猛なシークエンスの攻撃からアッパーな四つ打ちへ転じる典型的なEDMナンバーでありつつ、聴こえてくるのは日本語の男性ボーカルやラップ。この印象的な楽曲のタイトルは“HELL YEAH”。スラングで「ありじゃん!」っぽく使われるワードで、古い価値観をブッ壊すイメージを持ったこの曲のパンチラインにもなっている。ところでこの曲は新しいEDMアーティストによるものなのか? それともロックバンドのニューカマーなのか? タネを明かせば、SuGのボーカルである武瑠がその名も“浮気者”と称して、バンド外のさまざまなアーティストとコラボレートする企画。昨年リリースしたミニアルバム『I 狂U』には、自身のオリジナルの他に0.8秒と衝撃、たむらぱん、ゆよゆっぺら異ジャンルのアーティストともコラボし、SuGのファン以外にも話題が及んだことも記憶に新しい。今回、配信リリースされるこの“HELLYEAH”はDJとしてもJ-POPシーンのプロデューサーとしても活躍するTeddyLoydがアレンジを担当。また、武瑠本人がイメージの土台を作る形容しがたいメイン・ビジュアルやMVも超ユニークだ。今回は同曲のリリース・タイミングに合わせて、改めて浮気者の正体を探ってみたいと思う。

浮気者 -“I 狂U”

Interview:浮気者(SuG武瑠)

–––そもそも浮気者っていう限りは本命があるからだと思うんですが、武瑠さんの中ではどういう発想で始まったものなんですか?

SuGっていう自分の本命というか、基地みたいな場所がありながら、いろんなアーティストとーーもうホントにその時のノリだったりフィーリングで、コラボレーションしてみて。で、成功しても失敗してもそれをアルバムに入れちゃおうっていう企画ですね。

–––今回の“HELLYEAH”に関しては、なぜ発表しようと思ったんですか?

“HELL YEAH”っていう曲やイメージを思いついて、こういう絵とかこういうMVにしたいなって思いついて。それを思いついたまま出さないとモヤモヤするから、この曲についてはSuGでも浮気者でもどっちでもいいから出したいな、みたいなところがあって。で、浮気者で出すって決まったので浮気者のアレンジにしたっていう感じですね。

浮気者 -“HELLYEAH”

–––浮気者は普段アウトプットできないものを出せる場所?

そうですね。たぶんそうだと思います。SuGじゃできないこととかをホントに直感だけで出していく。SuGって割とアルバムのストーリーとか、小説とかも書いたりするんで、同期してるものからシングルカットしていったりするんで、すーごい1年かけて大きなもの作るって感じなんです。浮気者は直感、直感で意味ないものをやりたいなって。ま、でも東京で育った、東京発信っていうのは、コンセプトであります。

–––東京のカルチャーだったり東京にいる人だったりですか?

そうですね。東京にいる架空の人物だったりとか、自分の感覚は日本とか東京じゃないと生まれなかった、雑多な、すごいコラージュ的な感覚だと思うので。ヒップホップとかEDMとか、でもJ-POPがベーシックにあって。ファッションもそうですけど、いろんなものが混ざって出てきてるって感じなんで。言ってみたら1個1個がエセみたいな、全部混ぜて、UWAKIMONOってロゴを作ってるだけみたいなイメージがあって。そういう東京の無宗教感みたいなものは出したいなと思います。だから曲とかも思いつくけど、その中で東京っぽくないとか、浮気者っぽくないって思ったら一応、排除してます。

–––浮気者っぽさっていう軸があれば、どんなトラックでもOK?

ですね。だからEDMでも、東京の雑多感、息苦しさから脱却しようとするエネルギーとか、そういうものが入ってないと入れないと思う。

–––たしかに。EDMというか、テクノを例えにとると分かりやすいですけど、イビサと東京で踊ってる人じゃ全然、感覚も違うでしょうしね。

うん。そうですね。ま、ジャンルによりますけど、ファッション寄りのイベントはまったく躍らないんで(笑)、東京のクラブは。それもホントは踊りたいけど踊れないみたいな空気はめちゃめちゃ感じる。「なんか恥ずかしい」とか。だからファッションもかっこよくて踊れちゃったほうがいいなと思ったんで。そういうものすごく特殊な立ち位置に立ってるような、在り方だったり音像だったりする気はします。浮気者とこの“HELL YEAH”っていうのは。

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