――詩についてなんですけど、詩を書く上で最も大切にしていることってなんですか?
まあはぐらかすというか(笑)。
――先程言ったように、受け手側が自由に解釈する余地を与えるっていうか。
そうですね。あとは、詩と言えば僕は強い言葉・弱い言葉っていう考え方があって。強い言葉というのは、それが入ってくるだけで全体の世界観を左右してしまうような・・・そういった言葉が、世の中には存在するんですよ。で、主にエロい言葉なんですよ、それは。なんかチンコとか入ってくると、それまで真面目に言ってたことが一瞬で台無しになるんですよ(笑)。凄いいい事を言っている歌詞に急にチンコとか入ってきて、普通なら台無しになっちゃうんですけど、俺のは入ってきても平気だっていうのを目指して作っています。
――強烈な言葉のみに引っ張られることなく、全体の強度をあげるっていうか。
そうです、強度を上げるし、やっぱ美しいことしか見てないような感じがするので、汚いものも取り入れていきたい。あと、情報量が多い方が面白いなっていうのもありますね。1回2回聴いたぐらいじゃわかんないのがいいと思う。
――確かに絶えず情報が、高密度で繰り出されてますもんね。そこにはやはりwaniwaveさんが昔、小説志望だったという一面が影響していたりします?
好きな作家で舞城王太郎っていう作家がいて。舞城王太郎を初めて読んだ時にこれだなって思って、少しだけ模倣している部分はありますね。固有名詞とかがガンガン出てくる感じがいいなって思って。
――そういう部分なんか、現代的だなーって思いますね。固有名詞の羅列の中にちょっとグロテスクな表現も入ったりして。
すごい現代的な感性だと思います、本当に。ただ、最後にいいこと言うっていうのがあるんすよ、舞城王太郎は。ただいいことを言われるよりも他の、汚い部分も含めて見せることで説得される感じがするんですよね。全部見せないでいいところだけ言うのもなんか誠実じゃないような気もしますし。
――本当にそうですね。waniwaveさんはネットをメインフィールドとしながら活動をされていますが、ネットを介して、現代を映し出すような、色々なコンテクストが混ざった音楽を発表するということに、今後、新しい可能性を見ていたりしますか?
色んな時間が流れていると思うんですよ、それぞれの文化圏の中で。そういったものが、全部一つのストリームに乗って見えるのがインターネットかなって。もちろんインターネットからこぼれてしまうものもあるのですけど、俺のキャパシティ超えちゃうんで、そういうものを無視して、その色んな時間が流れているのが、一つのものとして見える。例えば、ツイッターのタイムラインとか見えている時に、一つのものとして見えているじゃないですか。そうした雑然さが集合している感じっていうのが面白いなっていうのはずっと思っていますね。
色んな人がいて、色んな生き方があって、この人はこの時間に起きているんだとか、この人は自分を褒めている言葉をRTしまくるなとか見えてくるんですよ。それぞれがどういう人としてネットにいるかっていうのがわかってしまうんです。そうすると、自分の名言RTしまくる人がいて、ダサイよねって、でもそれが友達だったりして。今まで心の中で言ってたことが全部外に出てる。出てるけどまあ皆無視して付き合っているっていうか。
――なんか可視化されちゃった感じがしますよね。
Paranel(〈LHW?〉レーベル主宰) OL給湯室、みたいな感じ。笑
まあ全部が可視化されているOL給湯室で、自分が悪口言われてるって分かっているけど、でも友達だから付き合うとか、もう新しいですよ。コミュニケーションのスタイル自体がもう変化する時期に来てると思ってて。そうすると音楽とかも、そういうステージにあわせて変化せざるを得ないって考えますね。
――ネットをみているのと同じ感覚で言葉を雑然と羅列していく、というか。雑然としているものをまとめこんで音楽性に落とし込んでいくというか。
皆もきっと無意識的にまとめることをしていると思うんです。それにもっと意識的になると面白いのかなあという感じがしますね。例えば、自分のTwitterのタイムラインとかを見せることができたら、俺はこういうのを観てるって見え方を他人にみせることができるのでは、というか。別にtwitterとかじゃなくてもいいんすよ。俺だったら曲になるし、他の人だったら絵になったりとかでもいいんですけど、
――それ新しいですね。SNSの新しい可能性がみえてくる。自分だったらもうフォローする人とか決まってきている。そしたらもう同じクラスタ(一つの文化圏でまとまっている人達)の人しかいない。まあそしたら見えている世界が一つせまいってのはあるし。因みにさっき自分のアウトサイダー的なポジションっていうのを自覚しているとおっしゃっていましたが。
そうですね。僕は根本がロックな人間なのでいつもそういう問題を考えるときにスキル主義と半スキル主義の戦いを引き合いに出していて。ロックでは常にあることで、例えばピストルズが出てきた時とか、ニルヴァーナが出てきたときとかに起こっているんですよ。スキルが無いゆえのインパクトというか。そういうのを、延々と繰り返していて、つまり文脈を刷新しつづけているんですね。今、ヒップホップだったらそれをやれるかなという感じが僕はしていて。何か新しい文脈を書き足す余地があると思うんです。僕がみてる限りですけど、ヒップホップって基本的にテンプレートみたいなものがあって、そのなかで精度高めていくような感じで、何かバックボーン的な刷新があまり求められていないようなジャンルな気がするんですよ。そういうところに外部の人が急にやってきて、急に文脈かえるぞっていったらどうなるのかなっていう(笑)。
――それはすごく興味深い意見ですね、確かにそれは別の視点を持つ人だからこそ、できることなのかもしれません。最後になってしまいますが、あなたの夢はなんですか?
夢ですか、どう答えるのがいいんだろう。今までの10年間よりこれからの10年間の方が面白くなればいいなって思ってます。そのために何かできることがあったらして、一番楽しい10年間を生きて、死のうと。あの10年良かったなあとおもいながら そういう人生が理想的ですね。でも今回は「呪われたCD」でせいぜい賑やかしてやろうと思っていますよ(笑)。人が嫌がることをしようと思っています(笑)。
Release Information
Now on sale! Artist:waniwave(ワニウェイブ) Title:ワニウエイブのCDは呪われた! LOW HIGH WHO? PRODUCTION ¥ 2,000(tax incl.) Track List |