UEBOは本当に音楽が好きな男だ。J-POPやハードロック、メタルにブラックミュージック。垣根なく音楽を聴き続け、自身の音楽的感度を成長させていった彼が、辿り着いたのは”ネオ・サーフミュージック”という新たなテーマ。
UEBOのルーツの1つでもあるサーフミュージックにその時々、彼がアツいと感じたものやジャンルを掛け合わせて生み出される”ネオ・サーフミュージック”は楽曲ごとに色が異なり、聴いていて非常に面白い。
6月29日に配信がスタートした、”Circle”は、トラックメーカーにmacicoのhoritaを迎え、サーフミュージック×トラックミュージックを見事に確立させた、小気味のいいダンスチューン。生々しい生活の中で素直に思ったことを書いたというリリックには、諸行無常、日々生活をしていて1度は感じたことのある共感性の高い言葉が並んでいる。
今回はそんなUEBOの音楽ルーツの話題を皮切りに最新作”Circle”についてたっぷりと話を聞く。コロナ禍が転機になっていると話す彼は、いかにして音楽を生み出しているのだろうか。
INTERVIEW:
UEBO
アメリカで見たライブで決意、SSWとして生きる道
━━Qeticには初登場ということなので、まずはUEBOさんの音楽ルーツについて紐解いていこうと思います。音楽を始めたキッカケから教えていただけますか?
幼馴染にギターをもらったことがキッカケでギターを始めました。当時はベタに歌本でサザンオールスターズやスピッツの“チェリー”を弾くところからスタートして。高校時代には文化祭のためにバンドを組んで、いわゆるORANGE RANGEやASIAN KUNG-FU GENERATIONとか僕世代の青春バンドをコピーしたりしていましたね。あとは、ギターのイロハのイを教えてくれたのは父親の友人。彼はベンチャーズ(The Ventures)世代だったので、エリック・クラプトン(Eric Clapton)やブルースロック系の音楽も彼の影響で聴いていました。改めて振り返ってみると、雑多な感じで「ギターがカッコいい!」とか「スピッツっていいな」みたいなところをいまだに引きずっているかのかもしれません。
━━幅広く音楽を聴かれていたんですね。
そうですね。いまだにブルースのようなどこか土臭いものが好きなんです。ハードロックも聴いていたりしましたけど、その中でもやっぱりブルース味を感じるものが好きでした。日本のバンドだとその土臭さをスピッツから感じていて。J-POPでありながらもメロディが大事で、歌が伸びやかで、アーシーな(土臭い)部分が組み合わさっている感じが好きだったんです。
━━なるほど。そこからシンガーソングライターとして活動をすることを決意したきっかけはどのタイミングで訪れるんですか?
大学3年の夏休みに1ヶ月間、海外に行ったんですよ。プロフィールでは留学と記載されていて、いつも事務所の社長に「それは留学とは言わない」といじられるんですけど(笑)。僕は留学ということにしていて(笑)。ボストンに行ったんですが、バークリー音楽大学があったり、音楽が盛んでアメリカの中でも治安がいい場所ということで、夜も出歩けたんですよね。なので、現地でライブをいくつか観る機会もあって。リー・リトナー(LEE RITENOUR)というジャズフュージョン系の大御所の方のライブを観たときに、凄まじい衝撃を受けました。音がアンプからではなく、リー・リトナーの輪郭から出ている感じというか、オーラが飛んできているように見えたんです。
━━オーラですか!
そうなんですよ。当時は就活のタイミングで、僕自身もモヤモヤしてる部分があったんですが、そのライブを観て、「この人はこれで世界を回って、家族を養って、みんなをハッピーにしてるんだよな」って、「これは最高なことだ」と思ったんです。もちろんそれまでにもいろんなジャンルの音楽に傾倒して一生懸命練習をしていましたけど、リー・リトナーのライブを観て「どうやったらライブハウスに出れるのだろう」と、音楽を本気でやっていこうというマインドになりました。
━━それだけの衝撃だったんですね。それでは、ルーツ的な部分でいうと、スピッツなどのいわゆる王道J-POPが根幹にはあって、なおかつリー・リトナーの衝撃も影響している。
そうですね。整理すると、スピッツは第一次ルーツ。そこから友人の影響でハードロックやメタル、大学時代のサークルの影響で、ブラックミュージックやファンク、ソウルにどっぷりハマっていく感じですかね。サークル時代は先輩からいろいろなアーティストを教えて
もらっていたんですけど、その中で立ち振る舞いや活動のスタンス、ポップ感とマニアックさのバランス感を含め、ジョン・メイヤー(John Mayer)が活動のルーツになるのかなと思います。意識しているルーツはジョン・メイヤーって感じで、無意識に出てちゃうのがスピッツとかボン・ジョヴィ(Bon Jovi)やエアロ・スミス(Aerosmith)、エリック・クラプトンって感じですかね。
きっかけは姉の結婚式、“ネオサーフミュージック”に至るまで
━━なるほど。UEBOさんは“ネオサーフミュージック”とテーマを掲げ、活動をされていますが、そのジャンルに行き着いた経緯についても教えていただけますか? お話を聞いているとサーフとは別のベクトルで音楽を聴いていたのかなとも思うのですが。
サーフ系の芽生えみたいなものは、姉の結婚式のために1曲書いたことがキッカケ。姉と旦那さんのエピソードを聞きながら作ったハッピーな曲なんですが、その曲がいわゆるジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)のような匂いがするようなもので。“Moonlight Wedding”というタイトルでライブでもやっています。いい曲ではあるけども大々的に自分の看板になるような曲ではないと思っていたんですが、思いのほか評判がよくて。そこからシングルカットしてみるとSpotifyでも再生数が伸びて、自然発生的にこの曲が代表曲になっていきましあ。それをキッカケに、もしかしたら自分にはこの感じが合うのかなと。
━━そこからサーフミュージックも作るようになった。
そうですね。それでサーフミュージックを作るようになる中で、コロナ禍になり、ライブの予定が潰れたり、いろんなことがあったりして、自分を見つめ直すきっかけになったというか。僕にとってはこのコロナ禍がいい転機になっているんです。音楽をやる上で本当に大事なことはなんなのかと考えた末に“ネオサーフミュージック”というキーワードのもとやっていこうと決意できました。
Moonlight Wedding – UEBO
━━それはなぜ?
僕は、どこまでいってもギターを弾きながら歌う人間。そのギターというのは、エレキも弾くこともあるけども、アコースティックギターがどこまでいっても軸にある、歌い手だということを自覚して。サーフの匂いがするものはやっていて楽しいし、ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)とかジェイソン・ムラーズも大好きで、そういう意味では彼らがルーツと言っても過言ではない。ただ、真似をしても仕方がない。そこに何をプラスしていくかが重要で、例えばサーフミュージック×ワールドミュージックとしてボサノバやラテン系の音を入れていくのも1つだと思うし、今回のhoritaくんの曲(“Circle”)でいえば、トラックミュージックと掛け合わせている。要はギター1本で成り立つ自分のルーツをサーフミュージックとざっくり捉えたときに、そこにその時々のアツいものをプラスしていって、MIXしていくっていうのが“ネオサーフミュージック” の定義になるなと思ったんです。
━━なるほど。だからどの曲を聴いてもオーセンティックなサウンドの中に他ジャンルのエッセンスを感じるんですね。
ただ、定義を作ってしまったから少し形式張ってしまうというか。“ネオサーフミュージック”と掲げてからは、それこそひたすらチルにやってみようかなとか悩んだりはしましたね。2020年の11月から12ヶ月連続リリースをしたんですが、当初はチルを意識して、トム・ミッシュ(Tom Misch)のような作風のものもあったんです。でも曲を作っていく中でもっと柔軟に、いろんなジャンルを泳いでも結局、僕がアコギを持ってバシッと唄えば、統一感は取れるから大丈夫と思えてきたんですよね。
━━お話に出てきた12ヶ月連続リリースですが、2020年のあのタイミングから連続リリースすること自体がすごいことだと思うし、音楽性のアップデート期間だったとも思うんですけど、当時の心境はどのようなものだったんですか?
無茶苦茶、ポジティブではあったんですよね。コロナ禍でまっさらになって、新しくテーマも掲げて。それ以降の自分の音楽性や歌い方もそうなんですけど、特に歌詞でいうと、本当に正直になりました。ある種、シンガーソングライターの原点に立ち返ったというか。自分のそのときの状況、その時々で思ってることをシンプルに1つ1つ吐き出していけばいいんだと思って。コロナ禍が始まってからの方が自分の生活が動き出していたし、やらなきゃいけないことが増えたりした分、腐ってられないなと逆に火がついて、より生活に向き合うようになったんですよね。
サウンドでいえば、今の事務所の社長との出会いが大きいです。純粋に僕の音楽を好いてくれていて、いろいろなアドバイスをくれたりして、よりチームで動くようになりましたね。だからこそチャレンジがしやすくなったし、全てにおいていい作用が出たのが12ヶ月連続リリースかなって思います。
「やっていけばやっていくほど音楽が楽しい」
━━なるほど。では、今回の楽曲“Circle”についてですが、トラックメーカーにmacicoのhorita氏を迎えています。
UEBOの構想的には、トラックサイドとアコースティックサイドみたいなものをゆくゆくは分断していこうと思っていて、今回はトラックサイドに振り切りたかった。そんなときに名前が上がったのはmacicoのhoritaくん。horitaくんは一度、僕の自主企画にmacicoで出てくれていて、仲良くなったんですけど、今回も快く引き受けてくれて実現した形になりますね。
━━どのような制作のやりとりをされたんですか?
デモの段階では、自分でオケを組んでやってみたんですけど、全然気に入らず……。好きにしてくださいということで、素材のパーツを全部投げて彼にリビルドしていただきました。やりとりもすごく面白くて、初めのデモのパーツが自分の意図してないところで使われていたりして、とても面白かったです。
━━サウンドはダンサブルで、macico色もうまく反映されたソウルやディスコの匂いを感じるような曲だと思うんですけど、こだわった点はありますか?
どこまでいってもアコギはでっかく出したいというところがいちばん大事なところで。そこを見失ってしまうと、ただ「macico featuring UEBO」になってしまうし、それをUEBO名義で出す意味はない。あのサウンド感が欲しくてhoritaくんにお願いしたけど、そこに収まっていても面白くないということでMIXでかなり調整はしました。あくまでアコギがグルーヴの核にいるサウンド作りは気をつけたし、ダンサブルで賑やかなサウンドが多くある中で、どの場面でもアコギは存在感を放っているのかなと思います。
━━そして、歌詞についてですが、個人的にはコロナ禍という状況に慣れてきて、自分の新たな生き方を模索しつつ、実践している主人公像が見えたんですよね。
そういう風に汲み取ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです。と、思いつつも実のところテーマは曖昧なんですよね。僕は凹むことが多くて、落ち込んで何もできないというモードになることも多いんですが、ちょっとしたことで元気になったりするんです。“Circle”というタイトルのように感情がぐるぐる回っているというか。どんなときにも辛いことが起こるわけじゃないですか。もうやってられないって思うこともあるし、もしかしたら味わったことのない苦しみがこれから訪れるかもしれないけど、大概、そういう苦しみもよくある苦しみで。いいことがあったら喜んで、悪いことがあったら落ち込んで、そういう繰り返しの中でルーティン化された中での苦しみがあると思うんです。「これはいつもの苦しみだ、次にアレが起きれば解決できる」と思い込むことで乗り切ることができる。そんなところから生まれた曲なんですよね。そういう大小さまざまな生きることに関わることを“Circle”という言葉で表しました。
━━その感情の起伏はすごく分かります。
それをコロナ禍の中で新しい生き方を模索すると解釈してくれたのはめちゃくちゃ嬉しいし、自分では想定してなかった捉え方でした。歌詞を具体的に書いてない分、そういう風に解釈してくれることもあるのかなって、いま思いました。自分の中ではリリースしてみるまで抽象的すぎる歌詞かなと思っていたので。
━━誰しもがどこかで感じたことがあるような考えのような気がします。
それは僕が生々しい生活の中で歌詞を書いているということですね。素直に感じていることを書いたから。何も意図してない、今の自分の全てですかね。
━━それでは、コンセプトも特に設けていない?
うーん、実はhoritaくんにはもう1曲作っていただいていて。ゆくゆくは秋にEPを出せたらいいなと思ってます。そのEPのざっくりとしたコンセプトが“ハーフ&ハーフ”。先ほども言いましたが、アコースティックサイドとトラックサイドを振り分けてやってきていて、そのトラックサイドの曲としてhoritaくんの曲がある感じ。まだオープンには出来ないけどEPの曲は出揃ってきていて、サウンドの違いはありますが、歌詞もトラックサイドの方が抽象的なことを扱っていて、アコースティックサイドは割と具体的なことを明確に1人の相手に向けて歌っているというか、そういう棲み分けができて個人的には面白いです。
Circle – UEBO
━━いまhorita氏との2曲目の楽曲を少し聴かせていただきましたが、やはりダンサブルなサウンドですね。歌詞もどこか繰り返す感じというか。
horitaくんとやるなら、やはりダンスミュージックがやりたいなって。逆にアコースティックサイドでは、バラードなものあり、ミドルなものがありますから、この2曲は振り切った感じになって、自分的にも新境地でした。歌詞に関しては、言われてみたらそうですね(笑)。繰り返し、諸行無常だと思ってるんですね。詳しくは言えませんが、2曲目は音楽に対する自分の気持ちを歌にしたものです。
━━これまでの活動で思ったことを歌にしてるような気がします。
そうですね。やっていけばやっていくほど音楽って楽しいなって思うことも最近増えたというか。今までよりも捉えられるようになったから、書けた楽曲かもなって思います。もちろん会場を大きくしてって、いろんな人にもっと聞いてもらえることはすごく嬉しいことだし、それを目指してなきゃ、わざわざチームが組む必要はないと思います。最近ではSWING-Oさんという鍵盤奏者の方に出会って、セッションもよくやっているんですが、そういう出会いや経験を自分の音楽として昇華できている。そういった思いが楽曲に出ているのかなって思います。
━━リリースが楽しみですね! 最後になりますが、今後の目標や展望を教えてください。
こうやって直接、出会った人にグッとくる音源やライブを更新していくということに尽きるなと思います。やっぱり心が動かないと物事は動いていかないと思うんです。そりゃ、武道館にも立ちたいし、さいたまスーパーアリーナにも立ちたいけど、思うだけでは何も変わらない。でも1人1人の心を動かして、その思いが結集した場所が武道館かもしれないわけで。だから僕は人の心を動かすような音楽をちゃんとやっていきたいと思います。
Text:笹谷淳介
Photo:Aoi Haruna
UEBO
千葉県出⾝のシンガーソングライター。
作詞作曲に加えトラックメイク/アレンジも⾃ら⼿掛ける。
“ネオ・サーフミュージック”をテーマに掲げた、オーセンティックなサーフミュージックはもちろん、フォークやロック、レゲエからコンテンポラリーなR&B/ヒップホップまで、年代もジャンルも⾃由に往来する、独⾃のレイドバックしたミクスチャー感覚は唯⼀。ソフトなタッチだからこそ⽿に残るメロディーとボーカルとともに⽣み出される楽曲群は、ときに⽇常の⽣活や景⾊に溶け込み、ときに⽇々の喧騒から静かな砂浜へと誘ってくれるよう。
2020年11⽉から、12カ⽉連続でシングルをリリースしていく。
第3弾「Hometown」は、YOUTUBE再⽣回数20万回を突破。
2021年2⽉公開の「Lights」を使⽤した中国電⼒WEB CMが100万再⽣突破。
2021年5⽉リリースの第8弾「Drops」は秘密のケンミンSHOW極(読売テレビ・⽇本テレビ系全国ネット)のエンディングテーマに決定。
FM佐賀「Hyper Play」、福岡LOVE FM「Cool Cuts」、Inter FM「Hot Picks」に選出。
2021年6⽉リリースの第9弾「Small lens」はniko and …とのコラボレーションMVを制作。Shin Sakiuraプロデュースの第11弾「Mabataki」、Inter FM「Hot Picks」にも選出された安次嶺希和⼦フューチャリングの第12弾「Good Night」では、新境地を⾒せ話題を呼んでいる。2021年11⽉20⽇に12カ⽉連続シングルリリースの集⼤成としてワンマンライブも完売。
2022年3⽉2⽇には、Awesome City Clubからモリシーをアレンジャーに迎え、本⼈のルーツであるアコースティックミュージックをベースにしたNEW EP「+1」を発表。
リード曲「Predawan」が、α-STATION「HELLO!KYOTO POWER MUSIC」に選出される。
「+1」リリース記念のモリシー(Awesome City Club)をサポートに迎えたワンマンライブも⼤盛況に終える。また、2022年6月29日にリリースされた最新シングル「Circle」はinterfm Hotpicks、FM大分のパワープレイに選出や夏フェスの出演も多数決定し注目を集める。