KID FRESINOをフィーチャーした名曲“I LIKE YOU”のヒットから2年。千葉のラッパー兼ビートメイカー、VOLOJZAが新たなアルバム『割れた鏡が見た何か』を5月3日(水)に配信リリースした。

同作は“I LIKE YOU”でのサンプリングベースの暖かいサウンドとは異なり、アナログシンセやドラムマシンなどのハード機材で制作した冷ややかな作品だ。要素としてはトラップやグライム、ダブステップなどの様々なものを内包しつつも、そのどれにも当てはまらない個性的なサウンドを提示している。また、“I LIKE YOU”を収録した前作『其レハ鳴リ続ケル』ではQNやヤング・キュンなど全曲に客演を迎えていたが、今作では自身のラップのみで聴かせる曲がほとんどだ。しかし、変化があった一方で、仮面を被ったアートワークなど前作との繋がりも感じられる。この作品は一体どのようにして出来上がったのか? VOLOJZAに話を聞いた。

INTERVIEW:VOLOJZA

割れた鏡が見た何か──VOLOJZA、最新作を語るインタビュー interview230503-volojza-7

心境の変化でアルバムの方向性を転換

──今回のアルバムはラップアルバムとしては2年ぶりとなりますが、制作はいつ頃から始めましたか?

こういう形でまとめようと思ったのは、去年4月の『其レハ鳴リ続ケル』リリースパーティの後ですね。4月の終わりから5月の頭くらいだったと思います。ラップに関しては古い曲を改良したものもあります。

──古い曲を改良というと、一番古いのはどのくらい前のものがあるんですか?

2曲目の“顔が濡れたら力が出ない”が一番古くて、9年くらい前になりますね。前にMVやジャケの写真をやってくれたtoydog……今はALOHADELIC SLIMって名前でDJをやっている人物がいるんですけど。リリースパーティに彼にも出てもらったんですが、“顔が濡れた力が出ない”のデモバージョンを持っていて当日かけてくれたんですよ。それを聴いたら悪くないなと思ったんですよね。

VOLOJZA-其レハ鳴リ続ケル

──昔の曲を聴くと恥ずかしいみたいなことを言う人もいますよね。

自分もありましたね。だから歌詞を逆方向に直して、ビートも少し直しました。でも直さない部分もあって、活かすところは活かしています。ビートは確か2015年くらいにできていたもので、ほぼリリース版と同じですね。2013~2014年頃ってA$AP Fergの“Work”とかが出た時期で、ああいう冷たい質感のトラップが日本でも増えていたと思うんですよ。

──確かに。KOHHの2ndアルバム『MONOCHROME』もそのくらいの時期でしたよね。

KOHHも出て来たし、あとkiLLaとか。そういうのが増えてきて、“顔が濡れたら力が出ない”はビートの質感もラップの置き方もちょっと「っぽすぎる」かなと思ったんですよね。だから出さずにいて、7~8年経った今はそんなにトレンドでもないので大丈夫かなと思って今回入れました。今はサイクルとかも早いじゃないですか。本当にタイムリーでやると、半年~一年とか遅れると逆に古く感じちゃうと思うんですよ。でも時間が経てば、新しいとは思われないけど古いとも思われないかなと。

──スタンダードになるみたいな感覚ですね。前作『其レハ鳴リ続ケル』から今作の間に、ドロドロなブーンバップのシングル“松戸にいる”が出ていましたよね。アルバムもああいう感じなのかなと思っていたのですが、今作では全く違うサウンドで驚きました。

本当はもっとサンプリングメインのアルバムを用意していたんですよ。でも、自分のバックDJをしてくれていたDJ AGAが亡くなってしまって、そういう作品を作り上げる気持ちにならなくなったんです。7~8割くらいは完成していたんですが、もうちょっと違うものをやりたくなったんですよね。それで質感的にも内容的にも今作のようなものを作ったというか…そういうモードにしかならなかったんです。

──VOLOJZAさんの中では、「サンプリングのビートはハッピーな時に作るもの」という意識なんですか?

いや。できていた曲が普通の日記みたいな内容だったんですよね。ワンヴァースとフックだけで今日あったことを言うみたいな。“松戸にいる”の延長線上のものをやろうと思っていたんです。ああいう短い曲を多く入れるような作品ですね。でも、そういう考え方も変わってしまったので一度やめて、もっとカチッとした質感のものを作ろうと思ってできたのが今回のアルバムです。

VOLOJZA-松戸にいる

仮面に影響を与えたMF DOOMなど「史上最高のラッパー」

──今回のアルバムは前作『其レハ鳴リ続ケル』とアートワークも似ていて、どことなく繋がっているような印象を受けました。裏バージョンというか。

これは意識して作っていたわけではなくて、アートワークの写真も本当はサンプリングのアルバムで使う予定のものだったんですよ。お面も前作の時点で二つ作っていました。でも、結果的には今回出したものの方が、アートワークのイメージに合うものになったかなと思いますね。

──あのお面は何を表しているのでしょうか?

あれはコロナでマスクをする時期だったのと、MF DOOMが亡くなったじゃないですか。あれからKanye Westも覆面っぽいのをするようになりましたよね。「内面をよりビジュアル化したものを前に出す」みたいなことが面白いかなと思ってやりました。それで作ってみようと思って、二つ作ったんです。

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──あれ自分で作ったんですね。MF DOOMといえば、“松戸にいる”にもその影響があるように思いました。

MF DOOMは好きなんですよ。英語がわからないから、単純に好きとしか言いようがないんですけど(笑)。

──この流れで、「史上最高のラッパー」を5人挙げてもらってもいいですか?

まずはJay-Z。あとは単純に好きなラッパーになっちゃうんですけど、Ghostface Killahですね。

──Ghostface Killahも初期はお面でしたよね。

そうそう。当然MF DOOMも入ります。あとの二人は…今日聴いていて好きだなと思ったのは、Vince StaplesとEarl Sweatshirtですね。

──今挙げていただいたラッパーのどういうところが好きなんですか?

Jay-Zはアップデートがずっとできているところですね。最初はテクニカルで売って、伸び悩んでハスラーになって、Damon Dashと組んで戦略からやって…っていう流れじゃないですか。ラップが上手いのは基本ですが、そこから産業というかビジネスまでちゃんと持って行けたのがほかのラッパーと一線を画す部分だと思います。あまり好きじゃない曲もあるけど、打率や基礎体力は凄いと思うんですよね。2017年の『4:44』も改めて聴くとすごくいいアルバムだと思います。
Ghostface Killahは単純にすごい好きなんですけど、革新的でもあったと思います。ソウルの上にまんま乗っける曲を出していたことがありましたけど、あれは今のドラムレスの流れの先駆け的なものでもあると思うんですよ。ラップでどんどんグルーヴを作っていくっていう意味では。そういうところや、あと存在感が好きですね。

MF DOOMは仮面を被っているからとしか言いようがないんですけど(笑)。でも影響を受けた曲も作ってきました。Earl SweatshirtとVince Staplesはスタンスが好きですね。アートフォームの仕上がりがすごいしっかりしていて、作品のサイズ感も大きすぎないのが良いです。Vince Staplesの最近の2作は自分のフッドの話で、現実的な人だしそういう視点も好き。トラックの質感もまとまっていますし。

自分のビートでラップをするシンガーソングライター的な作り方

──また作品の話に戻りたいのですが、前作は客演が多くて賑やかな作品でしたよね。でも、今作は客演を絞っているじゃないですか。そこには何か狙いがあったんですか?

今回のアルバムは、すごいパーソナルな側面が強い作品だったんですよ。客演を呼んだ二曲は、逆にそこまでパーソナルなリリックではない曲なんです。ちょっと息抜きができるような、地続きな曲に近い人を呼んだみたいな感じですね。そもそも、元々そんなに客演を呼びたいってタイプじゃないんですよ。呼びたい気持ちはあるんですが、結構大変だから呼びたくないというか…。そこで今回は、ライブとかでもよく動けるメンバー二人にお願いしました。

──ビートメイカーについても、周りにもpoivreさんやLEXUZ YENさんなど色々な方がいらっしゃいますが、全曲自分のビートで統一していますよね。そこには何か意図が?

誰かと一緒にビートを作ることもありますが、自分のソロアルバムではいつも自分のビートでやっているんですよね。

──自分のビートでラップすることにこだわりがあるんですか?

単純にビートからしか書こうと思ったことがないんですよね。人からビートを貰っても、思いつかなかったら書けないじゃないですか。元々自分でビートを作って自分でラップをしたいと思っていて、それ以上のことはイレギュラーでやっているだけみたいな感覚です。そもそも「やりたい」がないんですよ。機会を振られればやってみたいことはありますけど。

──ある意味、シンガーソングライターみたいな意識で音楽をやっているんですね。そんなVOLOJZAさんもpoivreさんのビートでラップするプロジェクトのDie,No Ties,Flyでも活動されていますが、あれでの音楽性が今回のアルバム繋がっているような印象を受けました。

Die,No Ties,Flyで自分やLEXUZ YENくんがやるアプローチ、poivreさんのビートに影響を受けてる部分はあると思いますね。「ある程度歌う部分が強くても大丈夫なんだな」と思わされたことはあります。Die,No Ties,Flyで試したことの評判が悪くなかったので、ラップと歌っぽいアプローチの比率が前と変わっているというか。そういう影響はあると思いますね。

VOLOJZA & Poivre – HARURANMAN(Lyric Video)

──今回の作品は、ビートを作ってラップを乗せた後に何か手を加えることはどのくらいやっていますか?

ラップを乗せた後に「ここいらないな」っていうのを切ることはありましたが、ほぼないですね。

──それは自分でビートを作っているからできる技ですね。今回のアルバムは、音の質感がぼんやりしたダウナーな感じで統一されていますよね。そこは自分でビートも作る人ならではだなと思ったんですが、ミックスとマスタリングに関してはKABEYAMさんに委ねているじゃないですか。そこに関してVOLOJZAさんの方からディレクションはどの程度されましたか?

KABEYAMさんとはもう3~4作くらい一緒にやっているので、大体自分の好みはわかっているんですよね。リファレンスで曲も投げていますし。「ここを大きくしてくれ」とか細かいところは多少言いますけど、極端に変じゃなければ大丈夫です。トラックに関してはほぼ原曲通りですね。あと俺はマイクの音が悪いので、それに関してはかなり助けてもらいました。

──リファレンスには例えば何を送りましたか?

Raider Klanの時のDenzel Curry、昔のYung Leanなどです。インディロックっぽいものも送りました。元々そういうのが好きで、ああいう質感でまとめたいなっていうのがあったんですよね。さらに気持ちとしてもそういう気分だったので、全体的にそういうのでまとめました。

The NeptunesやSwizz Beatz、Iggy Popなどから受けた影響

──今回はハード機材で作ったそうですが、サンプリングメインのビートメイカーの中には「そういうの難しそうだ」と思って手が出せない人もいるんじゃないかと思います。VOLOJZAさんって、音楽理論とか学んだことはあるんですか?

全くないですね。

──理論なしで弾いてビートを作るにあたり、何か大変なことはありましたか?

元々、The NeptunesやSwizz Beatz、ハイフィとかが好きだったんですよね。彼らのビートってループがメインじゃないですか。打ち込みもシンプルなものが多いですし。しっかりと音楽的なものを作ろうとは全く思っていなくて、「いいループを組む」というだけなのでサンプリングの時と感覚的には同じですね。4小節でいいループを組めるかです。理論ではなく、感覚で当てていくみたいな感じですね。

──いわば、一音一音サンプリングして作っていくみたいな?

そうかもしれないです。元々サンプリングの時でも、メロディじゃなくて響きや質感を重視しているんですよね。自分は、メロディがいくら良くても質感が良くないとダメなタイプなんです。「しっくりくるものを探して作る」という意味では、サンプリングとほぼ同じですね。

──なるほど。今回のアルバムに限らず、VOLOJZAさんの音楽にはヒップホップ以外からの影響を感じることが多いのですが、そこについてお伺いしたいです。

ヒップホップだけ聴いていると飽きちゃうんですよね。飽きて違うの聴いて、飽きてヒップホップ聴いて、飽きて違うの聴いて…みたいな感じを繰り返しています。今回のアルバムを作っている時は、クラウトロックとかを聴いていました。あとIggy Popの『Idiot』というアルバム。シンプルで暗いアルバムなんですけど、気持ちにもハマってよく聴いていたんですよ。そのダークでシンプルな感じをイメージしつつ、自分の場合はアウトプットがヒップホップの形になるみたいな感じでしたね。ダークでシンプルなループ、そこにラップのような感じです。

──今回のアルバムの収録曲について、一曲ずつお話を聞いていこうと思います。まず先行シングルにもなった“真犯人”ですが、あれは早口ラップをやる曲ですよね。あれは早口ラップをしたくてあのビートを作ったんですか?それともビートに早口が合いそうだった?

実は去年から酒の量を減らしたんですよ。そうしたら体力・気力的に変化が起きて、「早いラップをやりたい」みたいなモチベーションが出てきたんです。夜更かしをあまりしなくなったのも関係があるかもしれない。ビートはすごい昔、Skeptaを聴いた時に作ったビートがあったのを過去のファイルを見ていて思い出して、その早口モチベーションに合いそうだと思って選びました。

VOLOJZA – 真犯人

──“顔が濡れたら力が出ない”は古い曲とのことですが、何から影響を受けて作ったか覚えていますか?

それこそA$AP Fergの“Work”を聴いて作ったビートですね。“顔が濡れたら力が出ない”はスネアがなくて、ハイハットの連打と808が2~3発バンバンって鳴るだけのビートです。あれはハイハットですごい面白い打ち方ができたから、それを活かしてフロウを一定化して推進させるみたいな感じで作りました。

インプットの蓄積

──“トンネル”は、The Cool KidsとThree 6 Mafiaを足したようなビートだと思いました。

言われてみるとそうかもしれないですね。でも、あれはBabyface Rayとかのデトロイトラップを聴いて作ったビートなんですよ。デトロイトっぽいビヨビヨとピーヒャラを入れつつ、自分が作るからちょっと違う変になるみたいな感じですね。でもThe Cool Kidsも好きで、昔からそういうビートを作るとよく「The Cool Kidsっぽい」と言われます。誕生日もChuck Inglishと同じなんですよね。

──そうなんですね(笑)。Chuck Inglishもデトロイトですよね。Babyface Rayとも繋がっているかもしれない。

言われてみればそうですね。フロウの面でも、その時聴いていたデトロイトラップを意識しました。グニャグニャとしてちょっと弱くなるみたいなイメージです。ちなみにあの曲、サビは最初全然違ったんですよ。「トンネル抜けたなら」じゃなくて「モンベルバラクラバ」だったんです。Doe Boyがずっとバラクラバを被っているじゃないですか。モンベルでバラクラバが売っているのを見て、「ああいうMV撮ろうぜ」って言って作ったみたいな曲でした(笑)。

──“寝るしかない”は歌っぽいフロウをやっていて、ビートも808を使ったトラップっぽい要素のある曲ですよね。でもオートチューンを使っていなかったり、ベースの鳴りがファンキーだったり、そういう明らかに違うところもあるのが面白いと思いました。あの曲は何からインスパイアされたんですか?

あれはRolandの「MC-303」という古い機材で作ったビートです。アシッドハウスっぽい質感で鳴るんですよね。元々もっとドラムが入っていたんですけど、歌う時にメロディに当たっちゃうので全部剥いで808とベースだけにしました。インスパイア元としては、Etherealですかね。ドラムンベースに影響を受けたトラップというか。ああいうのが好きで、「昔のアシッドハウスとかの質感を残した何か」みたいなイメージで作りました。

──“Favorite”は、ワブルベースみたいな音が入っていたりするけどヒップホップとしてまとまっているみたいな変なビートでしたよね。あれは何から影響を受けた曲なんですか?

あれはSpaceGhostPurrpとかの影響を受けて作った曲でした。それと、持っている機材で適当にプリセットを鳴らして「これいいな」って思った音を選んでいたら、結果的にああなったみたいな感じですね。後から聴いたら「ダブステップみたいなベースじゃん」って気付きました。

VOLOJZA- Favorite feat. W.O

──そこはめちゃくちゃヒップホップ的な発想ですね。“靄靄”も低音が極端に少なくて面白いビートですよね。

あれは変なドラムの打ち方になりましたね。あれもMC-303で作ったビートです。結局、影響って自分が聴いてきたものの蓄積だと思うんですよ。リファレンスというよりも、結果的にそうなったみたいな感じが近いんですよね。

──確かに、お話を聞いているとVOLOJZAさんはインプットの蓄積がそのまま面白さに繋がっている印象を受けました。

人に頼めないのもそういう理由だと思うんですよね、自分の中にあるものから、しっくりくるものを探して作っているんです。人に頼んでも全然イメージと違ったりするので、投げるのは結構難しいんですよね。

新しいものから受ける刺激と古い機材で作る面白さ

──“夢は枯野を駆け回る”は四つ打ちですけど、あまりハウスっぽくないのが面白いなと思います。ハウスは去年すごいホットでしたが、あれはあの時期に作ったビートだったりするんですか?

あれは2~3年前のビートです。King Kruleと一緒にやっていたPintyの1st EPでああいう曲があって、それを聴いて作りました。元々ラップ用ではなくて、単純に好きで作ったビートなんですよね。自分で聴く謎のやつみたいな。YouTubeにtoydogがチャリンコの動画を上げているんですけど、それにインスト版が使われています。2020年くらいの動画ですね。

VOLOJZA – 夢は枯野を駆け廻る

──それにラップを乗せようと思ったのはなぜですか?

やっぱり質感がすごい好きだったんですよね。ああいう曲をやっている人はほかにいないだろうし、いいかなと思いました。あれが今回の作品で最後にラップを入れた曲ですね。

──質感といえば、最後の曲の“前夜”も面白い質感の曲ですよね。穏やかなようで今回一番ヒップホップから逸脱したビートだと思います。あれのエピソードを教えてください。

あれは夜にすごい小さい音で作ったビートです。ウワネタを弾いていたら、なんかすごい好きな感じのものになったんですよね。教会というか、そういう「許しがあるような音」というか。そこにドラムとかを足すでもなく、色々といじっていたら不思議なビートになりました。それになんとなくメロディが思いついたから書いたみたいな感じですね。

──お話を聞いていると、VOLOJZAさんのビートの面白さは機材から生まれているような気がしました。

使っているドラムマシンが古くて今っぽくないから、そうなるんですよね。さっきの“顔が濡れたら力が出ない”の話にも繋がるんですけど、ちょっと前に流行った音に近いと古く感じると思うんです。そこを古い機材でやっている分、トレンドの影響を受けても変なものができるんだろうなと思います。MC-303は人から貰って、使ってみたら面白くて結構使っています。あとはドラムマシンの「TR-8」と、KORGのアナログモデリングシンセを使っていますね。特に機材オタクというわけじゃなくて、その時の流れで興味があって買ったものや、貰ったものを使っています。しょっちゅう買い替えたりはしていなくて、持っている中でどうするかみたいなことを考えることが多いですね。新しく買ってどうこうみたいなことはあまり思わないです。サンプリングはずっとMPC-1000を使っています。

──なるほど。古い機材で新しいことをやった結果があのビートなんですね。VOLOJZAさんにベテランとしての話を聞きたいんですけど、最近日本でもヒップホップが盛り上がってきていて、若いラッパーやビートメイカーが色々と出てきているじゃないですか。最近の新しいアーティストでお気に入りの人はいますか?

面白いと思ったのはPeterparker69ですね。あれは自分の前に作っている人はいないものだと思います。ライブでJeterくんと被ったこともあったんですけど、すごい変な感じで面白かったです。Tohjiや釈迦坊主も好きですね。あと、やっぱり自分にできないことをする人は好きです。「こういうやり方があるんだ」みたいな発見があって面白いです。逆に誰か例を挙げてもらったりできますか?

──自分が最近好きなのは¥OUNG ARM¥という人ですね。「気をつけるスパゲッティ」ってフックの白Tシャツの曲があるんですけど、それとか面白いです。

(笑)。自分の場合は若い人のラップだと、そんなに「ヒップホップ!ヒップホップ!」していない人の方が、自分の知らない感じで好きになることが多いですね。STARKIDSとかも面白いなと思います。

──なるほど。今制作している作品について、言える範囲で教えてください。

Die,No Ties,Flyのアルバムがほとんどできています。あとはサンプリングのソロアルバムを修正して、まとめて出せたらなとは思っていますね。

割れた鏡が見た何か──VOLOJZA、最新作を語るインタビュー interview230503-volojza-1

取材・文/アボかど
撮影/Kazuki Hatakeyama

INFORMATION

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割れた鏡が見た何か

VOLOJZA
2023.05.03(水)

Tracklist
1. 真犯人
2. 顔が濡れたら力が出ない
3. トンネル feat. doq
4. 寝るしかない
5. Favorite feat. WO
6. 靄靄
7. 夢は枯野を駆け廻る
8. 前夜

Mix&Mastered by KABEYAM
Photo by Kazuki Hatakeyama
Press Release by アボかど

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