、勉強や研究をしてみたいです。

「夢は、幸せに死ぬこと」

ーー内田さんと言えばやはり『LINE Clova Friends』のCMが印象的で、最近は映画や舞台の仕事も目立ってきました。演技の仕事は今後も増やしていきたいですか?

内田 音楽を第一にやりながらですけど、お芝居の方もやっていきたいです。

ーーやはり音楽が軸なんですね。職業を聞かれたら何と答えますか?

内田 それはめっちゃ困りますね……職業は内田珠鈴です、って言えるように頑張ります!

ーー今回の楽曲には「夢」や「やりたいこと」について歌っている曲がたくさんありました。内田さんにとっての「夢」って何でしょう? 

内田 夢は、幸せに死ぬことです。年齢を重ねると、体力的にできなくなることが増えますよね。その時に「あれをやっておけば良かった」と思わないようにしたいんです。

ーーなるほど。「幸せに生きる」ではなく「幸せに死ぬ」と言うことが内田さんらしいですね。それにしても、なぜこれほどまでに死を意識してしまうんでしょうか。

内田 自分の身のまわりに、近い歳で亡くなってしまった人が何人かいるんです。いつ何があるかわからないな……と思った時から意識するようになりました。明日、病気になったり事故に遭ったりするかもしれない。それは自分だけじゃなくて、まわりの人もそう。だから後悔しないように生きたいです。

内田珠鈴はなぜ、自分をさらけ出そうと思ったのか? 初EP『光の中を泳ぐ』について語る interview190517-uchida-shuri-1

Text by Sotaro Yamada
Photo by 山口真由子

光の中を泳ぐ

Release

2019.05.29(水)

Tracklist

1.いつもの朝
2.君はもういない
3.私は無敵のヒーロー
4.どれほど私は
5.うまく進んでいたはずが
6.人に言われて作る人生
7.リズムに合わせて踊る

SHURI UCHIDA “Swim into the light” EP Release Party supported by BCL
Wanna swim into the light? – みんなで光の中を泳いでみませんか?

DAY

2019.08.04(日)

PLACE

OPEN 12:00 / START 12:30

ADV ¥2,500 / DOOR ¥3,000(+1D)*学生は無料(ドリンク代のみ必要)

ACT:内田珠鈴
GUEST:City Your City

チケット一般発売日時:2019年5月31日18時〜
URL:https://l-tike.com/uchidashuri/

◎学生予約の方法
ご予約方法(E-mail)>>
宛先:uchida.shuri@gmail.com
件名:8/4予約
本文: 内容下記2点
・代表者名(カタカナフルネーム)
・予約枚数

※ご返信に数日かかる事がございます。
※こちらからのメール返信をもちまして予約の完了となります。
※ご予約の締め切りは前日の23時となります。
※ドリンク代につきましては、当日お店にてお支払いいただきます。
※当日学生証をお持ちください。

主催:内田珠鈴
企画・制作:つばさプラス/TSUBASA RECORDS
特別協賛:BCL
お問合せ:つばさプラス事務局:TEL:03-5459-0856(10:30~18:30)

名古屋 インストア・ライブ

日時:2019年6月1日(土)16:00~
会場:タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 店内イベントスペース
内容:ミニライブ&サイン会

東京 インストア・ライブ

日時:2019年6月26日(水)18:30~
会場:タワーレコード渋谷店 5Fイベントスペース
内容:ミニライブ&特典会

<対象商品>
’19年5月29日発売 内田珠鈴 『光の中を泳ぐ』(TRNW-0164)
<イベント参加方法>
イベント会場の店舗にて、対象商品をご購入いただいた方に先着で、CD1枚ご購入につき1枚、”特典会参加券”を差し上げます。

内田珠鈴

福岡県出身。現役高校生アーティスト。
2013年(小学校6年時)小中高生に人気のファッション雑誌「JSガール」専属となり、2017年専属モデル卒業までの間、表紙登場回数14回の最多記録を打ち立てる。
ファッションモデルだけでなくショーモデル、トークイベントMC、審査員まで幅広いジャンルで活動を行う。
2017年4月上京、新しい環境でゼロの状態からアーティスト活動をスタート。サウンドプロデュースにCity Your CityのTeppei Kitanoを迎え今月4月10日(水)に「君はもういない/nude」をタワーレコード渋谷店とライブ会場限定で、1,000枚限定リリース。
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