不可思議/wonderboy、daoko、Jinmenusagi等を輩出し、独創的かつクリエイティヴなアーティストを世に紹介してきた注目レーベル〈LOW HIGH WHO?PRODUCTION〉。そしてこの度、同レーベルより気鋭のラッパー/トラックメイカーwaniwaveが7月3日(水・なみのひ)に世紀の問題作『ワニウエイブのCDは呪われた!』をリリースした!
餓鬼レンジャー、電気グルーヴ、FUGAZI、舞城王太郎、モンティ・パイソン、須田剛一・・・waniwaveのプロフィールに挙げられた影響源を一瞥するだけでも、彼の関心がいかにオリジナル・オリエンテッドで、その興味の矛先が多岐にわたることがわかるだろう。これまで自身のネット上(主にSoundcloud)に“名言bot殺す”、“高校生とはレディオヘッドを聴く”、“ガチしょんぼり沈殿丸”、“ネカマ、一生涯を如何に生きたか?”・・・といった名(迷)タイトルづくしの楽曲を配信し、一部の早耳なリスナーの間で既に異端視されていた存在だったwaniwaveだが、あなどることなかれ。流麗かつメロディアスなシンセ・ループの波の上で矢継ぎ早に放たれるエモーショナルな言葉たちは、組んでほぐれつ決して一筋縄ではいかない混沌絵巻を楽曲の上で繰り広げる!
そんなwaniwaveの、フィジカルCDデビューとなるアルバムは題して、『ワニウエイブのCDは呪われた!』。タイトルだけでたまらなく意味深にキャッチーなんですが、異物感アリアリ、不純毒素たっぷりなのにやけに清涼感があるあたり、筆者はMAKKENZや豊田道倫を初めて聴いたときのことを思い出した。グッド・メロディーを基盤にやんわりとリスナーをおびきよせ、新たな「生」を吹き込むwaniwaveの摩訶不思議なワード・プレイに、はっきり言って中毒患者増殖必至! 確信犯的ストレンジ・ミュージック、waniwaveの魔力にやられちまいな!
Interview:waniwave
――Qetic初登場ということで、自己紹介をお願いします!
一応言うようにしているのが、僕はwaniwaveという名前でラッパー・トラックメイカーをしています。ということにしています(笑)。
――それでは音楽に関わるようになっていった経緯を教えてもらってもいいですか?
僕は初めてCDを買ったのがスピッツで、それからJ-POPを聴いていたんですが、中学の時にオールナイトニッポンを通して、電気グルーヴや西川貴教を知ったんです。これは何だ、新しい音楽なのかと興味を持ち、電子音楽系のものを聴きはじめて。あと当時ビートマニアっていうちょっとクラブミュージック系のゲームが流行っていて。その辺りが割と、僕らの世代だとクラブミュージック原体験の人多いじゃないですか。
――ああ、そうですねえ! ゲームを通して身近にクラブ・ミュージックが入ってきたというか。ダンス・ダンス・レボリューションとかポップビートとか。
そうですね。実際に演奏しているわけじゃないですけど、音楽の敷居が下がっているという感じがしましたね。それで、当時ビートマニアみたいなことがパソコンでできるソフトがあって、流行っていたんです。その曲を作りたいなって思って打ちこみを始めたのが最初ですね。そんで高校に入る時にそういう打ちこみとかできるから、軽音楽部に入ったら何かできるんじゃないかって思ったら、普通に楽器もたされて、そこからクラブミュージックよりも、ロックを聴くようになった。
――なりゆきでバンドをはじめて、今のスタイルに移行していくわけですが。
そうですね、一番最初はイエモン(THE YELLOW MONKEY)のコピーバンドでベースをやっていました。なぜか「べーシストかっこいい」ってあるじゃないですか、「屋台骨だぞ、俺が」みたいな(笑)。なんかどうせ新しく始めるなら、ベースやってる人少なかったし、ベースかなっていう風にしたんですよ。今は弾けないですけど(笑)。僕実はピアノを小2から中3ぐらいまで習っていたんですけど、それも弾けなくなって、どっかから、急にギターの方が好きだなって思って、自分でギターを買って弾くようになりましたね。ギターを個人で弾いていたものが、まあ打ちこみとかできるんで、宅録になっていって、バンドからは徐々にフェードアウトしていき・・・さらに宅録からギターが無くなり、打ちこみだけになっていき、そうすると音が減るじゃないですか。なので言葉が増えてラップになっていき、今のスタイルになっていったんじゃないかと思います。
――なるほど。その間、ヒップホップやラップにハマったっていうことは無かったんですか?
まあ今でも割と真面目なヒップホップリスナーというわけでないので、外部の人間という感じがしますね。好きだったのはナンバガ(NUMBER GIRL)やTHA BLUE HERBとか。
――そういう文学性のある作品に惹かれたということですかね?
そうですね~。昔小説家志望だったこともあって。やっぱりヒップホップにある、あまりよくないパブリックイメージを大学に入った頃には抱いていて。今は割と耐性が出来てから聞いても、まあそう言える部分は普通にあるだろうなと思っていて。ふふふふ。
――確かにwaniwaveさんからはアウトサイダー的なものは感じますね。
そうですね~。ダニエル・ジョンソンとかすごい好きで。あとハーフ・ジャパニーズっていうバンドがいるんですが、彼らギターの弾き方わかんないのに、あたかも弾けるように演奏するんですよ。ただ、音とかめちゃくちゃなんですけどね(笑)。でも、そういうのが普通にCDとか出て、タワレコとかでも売っているのは、痛快なことだなあと思いますよね(笑)。常にある論点なんですけど、すごい出来るひとたちがいて、すごい出来ない人達がいて、そこがせめぎあっている状態がずっと進んでいる。そういうのに面白さがあるなあと。
――ニュアンス違うかもしれないんですけど、ラップっていうのは、わりと誰でも簡単に始められる敷居の低いものだと思います。誰でも出来るからこそのメチャメチャさとかもあるのが面白い。あと、Waniwaveさんが打ち込みにラップを乗せるスタイルになったのは、全て自分の世界で完結できるからかなあ、とも思って。
ああ~、そうですね。単にバンドとかやっていると、人と時間合わないっていうのもあるし、諍いも起こる。で、自分で好きに作っている分には、自分とけんかする必要はないので。あと、何故アウトサイダーの僕がラップをやっているかというと、宇多丸さんの話をラジオで聞いて啓蒙された部分もありますね。それはラップはどういう部分が面白いのかっていう話で、宇多丸さんが言っていたのは、韻にとらわれすぎると、内容が無い文章になっていくんですよね。そうすると、今まで誰も口に出したことが無い言葉っていうのが出てくると。それが面白いなと。俺、ロックをやっている時もけっこう普通のロックとはちょっと違った歌詞を書こうとしていまして、そういう部分でちょっとラップ出来るのかなと思いましたし、表現として自分に合うんじゃないかなと思いました。割と語彙力とかある方だと思うので、向いているのかなと。
――確かに聴いていて、言葉選びも巧みですし、まず、『ワニウェイヴのCDは呪われた』っていうことによって、そこにファンタジーを持たせている。かつ、パンドラの箱の話にもあるように、絶望の中に希望を見出させるという行為を逆説的に提示するというか、単にユーモアで終わらせない知的な印象を受けました。
今回、やろうとしたことは正にそれで。データじゃなくて物を作る時、「物ってなんだろう」って思うわけじゃないですか。単にデータが入った入れ物だけだったら、物はいらないんじゃないかなあって思って。じゃあ、呪われた日本人形を持ってたら恐いとかいうのと同じで、例えば、俺のCDがCD棚から出て浮いてたりとかしたら、物として、ああ買った甲斐あるだろうなって(笑)。
――あはは! 違う意味での付加価値ですよね、完全にマイナスイメージだけども(笑)。
実際には起こらないんですけど、だからそう起こりうるかもしれないって思わせるのが物かなっと思うんですよ。MP3が画面出てきて首を絞めてみたりしようと想像が出来ないわけです(笑)。
――あ~、確かに。フィジカルでリリースすることの意味っていうか。
そうです、触るわけなので。Soundcloudで色々発信していたのが、物として、パッケージになるということで、どうしたらいいのかという時に最初に「呪い」というキーワードを思いついたので、とりあえずそれで走ってみようと思いましたね。呪いって物にしか宿らないと思うので。
――なるほど。しかも言葉にも宿るものですよね。
もちろんですね。『陰陽師』って映画で、まあ名前とは呪いである、という話をしてて、名前ってまあそう呼ばれるということだから、社会的にそう認知されるということが、既に呪いであると。とにかく呪いっていうのは、人が言ったこととかが頭から離れなくなるとか、そういうことだと思うんですよね、拡大解釈していくと。なので、それを今回は作品でやろうとしました。
――あとこれもたしか宇多丸さんが言ってたと思うんですけど、憧れの意味での「夢」っていうのも、ある種呪いですよね。
夢も一度取りつかれてしまって離れなくなる考えですよね。まさにそういうのが呪いだって思いますね。だからそれを植え付けれたらいいなって思って。だから、どっちかっていうことにしたくなくて、曲の中で。まあしているのもあるんですけど。基本的には「だから、お前が考えろよ」っていうことを焼き付けたいし、どういうことかっていうのも考えてほしい。案じることで、皆の心が養われるのでは(笑)。
――でもそういう色んなコンテキストがもう混ざりあってるっていうのがwaniwaveさんの音楽の特徴っていうか。
そうですね、意識的にそうしています。
★インタビュー、まだまだ続く!
>>次ページでは独特の詩世界について語ってもらっていマス!!